リープ・メモリーズ
一人の女の子が目を細めて、鼻を突き出し
踵を浮かし、周囲の匂いをくんくんと嗅いでいる。
踵を浮かし、周囲の匂いをくんくんと嗅いでいる。
「……やっぱり駄目ですね。
幸運のアイテム探しの応用でイケる気もしたのですが、
世の中、そこまで都合は良くありませんね」
幸運のアイテム探しの応用でイケる気もしたのですが、
世の中、そこまで都合は良くありませんね」
そう言いながら踵を地に着けて、
少女、ルーシー・ミンシアードは自分の足元に
寄り添うように座る一匹の黒猫に目を向ける。
少女、ルーシー・ミンシアードは自分の足元に
寄り添うように座る一匹の黒猫に目を向ける。
「どうやら、近くにはユウキはいないようです。
こうなれば地道に探すしかありませんね。
頑張りましょうニイさん」
こうなれば地道に探すしかありませんね。
頑張りましょうニイさん」
ニイさんと呼ばれた黒猫もそれに応えるように小さく頷くと
「ニィー」と少女を励ますように鳴き声をあげる。
「ニィー」と少女を励ますように鳴き声をあげる。
ルーシー・ミンシアード。
ハーフエルフと呼ばれる混血種の為に成人するまでの
成長が遅い種族の女の子。
故にその見た目は10代前半位にしか見えないが、
れっきとした18歳の娘である。
その彼女に付き添う黒猫のニイさん。
彼女達の関係は少し特殊であり、
彼女は誰かにニイさんを紹介する時には
その猫との関係の事を【魂の兄妹】と告げている。
ハーフエルフと呼ばれる混血種の為に成人するまでの
成長が遅い種族の女の子。
故にその見た目は10代前半位にしか見えないが、
れっきとした18歳の娘である。
その彼女に付き添う黒猫のニイさん。
彼女達の関係は少し特殊であり、
彼女は誰かにニイさんを紹介する時には
その猫との関係の事を【魂の兄妹】と告げている。
そんな彼女たちが今いる場所はハクアと呼ばれる森林地帯である。
殆ど未開発の状態であり、自然がそのままとなっているが
それゆえに逆に普段はあまり人が寄り付かないような、
そんな場所である。
殆ど未開発の状態であり、自然がそのままとなっているが
それゆえに逆に普段はあまり人が寄り付かないような、
そんな場所である。
「そうは思いましても、ここは何処なんでしょうかニイさん?
不慮の事態に対応するのも冒険者の務めですが……」
不慮の事態に対応するのも冒険者の務めですが……」
突然送られてきた、見慣れぬ土地。
他の生き物の気配が感じられない奇妙な感覚。
そして、彼女たちに架せられた最悪の命令。
他の生き物の気配が感じられない奇妙な感覚。
そして、彼女たちに架せられた最悪の命令。
『殺し合いをして貰います』
ハニーの言葉を思い出して、ルーシーは眉を若干顰める。
「あのハニワ嫌いですね……割っちゃいましょうかニイさん?」
ルーシーの物騒な発言に対して黒猫もキバを剥き出しにして
「ギニャー」と不気味な鳴き声で同意する。
「ギニャー」と不気味な鳴き声で同意する。
「さて……何はともあれ準備からです。
……よっこいしょっと」
……よっこいしょっと」
彼女の小柄な体格には少し大きめのデイバックを地面に降ろし、
頭から上半身を突っ込む形でバックの中を漁っていく。
頭から上半身を突っ込む形でバックの中を漁っていく。
「地図にコンパスに食料に名簿……これは?」
手に触れた物を自身の身体をデイバックから
引き抜く勢いでそのまま取り出す。
ルーシーの手に握られていたのは一本の小刀。
だが、その刀身からは禍々しい気が放たれている。
不吉な印象を与えるそれにルーシーは眉を顰める。
引き抜く勢いでそのまま取り出す。
ルーシーの手に握られていたのは一本の小刀。
だが、その刀身からは禍々しい気が放たれている。
不吉な印象を与えるそれにルーシーは眉を顰める。
「呪いのアイテムの一種でしょうか?
