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*罪人を愛せ
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1893年4月1日:カムストック夫人
場所:ウェルカム・センター
預言者を愛しなさい。なぜなら彼は罪人を愛するのだから。
罪人を愛しなさい。なぜならそれはあなた自身なのだから。
罪人がいなければ、あがない主のいる必要があるでしょうか?
罪が存在しないなら、赦しになんの恩寵があるでしょうか?
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*不適格者として
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1893年9月9日:カムストック
場所:ニューエデン広場
すると、大天使は宙に浮かぶ都市のイメージを見せてくれた。
私は訪ねた。「なぜこれを私に?私は強くもなければ、
行い正しくもなく、心が清らかなわけでもありません。」
大天使の答えは私の目を開かせてくれた。
「その通りです、預言者よ。でも、お前のような者でも神の恩寵に手が届くなら、
他の者が己の内にそれを見いだせないはずがあるでしょうか?」
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*あらゆる者が、一斉に
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1911年3月29日:カムストック
場所:パレード交差点
男が洗礼の水に沈められる。
顔を上げたとき、男は別の人間として生まれ変わっている。
しかし、水に浸かったままでいるあの男はいったい誰なのだ?
おそらく、罪人であり、同時に聖人でもあるだろう…ふたたび人々の前に現れるまでは。
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*同じく孤独な身として
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1902年8月1日:コンスタンス
場所:書の路
ルーテス夫人。科学分野のご著書はすべて読んでおります。
母は「レディにふさわしからぬ職業」などと腐しますが、
きっと私たちの才気をやっかんでいるのでしょう。
ところで、塔の少女を訪ねることが許されているのはあなただけというのは本当でしょうか?
子羊も寂しい思いをしているなら、ぜひ会ってみたく存じます。
私たちには相通ずるところが多いでしょうから、
よろしくお取り計らいください。コンスタンス。
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*問題の解決法
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1893年9月16日:ジェレミア・フィンク
場所:抽選会広場
言っただろう、カムストック。
あんたは楽園を売るわけだから、客は当然、雑用は天使が片付けてくれると思うものだ!
神の国に召使いなんかいないんだから!
まあそれはともかく、ジョージアに知り合いがいてな、
その男なら黒人の罪人を必要なだけ調達してくれる。
なあに、身の程をわきまえなかった報いを受けてる馬鹿ばかりだ。
良心の呵責を感じる必要はないぞ。
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*金銭欲
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1912年3月1日:エド・ゲインズ
場所:ブルーリボン・レストラン
今日、なんとファーザー・カムストックが訪ねてきた。
この僕を自伝の書き手として雇いたいというじゃないか!
ぴったり100ページ分の原稿料を前払いするという。
金にがめつい僕はすかさずふっかけた。
「ファーザー、あなたのようなお立場なら1000ページ分が相場ですよ?」
…すると預言者は僕を見てこう答えた。
「100ページで十分だよ。結末はわかっているからね。」
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*オータスの器用な手
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1912年6月23日:コッツウォルド
場所:ランズダウン邸
オータスはパートタイムで「支部」に勤務している。
この箱は彼が秘密の儀式のときにくすねてきたものだ。
中には重要なものが入っているにちがいない。
しかし、まったく間が抜けてるじゃないか。
オータスのやつ、鍵も失敬することにまで、頭が回らなかったんだ。
おかげで箱を開けることができないわけだ。
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*新たな狩り
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1912年6月29日:ダウンズ
場所:カムストック・センター屋上
明け方、カムストックが馬車でやってきた。
やっこさん、俺の頭皮コレクションを見て足をすくませてたな。
白人のコレクションのことを聞かれたんで、
「旦那、そいつらはジャングルで地元の連中と暮らしてるような連中さ。
目くじらたてることはねえだろ?」と言ってやった。
向こうはにこりともしなかった。
たぶん現地に染まった白人がいることをまるきり知らないか、でなきゃ見飽きてるんだろう。
ともかく、俺はデイジー・フィッツロイとやらを狩る仕事を引き受けた。
俺がその女も剥ぐつもりだなんて思われても困るがね。へへ…やれやれ…
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*解放者の残したもの
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1905年4月14日:カムストック
場所:オーダー・オブ・レイブン
そして天使コロンビアから新しいエデンの園を造るための道具を授かるや、
ファウンダーズは少しもためらわずその仕事に取りかかった。
85年かけて、彼らは主のお歩きになる道を用意したのだ。
だが、偉大なる裏切り者リンカーンが現れて戦禍をもたらすと、
エデンの園は同胞の血に染まった。
偉大なる裏切り者の差し出す救いは死のみであった。
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*解放者の嘘
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1905年4月14日:カムストック
場所:オーダー・オブ・レイブン
黒人を解放したと讃えられるリンカーン大統領は、彼らを何から解放したというのか。
日々の糧からだ。額に汗して働くことの貴さからだ。
生涯面倒を見てくれる裕福な白人の庇護からだ。
衣類や、雨露をしのぐための住居からだ。
では、手に入れた自由を使って黒人たちが何をしたか。
それはフィンクトンに足を運べばわかるだろう。
白人を除いて、生まれながらに自由な動物などいない。
そして、われわれ以外の創造物の世話を焼くことは、白人に課せられた使命なのだ。
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*我らが夫人のシンボル
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1912年1月6日:最初の狂信者
場所:オーダー・オブ・レイブン
コロンビアの慈母よ。
我々があなたを偲ぶときに3つのシンボルを崇めるのはなぜでしょう?
