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ビューティフル・ドリーマー



「美樹ちゃ~~~ん、お~~い!!
 いるんなら返事してー!!」

町の中に轟く大声。
声の主の少年は周りには無警戒でうろうろと
大声で恋人の名前を叫び、捜し求める。

「……ハァ、こっちじゃなかったのかなぁ?
 心配だな、美樹ちゃん」

平凡な印象を受ける少年はがっくりと項垂れて
目に見えて落ち込む。
少年の名は小川健太郎。
文字通りの一般人“だった”筈の
色々と複雑な経緯を持った少年であるが、
説明は面倒なので省く。
大して今は必要な事でもないし。

「……何か凄い不快な気分に一瞬なった。
 はぁぁ~~~……拙いなぁ」

彼が落ち込むのには理由は二つある。
一つは探し人が自分の恋人だという事と、
もう一つは彼女は『魔王』だからである。
彼女の力は酷く不安定であり、
彼が傍で支えなければいつ暴走するかも分からない。
しかも、これは時間制限付きである。
定期的にヒララレモンという果物を摂取しなければ、
健太郎の存在に関わらず彼女の魔王としての力は暴走する。

だが、

「ヒラミレモンはなぜか俺のバックに入ってたのになぁ~……」

デイバックの中から一つの果物を取り出し、
取り敢えず匂いをかんでみる。

「うっ!! ……すっぱぁ~」

柑橘類としての爽やかな酸味の香りが鼻をつき、
思わず顔を顰める。

「……ハァ、何やってんだろ、僕。
 早く美樹ちゃんを探さないと」

自分の無意味な行動に自己嫌悪を陥りつつも、
取り敢えず先へ進もうとした健太郎の足が止まる。
何か変なものが見える。
全体的に黄色くて、あとデカイ。
2mを越える巨体の服だけ妙に整った怪生物。
前方にひょっこりと現れたそれが健太郎に視線を向ける。

「……おや、人間ですか?」

健太郎に気づいた怪生物は値踏みするように
健太郎を上から下へと眺めていく。

(ウッ! ……嫌な予感)

その視線の意味を薄々と察知して健太郎が後ずさる。

「まぁ、緒戦の相手としては悪くはありませんか……
 ではそこの君、いざ尋常に―」

「お断りします!!」

言い切られる前に反転、
直後に猛ダッシュ。

「あ、ちょっと待ちなさい!?」

健太郎の後方で怪生物の戸惑う声が聞こえたが
躊躇う事無く全速力で逃げる。

「魔人とまともに戦える訳ないに決まってんじゃん!!」

魔王と一緒に行動している以上、
その配下に当たる存在の事も当然熟知している。

『魔人』。
魔族側の準支配階級の存在であり、
無敵のバリアを備えた一体で国軍一つに匹敵する怪物達。
本来の健太郎ならそんな怪物達にも対抗する手段はあった。
聖刀日光と呼ばれる世界に二振しかない幻の武器の一つである。
健太郎はそれの正式な所有者だった。
だが、それは今、手元にないのである。

「美樹ちゃんもいないし、日光さんも無いしで
 何なんだよ、もぅ~!!」

魔人と思われる黄色い怪物は何かを呼びかけながら
健太郎を追いかけてきている。
焦り慌てて走りながら辺りを見回し、
怪物をまく事が出来そうな物を探す。
そしてそれにうってつけな建物が目の前に丁度良く映りこんだ。

(あれだ!!)

勢いはそのままに健太郎は怪物から身を隠す為に
取り敢えず目に見えた【それ】。
病院の中へと駆け込んだ。

様々にある部屋から適当に隠れるのに向いてそうな部屋を選び、
鍵が掛かっていないのを確かめると
怪物に見つからぬようにその部屋の中へと身を隠す。
閉めた扉の背後を暫くするとコツコツと誰かの足音が通り過ぎていく。
心臓が高鳴り、声が出そうになるのをぐっと我慢して、
足音が聞こえぬ距離まで離れるまでただただ身を強張らせる。
暫くして、足音は諦めたのか健太郎の居た部屋から遠ざかっていく。
そこまで来て、ようやく健太郎は安心して溜息を出す。
そして身を潜めていた部屋からこっそりと抜け出して
出口へと向かおうとした時、

本日二度目の未知との遭遇が起きた。

がちゃりと「薬品室」と書かれた部屋から出てきた変人。
全身を包帯で覆われ、身体から異臭を放つその変人は
指の間に何らかの液体が入った大量の注射を挟み、
鼻歌交じりで上機嫌そうに出てきたそれと
又しても目が合ってしまう。

