BIGBANG BEAT
戦士の血と汗と涙が染込んだ地で対峙する二人の男女。
辺りは静寂に包まれ、お互いが放つ気によって空気はピリピリと振動している。
男女の間に立ち、場を取り仕切るように一人の男が掲げていた手を振り下ろす。
それを合図として、勝負は幕を開けた。
辺りは静寂に包まれ、お互いが放つ気によって空気はピリピリと振動している。
男女の間に立ち、場を取り仕切るように一人の男が掲げていた手を振り下ろす。
それを合図として、勝負は幕を開けた。
時は遡り、少し前。
「……ったく、何でよりにもよって馬鹿兄貴といきなり一緒なんだよ」
純白の学生服に身を包み、
その容姿と他を寄せ付けぬ強さゆえに付いた
渾名が【ホワイトファング】。
斬真狼牙は隣にいた人物に悪態をついていた。
その容姿と他を寄せ付けぬ強さゆえに付いた
渾名が【ホワイトファング】。
斬真狼牙は隣にいた人物に悪態をついていた。
「ハッハッハッハ!!
何を言う、お前のような単細胞を一人にしていたら
この場に居る婦女子の方の貞操と
無抵抗な人間の命が危ういではないか。
馬鹿な弟よっ!!」
何を言う、お前のような単細胞を一人にしていたら
この場に居る婦女子の方の貞操と
無抵抗な人間の命が危ういではないか。
馬鹿な弟よっ!!」
俺?
俺はこの馬鹿な弟の素晴らしい兄にして
みんなの心のオアシス、斬真豪だ。
読者諸君は気軽に豪ちゃんと呼んでくれて構わない。
ちなみにマ○ンガーの作者とは関係がないから
注意してほしい。
俺はこの馬鹿な弟の素晴らしい兄にして
みんなの心のオアシス、斬真豪だ。
読者諸君は気軽に豪ちゃんと呼んでくれて構わない。
ちなみにマ○ンガーの作者とは関係がないから
注意してほしい。
「……何処見て、何言ってんだよ…」
兄の奇行に呆れて頭を掻きながら、
それでも信頼は置いているのか付かず離れずの距離で
お互いに悪態を言い合いながら狼牙は豪と
行動を共にしていた。
それでも信頼は置いているのか付かず離れずの距離で
お互いに悪態を言い合いながら狼牙は豪と
行動を共にしていた。
二人が今、居る場はコウシエン。
コロシアムを中心とした歓楽街が並ぶ土地である。
転送によって飛ばされてきた二人は
周囲を探索し、自分達がよく知っている『王阪』という
土地に非常に良く似てはいるが何処か古めかしく
まるで時代を逆行したかのような気分になる
この土地に困惑を覚えていた。
コロシアムを中心とした歓楽街が並ぶ土地である。
転送によって飛ばされてきた二人は
周囲を探索し、自分達がよく知っている『王阪』という
土地に非常に良く似てはいるが何処か古めかしく
まるで時代を逆行したかのような気分になる
この土地に困惑を覚えていた。
「…つまり、こいつは誰かのB能力による錯覚じゃなく、
俺達が実際に体感している事だって兄貴は言うのかよ?」
俺達が実際に体感している事だって兄貴は言うのかよ?」
探索の過程に於いて豪が狼牙に告げた二つの可能性。
自分達が今、居るこの場所は、
自分達が今、居るこの場所は、
1.時代を何らかの方法で逆行してしまった
2.似て非なる全くもって別の世界
どちらにしても、信じがたい事ではあるのだが。
「…このような事は俺の情報網にも掛かった事は無かった。
流石は本社だな、やる事が豪奢すぎる」
流石は本社だな、やる事が豪奢すぎる」
今更ですが、豪ちゃんの謎の発言はスルーしてください。
「なに言ってるかわかんねーよ、クソ兄貴!