剣を崇めるのはあなたの仇を討つため。
大鴉を崇めるのは街を空から見渡すため。
棺を崇めるのは、それが我々の過ちの重みを象徴するからにほかなりません。
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*新時代の箱舟
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1893年9月9日:カムストック
場所:ゴンドラ - モニュメント・アイランド
「主は人の悪が地にはびこるのを見られた。
そして地上に人をつくったことを悔い、心を痛められた。」
そして雨を降らせたのだ!四十日四十夜ものあいだ。
結果、地上に生きるものはみな滅びた。
この例からもわかるように、神でさえやり直しが認められるのだ。
そして、このコロンビアこそ現代の箱舟にほかならないのだ。
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*つかまえた獣
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1912年4月8日:タイ・ブラッドリー
場所:モニュメント・アイランド
あの白人たちときたら、立入り禁止の場所さえ誰かに掃除をさせなきゃならんらしい。
政治家や科学者どもは、俺の前で何でも話しやがる。
どうせ「黒人は言葉がわからない」とでも思ってるんだろう。
難しい言葉はわからなくても、
あいつらが上に閉じ込められてるものにおびえてることくらいはわかる。
恐ろしい獣をつかまえたものの、逃げるべきか悩んでるってところだな。
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*TO:R・トンプソン
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1912年7月3日:タイ・ブラッドリー
場所:モニュメント・アイランド
ミスター・トンプソン…言われた通り、ヒューズバンクを丸ごと交換しました。
ゆうべはすべての明かりがきちんと…灯って…
また消えちまった。
サイフォンの分だけで一日何箱もヒューズを使ってます。
いったい何が…な、なんだ、何が起こっ…
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*延期された報酬
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1912年7月5日:カムストック
場所:モニュメント・アイランド
未来を見ることができるからといって、それを自分自身の目で確かめられるとは限らない。
主の降臨に備えて下界を焼き払う炎の種子が生まれるのを、私は見てきた。
だが、そうした種をまくのはエリザベスの仕事だ。
私は道半ばにしてこの世を去るだろうが、エリザベスが衣鉢を継いでくれる。
私は間もなく主に召される。
この体をむしばむ腫瘍のひとつひとつに主の慈愛を感じる。
なぜなら、それらは主が待つ場所まで私を運んでくれる列車だからだ。
私はエリザベスに後事を託し、喜んで逝くつもりでいる。
だが、偽りの羊飼いが我が子羊を惑わしにやってくるとなれば話は別だ。
その男の魔の手が彼女に及ばないようになるまで、私は列車に乗れないだろう。
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*彼女の力の源
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1909年9月5日:ロザリンド・ルーテス
場所:実験体観察室
この少女を特別な存在にしているものは何なのだろう?
思うに、彼女が「どんな存在であるか」という事実より
「どんな存在ではないか」ということが関係しているようだ。
少女の一部は、彼女が元々存在していた場所に留まっている。
まるで、宇宙という粥の中に豆が溶け込むのを、宇宙それ自体が拒否しているかのように。
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*川で生まれた
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1912年3月6日:エド・ゲインズ
場所:バトルシップ・ベイ
預言者は自分の伝記の結末を知っていると言ったが、僕は書き出しすら思い浮かばない。
彼に関する資料は、英雄ホールに置いてある子供向けのものしかない。
しかもそこには、えーと、
「洗礼前のことはすべて川の岬に置いてきた」なんて書いてある始末。
盗作と言われようがかまうもんか。
巻頭の30ページは教典の丸写しで埋めてしまおう。
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*天国
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:アーケード
初めてコロンビアに来たとき、見たこともないような空の明るさと青さに驚いたものだ。
まるで…天国のように思えた。
けれども目がまぶしさに慣れるにつれ、私は気づいた。
おびただしい数の白い顔が、自分に険しい視線を注いでいることに…
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*犬の忠誠
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1899年12月18日:カムストック
場所:アーケード
子供のころ、私はビルという名前の犬を飼っていた。
そして犬というものがなべてそうであるように、ビルは私の忠実な友だった。
たとえ餌をやらなくても、ビルの忠誠心は変わらなかっただろう。
たとえ鞭で打たれたとしても、やはりビルの忠誠心は変わらなかっただろう。
ビルと同じことができるようになってはじめて、有色人種は社会に居場所を得るのである。
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*生け捕り
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1912年7月6日:エステル・メイラー
場所:チケット売り場
いよいよだわ。偽りの羊飼いがやってきた。
日付は正確じゃなかったけど、預言者の予知がまたしても的中したのよ。
ターゲットは生け捕りにしなきゃならない。
万一彼女を死なせでもしたら、あの鳥は私たちを襲ってくるだろう。
そうなれば、誰だか見分けがつかないほどズタズタに引き裂かれることになる…
煙草も今ので6本目だわ。こんなふうに待つのは耐えられない。
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*天国への輝く道
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1893年9月9日:カムストック
場所:チケット売り場
月日がたつにつれ、議会の面々も徐々に悔い改めていった。
やがて人類の技術とワシントンの富を使って
主はコロンビアをおつくりになり、空高く舞いあがらせた。
下界ソドムのはるかな高みに!
