「我が栄光」(2012/05/19 (土) 23:46:53) の最新版変更点
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*我が栄光
ここはクロモン。
その商店街の一角、団子屋の店内で緑色の甲冑の剣士が商品である団子を
勝手につまみ上げては喰い散らかしていた。
「うむ、美味い。 80点という所か。
…だが、信長の団子には若干劣るなぁ~。
シィル! すぐにお茶を…」
いつもの癖で自分に付き従う少女を呼ぼうとして、
その姿が今は隣にはないことを思い出し、
剣士、ランスは黙り込む。
(…ムムムッ、そういえばあの馬鹿はおらんかったではないか。
クソッ、奴隷の分際で俺様と一緒に居ないとはどういう事だ!)
持っていた串を叩きつける様にして投げ捨てると、
ぷんすかと腹を立てながら店内を後にする。
改めて辺りを見回し、ランスは自分が置かれている状況を確認する。
見たこともない民家や商店といった建物。
見慣れぬよく分からない機械。
そういったものが目に入る度にランスの中のイラつきが貯まっていく。
「ウガァー!! 第一、ここは一体何処なんじゃ!
何で、俺様がこんな面倒な事をしなくちゃならん!
あのハニー、絶対に割ってやるからなッ!」
苛立たしげに地団駄を踏みながらランスは自分をこの状況に置いたハニーを思い出す。
だが、
「…だが、かなり可愛い子も沢山いたな。
うむ、こうなったら超絶美形剣士である俺様が
女の子達を保護してやらんといけないな。
そして、保護したお礼に一発やらせてもらおう!」
鼻の下を伸ばし、グフフと下品な笑い浮かべながら、
当初の目的をすっかり忘れてしまう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピンポーン♪ 只今のランスの優先順位
女の子>>>>>>>>>>>>(煩悩の壁)>>>>>>>>>>>>ハニー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最初の機嫌の悪さとはうって変わって鼻歌交じりでランスは歩き出す。
そこでふと自分が持っていたデイバックの事を思い出した。
「おぉ、そうだった。
いつもはシィルの奴に持たせているから、
中身を見るのをすっかり忘れていた。
……どれどれ俺様に相応しい超便利アイテムなんだろうな?」
デイバックを降ろし、がさごそと中身を確認する。
バックの口を開け、乱暴に手を突っ込む。
「ムムッ!? この感触は剣か?
ガハハハハ! いでよ、超便利武器~!」
豪快に笑いながら手に取ったものを引っ張り出す。
そこにあった物は…
「ヘロ~、心の友よ。
チートアイテム代表の儂じゃよ?」
聞きなれた声で一気にランスの表情が曇る。
「いらん」
そのままポイッと後ろに魔剣カオスを投げ捨てると、
今のを見なかった様にするかのごとく、
再びデイバックの中をランスは漁り出す。
「ちょ、ちょっと待って、心の友よ!
儂、超便利よ? 魔王とかも殺せるぞ!」
本当に投げ捨てられて焦った様子のカオスが背後で必死に存在をアピールする。
「うるさい、黙れ」
それをランスはにべも無く一蹴する。
「……ガ~ン! 儂、ショック!」
本気で凹んだカオスがいじけているとランスはデイバックを漁るのを止めて、
カオスの方に向き直った。
「ウガァ~! 武器が無いではないか!
これはどういう事じゃ!!」
「いや、儂々。 儂がお前さんの武器だから」
観念したのか、ランスはズカズカとカオスに近寄り拾い上げると、
その刀身を近くの壁にガリガリと削りつける。
「あだだだだっ!? 痛い、痛いって!!」
「ウハハハハ! ちょっとすっきりしたぞ」
子供の嫌がらせのような事をして憂さ晴らしをしたランスは改めて
カオスを自分の方に向け直す。
「おい、馬鹿剣。
何で、貴様もここに居る?」
ランスが目線を向けるのに対して、
逆にカオスは視線を背ける。
「……怒んない?」
カオスはまるで思春期の乙女のような感じで、チラッとだけ視線をランスに向ける。
「怒る。 ……が、答えによっては多少は考えてやっても良い」
その反応に若干のイラつきを覚えて、ムスッとした表情でランスは返す。
「えぇ~、絶対に怒るんじゃん……だから、痛い、痛いって!!」
一向に話を切り出そうとしないカオスをランスは鼻歌交じりで道路にガンガンと叩きつけ始める。
「分かった、分かったから! もう、相変わらず心の友はせっかちじゃのう……
実はな儂も本当は心の友とは別な奴に廻される予定だったんじゃが、
儂が『心の友じゃなきゃ、イヤン。 儂、やる気出ない』って
儂の方からお願いして心の友に廻してもらったんじゃよ?」
最後の方は若干照れるようにしていったカオスをランスは思いっきり道路に叩きつけた。
「ウガ~!! 何をしてくれとるのだ、お前は!