…ったく、しかし如何したもんかな。
委員長達が人質に取られち待ってる以上、
下手に動けね~か…」
…ったく、しかし如何したもんかな。
委員長達が人質に取られち待ってる以上、
下手に動けね~か…」
豪の作戦立案能力に期待していたのに
いきなり当てが外れた形になってしまい、
さすがの狼牙も頭を抱える。
いきなり当てが外れた形になってしまい、
さすがの狼牙も頭を抱える。
「まぁ、落ち着け狼牙よ。
事を急いでも仕方が無いというだろう。
今の我々がすべきなのは現状の理解と協力者の確保だ。
なに、全国統一の時とさほど変わりは無いだろう」
事を急いでも仕方が無いというだろう。
今の我々がすべきなのは現状の理解と協力者の確保だ。
なに、全国統一の時とさほど変わりは無いだろう」
白いマントをたなびかせて、
豪が不敵に笑う。
豪が不敵に笑う。
「…ヘヘッ、簡単に言ってくれるじゃねーか、兄貴も。
だが、確かに兄貴の言うとおりだな、
うだうだ悩んでたって仕方ねぇ。
最後にはあのハニワを割っちまえばいい話か!」
だが、確かに兄貴の言うとおりだな、
うだうだ悩んでたって仕方ねぇ。
最後にはあのハニワを割っちまえばいい話か!」
兄の言葉を受け、気力を取り戻した狼牙が拳を鳴らす。
それを見て、豪もうんうんと頷いている。
それを見て、豪もうんうんと頷いている。
「ところで、残念なお知らせだ狼牙よ」
妙な態度はいつもの事だが、唐突な発言に
狼牙が豪の方へ不審そうに向き直る。
狼牙が豪の方へ不審そうに向き直る。
「どうやら、今の俺は【史上最弱の男】に
逆戻りしてしまったらしい。
全くといっていいほど力が入らん!
という事で、万が一戦闘になった時は
この兄を守りながら戦ってくれ!」
逆戻りしてしまったらしい。
全くといっていいほど力が入らん!
という事で、万が一戦闘になった時は
この兄を守りながら戦ってくれ!」
誇らしげに親指を立てて、爽やかに叫ぶ豪の顔面に
狼牙の拳がめり込み、豪はくるくると空中を回転して吹き飛ぶ。
狼牙の拳がめり込み、豪はくるくると空中を回転して吹き飛ぶ。
「戦ってくれじゃねぇ、クソ兄貴!!
…だが、この弱さは嘘じゃねぇって事かよ」
…だが、この弱さは嘘じゃねぇって事かよ」
唖然としている狼牙の向こうで鼻血を垂らしながら
豪がふらふらと立ち上がり。
豪がふらふらと立ち上がり。
「グフゥ…こ、この感触は久々だな。
多分、『豪ちゃんが真・豪ちゃんのままだったら
チートすぎて周りが可哀想だから制限しなきゃね』
という本社の心配りが原因だろうな、ハッハッハ!」
多分、『豪ちゃんが真・豪ちゃんのままだったら
チートすぎて周りが可哀想だから制限しなきゃね』
という本社の心配りが原因だろうな、ハッハッハ!」
笑う豪の顔に(以下略。
鼻に近場の民家から勝手に持ってきたティッシュを
詰めた豪と狼牙は他に当ても無く、
取り敢えず、この地区で一番目立つ建物である。
コロシアムの前に来ていた。
詰めた豪と狼牙は他に当ても無く、
取り敢えず、この地区で一番目立つ建物である。
コロシアムの前に来ていた。
「まぁ、とりあえずは来てみたが。
そう都合よく誰かいるかね?」
そう都合よく誰かいるかね?」
狼牙は少し不審げに豪に尋ねる。
「ふむ、我々の様に見知らぬ土地に
急に連れられてきた時には
取り敢えずは目立つ建物を目指すものだ。
つべこべ言わずに入ってみろ、馬鹿弟」
急に連れられてきた時には
取り敢えずは目立つ建物を目指すものだ。
つべこべ言わずに入ってみろ、馬鹿弟」
不満そうに頭を掻く狼牙と妙に自信たっぷりな豪が
建物の中へと足を踏み入れる。
そこで見たものは…
建物の中へと足を踏み入れる。
そこで見たものは…
「…外から見た時と違ってえらい綺麗だな、ここ」
塵一つ無く整頓された入り口に狼牙は違う意味で驚く。
その傍で受付の机をついと指でなぞった豪が眉間に皺を寄せる。
その傍で受付の机をついと指でなぞった豪が眉間に皺を寄せる。
「いや、違うぞ狼牙。
この具合だと“つい先程誰かがここを片付けた”ようだ」
この具合だと“つい先程誰かがここを片付けた”ようだ」
豪の言葉を察して、狼牙がグローブを改めて握り直す。
「だけど、ここら辺を掃除して周るなんてシオンでもしねーぞ?