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*世界の中の居場所
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:グリーティング・パビリオン
カムストックハウスでの毎日は単調だった。
掃除に洗濯…重労働だが、難しいことは何もない。
カムストック夫人はたまにねぎらいの言葉をかけてくれる。
彼らの世界での居場所を見つけたと思ってしまいそうだった。
だが、神はそんな浅はかな女たちを、ただ戯れにつくっただけなのだ。
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*神の鏡
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1893年9月9日:カムストック
場所:ソルジャーズ・フィールド
私はワシントンに赴いたが、
議会には私が見たコロンビアのイメージを理解する者はほとんどいなかった。
しかし、悪を正すのが預言者の務め。
預言者とは、神の顔を映し出す鏡にほかならないのだから。
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*無限のビジョン
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1890年8月10日:ロザリンド・ルーテス
場所:ソルジャーズ・フィールド
子供の頃、夢を見た。
夢の中で私は少女を見ていた。
自分であり、自分でない少女を。
その少女はまた別の少女を見ていた。
やはり私であり、私でない少女を。
母は悪い夢だと言ったけど、その夢が物理学を志す原点になった。
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*見たことのない顔
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1912年5月30日:スレート隊長
場所:ソルジャーズ・フィールド
俺は40年間兵役を務め、ほうぼうで異教徒を討ち果たしてきた。
そんな俺でも、特定の敵に憎しみを抱いたことはない。
だが、カムストックだけは別だ。
奴は俺が戦った数々の戦争を陳腐な茶番劇に仕立て上げ、
そのなかで白馬の騎士を気取っている。
しかも、そのことで抗議すると、奴は俺の階級を剥奪した。
戦争のむごたらしさなど露ほども知らない軟弱な男だが、
これからそれをたっぷりと味わわせてやる。
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*ヴォックスの密輸品
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1912年7月6日:マンリー軍曹
場所:ソルジャーズ・フィールド
フェロー・トラベラーに密輸銃が隠されてるというタレ込みがありました。
結局ガセでしたが、妙なことに、床下から古い軍服が何着か出てきたんです。
なぜそんなものがあったのか、憶測が飛び交っていますが…誰だ!
貴様、スレートだな?銃をおろせ!
…聞こえたか、カムストック!兵士の断末魔の悲鳴なんて聞いたことないだろう。
貴様は戦場に出たことがないんだから。
違うというなら英雄ホールに来い。
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*真の兵士
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1911年4月10日:モンロー上等兵
場所:パトリオットのパビリオン
兵士には色々な人がいるけれど、コーネリアス・スレートのような兵士はふたりといない。
父さんはサンフアン・ヒルから北京まで彼と行動を共にした。
父さん自身の言葉を借りれば「命令とあらば地獄にでも行く覚悟だった」という。
今日、点呼のとき、スレートに声をかけられた。
モンロー軍曹の娘かと聞かれたので、「はい、そうです」と答えると、彼は言った。
「君の父親は常々息子が欲しいと言っていたが、
君のような娘を持てた幸運を、あの愚か者は噛みしめるべきだな」と。
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*落日のとき
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1912年5月1日:デイジー・フィッツロイ
場所:ソルジャーズ・フィールド
恐怖には恐怖で対抗するしかないということを、人々は学ぶ必要がある。
私は彼らに与するつもりなどない。
彼らの文化や政治や世間の一部になるなど、御免こうむる!
彼らの世界はすでに落日のときを迎えている。
遠からず闇に包まれる運命なのだ。
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*最後の抵抗
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1912年7月6日:スレート隊長
場所:英雄ホールの広場
古参兵諸君!諸君はコロンビアのために血を流し、
神なき東洋の異郷で手足やはらわたを失った。
だが、カムストックはどうだ!奴は何もしていない!
それなのに、今だに高みから諸君を見おろしているではないか。
侮辱としか言いようがない!
預言者が我々の過去を不当に貶めるのであれば、
この先またどのような屈辱を味わわされるか知れたものではない。
今こそ立ちあがるときだ。そしてあのホールを真の英雄の殿堂に変えようではないか!
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*必要な同志
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1912年7月6日:スレート隊長
場所:英雄ホール
事が成就した暁には、我々はテロ集団と呼ばれるだろう。
さしずめ俺は「ヴォックス・ポピュライ随一の凶手こと、
コーネリアス・スレート」といったところか。
カムストックの嘘が新しい嘘に取って代わられるわけだが、それならそれで仕方がない。
フィッツロイは同志だが…それは必要に迫られてのことにすぎない。
一致協力してカエサルを暗殺した男たちが、
普段仲良く食卓を囲んでいたわけではないのと同じことだ。
カムストックが死ねば、部下たちの過去の手柄は称賛されるだろう。
そうなれば、彼らが功名争いを始めることは目に見えている。
そんなものを見る必要はない。
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*無条件の赦し
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1893年4月1日:カムストック夫人
場所:我らが夫人の殺害
私を愛してくれる人々にとって、私ほど物惜しみしない人間はいなかった。
惜しみなく苦しみを与えたし、どんな裏切りも喜んで実行した。
そして私を愛する者たちすべての心を焼いたとき、預言者はこう言った。
「お前が何をしようと私は赦そう。神は私に予知の力を授けられた。
神の目で見れば、お前でさえ愛されるべき存在だから。」
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*ある兵士の死
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1912年7月6日:スレート隊長
場所:中庭
わが部隊は進退窮まった。
そう、まるでリトルビッグホーンの戦いで進退窮まったカスター将軍のように。
だが、我々はカムストックと奴の操るブリキの兵士どもに降伏するつもりはない。
斥候によると、ブッカー・デュイットがこのホールに向かっているという。
ブッカー・デュイット!倒した敵の頭皮を剥いでは集め、
「ウンデッド・ニーの白い先住民」と呼ばれた男だ。
あれほどの男なら、我らに安息をもたらしてくれるかもしれない。
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*死の呼び声
#region
1912年7月5日:ダウンズ
場所:ソルジャーズ・フィールド
このプレストンは卑怯な手は使わないぜ、ミス・フィッツロイ。
ナイフを構えて寝床に忍び寄ったりはしない。