今は平気ですけど、気当たりし過ぎると
あまり良くなさそうです、閉まっちゃいましょう」
今は平気ですけど、気当たりし過ぎると
あまり良くなさそうです、閉まっちゃいましょう」
小刀をデイバックにしまい、
代わりに他の残されていた物を取り出す。
一つはルーシーが愛用しているクロスボウと同じ物。
もう一つは「忍者マスター」という題名の奇妙な絵画。
代わりに他の残されていた物を取り出す。
一つはルーシーが愛用しているクロスボウと同じ物。
もう一つは「忍者マスター」という題名の奇妙な絵画。
「……これは…格好良いですね……」
ほぅっと若干顔を赤らめて絵画に魅入るルーシーに
今度ばかりはニイさんも理解できないという感じに
「ニィ…」と力無く項垂れている。
今度ばかりはニイさんも理解できないという感じに
「ニィ…」と力無く項垂れている。
「これは後でユウキにあげるとして、
そろそろ行きましょうかニイさん」
そろそろ行きましょうかニイさん」
絵画をしまいこみ、デイバックを負ぶさり、
履いているローラーブレードの感覚を確かめる。
ニイサンも一度顔をカシカシと掻いた後に
ルーシーの傍にしっかりと寄り添う。
履いているローラーブレードの感覚を確かめる。
ニイサンも一度顔をカシカシと掻いた後に
ルーシーの傍にしっかりと寄り添う。
「行きますよ、ニイさん」
黒猫に対して微笑むと、すぐに表情を切り変える。
彼女もまた冒険者としての鍛錬を積んでいる身である。
この先にどんな者が潜んでいるか分からないのであれば
ここから先は気を引き締めていかなければならない。
スカウトとしての感覚を研ぎ澄まし、
周囲への警戒を強めたその時であった。
彼女もまた冒険者としての鍛錬を積んでいる身である。
この先にどんな者が潜んでいるか分からないのであれば
ここから先は気を引き締めていかなければならない。
スカウトとしての感覚を研ぎ澄まし、
周囲への警戒を強めたその時であった。
「ハアァァァァッ!!」
周囲の木々を揺らし、その合間を高速で飛び交い
移動してくる謎の気配。
移動の衝撃で木の葉が数枚落ちてくるのとほぼ同時に
ルーシーの頭上より何者かが飛来してきた。
移動してくる謎の気配。
移動の衝撃で木の葉が数枚落ちてくるのとほぼ同時に
ルーシーの頭上より何者かが飛来してきた。
「……っ!」
慌ててローラーブレードを駆り、その場を逃れる。
間一髪という所で謎の襲撃者の攻撃を逃れたルーシーが
クロスボウを先程まで自分が立っていた場所に向ける。
その場所に立っているのは見た目だけなら
体操服を着た女の子に見えるがただ一点、
普通とは異なる所がある女性。
彼女からは爬虫類の様な黒光りする尾が生えていた。
間一髪という所で謎の襲撃者の攻撃を逃れたルーシーが
クロスボウを先程まで自分が立っていた場所に向ける。
その場所に立っているのは見た目だけなら
体操服を着た女の子に見えるがただ一点、
普通とは異なる所がある女性。
彼女からは爬虫類の様な黒光りする尾が生えていた。
「……モンスター!?」
初めて見るタイプではあるが人間に酷似した
容姿のモンスターは多数存在する。
自分を襲撃してきたこの女の子もその一種であるのならば
本能的に人間を襲ってきたのかとルーシーは考える。
だが、本能的に襲ってきたのであれば、
そのモンスターの表情はあまりにも“痛々しげ”であった。
容姿のモンスターは多数存在する。
自分を襲撃してきたこの女の子もその一種であるのならば
本能的に人間を襲ってきたのかとルーシーは考える。
だが、本能的に襲ってきたのであれば、
そのモンスターの表情はあまりにも“痛々しげ”であった。
「お前には何の恨みも無い……だがっ!!」
言うや否や、尾の生えた少女は地面を蹴ると大きく飛び上がり、
人間ではありえないほどの跳躍力で自分へと迫り来る。
少女にルーシーはクロスボウを向けるが
それを察した少女は自らの尾で近くの木を叩きつけ、
反動を利用して自らの進行方向を強引に変化させる。
先程の高速移動の正体こそ掴めたものの三次元的に
移動する少女にクロスボウの照準が定まらない。
そんなルーシーが躊躇する隙をついては少女が
無数の蹴りを繰り出してくる。
それをギリギリの所でルーシーは避けていくが
疲労が蓄積し、次第に追い詰められていく。
人間ではありえないほどの跳躍力で自分へと迫り来る。
少女にルーシーはクロスボウを向けるが
それを察した少女は自らの尾で近くの木を叩きつけ、
反動を利用して自らの進行方向を強引に変化させる。
先程の高速移動の正体こそ掴めたものの三次元的に