そんな酔狂な奴が居んのかよ?」
そんな酔狂な奴が居んのかよ?」
豪の言葉を疑う訳ではないが、事実そうならあまりにも
突拍子もないその行動にどのような理由を
当て嵌めればいいのか分からずに狼牙は疑問を呈する。
突拍子もないその行動にどのような理由を
当て嵌めればいいのか分からずに狼牙は疑問を呈する。
「そんなものは掃除せざるを得ない理由があったか、
もしくは単に掃除をしたくなったかのどちらかだ」
もしくは単に掃除をしたくなったかのどちらかだ」
その疑問をすっぱりと切り捨てつつ、
豪はさっさと奥へと入って行く。
豪はさっさと奥へと入って行く。
「……どんな理由だよ」
疑問は拭えなかったが仕方が無く、
狼牙も豪の後をついて行く。
しばらく進んだ先、
アリーナへと続く道の所で豪は立ち止まり、
物陰に身を隠した。
続いて同じく豪の様に身を潜めた狼牙に
豪が手でサインを送る。
豪が指し示した先に一人の女性がぶつぶつと
小言のような事を言いながらはたきの様な物をかけていた。
狼牙も豪の後をついて行く。
しばらく進んだ先、
アリーナへと続く道の所で豪は立ち止まり、
物陰に身を隠した。
続いて同じく豪の様に身を潜めた狼牙に
豪が手でサインを送る。
豪が指し示した先に一人の女性がぶつぶつと
小言のような事を言いながらはたきの様な物をかけていた。
『本当に居たよ…マジか?』
豪に聞こえる程度の小声で狼牙が本当に居た奇行の主に
驚いているとその女性の動きがピタリと止まる。
驚いているとその女性の動きがピタリと止まる。
「…フム、間者が一人、いや二人か。
我に気づかれずにここまで側に近寄れた事は褒めてやろう」
我に気づかれずにここまで側に近寄れた事は褒めてやろう」
メイド服を着た小柄な女性がその見た目には
そぐわぬ威圧感で身を隠す狼牙と豪を挑発する。
そぐわぬ威圧感で身を隠す狼牙と豪を挑発する。
「ヘヘッ、バレてたって事か」
相手の放つ気にむしろ嬉々とした表情で狼牙が
身を乗り出し、次いで豪も姿を現す。
身を乗り出し、次いで豪も姿を現す。
「まぁ、待ちたまえ。
身を隠すような事は謝罪するが、
我々に敵意は無い」
身を隠すような事は謝罪するが、
我々に敵意は無い」
豪が女性に対して敵意が無い事を示そうとするが、
その言葉を聞いて逆に女性は顔を顰める。
その言葉を聞いて逆に女性は顔を顰める。
「敵意が無いだと? ならば我の方には用は無い。
我が求めるのは血湧き肉踊る闘争。
その様な惰弱な発想には用は無い、さっさと消えろ」
我が求めるのは血湧き肉踊る闘争。
その様な惰弱な発想には用は無い、さっさと消えろ」
捲くし立てる様に女性は豪に告げ、
再び廊下にはたきを掛け始める。
再び廊下にはたきを掛け始める。
「…つまり、あんたは自分より強い奴なら
用があるって事だよな?」
用があるって事だよな?」
拳を鳴らし、狼牙が豪の一歩前に出る。
「貴様は…確かあの時にハニワに逆らっていた小僧か…
成程、貴様になら我が望むものも得られるかもな」
成程、貴様になら我が望むものも得られるかもな」
狼牙に目線を向けた後、主催者に逆らおうとした時の事を
思い出したのか興味深そうに狼牙へと女性は向き直る。
思い出したのか興味深そうに狼牙へと女性は向き直る。
「一つ勝負といこうぜ。
俺が勝ったらあんたは俺の話を聞く、