ここにいるヴォックスの奴らとは違うんだ。
…皮が1枚。…それで今日2枚目だ。
さてと、こいつを聞いたら、これまでの罪滅ぼしをして、吟遊詩人の前で潔く死んでほしい。
そのときは白人の武器が必要になるだろう。
こいつを試してみるんだな。
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*神の計画
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1908年4月19日:ハッティ・ゲルスト
場所:ベガー波止場
サミュエルはいつも、日曜礼拝と日々の仕事の関係を考えていました。
「科学というのは、神の描いた青写真がゆっくりとその全容を明かすようなもの」だと言って。
モニュメント・アイランドの子羊の塔で2年を過ごしたあと、夫は胃ガンを患いました。
私は預言者に祈り、預言者はその従僕フィンクを使い、奇跡をもたらしてくださいました。
金属の体をした夫というものに慣れることができるかどうかはわかりませんが、
たとえハンディマンになっても、私にとっては生きていてくれるだけで充分なのです。
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*発火
#region
1912年7月13日:デイジー・フィッツロイ
場所:押収品倉庫
山火事が燃え広がろうとしている森を思い浮かべてほしい。
フクロネズミやリスは、まだ何も燃えないうちからあわただしく逃げ出すだろう。
いちはやく危険を察知しての行動だ。
でも、蜂蜜で腹を膨らませ、すやすや冬眠している太った熊は、
ちょっとやそっとじゃ目を覚まさない。
彼らを叩き起こすにはどうすればいいか…エンポリアに足を運べばわかるだろう。
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*恥ずべき行動
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1912年7月7日:モンロー上等兵
場所:フォート・フランクリン
スレートは怪物だ。反逆者だと罵られた。
彼と共に英雄ホールで玉砕した者たちはみな顔見知りだ。
彼らはなんら恥じる必要はない。
恥じ入るべきはむしろホールを取り囲んだ私たちのほうだ。
我々は勝った。それなのに私は、
スレートと枕を並べて討ち死にした者たちが羨ましくてならない。
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*ありふれた商品
#region
1893年3月27日:ジェレミア・フィンク
場所:労働者歓迎センター
正直、私には例の馬鹿げた預言などにつき合う暇はないんだ。
信仰なんてものは、しょせんは商品にすぎない。
カムストックはさしずめその製造元というところだ!
しかし、商売である以上、カムストックも自分の商品をカネに変えなきゃならん。
歌だけじゃ蔵は建たないからな!絶対に!
だからこそこのフィンクが手となり足とならなければならん。
彼には私が必要なのさ。自分の手を汚さないためにな!
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*嘘の種
#region
1912年6月17日:スレート隊長
場所:労働者歓迎センター
カムストックの細君の日記を手に入れた。
これを読めば、奇跡の子云々がいかにデタラメかわかる。
奇跡どころか、母親にすら愛されなかった子供ではないか。
亡くなったカムストック夫人は、どうやら預言者の種を孕みたくはなかったようだ。
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*目立たない色
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:ジール・プラザ
名もない娘にすぎなかった私は、カムストック夫人殺しの
下手人に仕立てられたことで、誰もが知る存在となった。
私はフィンクトンに向かい、そこで身を隠した。
捜査の手が及ぶのであれば、より深く潜伏するまでだ。
黒人の子供の顔だ。
大勢の中に紛れれば、彼らに見分けなどつかない。
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*我々は羊飼いが必要
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1912年7月6日:デイジー・フィッツロイ
場所:ガンスミス/機械工、チェン・リン
偽りの羊飼いとやらと話をしなければならない。
あの男は厄介事の種だ。
あんな馬鹿に方々で暴れ回られなくても、
我々はすでに多くの問題を抱えているというのに。
おまけに、すべてヴォックスのせいにされてしまっている。
しかし…もし彼が友好的な態度を見せるようであれば…
そのときは即戦力として使えるかもしれない。
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*人生を変える音
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1894年8月12日:ジェレミア・フィンク
場所:グッドタイム・クラブ
弟よ、空中にあいた穴から不思議な音楽が聞こえてくるなどと
お前が言い出したときには、てっきりイカれてしまったのかと思ったぞ。
しかし、お前はその音楽でみごと一財産を築いてみせた。
それだけではない。
お前は私の行く道をも照らしてくれたのだ。
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*残酷の定義
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1899年12月18日:カムストック
場所:グッドタイム・クラブ
黒人に白人より重い税を課すのが残酷だと?
人種間の婚姻を禁じるのが残酷だと?
白人に選挙権を与え、有色人種に与えないのが残酷だと?
それなら、理想の楽園から諸君の子供たちを締め出すのもまた残酷では?
同胞を大海の底に沈めるのもまた残酷では?
残酷さはときに教訓になりうる。
そしてコロンビアこそはまさに主による学び舎にほかならないのだ。
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*真の服従
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1912年7月7日:モンロー上等兵
場所:ジール・プラザ
私は神と名誉を信じればこそコロンビアにやってきた。
でもスレートのおかげでわかった。
人類という家族から同胞を締め出すのは神の御業ではないし、
名誉の意味さえ知らない者たちを守るのも名誉とは言えない。
たぶんフィンクトンになら、私が仕えるのにもっとふさわしい人物がいるはずだ…
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*燃え盛る炎
#region
1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:グレイブヤード・シフト
地下深くまで潜ると、おのずと物事を下から見上げるようになる。
そして、都市の底まで潜った私は、燃えさかる炎を見た。
高熱を発してはいても、口を持たない炎だ。
デイジー…今のお前には、コロンビアのすべての炎を合わせたほどの大きな口がある…
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*罠
#region
1912年7月5日:ダウンズ
場所:ブルヤード
フィッツロイ。お前さん、悪知恵だけは働くみたいだな。
この辺りにヒグマ用の罠をいくつか仕掛けといた。
お前さんの放ったスパイを捕まえて居どころを吐かせようと思ったんだ。
まさか…子供を使うとは思わなかったぜ。
…おかげで先住民のチビ助の片脚を切り落とす羽目になった。
今…切った脚をはさんでチビ助とにらみ合ってる。
いっそ、泣きわめくか何かしてくれたほうがましだ…
#endregion
*ロッカーの鍵
#region
1912年7月5日:サイクス上等兵
場所:ブルハウス
仕事と人生は別ものだ。
たしかに俺はヴォックスを目の敵にすることで金をもらってる。
だからって、オフのときにフィッツロイの部下と一緒に飲んで何が悪い?