その所為で俺様にくる筈だった物が1個減ってしまったではないか!!」
ゲシゲシと地面に転がるカオスを踏みつけながら怒鳴り散らす。
「……ウフフフ、儂と心の友の繋がりは簡単には切れませんよ?
あ、痛みもなんか段々良い感じになってきたかも……あふん」
日も昇り始めた中を二人(?)の喧騒が止める者も無く続いていたのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
暗い地下室の中、湿った空気と黴臭い臭いを放つ部屋の中で終わりの無い悪夢を見る。
いや、正確には地下室の中に篭っている匂いは黴臭さだけではない。
その匂いは……
「……っ!」
夢?
夢を見ていたの?
ここは、何処?
“あそこ”じゃないのは確かみたいだけど。
センリでもましてやミドリガオカでもない。
「……クロモン? 私、何でこんな所に?」
すぐに思い出した。
そうだ、私あの変なハニワに連れてこられたんだ。
それで、あのハニワは私達に殺しあえって言ったんだっけ。
……今更、誰を殺せっていうのよ。
私は、私はもう終わってしまった。
捕まって、意地はって、それで見捨てられた。
そして、
そして、“あそこ”で私は!!
「~~チ~~~ぅ~~~~」
離れた場所で誰かの歌声が聞こえる。
如何しよう?
行ってみるべきか、行かないべきか?
でも……
「どっちでも……いいか」
そう、もうどうなったっていい。
行ってみて、殺されるのなら……
そっちの方が良いや。
その歌声に釣られるように足はそちらへと動いていく。
近づくにつれて分かった事だけど……
「あはんは~ん~儂は魔剣なのにこの扱い~
捨てられて~投げられて~また捨てられて~
儂の心のチ×チ×もしょげちゃいそ~」
下品過ぎでしょ、この歌。
一体、どんな馬鹿がこんな歌、歌ってるのよ?
一瞬、『彼』の顔が脳裏に浮かぶ。
あぁ、『彼』ならこんな歌でも歌うんだろうな。
「誰? 誰か、そこに居るの?」
歌が聞こえる路地を覗き見る。
歌声はぴたりと止まり、人影も見当たらない。
そこに有るのは道路に放置されている一振りの奇妙な形の剣だけ。
「どういう事? そんなにすぐに隠れられるとは思えないけど?」
仕方がなく、取り敢えずは罠かもしれないけれど、
放置されていた剣へと近寄ってみる。
黒い、柄の部分がどこか人の目の様にも見えるけれど
それはやはり只の剣だ。
ドスとか日本刀ならよく見てきたが、
このような形の物は初めて見る。
興味本位で持ち上げてみようとするが、
「……っ! 重っ…何て重さなの」
見た目とは想像もつかない様な重量でとても持ち上げる事なんて出来ない。
そうしているとこの剣がなんだか不気味に感じられてきてしまう。
歌声の主も見つからないし、
ここを離れてしまったほうが良いだろうか?
