日本刀の製法


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「折れず、曲がらず、良く斬れる」の3要素を非常に高い次元で同時に実現させるため、日本刀の原材料となる鋼の製法、選定、刀剣の鍛錬には、古来より多くの刀工が工夫している。今日においては、古くから伝わる卸鉄(おろしがね。鉄材を再還元して刀剣用に供する鋼を造ること)や自家製鉄した鋼を用いる刀工もおり、日本固有の伝統技術として継承されている。

現在、一般的に言われている日本刀の製法は幕末の水心子正秀の秘伝書をもって述べているに過ぎない。日本刀の製法ではなく、正しくは新々刀の製法となる。

現代刀工が主たる原材料としている、たたら吹きによる玉鋼を機軸に、製鉄、作刀の技術の概略を以下に記す。
質の高い鋼の作成

たたら吹き
   日本刀の材料となる鋼を和鋼(わこう)もしくは玉鋼(たまはがね)と呼ぶ。玉鋼は日本独自の製鋼法である「たたら吹き」で造られる。諸外国の鉄鉱石を原料とする製鋼法とは異なり、原料に砂鉄を用いることで低温で高速還元を実現し、さらには近代的な製鋼法に比べて不純物の少ない砂鉄を原料として使うため、良質の鋼を得ることができる[2]。
水減し
   熱した玉鋼を鎚(つち)で叩き、薄い扁平な板をつくる。これを水に入れて急冷すると、余分な炭素が入っている部分が剥落ちる。これを「水減し」または「水圧し(みずへし)」という。ここまでがへし作業と呼ばれる地金づくりである。
積沸かし
   この焼きを入れて硬くした塊はへし金(へしがね)と呼ばれ、鎚で叩いて小さな鉄片に砕く。その破片の中から炭素分の多い硬い鉄と少ない軟らかい鉄に分け、これらの鉄片を別々に「てこ」と呼ばれる鍛錬用の道具の先に積み上げて和紙でくるむ。周囲に藁灰を付けさらに粘土汁をかけて火床(ほど)に入れ表面の粘土が溶けるくらい加熱する。藁灰(プラント・オパール由来の珪酸分)と粘土の珪酸分が加熱によってガラス様に熔解して鋼の接着面の表面を覆い、鉄の酸化皮膜(酸化鉄(II)および酸化鉄(II,III))形成を阻害することで鋼の焼減りすることを防ぐ(※溶けた珪酸による酸化皮膜防止は同様の現象を利用して後述の鍛接の際に鋼の圧着にも用いられる。またいずれの鍛接の際にも融けたガラス状になった珪酸分は叩き出されて鋼の外に飛び散り、鋼間の結晶同士は圧着される)。小槌で叩いて6×9cmくらいに固める。鉄片が足りなければ、さらに積み上げ加熱して小槌で叩いて成形し所要の1.8-2.0kg程度の量にする。以上が「積沸かし」の工程である。玉鋼以外に炭素量の多い銑鉄と包丁鉄と呼ばれる純鉄も積沸かしと次の下鍛えの作業を行なう。
鍛錬(下鍛え)
   赤熱したブロックを鎚(つち)で叩き伸ばしては中央に折り目を入れて折り重ねる「折り返し鍛練」を縦横方向で繰り返し行う。ちなみに刀匠(横座)と弟子(先手)が交互に刀身を鎚で叩いていく「向こう槌」が「相槌を打つ」という言葉の語源となった。この段階では5-6回程度の折り返しが行なわれる。