「あっ」

「あ゛?」

一瞬の沈黙。
健太郎の脳がフルスロットルで目の前の人物を
判断するよりも早く目の前の変人が口を開いた。

「へ…へへひへ…なんがや、おまぁ?
 いい、今、特製ブレンドが出来たところやき、
 はひ…良い感じぃになってたとこがや」

目も虚ろで健太郎を見ているのかどうかも怪しい
見た目も怪しい変人に本日二度目の後ずさりをする健太郎。

「おお、おまぁも試してみるがや?
 へきき…え、遠慮することぁないきに」

そう言いながらじりじりと迫ってくる変人に
背を向けて逃げようかと思ったが、
後方から騒ぎを聞きつけたのか
足音が戻ってくる気配を感じる。

前門の変人、
後門の怪物。

完全に挟み込まれた形になった健太郎の思考はパニックを起こす。
思考回路はショート寸前、今すぐ(知ってる人に)会いたいよ。

「へけきくぐぎげへ……なな、何、ちょっと天国にトリップするだけやきぃ、
 へひ……ま、間違っても本当に天国に行くだけやきぃ」

注射針を健太郎に向けて変人が距離を詰める。
後方からは速度を増して迫りくる足音。
追い詰められて身動きが取れずに只管にパニクる健太郎。
それを哀れむ様子も楽しむ様子も無く
じりじりと距離を詰め、変人が健太郎に飛び掛る。

「う、うわぁぁぁぁっ!!」

迫りくる脅威に対処しきれず、
思わずその場に屈み込んだ健太郎の頭上を
突風が吹きぬける。
突風が吹きぬけた後には目の前まで迫っていた変人はおらず、
代わりに長髪の女性が健太郎の前に立ち塞がっていた。

「無事か?」

前方を見据えたまま、長髪の女性が健太郎に声をかける。
威厳と気迫に満ちたその声に健太郎も自然と冷静さを取り戻す。

「あ、あぁ、うん…大丈夫」

自分の身体を確かめて変化が無い事を確認すると
健太郎は立ち上がり、
先ほど何が起きたのかを理解する。
後方からの足音をてっきりさっきの怪物のものだと思い込んでいたが
それはこの場にいた更に別の人物である彼女のものだった事。
そして、彼女が見据える先で吹っ飛ばされて倒れこんでいる変人の姿で
自分が彼女に助けられたのだと察する。

「妙な気配を感じたからこの場に来たが、
 間違ってはいなかった様だな」

女性は健太郎は見ずに、
だが優しい声音で語り掛ける。

「あ、ありがとうございます!」

素直に女性に頭を下げて礼を言う。
女性はそれを一瞬だけ困ったような表情で受け止めた後、
すぐに視線を変人へと戻し、
ゆっくりと近寄っていく。

「痛いがやー! 痛いがやー!」

腕を押さえてのた打ち回る変人を女性は踏みつけて押さえつける。

「先ほどので貴様の腕は折った、
 これ以上続ける気なら容赦はしない!」

女性が厳かに変人に告げる。
だが、その時、変人の目の色が変わる。

「……甘いだがよ」

「……ッ!?」

折られた筈の腕で変人は自分を押さえる女性の腿に注射針を突き刺す。
予想外の攻撃に女性が変人を蹴り飛ばすが、
転がった先で変人は平然と立ち上がる。

「きへひ……と、とっくに痛覚なんざないきに。
 ゆゆ、油断したがぁ?」

狂った笑いを浮かべながら変人がゆらゆらと揺れる。
まるでそれに呼応するように女性の様子も変化していく。

「う? うぅぅうっ! あぁぁぁぁああぁっ!!」

表情を歪ませ、だが先ほどの女性の姿からは考えられない
恍惚と恐怖が入り混じったような嬌声をあげて女性は身悶えする。

「へひひへひ……コカインやら大麻やら混じった特製ブレンドやき、
 きひ……ここ、効果は抜群だがや」

女性の変化に満足した様子で変人が嗤う。

「あぁぁああぁがぁぁああぁ!?」

身を捩り、嬌声をあげながら女性が手当たり次第に暴れだす。
荒れ狂う暴風と化したようなその凄まじさは
周囲に存在するもの全てをなぎ払い、粉砕していく。

「ああ、危ない危ないだが。
 へき…にに、逃げるが勝ちだきぃ」

自分目掛けて飛んできた何かの破片を避けつつ、
元凶である変人はそそくさとその場から逃げ出していく。
その場に残された健太郎は暴れ狂う女性を前に
どうしていいか分からずに途方にくれる。