そう考え始めていた時に
「ふんふんふ~ん、トイレだけは中々マシではないか。
まぁ、二重ロールじゃなかったのは大目に見てやるか…ん?」
剣の近くにあった洋菓子店から緑色の甲冑を着た
茶髪の青年が何の危機感も無く出てきた。
「ん…うぅん? こ、これは!」
こちらに気づいた青年はジロジロとこっちを見た後、
急にこちらへと突進してきた。
「こら~! カオス~、貴様なにをしとるかぁ~!!」
「えっ? カオス? 何……ひっ!?」
意味不明なことを言いながらこちらへと向かってくる青年とは
別な方向から不意に突然お尻を撫でられて声が上がる。
意味が分からずに足元に目を向けてみて、自分の目を疑った。
地面に転がっている剣から奇妙な煙の様な物が伸びてきて
私のお尻を撫でていたのだ。
「うぅ~ん、マイルドぉ♪ やっぱり可愛い子ちゃんのお尻は良いのぅ~♪
うひょひょひょ~!!」
先程の下品な歌声と同じ声がその剣から聞こえてくる。
そして、その剣から発せられる煙の様な物がより一層私のお尻を撫でてくる。
「…っうぁ…んぅ…止め…て…あっ…」
何が起こっているのか全く理解できず、
抗いきれずに流されるようにして快楽を与えられてしまう。
いや、違う。
私は“抗う事なんて出来ないんだ”。
「こんの糞剣がぁ~!! あっちにいっとれ!!」
私の傍まで来た青年はあれほど重かった剣をいとも容易く持ち上げると
向こうへと放り投げてしまった。
「今日の儂って、こんなん多くな~い?」
「……悪は去った。 大丈夫か、可愛い姉ちゃん?」
本人としては決め顔のつもりでこちらに
手を差し伸べる青年の手を私は振り払う。
「……触らないで」
先程ので、ふらふらとする足を悟られない様に精一杯の強がりを
浮かべて青年から離れようとする私を青年の手が引き止める。
「まぁ待て綺麗な姉ちゃん、あの馬鹿剣の所為でフラフラではないか。
ここはこの俺様が面倒を見てやるから……」
「触らないでって、言ってるでしょ!!」
青年の手を振り払うのと同時に懐に隠していた鞭で青年の肩を打ち据える。
「あだだだ! いきなり何をするんだっ!
そっちがそう出るなら俺様も容赦せんぞ!」
こちらへと突進してくる青年に対して、牽制の為に鞭を振るう。
何発かは確かに命中しているが青年は顔を庇っている上、
着込んでいる甲冑の所為でその突進力を防ぐには至らない。
「……ぅあ!」
何度目かの鞭を振り切る前に青年にタックルされて、押し倒されてしまった。
「……ぜぇ~ぜぇ~、つ、捕まえたぞ可愛い姉ちゃん。
いきなり攻撃してくるとは酷いではないか、こうなったらお仕置きするしかないな!」
そういって青年は上着を強引に掴むと無理やりに脱がせにかかってくる。
悔しさも惨めさも確かにあるけれど、でももう如何だって良いんだ。
「…待って。 私が悪かったは……謝罪のつもりじゃないけど、
あなたがそれを望むならもう抵抗はしないから、せめて自分で準備させて…」
そう、もう私の身体は元に戻る事は出来ない。
あの女のこちらを嘲笑うかのような微笑がよぎる。
あの地下室で受けた日々がこの身体にはもうどうしようもない位にこびりついている。
青年になんだか『彼』の、悪司の面影を感じて、
私は青年の手を取って近くの無人の民家へと入っていった。
_,、=:ニ;‐、、--――‐y、,_ ,,r;;;;''''=―--、、,_
/´ ヽ,ヽ,.゙'l,.゙Y;--',r'゙'ヾ;'V.j /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,
./_ .,,_j ゙l l,. Y/゙'ヾ、;、ノ,r;'| /jフ,r-、ヽ、 _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,
j.ヾ!友情出演| .| .|,_ ./,.〈. 〉| ./ .(゙ _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|
.|il, __ j .j゙ .l ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
.|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ .,Y';V
| l,.゙ヽ--'゙ ,ノ / l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l / li,;)
l,. ゙'i, / ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_ ゙\!.レ゙ .| Y゙
゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙ \ ゙Y: .l /
| `ラ´゙'''´ ''"'´ .| |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、 ゙'i, |. ' /
゙'i, .j |./ ∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./ <キング・クリムゾン!
゙i,. r、,,,.、,_ / ノメ、 .j |ヾヽ,゙'ー---‐'''''ヾ-、,‐' 描写はすっ飛んだ!