あんたが勝ったら、俺達の事を好きにして良い。
どうだい?」
俺が勝ったらあんたは俺の話を聞く、
あんたが勝ったら、俺達の事を好きにして良い。
どうだい?」
そう言って狼牙が女性を挑発するようにニヤリと笑う。
「フム、挑まれた闘争を拒むは家名の恥。
乗ったぞ、その勝負!」
乗ったぞ、その勝負!」
懐にしまっていたはたきのような形状をした鎌を取り出し、
女性も愉快そうに笑う。
その二人の様子を見て、
豪はしかめっ面で額を押さえている。
女性も愉快そうに笑う。
その二人の様子を見て、
豪はしかめっ面で額を押さえている。
「まぁ、待て。
この先に丁度いい舞台があるから
そこで始めようではないか」
この先に丁度いい舞台があるから
そこで始めようではないか」
一人から二人に増えたバトルマニアに豪は溜息をついた。
そして、舞台は冒頭に戻る。
豪の合図と共に女性が名乗りを上げる。
「我が名は毛利が長女てる、推して参る!」
駆け出し、狼牙へと幾本もの刃が付いた特殊な形状の鎌を振るう。
広範囲に広がり、点ではなく面として襲い繰るその刃を
狼牙はギリギリの所で見極めて避ける。
闘争を望んでいただけあって、てるの動きには無駄が無く
常人ならば付け入る隙を与えないであろう猛攻を
逆に狼牙は楽しそうにしている。
広範囲に広がり、点ではなく面として襲い繰るその刃を
狼牙はギリギリの所で見極めて避ける。
闘争を望んでいただけあって、てるの動きには無駄が無く
常人ならば付け入る隙を与えないであろう猛攻を
逆に狼牙は楽しそうにしている。
「ヘヘッ、いいなあんた。
俺の仲間に是非欲しくなって来たぜっ!」
俺の仲間に是非欲しくなって来たぜっ!」
面として襲いくる刃を嵌めていた防刃グローブで
その一部を払い、開いた空間に拳を叩き込む。
刃のすれすれを拳が縫う様に割り込み、
てるの顔を掠める。
その一部を払い、開いた空間に拳を叩き込む。
刃のすれすれを拳が縫う様に割り込み、
てるの顔を掠める。
「……ヌゥッ!」
直撃こそしなかったが、その拳の速さと
掠めた頬から伝わる熱気にてるが堪らず距離を取る。
狼牙は追撃せず、余裕の笑みを浮かべている。
掠めた頬から伝わる熱気にてるが堪らず距離を取る。
狼牙は追撃せず、余裕の笑みを浮かべている。
「もう降参かい?」
手招きをして挑発する狼牙に対して、
てるは怒りの表情も見せずにこちらも楽しそうに笑う。
てるは怒りの表情も見せずにこちらも楽しそうに笑う。
「いや、勝負はこれからというものだ。
ククク、これほどの強者がまだ世の中には居る。
これこそが我の望むものよ!」
ククク、これほどの強者がまだ世の中には居る。
これこそが我の望むものよ!」
愉快そうに戦いを繰り広げる二人を溜息交じりで
眺めながら、豪はふと妙な気配に首を傾げる。
眺めながら、豪はふと妙な気配に首を傾げる。
(……見られている? しかし、姿が見えんが…)
勝負に集中している二人に気づいている様子は無い。
確信こそ持てないがその妙な感覚に豪は胸騒ぎを覚えていた。
確信こそ持てないがその妙な感覚に豪は胸騒ぎを覚えていた。
同時刻。
コロシアムを一望できるビルの屋上。
吹寄せる風にその長髪を靡かせながら一人の女性が
そこからコロシアムを見下ろしていた。
見下ろすとはいったものの其処から
コロシアムまでの距離は遥かに遠く、