移動する少女にクロスボウの照準が定まらない。
そんなルーシーが躊躇する隙をついては少女が
無数の蹴りを繰り出してくる。
それをギリギリの所でルーシーは避けていくが
疲労が蓄積し、次第に追い詰められていく。
(…ただのモンスターにしては戦術が出来すぎてますね)
普通のモンスターにこんな高度な戦術は考えられない。
ただがむしゃらに襲ってくるだけである。
だからこそ、ルーシーも予想外の攻撃に
対処が遅れ続けているのである。
ただがむしゃらに襲ってくるだけである。
だからこそ、ルーシーも予想外の攻撃に
対処が遅れ続けているのである。
「いい加減に諦めろっ!」
狙いを定めさせぬように飛び交いながら少女が
ルーシーを罵倒する。
だが、例えどんなに追い詰められようと
ルーシーの中に諦めるという感情は無い。
それは自分に世界の優しさを教えてくれた少年との約束だから。
ルーシーを罵倒する。
だが、例えどんなに追い詰められようと
ルーシーの中に諦めるという感情は無い。
それは自分に世界の優しさを教えてくれた少年との約束だから。
一本の木を背にし、ルーシーは少女と向かい合う。
息は切れ、もう殆ど動く事は出来そうに無い。
このモンスターの少女を倒すチャンスは多分一度きり。
ルーシーが諦めたと思ったのか少女はゆっくりと
ルーシーへと近寄ってくる。
息を整え、背にした木から離れ、更に奥へと逃れる。
息は切れ、もう殆ど動く事は出来そうに無い。
このモンスターの少女を倒すチャンスは多分一度きり。
ルーシーが諦めたと思ったのか少女はゆっくりと
ルーシーへと近寄ってくる。
息を整え、背にした木から離れ、更に奥へと逃れる。
「逃しは……しないっ!!」
再び少女が跳躍し、ルーシーに止めをさそうと迫る。
だが、ルーシーが逃れた奥の空間を目にして少女の顔色が変わる。
だが、ルーシーが逃れた奥の空間を目にして少女の顔色が変わる。
中央に枯れた井戸があるだけの広い空間。
その中央、井戸の傍に立っているルーシーの周りには
当然、木々は存在しない。
しかも、既に少女はルーシー目掛けて飛び出してしまっている。
今までの様に進行方向を変えようにもその対象は周囲に存在しない。
その中央、井戸の傍に立っているルーシーの周りには
当然、木々は存在しない。
しかも、既に少女はルーシー目掛けて飛び出してしまっている。
今までの様に進行方向を変えようにもその対象は周囲に存在しない。
「捉えました」
ルーシーがにやりと不敵に笑い、
少女へとクロスボウの照準を向ける。
青褪めた少女の表情に若干の迷いが残るが、
ルーシーはクロスボウの引き金を引いた。
少女へとクロスボウの照準を向ける。
青褪めた少女の表情に若干の迷いが残るが、
ルーシーはクロスボウの引き金を引いた。
空を裂いて、鋼鉄の矢が少女へと飛んでいく。
青褪めた表情だった少女が何かを決意するように
唇を噛み締める。
青褪めた表情だった少女が何かを決意するように
唇を噛み締める。
「……負けられるかぁっ!!」
自らの尾を廻し、自身の身体を無理やり
螺旋状に旋廻しているような状態にする。
それで進行方向が変わった訳ではない、
だが姿勢は大いに変化している。
ルーシーが急所へと的確に狙いを定めていた矢は
少女へと飛び、急所ではなく少女の腕へと命中した。
螺旋状に旋廻しているような状態にする。
それで進行方向が変わった訳ではない、
だが姿勢は大いに変化している。
ルーシーが急所へと的確に狙いを定めていた矢は
少女へと飛び、急所ではなく少女の腕へと命中した。
「……う……ぐぅ…!」
少女から呻き声が漏れる。
そのまま地面に着地した少女に一瞬、
少女の鬼気迫る雰囲気に呑まれてしまっていた
ルーシーが再び構えようとしたが、
その腕をクロスボウごと蹴り上げられてしまう。
そのまま地面に着地した少女に一瞬、
少女の鬼気迫る雰囲気に呑まれてしまっていた
ルーシーが再び構えようとしたが、
その腕をクロスボウごと蹴り上げられてしまう。
「あぅっ!?」
宙を舞ったクロスボウが音を立てて地面に落ちる。
二の腕に矢が突き刺さったままの少女が
腕を庇いながらルーシーの正面に立っている。
初めて面と向き合った少女の表情は
敵意と言ったものよりもただ深い悲しみを
そこに浮かべている。
二の腕に矢が突き刺さったままの少女が
腕を庇いながらルーシーの正面に立っている。
初めて面と向き合った少女の表情は
敵意と言ったものよりもただ深い悲しみを
そこに浮かべている。
「……許せ」
ルーシーから視線を逸らし、
少女が足を振り上げる。
少女が足を振り上げる。
(………ユウキっ!!)