しかしどうやら飲みすぎたようだ。
証拠を入れるロッカーの鍵をなくしちまった。
上にバレたらどんなことになるか…
#endregion
*抹殺
#region
1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:ブルハウス
カムストック夫人と預言者は、夜な夜な何かを言い争っていた。
私の寝ている場所から話の内容までは聞き取れなかったが…。
あるとき、いつにも増してひどい口論があった翌朝、
夫人がいつまでたっても朝の礼拝に出かけないので、私は様子を見に上に行った。
そこで私はしばらくのあいだ、茫然としてしまった。
それがいけなかったのだ。
「皿洗いの召使い」としてカムストック・ハウスに迎えられた私は、
「人殺し」と罵られながら、そこを逃げ出す羽目になったのだった。
#endregion
*永遠の岸辺
#region
1908年7月25日:ハッティ・ゲルスト
場所:シャンティタウン
サミュエル、怒りに我を忘れそうになったら、どうかこの録音を聴いてちょうだい。
そして、思い出してほしいの。
私はあなたの妻になれたことをとても誇りに思っているということを。
みんな、あなたの魂はあの金属の箱のなかで消えてしまったと言うけれど、私はそんなこと信じません。
…いつか、話に聞く永遠の岸辺で会いましょう。
そして、出会った日のように、屈託なく笑いあいましょうね。
心からあなたを愛しています。
#endregion
*近づく死
#region
1912年7月6日:ブッカー・デュイット
場所:グレイブヤード・シフト
娘を連れてくれば借金は帳消しだ、か。
滑り出しはさほど悪くない。
問題の女の子がすでにいないことを除けばな。
モニュメント・アイランドはもぬけの殻だ。
どうやら俺がやってくると聞いて彼女を移動させたようだ。
古い顔なじみから聞いたところでは、カムストックは彼女を例の要塞に連れ去ったらしい。
1人でやる仕事としては、いささか厄介なものになりつつある。
#endregion
*借金はすべて返済した
#region
1912年7月7日:ブッカー・デュイット
場所:ガンスミス/機械工、チェン・リン
ようやく味方ができた…スレートだ。
奴はヴォックス・ポピュライの活動に同調している。
連中は寄せ集めの軍隊にしてはやけに装備が充実している。
問題は、まず奴らの革命ごっこを手伝わなければならないってことだ。
それが済んだらカムストックハウスを急襲する。
これで例の女の子を奪還できる。
#endregion
*子供の監視役
#region
1895年10月4日:ジェレミア・フィンク
場所:ジェレミア・フィンクのオフィス
穴がまた別の奇跡を見せてくれた。
これをどう応用したものか、考えあぐねているところではあるが…。
その奇跡とは人間と機械との融合だ。
できあがったものはそれぞれのよい面と悪い面を兼ね備えている。
そして一度融合したものは分離できない。
カムストックなら、建設中の塔の監視役としてこの種のものを必要とするかもしれないな。
#endregion
*謝罪
#region
1912年7月14日:ブッカー・デュイット
場所:ジェレミア・フィンクのオフィス
フィッツロイ…あんたはこのバカげた戦争の勝者だ。
これをニューヨークに送ってくれ。
奴らはあの子を奪えない。奴らが誰だろうと…。
俺はあんたらヴォックスとともに正義を為したかもしれないが、
それで何かがチャラになるわけじゃない。
アンナ…すまない…赦してくれ…
#endregion
*カムストックのもとへ
#region
1912年7月7日:ダウンズ
場所:ポート・プロスペリティ
カムストックの旦那、次に会うときは商談はなしだ。
偽りの羊飼いとやらの頭皮を剥ぐ約束で英雄ホールに乗り込んだものの、
少しばかり風向きが変わってね。
デュイットはスー族の言葉が話せるんだ。
俺は片脚をなくした子供の…その…面倒を見てるんだが、
デュイットのおかげでその子と話ができたのさ。
その子があんたの街でどんな暮らしを強いられてたかを聞いた今、
もうあんたの味方はできない。
その子にナイフを渡して、一緒にあんたの生皮を剥がしに行くぜ。
#endregion
*壁越しのささやき
#region
1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:グランドセントラル駅
ルーテス・フィールドでは量子原子を光の波動に捕らえる。
これにより、安全な測定が可能になる。
説明するまでもないわよね、兄さん?
あなたも隣の世界から、まさに同じこの原子を測定していたんだから。
宇宙を通信手段に使って。
フィールドをオンにしたり、オフにしたりすることで、モールス信号のように交信できる。
やり取りには気の遠くなるほどの時間がかかったけど、
ようやく壁越しにささやきあうことができるようになった。
#endregion
*窓
#region
1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:ファウンダーズの書
兄さん、カムストックは理解していないわ。
この装置が予知を得るためのものではなく、
別の可能性を知るためのものであるということを。
でも彼の資金があれば、ルーテス・フィールドをルーテス・ティアにできるかもしれない。
異なる世界をつなぐ窓よ。
もしそうなれば…とうとう兄さんと一緒になれるときが来るのよ。
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*サリー
#region
1912年7月16日:ロナルド・フランク
場所:ファウンダーズの書
サリー!畜生、ヴォックスが銃撃騒ぎを起こしてる隙に、恋人をさらわれた!