鋼の組合せ

積沸かし
   玉鋼、銑鉄、包丁鉄の3種類の下鍛えが済めば再び小槌で叩いて鉄片にし、それぞれの鋼の配合が適切になるように選んで、1回目の積沸かしと同じく積み上げて溶かし固める。この段階で含有炭素量が異なる心金(しんがね)、棟金(むねがね)、刃金(はのかね)、側金(がわがね)の4種類の鋼に作り分けられる。
鍛錬(上鍛え)
   心金で7回、棟金で9回、刃金では15回、側金では12回程度の折り返しが行なわれる。叩き延ばした鋼を折り返しながら鍛錬を重ねることで、硫黄などの不純物や余分な炭素、非金属介在物を追い出し、数千層にも及ぶ均質で強靭な鋼へと仕上がっていく。
鍛接と沸延べ
   日本刀の鋼の構成と各部名称(四方詰鍛えの断面)
   造込みには他にも、本三枚鍛え、捲り鍛え、甲伏せ鍛え、無垢鍛えがある。
   下鍛えと2回目の積沸かし、上鍛えによって心金、棟金、刃金、側金の4種類の鋼が得られた後、棟金、心金、刃金の3層を鍛接して厚さ20mm、幅 40mm、長さ90mm程の材料が4個取れるくらいに打ち伸ばして4つに切り離す。これは「芯金」と呼ばれる。側金も加熱され長さが芯金の倍になるくらいに叩き伸ばされ中央から切り離されて、芯金と同じ長さの側金が2本作られる。
   (四方詰鍛えの造込みでは、)側金、芯金、側金の順で重ねられ、沸かして鍛接されて、厚さ15mm、幅30mm、長さ500-600mm程度に打ち伸ばされる。「てこ」が切り離されて、刀の握り部分になる「茎(なかご)」が沸かされ鍛接される。
素延べ
   刀の形に打ち延ばす「素延べ(すのべ)」を行い、先端を3角に切り落とすがそのままでは刃先側に棟金や心金が現れるため、とがった先を背の側に打ち曲げて硬い刃金だけが刃の側に来るようにする[出典 1]。ここでの姿が最終的な日本刀の完成形を決めるため、慎重に小槌で叩き形を整えていく。
火造り
   刀身の棟は三角になるように叩いて、刃の側(平地)は薄くなるように叩き延ばす。茎の棟を叩いて丸みを付け、最後に「鎬地(しのぎち)」を叩いて姿を整える。刀身全体をあずき色まで低く加熱し除冷する。
空締め
   冷えてから表面の黒い汚れを荒砥石で砥ぎ落とし、平地と鎬地を小槌で叩いて冷間加工を行なう。棟と刃の直線を修正して、銛(せん:銑とも)と呼ばれる鉄を削る押切りの刃のような大振りの手押しかんなで凹凸を削る。この段階で「刃渡り」と「区(まち)」が定まる。
生砥ぎ
   かんなの削り跡を砥石で砥ぎ落とす「生砥ぎ(なまとぎ)」を行なう。その後、水を含む藁灰で油脂分を落とし乾燥させる。

温度管理

土置き
   加熱した刀身を水などで急激に冷やす「焼き入れ」の準備として、平地用、刃紋用(刃文用)、鎬地用の3種類の焼場土(やきばつち)を刀身に盛る「土置き」を行なう。平地に平地用の焼場土を均一に薄く塗り、刃紋に筆で刃紋用焼場土を描く。最後に刃紋から棟までを鎬地用焼場土を厚く盛る。鎬地の焼場土を厚くすることで、焼き入れでの急冷時に刃側はすばやく冷やされ十分に焼きが入り、棟の側は比較的緩慢に冷えるために焼きはそれほど入らなくなる。焼きによって容積が膨張しながら硬くなり、日本刀独特の刃側が出っ張った湾曲を生む。棟の側は膨張が少なく硬度より靭性に富んだ鋼となり硬いが脆い刃側の鋼を支える機能を担う。
焼き入れ
   通常、刀匠は焼き入れの時には作業場の照明を暗くして、鋼の温度をその光加減で判断する。土置きした刀身を火床に深く入れ、先から元まで全体をむらなく800℃程度にまで加熱する。加熱の温度は最も重要であり、細心の注意を払って最適の加熱状態を見極め、一気に刀身を水槽に沈め急冷する。刀身は前述の通り水の中で反りを生じ、十分な冷却の後に引き上げられ、荒砥石で研がれ焼刃が確認される。その後、刀身は炭の火焔にあぶられて「焼き戻し」が行なわれる。これが「合取り(あいとり)」と呼ばれる作業である。「合取り」を行うことによって、刃に適度な柔軟性を与える。反りは横方向にも少し生じるので木の台で小槌を使い修正する。なかごも焼きなまして形を整える。
   焼き入れにより、刀の表面にはマルテンサイトと呼ばれる非常に固い組織が現れる。マルテンサイトの入り方によって、肉眼で地鉄の表面に刃文が丸い粒子状に見えるものを錵(にえ)または沸(にえ)と呼び、1つ1つの粒子が見分けられず細かい白い線状に見えるものを匂(におい)と区別する。
   他の刃物類では、水以外にも油などで焼きを入れることあり、日本刀の場合では戦中の軍刀などで行われたが、現在では油で日本刀に焼きを入れることは少ないと思われる。油で焼きを入れると急冷しないため刃切れなどの失敗は少ないが、柔らかい鋼組織となり、良く切れず、切れもちしない。また、全て匂い出来となる。刃文に冴えを出せず斬れ味は別(斬れないし、切れもちがわるい)としても、美術工芸品を志向する現代刀には不向きだからである[3]。なお、文部科学省の定める現代日本刀の定義は水焼きであるので、油焼きは銃刀法違法となる。