見えるものも豆粒程度にしか判別できない程である。
それにも関わらず女性は弓を構え、引き絞り始める。
吹寄せる風にその長髪を靡かせながら一人の女性が
そこからコロシアムを見下ろしていた。
見下ろすとはいったものの其処から
コロシアムまでの距離は遥かに遠く、
見えるものも豆粒程度にしか判別できない程である。
それにも関わらず女性は弓を構え、引き絞り始める。
「――疾風点破――」
……………
……………………
……………………………
二人の勝負は続いていた。
いや、続けていたという方が正しい。
勝負の内に互いに実力の程は大体は掴めていた。
故に、決めようと思えば決着は付く筈だったのだが
この時間を楽しむ二人はわざと勝負を長引かせていた。
いや、続けていたという方が正しい。
勝負の内に互いに実力の程は大体は掴めていた。
故に、決めようと思えば決着は付く筈だったのだが
この時間を楽しむ二人はわざと勝負を長引かせていた。
だが、それも終わりに近づいている。
「……そろそろ、決めさせてもらうぜ?」
まるで、名残惜しみ相手に確認するように
狼牙はてるへと告げる。
狼牙はてるへと告げる。
「……そうか、ならば我もこれで決めさせてもらう」
狼牙の言葉を聞き、こちらも名残惜しむかのような
表情を浮かべつつ、てるも言葉を返す。
表情を浮かべつつ、てるも言葉を返す。
空気が停止する。
二人は対峙したまま動きを止める。
先に動いたのは狼牙の方だった。
二人は対峙したまま動きを止める。
先に動いたのは狼牙の方だった。
「行くぜ、ウルフファ――!?」
拳に気を集中し、狼牙はまるで獲物を捉えた狼の如く
高速の跳躍でもって一瞬にしててるとの距離を詰める。
だがその拳がてるに届くよりも先に何かに気を取られ、
狼牙が不意に視線をてるから逸らす。
高速の跳躍でもって一瞬にしててるとの距離を詰める。
だがその拳がてるに届くよりも先に何かに気を取られ、
狼牙が不意に視線をてるから逸らす。
「貰った!」
その一瞬の隙を逃さず、てるの刃が振るわれる。
その刃先が純白の学生服と裂き、
幾本もの筋を狼牙の身体に刻み付ける。
その刃先が純白の学生服と裂き、
幾本もの筋を狼牙の身体に刻み付ける。
「――グッ!!」
元より命の奪い合いではなかった為に
てるに刻まれたその傷は命を
奪うほどではないが決して浅くもない。
勝負は決まった。
てるに刻まれたその傷は命を
奪うほどではないが決して浅くもない。
勝負は決まった。
だが、てるの表情は勝った者の顔ではなかった。
「貴様、勝負の場において余所見とはどういう事だ!
貴様が本気ならば先程ので負けたのは我の方の筈ッ!」
貴様が本気ならば先程ので負けたのは我の方の筈ッ!」
怒りに顔を歪め、てるは狼牙を叱責する。
てるには分かっていたのである。
狼牙の方が自分よりも実力が上と。
だからこそ、最後の時に狼牙が見せた油断は
自分を侮辱するものと感じていた。
それに対して、狼牙は何も答えない。
それを尚更、自分への侮辱と感じて
てるが狼牙へと近寄り、鎌を振り上げる。
てるには分かっていたのである。
狼牙の方が自分よりも実力が上と。
だからこそ、最後の時に狼牙が見せた油断は
自分を侮辱するものと感じていた。
それに対して、狼牙は何も答えない。
それを尚更、自分への侮辱と感じて
てるが狼牙へと近寄り、鎌を振り上げる。
「待つんだ!
