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大悪司!


戦渦の痕を色濃く残すガラクタの街。
無傷な建物は数えるほどで
それが殊更にここで何が起こったのかを
はっきりと連想させる。
そんな廃墟の中を佇む一人の青年。
その姿は着ている黒のスーツがその体格の所為で
まるで子供の服かと思えるほどに
はち切れんばかりに鍛え上げられた鋼の肉体。
その持ち主である青年は周囲の景色など何処吹く風のように気にも留めず、
咥えていた煙草を燻らせていた。

じりじりと火種は口元にゆっくりと迫り、
灰となっていく煙草を少し目元を動かして確認し
青年は咥えていた煙草を足元に落とし、
その小さな火種を踏み消した。

そして、ゆっくりと白い煙を口元から軽く吹き出す。

「フゥ~……ったく、面倒臭ぇなぁ…」

悪態をつく青年の名は山本悪司。
“本来ならば”彼が今いる廃墟と化した街シンコウベだけでなく、
このオオサカ全土をも掌握していた一大組織の影の支配者である男である。
だからこそ、今、彼が置かれている状況は彼にとっても不可解な事である。
自分が支配している筈の場所で自分が命を他人に掌握されているという矛盾。
しかも、彼が知る限り、この祭りの主催者は一介の会社の部長程度に過ぎない筈なのにである。
一度、対面した事のあったあのハニワは人畜無害と言い切ってもいい位の
如何でもいい筈の人物(?)であった。
そして、彼の支配地であるこの場所も以前とはどこか雰囲気が違っている。
まず、人の気配が感じられない。
戦争の爪跡として廃墟と化したこの街ではあるが、
それでもそこかしこに何かしらの人間がひしめいていたものである。
なのに、今は何処にもそれらは見当たらない。
それは常に悪司に付き従い、彼の意(思い付きとも言う)に沿って
行動を起こしていく筈の彼の部下のヤクザ者達も例外ではない。
呼んでみた所で、手を叩いてみた所で彼らが現れる気配は一向に無い。
詰まる所、彼が今までに得て来た全てのものがある意味リセットされているような状態に
置かれているのが今の山本悪司の現状なのである。

それゆえに彼がまず感じた事が“面倒臭い”という事だった。
慌てる訳でもなく、嘆く訳でもなくそう感じれるのは彼の豪胆さ故か、
はたまた単にそういう性格なのかは知る由も無いが。

だが、だからこそとでも言うべきか彼の切り替えは誰よりも早い。
一からやり直しなのであれば、また全て取り返せばいいだけの事。
それ程の自信を彼は持っているのである。

ただ一つの懸念だけを除けば。

彼がその懸念に対して思考を巡らせようとした時、
彼の背後で不意に物音が鳴った。

「……ふむ、無人かと思ったが如何やらきちんと人は居った様だな」

物音の正体である奇抜な格好をした老人が落ち着いた態度で姿を現した。
その姿は一見、気を抜いているようにも見えるが実際には
微塵の隙も感じさせないほどの気迫を持っている。
それもその筈、この老人はゼスの将軍の一人にして「雷帝」の異名を持つ魔術師、
カバッハーン・ザ・ライトニングであり、
その実力はまさに一騎当千と呼べるほどであるのだから。

「つっても、今の所は俺と爺さんだけだけどな」

悪司もまた同様に老人に対して友好的な様な態度で振り返るが、
まるで気を許してはいないのが彼の老人に対する警戒で見て取れる。

「………」
「………」

お互いの間に暫しの間、重い沈黙が流れる。
先にその均衡を破ったのは悪司であった。

「……爺さん」
「……何だ?」

悪司の言葉と同時に周囲の緊張が高まっていく、
続けられる言葉次第では最悪の事態も想像できうるほどに。

だが、

「あんたの知り合いで頭パープリンな騙され上手の魔法使いのお姫様とかいね~か?」
「……何……じゃと……?」

唐突な質問に老人が固まる。
暫くすると老人は身体をわなわなと震わせ始める。
そして、

「ウワァーッハッハ!! 何を言うかと思ったら、
 とんでもない事をいきなり言う若者じゃのう!!」

豪快に笑い出した。

「わしも王もその程度の事では怒りはせんが、
 他の者が聞いたら。不敬罪で追いかけられる所じゃぞ、お主?
 もっとも、あの娘は残念ながら思い込み以外では聡明じゃ、
 お主の知り合いではないのぅ」

さも愉快そうに笑う老人につられる様に悪司の口からも笑みが零れる。

「そいつは悪い事を聞いちまったな爺さん。
 爺さんの格好があんまりにも俺の知り合いに似ていたもんでな」

笑いつつ悪司は自分のデイバックの中に手を入れて中をまさぐる、
のんびりとしつつも確認すべき事はすでに済ませていた彼は目的の物を探り当てる。
それを掴み、口元に笑みを残したまま彼はそれを目の前の老人に向ける。

「……それは何かな?」

自分に向けられている物にカバッハーンは覚えがない。
それもその筈である。
彼の元々いた世界には“存在しない”代物であるのだから。

「何だ、爺さんこいつもしらねぇのか?
 ……それじゃ仕方ねぇか。
 こいつはこう使うもんだ」

悪司の持っていたそれから乾いた音が響く。
立ち上る硝煙、地に落ちる薬莢。
悪司の向ける視線の先で老人が腹を押さえる。

「……ぬかったわ、それは飛礫の類か」

初めて見る物に対して人間は警戒こそすれど対処の仕方は知り得ない。
それは歴戦の勇士だろうと知恵がついたばかりの幼子であろうと同じ事。
危険かもしれないと思っても何が危険なのかがそもそも理解できていない。
だからこそ、悪司の取り出したニューナンブにカバッハーンはあっさりと撃たれた。

「悪事を悪事と思わぬか、この悪童めが……!!」

カバッハーンが悪司にあっさりと撃たれたもうひとつの理由。
それは悪司から感じていた態度である。
悪司はまるで親が子にモノを教えるようにもしくは
慣れぬ物に困惑する老人に分かり易く教えるかのような態度であった事。
まるで罪悪感を持っていない。
さも今自分がした行為も“当然”の行為として受け止めているのである。

「悪いな、爺さん。
 “慣れてる”んでな、俺は」

そう言って先ほどから変わらぬ笑みを残した表情のまま、
引き金を数度引く。

鳴り響く発砲音。
そして倒れ臥す老人。
その身体の周りに血溜まりができていく。

歴戦の勇士を騙まし討ちであっさりと屠ったというのに
悪司の表情は冴えない。

それは先ほどからずっと変わらぬ一つの思いゆえ。

「悪いな民華。 もう暫く汚れ仕事に逆戻りだ」

自分の伴侶の姿を瞼の裏に思い起こし、
彼は懐から取り出した煙草に火を付けた。

【カバッハーン=ザ=ライトニング@Ranceシリーズ 死亡】
【残り79名】

【シンコウベ/一日目・朝】
【山本 悪司@大悪司】
[状態]:健康
[装備]:素手
[道具]:支給品一式、ニューナンブ(残弾12発)、未確認支給品×1
[思考]:1.勝ち残り、再度オオサカを自分のものにする。




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