仕上げ

鍛冶押し(かじおし)
   焼き入れを終了させた刀の反り具合を修正し、刀工が荒削りをする。この時に細かな疵や、肉の付き具合、地刃の姿を確かめながら最終的な調整を行う。
茎仕立て
   茎(なかご)は銑ややすりで形を整え、柄(つか)をはめる時に使用する目釘穴を普通は1つ、居合用の刀の場合2つ以上開ける。この後に刀工独自の鑢目(やすりめ、滑り止め目的)を加える。
樋掻き
   樋(ひ)をいれる物はここで入れる。
下地研(したじとぎ)
   地金と刃紋を主に砥石で研ぐ。
銘切り
   刀工は最後に鑿(たがね)を使い、自らの名前や居住地、制作年などを茎に銘を切る。一般的に表(太刀や刀を身に付けた際、外側になる面)に刀工名や居住地を切り、裏に制作年や所持者名などを切ることが多いが、裏銘や無銘など例外もある。
仕上研(しあげとぎ)
   地金と刃紋を研ぎ、磨き棒で鏡面加工する。帽子を「なるめ」加工する。

刀工が行う一通りの作業が終わり、これからは研師により最終的な研ぎを行うが、室町時代以前は刀工自ら研磨も行っていたといわれる。日本刀研磨で、他の刃物砥ぎと大きく相異する点としては、刃物としての切れ味を前提としつつ、工芸品としての日本刀の美的要素を引き出すことを主眼としている点、刃部のみで無く、刀身全体に砥ぎを施すことなどがあげられる。鞘師によりその刀に見合った鞘を作成することになる。日本刀は刀工だけが造るものではなく、研師や鞘師、塗師、蒔絵師、金工師、白銀師などの職人によって初めて完成するものである[4]。それぞれの職人は、大きく以下の部分を担当する。

   * 刀工(とうこう):刀身を作る。「刀匠」、「刀鍛冶」とも呼ばれる。
   * 研師(とぎし):刀身の研ぎを行う。
   * 鞘師(さやし):鞘の作成を行う。
   * 白銀師(しろがねし):はばきや鍔などの金属部分を作成する。
   * 柄巻師(つかまきし):柄部分に紐を巻く。
   * 塗師(ぬりし)、蒔絵師(まきえし)、金工師(きんこうし):鞘や鍔などに装飾を施す。

日本刀の研磨

日本刀の研磨に関しては、日本刀研磨 を参照。
各部名称
各部の名称

日本刀は、まず本体である刀身とその外装品である拵え(こしらえ)に分けられ、拵えは鞘(さや)、柄(つか)、鍔(鐔、つば)の各部に分けられる。部位および形状は右図を参照。

  1. 柄頭(つかがしら)/頭(かしら)
  2. 鮫肌(さめはだ)
  3. 柄糸(つかいと)/柄巻(つかまき)
  4. 目釘(めくぎ)
  5. 茎(なかご)
  6. 柄(つか)
  7. 目貫(めぬき)
  8. 縁(ふち)
  9. 鍔(鐔、つば)
 10. 切羽(せっぱ)
 11. ハバキ
 12. 棟(むね)/峰(みね)/背(せ)
 13. 刃紋(はもん)
 14. 樋(ひ)/棒樋(ぼうひ)
 15. 長さ
 16. 反り(そり)
 17. 鎬(しのぎ)
 18. 鎬地(しのぎじ)
 19. 地(じ)/平地(ひらじ)
 20. 刃(は)
 21. 横手(よこて)
 22. 切先/鋒(きっさき)
 23. 頭金(かしらがね)
 24. 巻止(まきどめ)
 25. 鯉口(こいぐち)
 26. 栗形(くりがた)
 27. 鵐目(しとどめ)
 28. 下緒(さげお)
 29. 鞘(さや)
 30. 小尻/鐺(こじり)
 31. ものうち
 32. 刃先(はさき)
 33. 帽子(ぼうし)