あの娘はソルティー・オイスターに監禁されてる。
きっとクローゼットの中だ。
奴はお宝をあそこにしまっとくからな。
レジの下のボタンを押せばひらくんだが、いかんせん…
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*一心同体
#region
1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:バー「ソルティー・オイスター」
兄さん、あなたは新しい現実世界に命を吹き込まれたのよ。
でも兄さんの肉体は、混乱と大量の失血で認知の不協和を拒否している。
それでも、兄妹一緒にいられるんだから、私が治してあげる。
だって、私たちを区別するものは1本の染色体にすぎないんだから。
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*浮かぶ都市
#region
1890年8月10日:ロザリンド・ルーテス
場所:金融地区
原子を中空に固定した。
同僚たちはこのルーテス・フィールドを原子浮揚だと思っているが、実際はそうではない。
魔術師の浮揚とでも言おうか…この原子は、単に落下ができないだけなのだ。
原子を永久に浮かしておくことができるのなら、それがリンゴだってかまわないはずだ。
そしてリンゴを永久に浮かしておくことができるのなら、
それが都市だってかまわないはずでは?
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*贖罪の先に
#region
1894年12月28日:カムストック夫人
場所:ハーモニー・レーン
今宵、預言者は政敵たちに攻撃を仕掛けた。
日ごろ慈悲を説いておきながら、40人の人間を殺したのだ。
そして彼らの亡骸は無名墓地に葬られることになった。
神の恩寵に値しない人間がいるとしたら、それは私の夫だろう。
でも、私が救いようのない罪を犯したとき、手を差し伸べてくれたのは彼だった。
そんな恩人を、この私がどうして断罪できるだろう?
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*私の肌の色
#region
1908年12月29日:カムストック
場所:ダウンタウン・エンポリア
みんなの見ている前で、その軍曹は私を見つめて言った。
「お前の血筋には先住民の血が混じっているな?」
根も葉もないデタラメだが、この中傷はその後私にずっとついてまわった。
それからというもの、本心から私を仲間と呼ぶ者はいなくなった。
ようやく私が仲間と認められたのは、先住民の住むテントを、
中にいる女たちもろとも焼き払ってしまってからだ。
血は血によってしかあがなえないのだ。
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*ペンフレンド
#region
1902年7月20日:コンスタンス
場所:Z.H.カムストック・ビクトリースクエア
奇跡の子へ。こんにちは!
お母さんが亡くなられたことは残念だったわね。
…でも、亡くなった今でも、私の母よりずっといいお母さんだと思うわ。
ところで、塔はなぜ閉鎖されたのかしら?
住んでいるあなたなら分かると思って…。
悪天候に伝染病の流行が重なり、
そこへ幽霊の噂が追い討ちをかけたからだと聞くけど、本当のところはどうなのかしら。
内緒の話なら、誰にも言わないって約束するわ。
ペンフレンドのコンスタンスより。
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*無からの誕生
#region
1894年11月14日:ジェレミア・フィンク
場所:商業地区
弟よ、穴から聞こえてくる音楽は利益を生みつづけているようだな。
お前がどこの馬の骨の音楽を借用しているのかは知らん。
しかし、その作曲家に、私が今観察している科学者の半分でも才能があれば、
お前も今ごろコロンビアのモーツァルトと呼ばれているはずだ。
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*「死」に関する理論
#region
1909年11月1日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストックが装置を破壊した。
でも私たちは死んではいない。
理論的には、私たちは可能性宇宙で散り散りになっているはずだけど、
兄と私は今も一緒にいる。
私としてはそれで満足だけれど、兄は違う。
少女の問題がまだ片付いていないからだ。
でも、私たちの変わりに終わらせてくれる人がどこかにいるはず。
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*遺伝子の力学
#region
1893年7月3日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストックが種なしになったのは、私たちの装置のせい。
その可能性が濃厚よ。
理論的に言えば、有性生殖において両親の特質が薄まることと同じく、
私たちの生み出す多重現実においても、個々の特質は希薄になり、最終的には消え去る。
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*科学の子
#region
1895年1月4日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストック夫人は、あの子が私と預言者の不義密通によって
生まれた子供だと思い込んでいるようよ。
だから真実を教えてやったわ。
あの子は私たちのつくり出した装置による産物だと。
でも彼女は自分の妄想のほうを信じたでしょうね。
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*神の心の中
#region
1895年1月4日:カムストック夫人
場所:金融地区
預言者は嘘つき。
でも、それはあってはならないこと。
預言者は人殺し。
それもあってはならないこと。
未来が神の心の中にしか存在しないのなら、
なぜ神は…あの怪物のような男に未来を教えるのか?
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*もうたくさん
#region
1895年1月5日:カムストック夫人
場所:金庫
ルーテスは、あの子は彼女の子ではなく、穢れた科学の産物だと言っていた。
でも、それが本当かどうかは分からない。
あの子は私と同じ、罪深い人間。
もしそうなら、夫の預言はどうなるの?
彼は私に黙っていろと言う。
私ができるのは、彼を赦すことだけ。
でも、欠乏は後悔とともにやってくる。
あの人の嘘はもうたくさん。
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*途絶えた血
#region
1893年9月10日:カムストック
場所:金融地区
大天使によれば、私の血筋を引く者が玉座を継承するかぎり、コロンビアは安泰だという。
それなのに、カムストック夫人は1人の子もなしていない。
私は夫としての務めを果たしているが、いまだ子宝に恵まれずにいる。
ルーテスに相談してみたが、彼女でさえ協力を拒んだ。
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*遅れた顧客
#region
1909年11月6日:ルパート・カニングハム
場所:ダウンタウン・エンポリア
エステル
「まさか。フィンクさんがルーテスさんたちに危害を加えるだなんて、証拠でもあるの?」
ルパート
「本人たちが教えてくれたんだ。」
エステル
「本人たちが…いつ?」
ルパート
「昨日だよ。昨日の朝。」
エステル
「ルパート…あのふたりは1週間前に死んだのよ。」
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*鎖
#region
エリザベス
場所:ハー・ラビング・エンブレイス
サイフォンは犬につける綱のようなもの。
つけたのは私の父だけど、時が来ても私は自分で外そうとはしなかった。
外していたらどうなっていたかしら?