.゙i,ヾ'-'ニワ. / ./ノ .V j゙ |'i,. ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
/:::l,〈` //‐'´ ./.ヽ/ .j.ノ .:ヾ、;:) ゙'i `ヽ、
/::::::::|ヾ‐;<;/__,、r'´ ./ .)='゙ ..:: ,ソ .(:: _,,r‐''゙⌒`゙ヽ、,
/ l;::::::::::Y゙人゙l;:. .,/,r'ニ゙ _,、r''´ ..:: ゙ヾ、 :: ヽ,
l /,r:| j‐゙''l; ゙ニー‐'゙ (`l.(_,r‐'''゙´__,, ....::::: .`ヽ、,....:::::.. ゙l,
.!. .l゙l゙レ'>‐゙ | ト;゙i,l、ノ,r;;'ニ゙/´゙Y .,r'゙ ̄ .....::::::::::::::::::::::::.゙ヽ、::: l,
| 'ー;l.'i,.l゙ ,j 'シ'‐-ヘ;'V゙./ ゙l, ヽ, ......::: ::::..ヽ, ゙l
.|._,rラl,.| / ,i l, .ノ , ゙i, .゙ィ,.レ' :.゙l, .|
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レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙ ゙l,.゙'V / ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_ : : :: :::::l
..゙T´ .| | ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l, `i , l, 〉,,.〈/ .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、 ..:: .:/
布団の中から出て、衣服を着直す。
その横では散々私に好き放題した青年が裸のまますっきりした表情を浮かべている。
その青年が不意に神妙な顔つきでこちらへと顔を向けた。
「しかし、驚いたなぁ~。 まさか初めてだったとは…
それなのにあの感じっぷりとかテクニックは一体どういう事なんだ?」
青年の言葉が胸に突き刺さり、
堪えてきたものが溢れ出してきた。
「う…うぅ…うわぁぁぁぁ!!」
涙が止まらない。
もう如何にでもなれとは頭の中では言っていても
悔しさがどんどんと溢れてくる。
やっぱり嫌だった。
振り向いてほしかった。
でも、それは叶わなかった。
そして、悪司の言葉が私を砕いた。
あの日、ミドリガオカで悪司達に負けて捕虜になった私は
悪司の誘いを断り続けた。
業を煮やした彼が選んだ選択は私を『売り』に出す事。
どこかできっと最後は分かってくれると思っていた、
だから、彼のその選択で私は一度目の絶望を味わった。
二度目の絶望はすぐにやってきた。
あの女、小原小春が目の前に現れた事で。
彼女は私が処女だったと知ると嗜虐的な笑みを浮かべて、
私の身体を『開発』していった。
ありとあらゆる技術を、
異性への媚び方を、
どんな事にでも対応しうる肉体へと私の肉体を変えていったのだ。
処女のままで。
それでも、心までは曲げないつもりだった。
それがせめてもの抵抗のつもりだった。
だけど、私は。
最後には彼女に“哀願”したのだ、
『お願いします』と。
その時に私の全ては終わってしまった。
それまでに磨き上げてきたものも、
積み上げてきた思いも、
惨めに差し出してしまったのだ。
だから、今いる私は抜け殻。
生きているだけの人形。
一生、誰かに媚び続けるだけの人生。
並びたかった背中にはもう届かない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
隣で泣き続ける女性にランスは困惑する。
(な、何だ、なぜ泣かれているんだ俺は?
ちょっと、やりすぎてしまったか?
でも、全然痛がってなかったし、むしろ凄い感じ方だったんだが?
う~む、なんだか最初から捨鉢っぽかったし、
面倒な事になってきてしまったぞ…)
意味が分からず半ばやけくそ気味にランスは女性を後ろから抱きしめた。
「よく分からんが泣くな。
辛いようなら俺様が泣き止むまで面倒見てやる」
(それにこんな美人でテクも凄い姉ちゃんをモノにするチャンスだしな)
そんな、ランスの心の内を知ってか知らずか泣き続けていた女性から笑いが零れる。
「あなた、それ口説いてるつもり? ぷっ…あはははは」
瞳を拭いながら女性はランスと出会って初めての笑みを見せる。
「ぬぅ…俺様としては大真面目だったんだが…それに君は俺に抱かれた。
だから君は俺の女だ、俺は俺の女は大事にする主義なのだ!」
ランスの言葉に女性は固まる。
「似てるのかもしれないな…その自分勝手な所とか。
じゃあ聞くけど、あなた私の名前分かってるの?」
女性の質問にランスは首を捻る。
「あれ? そういえば君は…え~っと」
「知ってる訳無いわ、言ってないもの。
元子……加賀元子よ」
そういって、元子はランスを見据える。
その目には覇気はやはり感じられない。
だが、出会った時よりは微かに生気が感じられる。
(何だか、昔のウルザちゃんを見てるみたいだなぁ…
そうすると俺様にメロメロにさせて
更正させてやるしかないだろうな、ウン。
……グフフフフフ)
鼻の下を伸ばしつつ、ランスは甲冑を着始める。
その横では泣き止んだがぼんやりとした様子の元子がいる。
「そういえば俺はランスだ、元子ちゃん。
それと、あの馬鹿剣が…ん?
