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透明少女



白髪の少女。
それは現実なのか幻だったのか、
それを今となっては確かめる術は無い。
だが、今の状況は『彼女』を探した故に起きた事。
何が正しくて何が間違っていたのか。
順を追って私はそれを考える。


………。

………………。

………………………。


「あら?」

「おっ?」

「おや?」

三者三様の反応…とは言いがたい似たり寄ったりな反応。
それも当然と言えるかも知れない。
会場から転送された直後に最初に遭遇した人物が知り合い、
いや同じ職場の同僚ともなれば気の知れたものである。
三人の内の二人は同級生の同じ学校の卒業生、
その内の一人と残りの一人がが学校の教職員、
光綾学園で教鞭を執る者達なのであるから。

「沙耶さんに真田先生!
 お二人ともご無事でしたか」

おっとりとした印象を受ける大きな眼鏡と大きな胸、
光綾学園においてスカウト課…所謂、探索者技能の担当をする女性、
セレス・ルーブランは他の二人の下へと駆け寄る。

「おっ、セレス!
 あんたも無事だったんだね」

駆け寄るセレスを笑顔で出迎える日焼けして褐色に染まった肌の
健康的な印象を受ける女性、竜胆沙耶。
S級冒険者であり、元居た世界では男女問わず羨望の対象となるにも
関わらず偉ぶった態度をとらない気さくな人物である。

「あぁ、心配してたんですよ……ひゃあ!!」

「ほっほっほ、慌ててはいけんのぅセレス先生。
 ほれ、そんなんじゃからこうして簡単に…」

サワサワサワ。

いつの間に背後に回ったのか、
おどけた様子でセレスの尻を思いっきり撫で回す色ボケ…
もとい、好々爺。
光綾学園の戦士課の担当、剣術指南役でもある老人、
真田完柳斎は満面の笑みを浮かべて更に続けようとするが
その腕を沙耶に掴まれる。

「真田先生もお元気そうで、
 ところでセレスが卒倒しそうなんで
 それくらいで勘弁してもらえません?」

この二人は顔見知り程度の関係だが共通の知人である
セレスからある程度の話をお互いに聞いている為、
あまり他人行儀といった様子でもなく気軽に接する。

「ほっほ…老人の可愛いお茶目心じゃよ、
 ほれあまり怖い顔をせんでくれ」

言葉とは裏腹に尚も手を伸ばそうとする完柳斎と
阻止しようとする沙耶の間で無意味な火花が散る中、

「あうあうあう………はれっ?」

完柳斎のセクハラに目を回していたセレスの目に一瞬、
誰かの影が横切る。

「如何した、セレス?」

目を擦り、先程何かが見えた気がした地点を凝視するセレスの様子に
沙耶も反応し、完柳斎も表情を引き締める。

「何か見えたかの?」

先程までとは違い、ぴんと張り詰めた空気を纏った完柳斎が
セレスに尋ね、セレスはその質問にうんと首を傾げる。

「見えた……様な気がしました」

自信無さ気なセレスの態度にじれったそうに沙耶が身を乗り出す。

「まぁこんだけの面子が揃ってんだ。
 確かめてみたほうが早いさ」

「まぁ、それもそうかのぅ。
 ほれ、案ずるより生むが安じゃよ」

そういうと足早にセレスが示した方向へと歩み出す沙耶に完柳斎も続く。
一人だけ不安気な様子だったセレスも取り残される訳にもいかず、
仕方なく二人へと続く。

そうして三人が辿り着いたのは目の前に聳える巨大な建物。

「これは…ホテル、みたいですね」

純白色の高級感漂う建築物に庶民派のセレスは若干気後れしつつ、
建物を下から上へと眺めていく。
それほど高くないある階の窓の一角にほんの一瞬だけ、
白髪の少女が横切った。

「居ました! …女の子、みたいでしたけど?」

そこでセレスは疑問を覚える。

「あぁ、アタシも見えた……
 だけど、あれは如何いうつもりだろうね」

セレスの疑問を沙耶もまた感じているようで、
腕を組み、考え込んでいる。

「逃げておるのか、
 誘っておるのか」

その両者の疑問を代弁するように完柳斎が口を開く。
セレスが最初に気がついた時といい、
少女の動きには謎がある。
微妙に追いつけそうで追いつけない範囲で
三人に目撃されるそれは確かに慌てて逃げているようにも取れるし、
誘っているようにも取れる。
だが、どちらにせよ憶測の域は出ず、
結局の所は少女自身に確認を取らなくては分からない。