これまで通り、おとなしく服従していたかしら?
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*選択の価値
#region
エリザベス
場所:我らが泣く場所
私たちの心は罪にまみれている。
中には腐敗のあまり、償いの道を見つけられない人もいる。
そうした心は根っこから摘み取らなければならない。
私の子供たちには何の責任もなく、落ち度もなく、そして選択も与えられなかった。
魂がないのなら、意志にいったい何の価値がある?
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*負債
#region
エリザベス
場所:我らが働く場所
「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」…。
でも結局のところ、あの人は私たちみんなの「借金」を肩代わりすることになった。
彼の罪はどこから始まったの?
私の罪はどこで終わるの?
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*最後のチャンス
#region
エリザベス
場所:警備員の部屋
日が経つにつれ…私は神よりもルーテスを信じるようになっていった。
後悔にさいなまれると、私の力は弱くなる…。
それもこれも、父が私を捨てたことが原因。
自分の力がどれほど強くなっているかを理解したときには、すでに手遅れになっていた。
でも償いのチャンスはまだ残されている。
私たちふたりにとっての償いのチャンスが。
あと1度だけ。
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*窒息
#region
エリザベス
場所:警備員の部屋
やってしまったことを、なかったことにはできない。
やりはじめたことを途中でやめることもできない。
でも、そもそもやらない、という道ならあるかもしれない…
彼は最初の希望だった…
そして、今は最後の希望…
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*終止符
#region
エリザベス
場所:アトリウム
明日、この綱から解放される。
すべて終わりにしなければいけない。
でもサイフォンを壊したところで、
無数の扉の中からひとつを選んで開ける勇気が私にあるかしら?
それに、もし私があの人をここに呼び出したとして、
あの人は私がつくった怪物を退治できるだろうか?
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*パブロフのベル
#region
1912年12月23日:ハリソン・パウエル医師
場所:手術室
この手術をおこなえば、彼女の問題は大いに改善されるはずだ。
いったん装置を移植すれば彼女が周囲を変化させようとするたびに、
痛みを伴う電気ショックが与えられることになる。
パブロフの犬と同じことさ。
彼女は唾液を流すのではなく、泣きわめくことになるがね。
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*最後通牒
#region
1909年10月16日:ロザリンド・ルーテス
場所:カムストック・ハウス屋上
兄さんが最後通牒を突きつけてきた。
連れてきた少女を元の場所に戻さなければ、
私たち兄妹はもう一緒にはいられない、と。
兄はそれですべてを白紙に戻せると考えているようだ。
しかし私には、そのページにリア王の物語が書かれているのが見える。
とはいえ、あの人は私の兄さんなのよ。
だから私は自分の役目を果たす。
たとえそれが涙のうちに終わろうとも。
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*終わってしまったこと
#region
1909年9月3日:ロザリンド・ルーテス
場所:預言者の手
私たちの装置により、分かったことがある。
あの少女は世界を業火に包む種火ということだ。
兄さんは、私たちがやったことをなかったことにしなければならないと主張している。
でも時間というものは、例えるなら川ではなく海なのだ。
ならば、新しい潮を呼び寄せたところで何になる?
またすぐに引いてしまうだけなのに。
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*罪の鏡
#region
1893年6月21日:カムストック
場所:預言者の手
人間が生まれ変わったとき、洗礼の水の中に残された古い体はどうなるのか?
消え去るのだろうか?
それとも、どこか別の世界で、罪人のまま生きつづけるのだろうか?
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*死に行く預言者
#region
1907年12月4日:ロザリンド・ルーテス
場所:預言者の手
預言者の死期が近づいている。
病の転移により、老化が進んでいる。
そして、こちらの世界のカムストックが死に直面しているというのに、
別世界のカムストックはピンピンしている。
遺伝子的物質がすなわち運命であるなら、この違いはいったいどこから生じているのか?
装置を長く使ったことが原因だろうか?
調べてみる価値はあるだろう。
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*罪人を愛せ
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1893年4月1日:カムストック夫人
場所:ウェルカム・センター
預言者を愛しなさい。なぜなら彼は罪人を愛するのだから。
罪人を愛しなさい。なぜならそれはあなた自身なのだから。
罪人がいなければ、あがない主のいる必要があるでしょうか?
罪が存在しないなら、赦しになんの恩寵があるでしょうか?
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*不適格者として
#region
1893年9月9日:カムストック
場所:ニューエデン広場
すると、大天使は宙に浮かぶ都市のイメージを見せてくれた。
私は訪ねた。「なぜこれを私に?私は強くもなければ、
行い正しくもなく、心が清らかなわけでもありません。」
大天使の答えは私の目を開かせてくれた。
「その通りです、預言者よ。でも、お前のような者でも神の恩寵に手が届くなら、
他の者が己の内にそれを見いだせないはずがあるでしょうか?」
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*あらゆる者が、一斉に
#region
1911年3月29日:カムストック
場所:パレード交差点
男が洗礼の水に沈められる。
顔を上げたとき、男は別の人間として生まれ変わっている。
しかし、水に浸かったままでいるあの男はいったい誰なのだ?