そういえばあいつ何処に行った?」
一方、その頃。
「あはんは~ん~儂は魔剣なのに~
忘れられてるの~心のチ×チ×ももげちゃいそ~
……いや、流石に酷くね、心の友よ?」
道路に放置されたままのカオスの心の歌が続いていた。
【クロモン/一日目・朝】
【ランス@Ranceシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:魔剣カオス(放置中)
[道具]:支給品一式、ひょうたん@大悪司
[思考]:1.可愛い女の子は俺様のもの、男は死ね
2.元子ちゃんを俺様にメロメロにする
3.そういや、何するんだっけ?
【加賀元子@大悪司】
[状態]:健康(開発済み)
[装備]:鞭
[道具]:支給品一式、未確認支給品×2
[思考]:1.もう如何でも良い
【ひょうたん@大悪司】
運の基礎値が3上がる。
運は見えないので開けても無駄ですわ。
*我が栄光
ここはクロモン。
その商店街の一角、団子屋の店内で緑色の甲冑の剣士が商品である団子を
勝手につまみ上げては喰い散らかしていた。
「うむ、美味い。 80点という所か。
…だが、信長の団子には若干劣るなぁ~。
シィル! すぐにお茶を…」
いつもの癖で自分に付き従う少女を呼ぼうとして、
その姿が今は隣にはないことを思い出し、
剣士、ランスは黙り込む。
(…ムムムッ、そういえばあの馬鹿はおらんかったではないか。
クソッ、奴隷の分際で俺様と一緒に居ないとはどういう事だ!)
持っていた串を叩きつける様にして投げ捨てると、
ぷんすかと腹を立てながら店内を後にする。
改めて辺りを見回し、ランスは自分が置かれている状況を確認する。
見たこともない民家や商店といった建物。
見慣れぬよく分からない機械。
そういったものが目に入る度にランスの中のイラつきが貯まっていく。
「ウガァー!! 第一、ここは一体何処なんじゃ!
何で、俺様がこんな面倒な事をしなくちゃならん!
あのハニー、絶対に割ってやるからなッ!」
苛立たしげに地団駄を踏みながらランスは自分をこの状況に置いたハニーを思い出す。
だが、
「…だが、かなり可愛い子も沢山いたな。
うむ、こうなったら超絶美形剣士である俺様が
女の子達を保護してやらんといけないな。
そして、保護したお礼に一発やらせてもらおう!」
鼻の下を伸ばし、グフフと下品な笑い浮かべながら、
当初の目的をすっかり忘れてしまう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピンポーン♪ 只今のランスの優先順位
女の子>>>>>>>>>>>>(煩悩の壁)>>>>>>>>>>>>ハニー
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最初の機嫌の悪さとはうって変わって鼻歌交じりでランスは歩き出す。
そこでふと自分が持っていたデイバックの事を思い出した。
「おぉ、そうだった。
いつもはシィルの奴に持たせているから、
中身を見るのをすっかり忘れていた。
……どれどれ俺様に相応しい超便利アイテムなんだろうな?」
デイバックを降ろし、がさごそと中身を確認する。
バックの口を開け、乱暴に手を突っ込む。
「ムムッ!? この感触は剣か?
ガハハハハ! いでよ、超便利武器~!」
豪快に笑いながら手に取ったものを引っ張り出す。
そこにあった物は…
「ヘロ~、心の友よ。
チートアイテム代表の儂じゃよ?」
聞きなれた声で一気にランスの表情が曇る。
「いらん」
そのままポイッと後ろに魔剣カオスを投げ捨てると、
今のを見なかった様にするかのごとく、
再びデイバックの中をランスは漁り出す。
「ちょ、ちょっと待って、心の友よ!
儂、超便利よ? 魔王とかも殺せるぞ!」
本当に投げ捨てられて焦った様子のカオスが背後で必死に存在をアピールする。
「うるさい、黙れ」
それをランスはにべも無く一蹴する。
「……ガ~ン! 儂、ショック!」
本気で凹んだカオスがいじけているとランスはデイバックを漁るのを止めて、
カオスの方に向き直った。
「ウガァ~! 武器が無いではないか!