全く、この馬鹿は言い訳の一つでも
すればいいものを…
狼牙、隠しているものを見せろ!」
全く、この馬鹿は言い訳の一つでも
すればいいものを…
狼牙、隠しているものを見せろ!」
てるの手を掴み、豪が制止する。
豪に言われた狼牙は渋々といった様子で
背後に隠していた物を晒す。
豪に言われた狼牙は渋々といった様子で
背後に隠していた物を晒す。
それは一本の矢だった。
「……悪ぃな、あの時、
これがあんた目掛けて
飛んできたのが見えちまった。
あんたは気づいてなかったみたいだし、
つい……な」
これがあんた目掛けて
飛んできたのが見えちまった。
あんたは気づいてなかったみたいだし、
つい……な」
そういって照れ臭そうに苦笑しながら狼牙は
自身の傷口を押さえている。
その言葉を聞いて、てるは振り上げていた鎌を
ゆっくりと降ろし、溜息をついた。
自身の傷口を押さえている。
その言葉を聞いて、てるは振り上げていた鎌を
ゆっくりと降ろし、溜息をついた。
「愚か者が…戦の場において相手を気遣うとは…」
二人から離れると降ろしていたデイバックの中から
何かを取り出して狼牙へと放り投げる。
何かを取り出して狼牙へと放り投げる。
「使うがよい、応急処置の品らしい。
……水が差したとはいえ、
今の勝負の負けは我だ。
異論は聞かぬぞ」
……水が差したとはいえ、
今の勝負の負けは我だ。
異論は聞かぬぞ」
負けを認めた者の言葉とは思えぬほど、
威圧的にてるが狼牙へと告げる。
威圧的にてるが狼牙へと告げる。
「……あんたがそれでいいなら
俺もぐだぐだ言わねぇよ。
ヘヘッ、よろしく頼むぜ、
…えっと、てるさんでいいのか?」
俺もぐだぐだ言わねぇよ。
ヘヘッ、よろしく頼むぜ、
…えっと、てるさんでいいのか?」
受け取ったアイテムの解説を読みつつ、
狼牙もてるへと笑みを返す。
狼牙もてるへと笑みを返す。
二人の様子を眺めていた豪は、
だが険しい表情で矢が飛んできた
方角に目を向ける。
だが険しい表情で矢が飛んできた
方角に目を向ける。
「無駄だ。 今頃は既に別な場へと
逃げ始めている頃だろう」
逃げ始めている頃だろう」
豪の考えを察したかの如く、てるが口を開く。
「その様子では相手が誰か知っているようだが?」
相手が誰か確信している様子で話す
てるに豪が質問する。
てるに豪が質問する。
「こちらから視認できぬほどからの
弓による狙撃など我の知っている限り、
一人しかおらん」
弓による狙撃など我の知っている限り、
一人しかおらん」
狼牙から矢を取り上げて
てるはそれをへし折り、
見えぬ誰かを睨みつける。
てるはそれをへし折り、
見えぬ誰かを睨みつける。
「勝負を汚した代償は払って貰うぞ、山本五十六!」
【コウシエン/1日目・朝】
【斬真狼牙@大番長】
[状態]:胸に鎌による掻き傷(処置中)
[装備]:防刃グローブ
[道具]:基本支給品、エイドバンド@ぱすチャ、
お部屋の芳香剤@大悪司、オイウチの牙@戦国ランス
[思考]基本:仲間を集めて、主催者をぶっ飛ばす
1:取り敢えず胸の傷の処置
【斬真狼牙@大番長】
[状態]:胸に鎌による掻き傷(処置中)
[装備]:防刃グローブ
[道具]:基本支給品、エイドバンド@ぱすチャ、
お部屋の芳香剤@大悪司、オイウチの牙@戦国ランス
[思考]基本:仲間を集めて、主催者をぶっ飛ばす
1:取り敢えず胸の傷の処置
【斬真豪@大番長】
[状態]:軽傷(鼻血)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ぽわわ銃@闘神都市Ⅲ、バイロード@RanceⅥ
[思考]基本:狼牙を諌めつつ、協力者を募る
[状態]:軽傷(鼻血)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ぽわわ銃@闘神都市Ⅲ、バイロード@RanceⅥ
[思考]基本:狼牙を諌めつつ、協力者を募る
【毛利てる@Ranceシリーズ】
[状態]:健康、疲労中程度
[装備]:はたき状の鎌
[道具]:基本支給品、クサナギ丸@夜が来る!