「無視するって手もあるが……
 もし、逃げてるだけの少女だったらユウキ達に
 示しがつかないしな」

困った様に頭を書く沙耶にセレスが近寄る。

「私もそう思います。
 それ以上に教師として本当に困っている人なら
 見過ごす事なんて出来ません!」

鼻息荒く意気込むセレスの様子にやれやれといった様子で
沙耶が頷き、完柳斎に目配せする。

「私とセレスで行くか…
 真田先生はここで見張っててください」

戦士とスカウトの組み合わせ。
もし、相手が罠を張っていたのであれば
この組み合わせの方が対処しやすいというものである。

「フム、仕方ないの。
 わしとしては如何にも気になるのじゃが。
 くれぐれも気をつけるんじゃぞ、二人とも」

杖を構えて、入り口に陣取った完柳斎に見送られ、
セレスと沙耶の二人は思惑の見えぬ地へと足を踏み入れた。

………。

………………。

………………………。

「ふわ~、こんな高そうな所、はじめて来ました」

間延びした声で辺りをきょろきょろと見回すセレスに
沙耶が苦笑する。

「アタシは割とそうでもないけどね、
 ただこういういかにもな所は苦手さ」

沙耶は辺りに展示されている高そうな絵画や彫刻に
顔を顰めて適当に見回している。

「それよりももうすぐじゃないかい、
 さっきの部屋まで」

外から少女の姿を垣間見た部屋の手前まで来て、
沙耶がセレスに確認を促す。
それに応じてセレスも顔つきを真剣にし、
部屋の扉を入念に確認する。

「……扉には罠は無いみたいです。
 開閉時に作動するような類も見当たりません」

ドアノブや扉の隙間などを入念に確かめて、
セレスが沙耶に視線を送る。

「アタシはセレスを信じるよ。
 セレスがそういうなら何も言うことは無いさ」

その視線に答えて沙耶が厚い信頼の篭った目で
セレスを見つめる。
その言葉と信頼に決意を固めたセレスが扉に手をかける。

「……いきます!」

ガチャリ。

勢いよく回されたドアノブは差して抵抗も無く、
確かな開閉音と共に扉は普通に開いていく。
だが、その先に在ったモノは尋常とは言いがたいものであった。

一つの椅子に腰掛け項垂れる少女。
首から下をシーツに包まれたその姿は
本来なら白いシーツであったそれを真紅へと染め上げている。
そして足元に溜まる血だまり。

「………ッ!?」

息を呑み、慌てて少女へと駆け寄るセレス。
それを慌てた様子で沙耶が呼び止めるが、
彼女の耳には届かない。

「大丈……」

少女へと手をかけたセレスの動きが唐突に止まる。
何かの発射音とほんの僅かな衣を裂くような音。
そしてぐらりと揺れ、崩れ落ちるセレスと少女だと“思っていたもの”。
白髪のかつらを被せられた展示物の一つらしき人形の
手元に備えられた特殊なナイフ。

『スペツナズ』。

軍の特殊部隊が使う、
刃に発射機構を取り入れた殺傷性の高い物。
それが隠されていたシーツを破り、善意を持って接したセレスに牙を剥いた。

「セレスッ!?」

血相を変えて沙耶は旧友の元へと駆け寄る、
発射されたナイフの刃はセレスの腹部へと突き刺さり、
真っ赤な血でその周囲を染め上げている。
息も荒く、力無く倒れる彼女を沙耶が抱き起こす。

「待ってな! 今、止血して――」

だが、異変は留まる所を知らず押し寄せる。
沙耶がセレスへの応急措置へと入るよりも早く、
周囲を謎の振動が襲う。
その原因を頭で理解するよりも先に
沙耶はそれを身をもって体験する事となる。
爆裂音と共にその部屋を取り囲む周囲の壁が『爆ぜた』。

………。

………………。

………………………。


異変は完柳斎の目にも飛び込んできた。
セレス達が入ったと思われる部屋の『周囲の』部屋が突然、
爆破されたのである。

「何と!!」

驚き、セレス達の身を案じた完柳斎が救助に向かおうとした時、
その少女は唐突に現れた。
白髪の髪を両脇で束ねた小柄なセーラー服を纏った少女。
その少女は周囲の変化を気にする様子も無く、
悠々と入り口へと歩み寄ってくる。

「…お主!」

少女のその態度に全てを察した完柳斎が仕込み杖を構える。

だが、

「 ― 死ぬがよい ― 」

少女が取り出したのは歪な光景。
その華奢な肩に構えられた無骨な物体が鈍い輝きを放つ。
四角い箱のような物体は爆音と閃光を放ち、
少女の眼前に広がる光景を【完柳斎ごと】周囲を焼け野原へと変える。
完柳斎が居た筈の場所を抉り取り、
完柳斎だったと思われるモノの欠片を周辺にぶちまけて、
少女は自身の持っていたロケットランチャーを地面に降ろす。

「許しは請わん、存分に恨むがよい」

たった今、自身が行った行為に対してまったく謝罪する様子も無く、
少女、岳画殺は振り返る事も無く建物を後にする。

3人の熟練の腕前を持った大人をたった一人で翻弄し、
稀代の器を持った少女はここにそれを証明して見せた。

………。

………………。

………………………。

滲む視界の中、
目の前に見えるのは私を庇う様に
覆いかぶさる沙耶さんの顔。
だけど、その表情で何があったのかを
私は悟ってしまった。
全身を寒気が襲うのに肌に触れる暖かい感覚。
人の命が漏れ出す感覚。

何で、こんな事に…
私が悪かったんでしょうか?

「―薙…原……く…」

腕白でいつも困らされていた赤毛の少年の姿が浮かぶ。

「ご……め…ん…ね……」

未熟な先生でごめんね。

………。

………………。

………………………。

ホテルの一室。
周囲の部屋に仕掛けられたダイナマイトの爆風から
庇う様に覆いかぶさる全身の所々を
爆風で吹き飛ばされた沙耶の死体の下、
庇われたおかげなのかそれとも奇跡なのか
殆ど損傷は見受けられないセレスの姿。
誰かを想い、憂いの涙を浮かべる
その姿はその建物のどの美術品よりも美しく感じられる。

ただ、残念な事は彼女もまた死者に過ぎないと言う事である。

【セレス・ルーブラン@ぱすてるチャイムContinue 死亡】
【真田 完柳斎@ぱすてるチャイムContinue 死亡】
【竜胆 沙耶@ぱすてるチャイムContinue 死亡】
【残り76名】

【シラハマ/一日目・朝】
【岳画 殺@大悪司】
[状態]:健康
[装備]:ロケットランチャー(残弾2発)
[道具]:支給品一式、ダイナマイト(残り10本)
[思考]:1.悪司を優勝させる為に他の参加者を殲滅する。




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