これはどういう事じゃ!!」
「いや、儂々。 儂がお前さんの武器だから」
観念したのか、ランスはズカズカとカオスに近寄り拾い上げると、
その刀身を近くの壁にガリガリと削りつける。
「あだだだだっ!? 痛い、痛いって!!」
「ウハハハハ! ちょっとすっきりしたぞ」
子供の嫌がらせのような事をして憂さ晴らしをしたランスは改めて
カオスを自分の方に向け直す。
「おい、馬鹿剣。
何で、貴様もここに居る?」
ランスが目線を向けるのに対して、
逆にカオスは視線を背ける。
「……怒んない?」
カオスはまるで思春期の乙女のような感じで、チラッとだけ視線をランスに向ける。
「怒る。 ……が、答えによっては多少は考えてやっても良い」
その反応に若干のイラつきを覚えて、ムスッとした表情でランスは返す。
「えぇ~、絶対に怒るんじゃん……だから、痛い、痛いって!!」
一向に話を切り出そうとしないカオスをランスは鼻歌交じりで道路にガンガンと叩きつけ始める。
「分かった、分かったから! もう、相変わらず心の友はせっかちじゃのう……
実はな儂も本当は心の友とは別な奴に廻される予定だったんじゃが、
儂が『心の友じゃなきゃ、イヤン。 儂、やる気出ない』って
儂の方からお願いして心の友に廻してもらったんじゃよ?」
最後の方は若干照れるようにしていったカオスをランスは思いっきり道路に叩きつけた。
「ウガ~!! 何をしてくれとるのだ、お前は!
その所為で俺様にくる筈だった物が1個減ってしまったではないか!!」
ゲシゲシと地面に転がるカオスを踏みつけながら怒鳴り散らす。
「……ウフフフ、儂と心の友の繋がりは簡単には切れませんよ?
あ、痛みもなんか段々良い感じになってきたかも……あふん」
日も昇り始めた中を二人(?)の喧騒が止める者も無く続いていたのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
暗い地下室の中、湿った空気と黴臭い臭いを放つ部屋の中で終わりの無い悪夢を見る。
いや、正確には地下室の中に篭っている匂いは黴臭さだけではない。
その匂いは……
「……っ!」
夢?
夢を見ていたの?
ここは、何処?
“あそこ”じゃないのは確かみたいだけど。
センリでもましてやミドリガオカでもない。
「……クロモン? 私、何でこんな所に?」
すぐに思い出した。
そうだ、私あの変なハニワに連れてこられたんだ。
それで、あのハニワは私達に殺しあえって言ったんだっけ。
……今更、誰を殺せっていうのよ。
私は、私はもう終わってしまった。
捕まって、意地はって、それで見捨てられた。
そして、
そして、“あそこ”で私は!!
「~~チ~~~ぅ~~~~」
離れた場所で誰かの歌声が聞こえる。
如何しよう?
行ってみるべきか、行かないべきか?
でも……
「どっちでも……いいか」
そう、もうどうなったっていい。
行ってみて、殺されるのなら……
そっちの方が良いや。
その歌声に釣られるように足はそちらへと動いていく。
近づくにつれて分かった事だけど……
「あはんは~ん~儂は魔剣なのにこの扱い~
捨てられて~投げられて~また捨てられて~
儂の心のチ×チ×もしょげちゃいそ~」
下品過ぎでしょ、この歌。
一体、どんな馬鹿がこんな歌、歌ってるのよ?
一瞬、『彼』の顔が脳裏に浮かぶ。
あぁ、『彼』ならこんな歌でも歌うんだろうな。
「誰? 誰か、そこに居るの?」
歌が聞こえる路地を覗き見る。
歌声はぴたりと止まり、人影も見当たらない。
そこに有るのは道路に放置されている一振りの奇妙な形の剣だけ。
「どういう事? そんなにすぐに隠れられるとは思えないけど?」
仕方がなく、取り敢えずは罠かもしれないけれど、
放置されていた剣へと近寄ってみる。
黒い、柄の部分がどこか人の目の様にも見えるけれど
それはやはり只の剣だ。
ドスとか日本刀ならよく見てきたが、
このような形の物は初めて見る。
興味本位で持ち上げてみようとするが、
「……っ! 重っ…何て重さなの」
見た目とは想像もつかない様な重量でとても持ち上げる事なんて出来ない。
そうしているとこの剣がなんだか不気味に感じられてきてしまう。
歌声の主も見つからないし、
ここを離れてしまったほうが良いだろうか?