[思考]基本:闘争を楽しむ
1:負けは負けなので狼牙に従う
[状態]:健康、疲労中程度
[装備]:はたき状の鎌
[道具]:基本支給品、クサナギ丸@夜が来る!
[思考]基本:闘争を楽しむ
1:負けは負けなので狼牙に従う
「―――ッ!!」
狙撃の失敗を確認し、矢継ぎ早に女性、
山本五十六は荷物を纏めるとその場を後にする。
彼女の願いはただ一つ。
故に、その願いの為に彼女はすぐに決断を下した。
山本五十六は荷物を纏めるとその場を後にする。
彼女の願いはただ一つ。
故に、その願いの為に彼女はすぐに決断を下した。
山本家の再興。
世継ぎである太郎の返還の為に、
それだけの為に彼女は動く。
他の者を排除する事に抵抗はあるが
それも彼女の居た乱世に於いては仕方が無い事。
だからこそ、自分に出来る事をしなくてはならないのだ。
それだけの為に彼女は動く。
他の者を排除する事に抵抗はあるが
それも彼女の居た乱世に於いては仕方が無い事。
だからこそ、自分に出来る事をしなくてはならないのだ。
「待っていてくれ太郎。
必ず、私が迎えに行く」
必ず、私が迎えに行く」
決意の言葉を口にし、
彼女は駆ける。
彼女は駆ける。
だが、彼女は知らない。
その願いの主は当にこの世にはいない事を。
その願いの主は当にこの世にはいない事を。
【山本五十六@Ranceシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:疾風丸(弓)
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
[思考]基本:勝ち残り、太郎の救出。
1:一旦、身を隠す
[備考]:足利家武将時代からの参戦です
[状態]:健康
[装備]:疾風丸(弓)
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
[思考]基本:勝ち残り、太郎の救出。
1:一旦、身を隠す
[備考]:足利家武将時代からの参戦です
【エイドバンド@ぱすてるチャイムCuntinue】
一番簡単な回復アイテム。
ペタリと貼って使います。
一番簡単な回復アイテム。
ペタリと貼って使います。
【お部屋の芳香剤@大悪司】
アロマの力で命中値アップ。
普通の芳香剤とは違う、具体的に言うと臭い。
アロマの力で命中値アップ。
普通の芳香剤とは違う、具体的に言うと臭い。
【オイウチの牙@戦国ランス】
「オイウチ」という名の大型哺乳類の牙を使って製作した武器。
「オイウチ」という名の大型哺乳類の牙を使って製作した武器。
【ぽわわ銃@闘神都市Ⅲ】
謎の怪光線によって相手の記憶を一時的に奪い、
行動を阻害する。
謎の怪光線によって相手の記憶を一時的に奪い、
行動を阻害する。
【バイロード@RanceⅥ-ゼス崩壊-】
リックが愛用する魔法剣。
刀身が絶対に折れる事の無い、形の変わる赤い光で出来ている。
切れ味は悪い。
リックが愛用する魔法剣。
刀身が絶対に折れる事の無い、形の変わる赤い光で出来ている。
切れ味は悪い。
【クサナギ丸@夜が来る!】
双振りの、変わった形をした短剣です。
両手に1つずつ握って使うようです。
双振りの、変わった形をした短剣です。
両手に1つずつ握って使うようです。