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そして少女は総てを喪う



「……ハァ……ハァ……」

光が差し込まない暗闇の中で少女は逃げ惑う。
それは唐突にして残酷な出来事。
考えるべきことは沢山あるけれど、
今はひたすらに逃げるしかない。
自分の為に、
思い人の為に。
追う者は余裕のある歩調でじわじわと自分に迫る。
入り口の扉を叩く。
だが、閉じられたそれは反響音を鳴らすだけで
無情にも開く事は無い。
必死で扉を開けようとしても、
その間に追いつかれてしまう。

「助けて……ユウキっ!」

フィルの叫びが木霊する。


☆    ☆    ☆   ☆    ☆    ☆


「…う、うぅん…ここは?」

フィル・イハートが目を覚ました時、
辺りは暗闇に包まれていた。
最初は倒れている間に
夜になってしまったのかと思ったが、
どうやら自分が光源の少ない建物の中に
居たのだと数少ない窓から差し込む
心許ない明かりで気づく事ができた。

「うんしょ」

フィルは飛び跳ねるように起き上がると
まずは自分の身体を確認し、
何処にも異常が無い事を確認すると
準備運動をして軽く身体を温める。
自分が居る建物、どうやら倉庫と思しき
この場所にはフィル以外の人間は
気配からして居ないようだ。

「待っててね、ユウキ!
 僕がすぐに助けに行ってあげるから」

他に人が居ないのなら特にこの場所に
留まる理由はフィルには無い。
すぐにでも想い人の所へと
駆けつけようと行動を始めたフィルだが、
その出鼻はあっさりと挫かれる。

「あっれぇ~?
 鍵掛かってる?」

出口へと辿り着き、
扉へと手を掛けて開けようと試みるが、
ガシャガシャと音を鳴らすだけで
扉に開く気配はない。

「ひょっとして、僕。
 閉じ込められてる?」

他に出入り口も見当たらず、
最悪の予想が予想ではなく
現実である事をフィルは実感する。

「どうしよう……おぉ~い、誰か居ませんかぁ~!!」

扉を叩き、大声で外へと呼び掛ける。
これを数度繰り返し、拳が痛み始めた頃に
外に誰かが歩み寄る音が聞こえてきた。
若干、落ち込みつつあった気持ちがそれにより
再び活気を取り戻し、フィルは外の人物へと必死に呼び掛ける。

「お願いしまぁ~す! ここを開けてくださ~い!」

扉の前で足音は止まり、
フィルはホッと息をつく。

「すいません、ちょっとここを開けてくれませんか?」

外の人物に呼び掛けるが反応は無い。

「聞こえてますよね?
 開けてください!」

更に外の人物へと呼び掛けるが
一向に返事は来ない。
最初は丁寧に接していたフィルも苛つき始める。

「ねぇ、聞こえてるんでしょ?
 開けてってば!」

必死に扉を叩き、外の人物への苛つきも手伝って
口調は大分荒くなる。

「……お前、女か?」

突然、外の人物がフィルへと呼び掛ける。
それまで黙り込んでいた相手の
突然の言葉にフィルは驚き、
動きが一瞬固まるがすぐに答えを返す。

「女だけど、何?
 ねぇ、それよりここを開けてってば!」

フィルの返事と共に外の動きに変化が表れた。
先程までフィルが叩きまくっていた扉から
何かを引き抜くような音が聞こえ、
それまではびくともしなかった扉が音を立てて開き始める。
差し込む外の光に暗闇に目が慣れ始めていた
フィルは目を顰める。
外の光の中に立っていたのは異国の剣士を思わせる風貌の
棘棘した雰囲気を持った男が一人。
その男がフィルをじっと睨みつけるように眺めていた。

「……な、何?」

その視線に嫌なものを感じたフィルは
扉を開けてくれた礼を言うよりもまず身構えてしまう。

「耳」

男が一言だけ発した。
フィルのエルフの血を引く者特有の長い耳を
異様な熱意を込めて眺めている。

男の視線に一層の嫌悪感が働き、
フィルの耳はぴくぴくと動く。

「動いた!
 ……本物か!」

男が驚きと喜びの混じった叫びを上げる。

「だったらなんだっていうのさ!」

不可解な男の態度に苛つきが頂点に達した
フィルが怒鳴り、男を睨みつける。
だが、そんなフィルの態度もまるで意に介さずに
男はわなわなと震えだす。
いや、笑っているのである。

「ハァーハッハッハ!!
 面倒な馬鹿がいると思ったが
 こいつはとんだ拾い物だ!」

男がねっとりとした嫌な視線をフィルに向け、
生理的な嫌悪感がフィルの全身を奔る。

(やばい…こいつ“ヤル気”な奴だ!)