目を瞑り、身体を強張らせる。
だが、最後の時はいつまで経っても訪れる事が無い。
訝しがり、目を開けたルーシーの瞳に映ったのは
自分の頭上間近へと迫っていた少女の踵と
その間に割って入る鞘に収まったままの一振りの刀。
だが、最後の時はいつまで経っても訪れる事が無い。
訝しがり、目を開けたルーシーの瞳に映ったのは
自分の頭上間近へと迫っていた少女の踵と
その間に割って入る鞘に収まったままの一振りの刀。
「……甲斐那兄さん?」
その見覚えのある一振りの刀。
最早、思い出の中にしか存在しないと思っていた。
だが、刀の主はルーシーの想像とは違っていた。
一着の花の香りのする着物を肩に掛けた
黒いスーツを着た端正な顔立ちの青年。
その青年がルーシーを庇うようにして
刀を突き出している。
最早、思い出の中にしか存在しないと思っていた。
だが、刀の主はルーシーの想像とは違っていた。
一着の花の香りのする着物を肩に掛けた
黒いスーツを着た端正な顔立ちの青年。
その青年がルーシーを庇うようにして
刀を突き出している。
「……クッ!」
少女が足を離し、その場から飛び退こうとした
瞬間に一陣の閃光が奔る。
翻り、着地した少女の体操服の臍の辺りだけが
綺麗に横一文字に裂けている。
少女の体には触れる事無くその衣服のみを切った
青年の驚くべき剣技に少女の額から冷や汗が伝う。
瞬間に一陣の閃光が奔る。
翻り、着地した少女の体操服の臍の辺りだけが
綺麗に横一文字に裂けている。
少女の体には触れる事無くその衣服のみを切った
青年の驚くべき剣技に少女の額から冷や汗が伝う。
軽い金属音を立てて、青年は刀を鞘に再び収める。
「…警告だ……次は斬る…」
冷めた視線のまま少女を見つめ、
青年が威圧する。
青年が威圧する。
「……チッ……!」
状況が不利な事を悟り、
舌打ちと共に少女の魔物は森の奥へと逃げていった。
舌打ちと共に少女の魔物は森の奥へと逃げていった。
それをじっと眺めると少女を追う事はせずに
青年がルーシーへと近寄る。
青年がルーシーへと近寄る。
「…これは……君の猫か?」
そう言った青年の足元から黒猫のニイさんがひょっこりと顔を出し、
心配そうにルーシーへと顔をすり寄せる。
心配そうにルーシーへと顔をすり寄せる。
「…そうですか、ニイさんがこの方を…」
そこまできて、限界が来たのか
ルーシーは膝から崩れるように地面に尻餅を付く。
ルーシーは膝から崩れるように地面に尻餅を付く。
「……変わった……猫だ。
…まるで助けを求めるようだった…」
…まるで助けを求めるようだった…」
青年はルーシーに寄り添う黒猫を不思議そうに眺めている。
「ニイさんと私は魂の兄妹ですので」
そういってルーシーはニイさんを撫で、
ニイさんも愛おしそうにその手をなめている。
ニイさんも愛おしそうにその手をなめている。
青年にはルーシーの言う言葉の意味は分からなかったが、
その光景を見て、ただの飼い主とペットの関係ではないのだろうと感じる。
ただ、その光景を眺める内にその胸中に懐かしく、
それでいて苦しい思い出が奔り、
気がつけば青年はルーシーの頭を撫でていた。
その光景を見て、ただの飼い主とペットの関係ではないのだろうと感じる。
ただ、その光景を眺める内にその胸中に懐かしく、
それでいて苦しい思い出が奔り、
気がつけば青年はルーシーの頭を撫でていた。
「……あっ」
急に見ず知らずの人間にそんな事をされれば
嫌悪感が湧く筈なのだが、不思議とルーシーの中で
青年に対しての嫌悪感は湧いてこない。
頭を撫でるその青年からは、
まるでノスタルジィしか感じられないから故に。
嫌悪感が湧く筈なのだが、不思議とルーシーの中で
青年に対しての嫌悪感は湧いてこない。
頭を撫でるその青年からは、
まるでノスタルジィしか感じられないから故に。
「……すまない…嫌だったか?」
申し訳無さそうにそう言い、
青年はルーシーから手を離し、
その場を離れようとする。
青年はルーシーから手を離し、
その場を離れようとする。