「ふむ、これは厄介なことになってますね」

「うわぁ!?」

そんな健太郎の背後から肩越しに、にゅっと大きな顔を出し、
最初に現れた怪物が暴れる女性を眺めていた。

「あれはバルキリーでしょう。
 彼女ほどのモンスターが不覚を取るとは中々やりますね」

怪物が目の前の女性を知ってるような口ぶりで話し、
そこでふいと視線を健太郎に向ける。

「いきなり逃げるのは紳士らしくありませんよ?」

「い、今はそれどころじゃないだろ!?」

慌てて怪物にバルキリーと呼ばれた女性を指差す。
怪物もそれに習って視線を向けた後、

「まさか私に助けろと?」

眉(?)を顰めて、健太郎に怪物が質問する。
怪物の言葉に全力で「うんうんうん!」と頷く。
それに対して困った様子で怪物も考え込む。

「私もあのようなやり方は好ましく思いませんし……
 まぁ、止める程度ならいいでしょう」

自分の考えに納得がいったのか、
つかつかと暴れるバルキリーの方へと怪物は歩き出す。

「我が名は魔人ジーク。
 病めるバルキリーよ、私が相手をしてやろう!」

どこから取り出したのか、待ち針にも似たような剣を構えて
怪物、魔人ジークは堂々と名乗りを上げる。

「……うぁ? あぁぁあああぁあっ!!」

その声を焦点の定まらぬ視界で受けたバルキリーが、
目標をジークへと定めて突進してくる。
突風いや狂風とでも呼べばいい凄まじさで
瞬間に数合の手刀を繰り出すその動きに対して、
ジークは際どい所で何とかそれを防いでいく。

「さ、流石はSクラスの女の子モンスター、
 一筋縄ではいきませんね……」

冷や汗を浮かべながらジークも何とか応戦する。
それをハラハラしながら見ていた健太郎に一つの疑問が浮かぶ。

「おい! 魔人は無敵バリアがあるじゃないか!
 なんで防御してるの?」

「……んですよ」

「えっ?」

「今の私には無敵バリアは無いんですよ」

その時、バルキリーの手刀がジークの身体を掠り、
そこからジークの言葉を証明するように血が流れていく。
魔人の最大の特徴である無敵バリアが無い以上、
魔人とはいえ万能ではなくなっている。
相手がSクラスともなれば魔人といえど
最悪の事態も在り得るのである。
それでもジークは退く事は無い。

なぜならば、

「退く事は紳士の信念にそぐわない!」

見た目とは裏腹にこの魔人、
本当に実直勤勉なのである。
魔人であり、ケイブリス派でもある故、
バトルロワイアルというこの生き残り闘争には
積極的に参加する気ではあるが、
それも自分の信念に添った上で行うつもりだった。
それを目の前で非道な手段を使われた者を目撃した事で
それを汚された気分だったのである。

だが、圧されているのもまた事実。

「仕方がありませんか…これも私の能力の内。
 お前の恐怖するものは何だ!」

ジークが剣をバルキリーに向けて高らかに叫ぶ。
声に一瞬だけ反応して動きが止まったバルキリーが
再び動き出そうとするより早く変化は既に起きていた。
バルキリーの手刀がジークを薙ごうとする。
だが、その手が触れるか否かの所でぴたりと止まる。
そこに立っていたのはジークではなく一人の少年だった。

「成程、失くす事への恐怖ですか。
 バルキリーという種族らしくはありませんね」

落ち着いた雰囲気で少年はバルキリーの首筋に当身を叩き込む。

「うぁ…レ…オ?」

理解不能といった様子でバルキリーはその場に倒れこむ。
それを抱きとめた時には既に少年の姿ではなく
以前の黄色い怪物の姿に戻ったジークがそこにいた。

「勝利……とは言い難いですね」

苦虫を噛み潰したような表情で
勝った筈のジークは言葉を曇らせる。
バルキリーを健太郎に預けると
ジークは健太郎に背を向ける。

「興が削がれました…いずれまた会いましょう」

それだけを告げてジークはその場を後にする。
その後姿を眺めながら、
健太郎はボソッと口を開いた。

「へ、、変なのに格好良い……」

そこにはヒーロー物のテレビ番組を見る
子供のような目をした健太郎の姿があった。

【サカイ/一日目・朝】
【小川健太郎@Ranceシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:日本刀
[道具]:支給品一式、ヒララレモン、不明支給品
[思考]:美樹ちゃん捜索

【バルキリー@GALZOOアイランド】
[状態]:ジャンキー
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品×2
[思考]:ヘブン状態!

【魔人ジーク@Ranceシリーズ】
[状態]:軽傷
[装備]:剣
[道具]:支給品一式、不明支給品×2
[思考]:正々堂々と優勝

【素敵医師@大悪司】
[状態]:全身打撲、右腕骨折
[装備]:注射器
[道具]:支給品一式、不明支給品×2
[思考]:麻薬をばら撒く




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