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プロローグ


姦崎姦(かんざきれいぷ)が異変に気づいたのは、夕刻頃だった。

希望崎学園生である姦が下校して帰宅する、その途上。普段であれば公園で遊んでいた子供達も解散し、帰りに路地裏で触手に捕まったり、商店街では夕飯の買い出しに来た若妻が逆に食べられてしまったりとにぎやかな時間帯、のはずなのだが・・・

変態が丘(じゆうがおか)の街は、まるで一人のレイパーもいないかのようにしんと静まり返っている。明らかにおかしい。

疑念を抱きつつ姦が実家に帰りつくと、そこには力無く床に伏す兄たちや父の姿があった。強くたくましい触手である彼等には珍しいことだ。和姦派の姦も、さすがに心配をつのらせる。いったい、何が起きているというのか――。

姦は家を出ると、姦崎家の宗家の屋敷へと向かった。
あの人なら、何か知っているかもしれない。


《うむ、これは間違いない・・・『萎』の妖気が街に充満しておる》
「目の前にいるのにテレパシーで会話しないでくださいよ」

姦の前にいる大型触手は、姦崎家でも長老格とされる一人、姦崎電波(かんざきあぶのーまる)。テレパシー能力で街中の誰とも交信できる情報通だ。周りからは親しみをこめて「アブさん」と呼ばれるが、どちらかというと野球は苦手な方である。

《いやあ、この歳になると口を動かすのもめんどくてのう。だいたいどこが口かもわからんし》
「それは僕にもわかりません。それより、『萎』って?」
《千年前に大暴れしたという・・・妖怪じゃ》

萎(なえ)。その名の通り、人々を萎え萎えにしてしまう妖気を放つ、迷惑きわまりない妖怪らしい。リビドーをエネルギーとする触手にとっては、この上ない天敵だ。その封印が、千年の時を経て弱まってきているのだという。もし本格復活すれば・・・触手族に明日はない。

「そんな・・・!」
《しかし、もはや黙って見ていられる状況ではない・・・姦よ》
「はい」
《いま、ここに残っている者でまともに動けるのはおぬしだけじゃ。頼む。『萎』の封印を突き止め、再度封印するのじゃ》
「し、しかし・・・」
《一人では難しいかもしれん。希望崎じゃ、あそこを頼れ。あそこには、我が一族も及ばぬほどの猛者がいると聞く。変態の危機と知れば、必ずや力を貸してくれるはず!》


駆け出していった姦を見送った電波は、奥の部屋に戻ると、一人で集中する。そして、東京中に向けてメッセージを放った。

《世界の危機なう》
《妖怪『萎』の復活は性癖の滅びを意味する》
《我こそはという変態は立ち上がるのだ》
《一番解決に貢献した者には》
《あなたの望む夢を見せてあげよう》

そう、電波は、脳にダイレクトに信号を送れる能力者。この世で一番リアルな夢を見せることができる。それは現実と何ら遜色ない、いかなる性癖でも叶えることができる瞬間なのだ。


姦は広大な希望崎の敷地を全力で駆けずり回って仲間を探したが、話しかける奴がもうみんな「ああそれね、知ってる知ってる、協力するよ」って感じのリアクション。テレパシー、ばっちり伝わってる。

「い、嫌がらせか、じじい・・・。」

柄にもなく悪態をついて、姦はその場にぶったおれたのだった。