「いえ、突然の事で驚いただけです。
……もしかしたら、私はあなたの悲しみを
少しだけなら癒す事が出来るかもしれません」
……もしかしたら、私はあなたの悲しみを
少しだけなら癒す事が出来るかもしれません」
青年を引き止めただけでなく、
意外な申し出をするルーシーに
青年は怪訝そうな表情をする。
意外な申し出をするルーシーに
青年は怪訝そうな表情をする。
「……信じて貰えないかもしれませんが」
項垂れるルーシーの傍に砂利を踏みしめながら
青年が近寄り、ルーシーの傍へと腰掛ける。
青年が近寄り、ルーシーの傍へと腰掛ける。
「……俺は…柳…柳秋光だ…」
名を名乗り、黒猫をじゃらしながら
微かに微笑んでルーシーへと柳は向き直る。
微かに微笑んでルーシーへと柳は向き直る。
「私はルーシー・ミンシアード、
そっちがニイさんです」
そっちがニイさんです」
それに合わせる様にニイさんも小さく鳴いてみせる。
「……それで…俺は……どうすれば良い?」
ルーシーの言葉全てを柳は信じた訳ではない、
ただ、ルーシーの不思議な雰囲気が何となく
信用に値するとそう感じさせたからだ。
ただ、ルーシーの不思議な雰囲気が何となく
信用に値するとそう感じさせたからだ。
「……では、瞳を閉じて下さい」
「……わかった…」
目を閉じ、暗闇の中で柳の額に暖かな感触が触れる。
ややあってその意識は白い闇に呑まれていった。
ややあってその意識は白い闇に呑まれていった。
……
…………
………………
懐かしい記憶が蘇える。
暖かな日差し、花の香り、そして…
暖かな日差し、花の香り、そして…
『お兄ちゃ~ん!』
自分に向かって手を振る妹の姿。
気がつけば肩に掛けていた筈の着物は無く、
当たり前のように目の前の妹が羽織っている。
柔らかい時間だけが過ぎていく。
妹が自分へと近寄り、横に寄り添う。
その大切な人の頭を優しく撫でる柳の眼から
一滴の涙が零れた。
気がつけば肩に掛けていた筈の着物は無く、
当たり前のように目の前の妹が羽織っている。
柔らかい時間だけが過ぎていく。
妹が自分へと近寄り、横に寄り添う。
その大切な人の頭を優しく撫でる柳の眼から
一滴の涙が零れた。
…………………
…………
……
頬を伝う冷たい感触で目が覚める。
その目の前でルーシーが柳の額に自分の額を当てていた。
目が覚めた柳からルーシーがそっと顔を離す。
その目の前でルーシーが柳の額に自分の額を当てていた。
目が覚めた柳からルーシーがそっと顔を離す。
「……今のは…君が?」
自分が先程見た光景を思い出し、
柳は頬を拭う事もせずにルーシーに質問する。
柳は頬を拭う事もせずにルーシーに質問する。
「今見たのはあなたの思いです。
私はそれを後押ししたに過ぎません」
私はそれを後押ししたに過ぎません」
ポンポンと自分の服についた土を掃いながら、
ルーシーは立ち上がろうとするが
貯まっていた疲労ゆえに足元がふらつき倒れそうになる。
そのルーシーを柳が支える。
ルーシーは立ち上がろうとするが
貯まっていた疲労ゆえに足元がふらつき倒れそうになる。
そのルーシーを柳が支える。
「…そうか……なら…お礼という訳ではないが……
……俺が君を守ろう…」
……俺が君を守ろう…」
柳は再びルーシーの頭を撫でた。
【ハクア/1日目・朝】
【ルーシー・ミンシアード@ぱすチャ】
[状態]:疲労(中程度)、右手に打撲痕
[装備]:クロスボウ
[道具]:基本支給品、首切り刀@RanceⅥ、謎の絵画@戦国ランス
[思考]基本:皆で協力して脱出
1:ユウキの探索
[備考]:ルーシーEND後からの参加です
【ルーシー・ミンシアード@ぱすチャ】
[状態]:疲労(中程度)、右手に打撲痕
[装備]:クロスボウ
[道具]:基本支給品、首切り刀@RanceⅥ、謎の絵画@戦国ランス
[思考]基本:皆で協力して脱出
1:ユウキの探索
[備考]:ルーシーEND後からの参加です
【柳 秋光@大悪司】
[状態]:健康
[装備]:甲斐那@夜が来る!!