フィルも冒険者の卵である。
敵意のあるかどうかは相手の態度を見れば分かる。
いや、隠す気も無いほどに男の気配は
濃密にフィルへの害意を示している。

「折角の嫁も死んでしまって困っていた所だ。
 お前は今日から俺様の嫁だ!」

この男、スパーンの言った事には一つ嘘がある。
彼は確かに自分の嫁に迎えた女性を最近喪っている。
だが、この男は困った等とは露とも思ってはいない。
折角の玩具が一つ無くなってしまった程度にしか感じてはいない。
心根が完全に腐りきっているのである。

「僕はもうユウキのものだい!
 誰がお前なんかに!」

最早、言わずもがなで相手はフィルにとっての敵である。
出来ればこの倉庫から抜け出したかったが
相手にはその様な隙は見られない。
身構え、距離を取るフィルに対してスパーンは
倉庫に入り込むと扉に手を掛けて
先程までのフィルの努力を嘲笑うように
扉を閉めてしまう。
そして、手に持っていた鍵で扉に再び鍵を掛ける。

「ふん! 最初は鍵束など渡されて腹も立ったが
 こうしてみれば成程、便利なものだ」

再び暗闇の中に放り込まれた形になったが
先程までとは違い、
今度は自分に敵意を持った相手と一緒の形で、である。
ここを出る為の鍵は相手が持っている。
出る為には奪うしかない。
フィルも覚悟を決める。

「後で謝ったって、許さないからね!」

神術と共に格闘技を学んできた彼女のそれは
並みの相手ならば一蹴に伏す事が出来る程のものである。
それを構えを見ただけで察したのか
男から楽観的な態度が抜ける。

「ふん!
 中々出来るようだが、
 まぁ、俺様の敵ではないな」

スパーンが剣を取り出し、構える。

「言ったね!!」

相手が構えるのが早いかフィルがすかさず飛び掛る。
相手の足元を狙った下段蹴りをスパーンは脛で受ける。

(硬い!)

並みの相手だったらあっさりと崩されるような
フィルの蹴りを受けてもスパーンに変化は見られない。
相手も口だけの男ではないという事である。
それでもフィルは攻勢を緩めない。
すかさず繰り出した右・左のジャブのコンビネーションを
スパーンが身体を捻り、ギリギリのところで避ける。

(今だ!)

インターアドで自分が倒された技を思い浮かべる。
相手のアルツ・エリオンの動きを脳裏で再現し、
忠実に再現していく。
相手の死角を狙った裏拳。
わざと動きに馴らさせておいて
虚をつくこの技に相手は気づく暇を与えられない。
フィルがそうであったようにスパーンもまた、
この動きにつられてしまった。
鈍い音がしてフィルの拳がスパーンのこめかみに当たる。
だが、フィルは大きな勘違いをしていた。
相手はフィルと同じ体格の相手ではなく
屈強な男であるという事を。
スパーンは確かにこの技により大きくグラついた。
だが、意識が飛ぶほどのものではない。

「痛ってぇじゃねーか!
 てめぇぇッ!!」

仕留めたと油断していたフィルへ、
スパーンの一閃が走る。
それは掠めた程度だが彼女にとって
致命的なものをもたらした。
はらりと服が裂け、
彼女の未発達な身体が顕わになる。

「い、いやぁぁぁぁっ!!」

彼女は冒険者である。
その為の覚悟もしてきた。
だが、それ以上に彼女は乙女なのである。
純粋に一人の男を想う女なのである。

それまでの勢いを無くし、
慌てて彼女は自分の胸を手で隠す。

「…チッ、Aか。
 まぁ、エルフである事が重要だからな」

こめかみを押さえつつ、
フィルの顕わになった胸を下卑た視線で
スパーンが繁々と眺める。

「や、やだぁぁぁっ!」

その視線から逃れる為に必死に
隠そうとするフィルの顔面をスパーンが
思いっきり殴り飛ばす。

「ふん!
 まださっきの分には足りないが
 これからたっぷりとお仕置きしてやる!」

拳を軽く振るい、
じりじりとにじり寄る悪意。

「……やだ、やだ、やだ、やだぁ!」

フィルはその恐怖に屈した。
ただただ唯一の守れるものを。
自分の身体を守る為に惨めにその場を逃げ出した。


☆    ☆    ☆   ☆    ☆    ☆


初めから分かっていた事なのである。
逃げ場などとうに無くなっていた事は。
逃げ回るその姿はただ相手の嗜虐心を刺激して
喜ばせる行為にしか過ぎなかった事は。

「開けて……開けて、開けて開けて開けてッ!
 嫌だ、嫌だよ、助けてユウキッ!」

無様に縋る様に虚しく開く事が無い扉を
必死にこじ開けようとする。
哀れなまでに無力なその姿を
眺める者は残念ながら救い手ではない。
フィルの肩に手が掛けられる。

「ひっ!」

そして振り返ると同時に張り飛ばされる頬。
小麦色に日焼けした肌に刻まれる紅い痕。

そして、

暗闇の中で嘲笑う男の貌。

「やだぁぁぁぁぁぁっ!」

少女の叫びは人為的に作られた闇の中で溶けていく。

<キングクリムゾン!アリスロワは性犯罪に反対します!