そう考え始めていた時に
「ふんふんふ~ん、トイレだけは中々マシではないか。
まぁ、二重ロールじゃなかったのは大目に見てやるか…ん?」
剣の近くにあった洋菓子店から緑色の甲冑を着た
茶髪の青年が何の危機感も無く出てきた。
「ん…うぅん? こ、これは!」
こちらに気づいた青年はジロジロとこっちを見た後、
急にこちらへと突進してきた。
「こら~! カオス~、貴様なにをしとるかぁ~!!」
「えっ? カオス? 何……ひっ!?」
意味不明なことを言いながらこちらへと向かってくる青年とは
別な方向から不意に突然お尻を撫でられて声が上がる。
意味が分からずに足元に目を向けてみて、自分の目を疑った。
地面に転がっている剣から奇妙な煙の様な物が伸びてきて
私のお尻を撫でていたのだ。
「うぅ~ん、マイルドぉ♪ やっぱり可愛い子ちゃんのお尻は良いのぅ~♪
うひょひょひょ~!!」
先程の下品な歌声と同じ声がその剣から聞こえてくる。
そして、その剣から発せられる煙の様な物がより一層私のお尻を撫でてくる。
「…っうぁ…んぅ…止め…て…あっ…」
何が起こっているのか全く理解できず、
抗いきれずに流されるようにして快楽を与えられてしまう。
いや、違う。
私は“抗う事なんて出来ないんだ”。
「こんの糞剣がぁ~!! あっちにいっとれ!!」
私の傍まで来た青年はあれほど重かった剣をいとも容易く持ち上げると
向こうへと放り投げてしまった。
「今日の儂って、こんなん多くな~い?」
「……悪は去った。 大丈夫か、可愛い姉ちゃん?」
本人としては決め顔のつもりでこちらに
手を差し伸べる青年の手を私は振り払う。
「……触らないで」
先程ので、ふらふらとする足を悟られない様に精一杯の強がりを
浮かべて青年から離れようとする私を青年の手が引き止める。
「まぁ待て綺麗な姉ちゃん、あの馬鹿剣の所為でフラフラではないか。
ここはこの俺様が面倒を見てやるから……」
「触らないでって、言ってるでしょ!!」
青年の手を振り払うのと同時に懐に隠していた鞭で青年の肩を打ち据える。
「あだだだ! いきなり何をするんだっ!
そっちがそう出るなら俺様も容赦せんぞ!」
こちらへと突進してくる青年に対して、牽制の為に鞭を振るう。
何発かは確かに命中しているが青年は顔を庇っている上、
着込んでいる甲冑の所為でその突進力を防ぐには至らない。
「……ぅあ!」
何度目かの鞭を振り切る前に青年にタックルされて、押し倒されてしまった。
「……ぜぇ~ぜぇ~、つ、捕まえたぞ可愛い姉ちゃん。
いきなり攻撃してくるとは酷いではないか、こうなったらお仕置きするしかないな!」
そういって青年は上着を強引に掴むと無理やりに脱がせにかかってくる。
悔しさも惨めさも確かにあるけれど、でももう如何だって良いんだ。
「…待って。 私が悪かったは……謝罪のつもりじゃないけど、
あなたがそれを望むならもう抵抗はしないから、せめて自分で準備させて…」
そう、もう私の身体は元に戻る事は出来ない。
あの女のこちらを嘲笑うかのような微笑がよぎる。
あの地下室で受けた日々がこの身体にはもうどうしようもない位にこびりついている。
青年になんだか『彼』の、悪司の面影を感じて、
私は青年の手を取って近くの無人の民家へと入っていった。
&ref(39976.png)<キングクリムゾン! 描写はすっ飛んだ!