[道具]:基本支給品、ガラスの芸術@RanceⅥ
[思考]基本:ルーシーを守る
[状態]:健康
[装備]:甲斐那@夜が来る!!
[道具]:基本支給品、ガラスの芸術@RanceⅥ
[思考]基本:ルーシーを守る
「………クッ!!」
少女の魔物は自身の二の腕に突き刺さっている
矢を強引に引き抜き、地面へと投げ捨てる。
そのまま柳によって裂かれた上着を脱ぐと
千切り、その場で包帯の代わりにする。
矢を強引に引き抜き、地面へと投げ捨てる。
そのまま柳によって裂かれた上着を脱ぐと
千切り、その場で包帯の代わりにする。
「…こんなんじゃ駄目だ…私が今度は……」
女の子モンスター、やもりんは険しい表情で
自分の主人の事を思い出す。
マスターやもりんとカイトクローンの間に
産まれたのにただのやもりんでしかなかった
自分を必要としてくれ、
種族としての成長の限界を悟っていた自分に
限界を超えるキッカケと温かい感情をくれた人。
一時ではあれ、恋人として、伴侶として、
そして親としての愛情をくれた掛け替えの無い大切な主人。
自分の主人の事を思い出す。
マスターやもりんとカイトクローンの間に
産まれたのにただのやもりんでしかなかった
自分を必要としてくれ、
種族としての成長の限界を悟っていた自分に
限界を超えるキッカケと温かい感情をくれた人。
一時ではあれ、恋人として、伴侶として、
そして親としての愛情をくれた掛け替えの無い大切な主人。
それが今、何も知らずに囚われの身となっている。
自分達があの島に囚われの身であった時、
あの少年は我が身を投げ打って自分達を助けてくれた。
だからこそ、次は自分が主人を助ける時なのである。
その過程を知ればあの心優しい少年は自分をきっと許さないだろう。
その時は何も言わずに主人の元を去ろう。
辛いし、想像しただけで胸が張り裂けそうな思いがするが
それでも、譲れない願いなのだ。
あの少年は我が身を投げ打って自分達を助けてくれた。
だからこそ、次は自分が主人を助ける時なのである。
その過程を知ればあの心優しい少年は自分をきっと許さないだろう。
その時は何も言わずに主人の元を去ろう。
辛いし、想像しただけで胸が張り裂けそうな思いがするが
それでも、譲れない願いなのだ。
「……レオを…俺が助けるんだ…」
【ハクア/1日目・朝】
【やもりん@ギャルZOO】
[状態]:左腕に矢創(処置済み)、上半身裸
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認×2
[思考]基本:優勝してレオを助ける
[備考]:脱いだ衣服は女の子モンスターなので
いずれ再生します。
【やもりん@ギャルZOO】
[状態]:左腕に矢創(処置済み)、上半身裸
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認×2
[思考]基本:優勝してレオを助ける
[備考]:脱いだ衣服は女の子モンスターなので
いずれ再生します。
【首切り刀@RanceⅥ】
見当かなみのSランク武器。
剣気に呑まれると危険。
見当かなみのSランク武器。
剣気に呑まれると危険。
【謎の絵画@戦国ランス】
「忍者マスター」と書かれた変な絵。
…なんなんだ、これ?
「忍者マスター」と書かれた変な絵。
…なんなんだ、これ?
【甲斐那@夜が来る!!】
無銘の日本刀です。
握ると、なぜか胸に悲しみがこみ上げてきます…。
無銘の日本刀です。
握ると、なぜか胸に悲しみがこみ上げてきます…。
【ガラスの芸術@RanceⅥ】
魔法への抵抗力が上がる。
壊れそうだけど壊れないのが芸術!
魔法への抵抗力が上がる。
壊れそうだけど壊れないのが芸術!