扉が開かれる。
其処に奇跡を願った少女の姿は無く。
満ち足りた表情の男が口笛交じりで出て来ただけである。

「ふふふ~ん♪
 身体はまだがきんちょだったが
 今度から仕込めば良いことだ。
 フフフ、幸先いいな俺様!」

だが、その表情はふと向けた視線の先で
すぐに嫌そうなものに変わる。
視線の先には影がいた。
いや、正確には影のような黒衣を身に纏った
一人の青年が其処に立っていた。

「チッ…折角の気分が辛気臭い面のせいで台無しだ」

スパーンが黒衣の青年、久我匡一郎に嫌味を言い、
シッシとあっちに行けとでも言うように手を振る。

「……何をしていた?」

スパーンの嫌味など無視して久我が
スパーンを静かにだが厳しく問い詰める。

「俺様はお前に答える口など持っておらん!
 さっさとどっかいけ!!」

だが、それに答えるスパーンでもなく
無駄だと察した久我がスパーンを押しのけて
倉庫の中を覗き見る。

「……これは!」

其処に居たのは人形。
いや、そうとしか思えない程に光を気力を無くし、
無残に陵辱の限りを尽くされた少女の姿。
身体中に刻まれた痕と飛び散る証が
少女が既に純潔ではない事を物語っている。
自分が汚れる事も厭わずに助け起こした
久我の腕の中で少女は焦点の定まらぬ目で
ぶつぶつとうわ言の様に誰かの名前を呟いている。
少女が久我の顔に視線を向けて、
乾いた笑顔を浮かべる。

「……あはっ……ユウキだぁ…」

久我の顔に誰かを重ねるように弱々しく手を当てる。
だが、その顔はすぐに恐怖へと歪み、
久我の手を払いのけて少女は悲鳴を上げながら這い逃げる。

「イヤァァァァ、もう許してぇぇぇっ!!」

久我をスパーンとは違う人間だと認識出来ぬほどに
正気をなくした少女は久我からある程度離れると、
蹲り、またぶつぶつとうわ言を呟き続けている。

「何だ、壊れたのか?
 残念だが、もういらんな。
 面倒臭いし」

そんな少女の姿を興味を無くした様子で
鼻をほじりながらスパーンはあっさりと
自分が行った事を棚に上げて眺めていた。

久我の脳裏に苦い思い出が蘇える。
まただ。
また、自分は間に合う事ができなかったと。
少女の叫びと妹の叫びが久我の中で重なる。
それに呼応するように久我の影の中に潜む者達が
ざわめき始める。

「貴様は……」

「あん?」

久我は立ち上がり、
それと共に少女を庇うように影が少女の身体を覆う。

「ここより先は見なくていい。
 君の無念は俺が晴らす」

【ナンコウ/1日目・朝】
【フィル・イハート@ぱすてるチャイムContinue】
[状態]:全身に暴行の痕
[装備]:素手
[道具]:基本支給品、不明支給品×2
[思考]基本:最早、不明

【スパーン@大番長】
[状態]:こめかみに打撲
[装備]:ファイヤーソード@ぱすチャ
[道具]:基本支給品、ナンコウの倉庫の鍵束、
[思考]基本:嫁探し(エルフ限定)

【久我 匡一郎@大番長】
[状態]:健康
[装備]:素手
[道具]:基本支給品、告知箱@Rance6-ゼス崩壊-、愛情薬@GALZOO
[思考]基本:皆で脱出
    1:スパーンを殺す

【ファイヤーソード@ぱすてるチャイムContinue】
 炎のブロードソード。
 燃えている以外は結構、普通。

【ナンコウの倉庫の鍵束@大悪司?】
 ナンコウの倉庫用マスターキー。

【告知箱@Rance6-ゼス崩壊-】
 攻撃を受けても奇襲されなくなります。
 だって告知してくれるんだよ?

【愛情薬@GALZOOアイランド】
 本来はレオ君が好きになる薬。
 今回は使用者の事が好きになっちゃう薬。
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