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従魔の心


―――ちりん。

首輪についた鈴を鳴らし、アシヤの高級住宅街を一人の少女が長い桃色の髪をなびかせ歩いていた。
太腿までを覆う豹柄のオーバーニーソックスが目を惹きつけ、スタジャンの裾からはソックスと同じ柄の布がちらちらと見え隠れしている。
頭部の猫耳と、腰から生えた二本の尻尾、その人間には存在しない器官をピクピクと震わせながら、少女――女の子モンスター、ねこまたまたは小さく鳴いた。

「…………にぅ」

彼女はこの殺し合いに対して反抗的な意識を持っている。
そもそもねこまたまたという種族は束縛されることを嫌うモンスターだ。
だというのに、いつもとは別の首輪をつけられ(鈴がついてるのが不思議だった)殺し合いを強要される始末。
彼女の機嫌を損ねるには十分すぎる仕打ちであった、誰があんなハニーの言うことを聞くものかと思う程度には。

とはいえ、ならばどうするのかという点になると良案は浮かばない。
今の状態はかつてイカ男爵に囚われていた頃よりも悪いと言える。
そうなると、あの時も何もできなかった自分に打つ手はあるのだろうか?

「…………レオ」

そんな弱い考えが頭をよぎり、自然とその名前を口にしていた。
イカ男爵の下から皆を救い出した若き魔物使い。
本人の実力はイカマンと同レベルかという情けないものだが、頼れる一面も併せ持つ、彼女が心を開いた数少ない人間。
彼がこの場にいたらどうするだろうか……きっとあの時と同じように、自分たちを率いてあのハニーを倒す術を探すに違いない。
だが、それと同じ道を取ることはまず不可能だ。
皆を統べる魔物使いがいないのでは、例え女の子モンスター全員で集まったとしても烏合の衆としかなりえない。

ならばどうするべきか……と若干面倒になりながらも思考を巡らせ、

「必殺―――」
「っ!?」

突然背後から聞こえた声に反応し、振り返る間をも惜しんで前方へと倒れこむように飛び込む。

「まぐろアッパァァァァ!!」

その判断が正しかったことを、数瞬前まで彼女のいた空間を貫いた黒まぐろが証明する。
まぐろアッパー、その名の通りまぐろを使った技をねこまたまたはよく知っていた。

「くっ、外した!?」
「キャプテンバニラ……?」

ねこまたまたよりも更に幼い容姿に海賊風の衣装を纏った少女。
その身には不釣り合いな大きさの黒まぐろを手にしているのは、かつてイカ男爵の下から逃れるためにレオを連れてきた張本人。
女の子モンスター、キャプテンバニラ以外の何者でもなかった。

「……どういう、つもり?」

襲撃者の正体に、ねこまたまたは若干の戸惑いを覚えながら問いかける。
性格こそ多少乱暴な面はあるが、無意味に戦闘を仕掛けるようなタイプでもなかったはずだ、それが殺し合いならば尚更。
なによりバニラはレオを強く慕っている、彼が望まないであろう行動をするとは思いもしなかった。

「どうもこうもないだろ、この状況で、どれだけ選択肢があると思ってるのさ」
「レオが、アタシ達が殺し合うことを望むと思うの?」

殺気を収めようとしないバニラへ、ねこまたまたは説得を試みる。
コミュニケーションを取るのは苦手だが、だからと言ってこのまま彼女を放置するわけにもいかないだろう。
それに戦って制するというのも難しい、キャプテンバニラとねこまたまたの強さは共にランクBと同等の物だが、
バニラの持つ氷属性はねこまたまたの弱点だ、真正面からの戦闘は分が悪い。

「あいつがこんなこと望むわけないさ、弱いくせに、馬鹿みたいに優しいんだから」
「……わかってるのに、そうするんだ」

責めるような視線に、バニラは俯きながら黒まぐろを持つ手に力を込める。

「ああ、わかってるよ……! こんなことレオは望まない、全員殺して戻ったところで、あいつは喜んだりしないって!」

だけど。
バニラは続ける。

「私達が殺し合わないと、レオが傷つけられる! それだけは、絶対にさせるわけにはいかない!」

叫びと共に上げた顔には、涙の溢れた後が残っている。
その姿を見て、ねこまたまたは自分とバニラの差を感じた。
レオの現状は自分たちへの「人質」という位置付けだ、そのためいきなり殺すということはないだろうとねこまたまたは判断した。
そして、それならば主の望まぬことをするべきではないと「従魔」としての思考で殺し合いへの反旗を決めたのだ。
そんな自分に対して、バニラは違う。
レオが傷つけられること自体が我慢ならない、それを防ぐためなら主が望まぬ事であろうと行なってみせる。
それは従魔としての思考ではない、一人の女性としての想い。

「そっか……うん、わかった」
「なら、ここで殺させてもらう……!」

黒まぐろを構え直すバニラに対し、ねこまたまたは僅かに重心を落とし―――

「嫌だ」

ぴょんと、一息で側の家の屋根に飛び乗ってしまう。

「なっ……!?」
「お前の考えはわかった、だから、お前とは戦わない。意味がない」
「意味って、お前、何もわかってないじゃ……あ!?」

まさか、という表情をするバニラを一瞥し、ねこまたまたは無防備に背を向ける。

「わかったって言った。アタシも殺し合いに参加する。それなら『今』この場でアタシ達が殺し合う必要はない……違う?」
「あ、うん……」

レオの従魔達が殺し合いに積極的になれば、彼が罰を受けることはない。
ならば殺し合いに乗った従魔同士で戦うことによるメリットは殆ど無いと言えるだろう。

「なら、ここでお別れ。さよなら」

一方的に告げ、ねこまたまたは屋根の向こう側へと姿を消してしまう。
残されたバニラは暫く呆然とし……糸が切れたかのようにその場へとへたり込んだ。

「もう、戻れないんだな……」

普段の気丈さなど微塵も見えない、か細い声で呟く。
イカ男爵を倒すため、レオの下に集まった仲間達。
自分はそれに刃を向けた、レオが望むはずもない、殺し合いに乗って。

「私は…………レオ……」


【アシヤ/一日目・朝】
【キャプテンバニラ@GALZOOアイランド】
[状態]:健康
[装備]:黒まぐろ@GALZOOアイランド
[道具]:支給品一式、未確認支給品×1
[思考]:1.レオを傷つけさせないために殺し合いに乗る

【黒まぐろ@GALZOOアイランド】
その名の通り黒まぐろ。
キャプテンバニラ族はこれを武器として使う。

「…………にぅ」

キャプテンバニラから逃れ、ねこまたまたは小さく鳴いた。

先ほどバニラに対して言った言葉は嘘だ。
レオのためだ等と言われても、やはり自分は主以外に従う気にはなれない。
我ながらよく口が回ったものだと感心しながら、ふと思いを馳せる。

「レオが傷つく、か……」

バニラの選択した行動が従魔として正しいのかどうか、彼女にはわからない。
だけど、誰かのために動くことができるというのは、少し羨ましいと感じていた。
それに―――。

「私も……お前が傷つくのは、嫌だ……」

―――ちりん。

鈴の音が、響き渡る。


【アシヤ/一日目・朝】
【ねこまたまた@GALZOOアイランド】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、未確認支給品×2
[思考]:1.ハニーに従う気はない
    2.レオが傷つくのは、嫌だ……




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