布団の中から出て、衣服を着直す。
その横では散々私に好き放題した青年が裸のまますっきりした表情を浮かべている。
その青年が不意に神妙な顔つきでこちらへと顔を向けた。
「しかし、驚いたなぁ~。 まさか初めてだったとは…
それなのにあの感じっぷりとかテクニックは一体どういう事なんだ?」
青年の言葉が胸に突き刺さり、
堪えてきたものが溢れ出してきた。
「う…うぅ…うわぁぁぁぁ!!」
涙が止まらない。
もう如何にでもなれとは頭の中では言っていても
悔しさがどんどんと溢れてくる。
やっぱり嫌だった。
振り向いてほしかった。
でも、それは叶わなかった。
そして、悪司の言葉が私を砕いた。
あの日、ミドリガオカで悪司達に負けて捕虜になった私は
悪司の誘いを断り続けた。
業を煮やした彼が選んだ選択は私を『売り』に出す事。
どこかできっと最後は分かってくれると思っていた、
だから、彼のその選択で私は一度目の絶望を味わった。
二度目の絶望はすぐにやってきた。
あの女、小原小春が目の前に現れた事で。
彼女は私が処女だったと知ると嗜虐的な笑みを浮かべて、
私の身体を『開発』していった。
ありとあらゆる技術を、
異性への媚び方を、
どんな事にでも対応しうる肉体へと私の肉体を変えていったのだ。
処女のままで。
それでも、心までは曲げないつもりだった。
それがせめてもの抵抗のつもりだった。
だけど、私は。
最後には彼女に“哀願”したのだ、
『お願いします』と。
その時に私の全ては終わってしまった。
それまでに磨き上げてきたものも、
積み上げてきた思いも、
惨めに差し出してしまったのだ。
だから、今いる私は抜け殻。
生きているだけの人形。
一生、誰かに媚び続けるだけの人生。
並びたかった背中にはもう届かない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
隣で泣き続ける女性にランスは困惑する。
(な、何だ、なぜ泣かれているんだ俺は?
ちょっと、やりすぎてしまったか?
でも、全然痛がってなかったし、むしろ凄い感じ方だったんだが?
う~む、なんだか最初から捨鉢っぽかったし、
面倒な事になってきてしまったぞ…)
意味が分からず半ばやけくそ気味にランスは女性を後ろから抱きしめた。
「よく分からんが泣くな。
辛いようなら俺様が泣き止むまで面倒見てやる」
(それにこんな美人でテクも凄い姉ちゃんをモノにするチャンスだしな)
そんな、ランスの心の内を知ってか知らずか泣き続けていた女性から笑いが零れる。
「あなた、それ口説いてるつもり? ぷっ…あはははは」
瞳を拭いながら女性はランスと出会って初めての笑みを見せる。
「ぬぅ…俺様としては大真面目だったんだが…それに君は俺に抱かれた。
だから君は俺の女だ、俺は俺の女は大事にする主義なのだ!」
ランスの言葉に女性は固まる。
「似てるのかもしれないな…その自分勝手な所とか。
じゃあ聞くけど、あなた私の名前分かってるの?」
女性の質問にランスは首を捻る。
「あれ? そういえば君は…え~っと」
「知ってる訳無いわ、言ってないもの。
元子……加賀元子よ」
そういって、元子はランスを見据える。
その目には覇気はやはり感じられない。
だが、出会った時よりは微かに生気が感じられる。
(何だか、昔のウルザちゃんを見てるみたいだなぁ…
そうすると俺様にメロメロにさせて
更正させてやるしかないだろうな、ウン。
……グフフフフフ)
鼻の下を伸ばしつつ、ランスは甲冑を着始める。
その横では泣き止んだがぼんやりとした様子の元子がいる。
「そういえば俺はランスだ、元子ちゃん。
それと、あの馬鹿剣が…ん?
そういえばあいつ何処に行った?」
一方、その頃。
「あはんは~ん~儂は魔剣なのに~
忘れられてるの~心のチ×チ×ももげちゃいそ~
……いや、流石に酷くね、心の友よ?」
道路に放置されたままのカオスの心の歌が続いていた。
【クロモン/一日目・朝】
【ランス@Ranceシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:魔剣カオス(放置中)
[道具]:支給品一式、ひょうたん@大悪司
[思考]:1.可愛い女の子は俺様のもの、男は死ね
2.元子ちゃんを俺様にメロメロにする
3.そういや、何するんだっけ?
【加賀元子@大悪司】
[状態]:健康(開発済み)
[装備]:鞭
[道具]:支給品一式、未確認支給品×2
[思考]:1.もう如何でも良い
【ひょうたん@大悪司】
運の基礎値が3上がる。
運は見えないので開けても無駄ですわ。
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