刀身

日本刀の多くは片刃であり、刃のない側は棟(むね)または峰(みね)、また刃と棟の間の膨らんだ部分を鎬(しのぎ)と呼ぶ。鎬地と棟の間には樋(ひ)と呼ばれる溝が両面にそれぞれ1本または2本掘られるものがある。重量軽減しながら強度を保つ工夫であるが、実際は鎬地の傷隠しのために後世になってから彫るものが圧倒的に多い。また、鎬を高く棟を卸した作り込みが大和伝の特徴(棟を盗むという)で、これも樋と同じ目的となっている。大和伝以外では、戦国期に長船與三左衛門祐定と和泉守兼定が棟を盗む造りの名人であり、実用刀として珍重された。

刀身のうち柄(つか)に収まる部分を茎(なかご)、茎を柄に固定する棒状のものを目釘、それを通す孔を目釘孔(めくぎあな)と呼ぶ。茎には鋼の平鑢(ひらやすり)を丁寧にかけ(鑢目の種類は後述)、刃区(はまち)、棟区(むねまち)を整える。茎棟には流儀によって丸棟(まるむね)、角棟(かくむね)がある。さらに茎の尻を鑢で仕上げ、最後に目釘孔を設け銘を切る。古来、茎の鑢がけは柄から抜けにくくするためとされたが、江戸時代においては美観と贋物防止が目的となる。

一般的に日本刀を鑑賞するときには、刃文と地鉄に注目することが多い。刃文を構成する匂い口の様子や刃中の働き、鍛錬して鍛えた地鉄中の働き、鉄色の冴えを見る。さらに深く鑑賞、もしくは鑑定する場合は、茎を手に持ち垂直に立て、まず姿を見、作刀時代の検討をつける。続いて、各々の時代特色が刀身に現れているか鉄色、匂口の雰囲気、そして特に切先である帽子の出来から観察し、鑑賞する。最後に茎の具合を手のひらの感触、錆の具合、目釘孔の状態、鑢目、茎尻、茎棟の仕上げ状態、そして銘があれば銘を鏨切りの方向からも観察し、文字通り撫で回すように鑑賞する[5]。

鞘(さや)は、刀身に擦り傷が付かないように軟質な朴(ほお)の木を、加工後の反りを防ぐために10年以上寝かして使う。刀身を差し入れる方を「鯉口(こいくち)」、逆の側を「小尻」または「鐺(こじり)」と呼ぶ。鐺の端には鐺金具と呼ばれる保護具が付くことがある。指表(さしおもて=帯に差す時、外になる側)の腰あたりにある栗形(くりがた=角や金属製の部品)に下緒(さげお)を通して帯からの脱落を防止する。栗形の鐺よりに返り角(かえりづの)や逆角(さかづの)、折金(おりがね)と呼ばれる突起部品が付けられる場合もあり、刀身を抜く時に鞘ごと抜けないようにこの部分を帯に引っ掛ける。笄(こうがい)と呼ばれる整髪などに使う小さなへら状の装身具を格納するために、鞘の主に鯉口近くの指表に設けられた笄櫃(こうがいびつ)と呼ばれる溝が設けられるものがある[4]。

鞘は塗り加工などが行なわれて完成すると、内部の汚れは容易に除けなくなる。これを避けるために鞘の内部に別の小さな鞘を入れた「入子鞘(いりこざや)」と呼ばれるものがあり、2枚に分割可能な構造をしている。

親指を鍔にかけて鞘から少し押し出す所作を「鯉口を切る」という。


柄(つか)は茎(なかご)を包みこみ、使用者の握りを確かなものにするために重要な役割を持つ部分である。多くは木製で、その上に鮫皮を張り柄巻きと呼ばれる帯状の細い紐を巻く。

柄と刀身を貫いて固定するための小片を目釘、通すための穴を目釘孔と呼ぶ。目釘には主に煤竹という燻上した肉厚の竹が用いられる。目釘には真竹が最適であり、100年以上寝かせたものが最適であると言われている。また、目貫(元来は目釘の役目をしていた)という装飾がつけられる。さらに、柄の一番手元に来る部分は柄頭と呼ばれ、装飾と実用を兼ねた金属が付けられることも多い。
鍔(鐔)
刀の鍔

日本刀は刀身と拵え(こしらえ=外装品)を別々に分けることができるが、ハバキや切羽(せっぱ=鍔に添える金具)などで鍔は刀身に固定されている。




次回、「日本刀の種類」から



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