おそらく、罪人であり、同時に聖人でもあるだろう…ふたたび人々の前に現れるまでは。
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*同じく孤独な身として
#region
1902年8月1日:コンスタンス
場所:書の路
ルーテス夫人。科学分野のご著書はすべて読んでおります。
母は「レディにふさわしからぬ職業」などと腐しますが、
きっと私たちの才気をやっかんでいるのでしょう。
ところで、塔の少女を訪ねることが許されているのはあなただけというのは本当でしょうか?
子羊も寂しい思いをしているなら、ぜひ会ってみたく存じます。
私たちには相通ずるところが多いでしょうから、
よろしくお取り計らいください。コンスタンス。
#endregion
*問題の解決法
#region
1893年9月16日:ジェレミア・フィンク
場所:抽選会広場
言っただろう、カムストック。
あんたは楽園を売るわけだから、客は当然、雑用は天使が片付けてくれると思うものだ!
神の国に召使いなんかいないんだから!
まあそれはともかく、ジョージアに知り合いがいてな、
その男なら黒人の罪人を必要なだけ調達してくれる。
なあに、身の程をわきまえなかった報いを受けてる馬鹿ばかりだ。
良心の呵責を感じる必要はないぞ。
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*金銭欲
#region
1912年3月1日:エド・ゲインズ
場所:ブルーリボン・レストラン
今日、なんとファーザー・カムストックが訪ねてきた。
この僕を自伝の書き手として雇いたいというじゃないか!
ぴったり100ページ分の原稿料を前払いするという。
金にがめつい僕はすかさずふっかけた。
「ファーザー、あなたのようなお立場なら1000ページ分が相場ですよ?」
…すると預言者は僕を見てこう答えた。
「100ページで十分だよ。結末はわかっているからね。」
#endregion
*オータスの器用な手
#region
1912年6月23日:コッツウォルド
場所:ランズダウン邸
オータスはパートタイムで「支部」に勤務している。
この箱は彼が秘密の儀式のときにくすねてきたものだ。
中には重要なものが入っているにちがいない。
しかし、まったく間が抜けてるじゃないか。
オータスのやつ、鍵も失敬することにまで、頭が回らなかったんだ。
おかげで箱を開けることができないわけだ。
#endregion
*新たな狩り
#region
1912年6月29日:ダウンズ
場所:カムストック・センター屋上
明け方、カムストックが馬車でやってきた。
やっこさん、俺の頭皮コレクションを見て足をすくませてたな。
白人のコレクションのことを聞かれたんで、
「旦那、そいつらはジャングルで地元の連中と暮らしてるような連中さ。
目くじらたてることはねえだろ?」と言ってやった。
向こうはにこりともしなかった。
たぶん現地に染まった白人がいることをまるきり知らないか、でなきゃ見飽きてるんだろう。
ともかく、俺はデイジー・フィッツロイとやらを狩る仕事を引き受けた。
俺がその女も剥ぐつもりだなんて思われても困るがね。へへ…やれやれ…
#endregion
*解放者の残したもの
#region
1905年4月14日:カムストック
場所:オーダー・オブ・レイブン
そして天使コロンビアから新しいエデンの園を造るための道具を授かるや、
ファウンダーズは少しもためらわずその仕事に取りかかった。
85年かけて、彼らは主のお歩きになる道を用意したのだ。
だが、偉大なる裏切り者リンカーンが現れて戦禍をもたらすと、
エデンの園は同胞の血に染まった。
偉大なる裏切り者の差し出す救いは死のみであった。
#endregion
*解放者の嘘
#region
1905年4月14日:カムストック
場所:オーダー・オブ・レイブン
黒人を解放したと讃えられるリンカーン大統領は、彼らを何から解放したというのか。
日々の糧からだ。額に汗して働くことの貴さからだ。
生涯面倒を見てくれる裕福な白人の庇護からだ。
衣類や、雨露をしのぐための住居からだ。
では、手に入れた自由を使って黒人たちが何をしたか。
それはフィンクトンに足を運べばわかるだろう。
白人を除いて、生まれながらに自由な動物などいない。
そして、われわれ以外の創造物の世話を焼くことは、白人に課せられた使命なのだ。
#endregion
*我らが夫人のシンボル
#region
1912年1月6日:最初の狂信者
場所:オーダー・オブ・レイブン
コロンビアの慈母よ。
我々があなたを偲ぶときに3つのシンボルを崇めるのはなぜでしょう?
剣を崇めるのはあなたの仇を討つため。
大鴉を崇めるのは街を空から見渡すため。
棺を崇めるのは、それが我々の過ちの重みを象徴するからにほかなりません。
#endregion
*新時代の箱舟
#region
1893年9月9日:カムストック
場所:ゴンドラ - モニュメント・アイランド
「主は人の悪が地にはびこるのを見られた。
そして地上に人をつくったことを悔い、心を痛められた。」
そして雨を降らせたのだ!四十日四十夜ものあいだ。
結果、地上に生きるものはみな滅びた。
この例からもわかるように、神でさえやり直しが認められるのだ。
そして、このコロンビアこそ現代の箱舟にほかならないのだ。
#endregion
*つかまえた獣
#region
1912年4月8日:タイ・ブラッドリー
場所:モニュメント・アイランド
あの白人たちときたら、立入り禁止の場所さえ誰かに掃除をさせなきゃならんらしい。
政治家や科学者どもは、俺の前で何でも話しやがる。
どうせ「黒人は言葉がわからない」とでも思ってるんだろう。
難しい言葉はわからなくても、
あいつらが上に閉じ込められてるものにおびえてることくらいはわかる。
恐ろしい獣をつかまえたものの、逃げるべきか悩んでるってところだな。
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*TO:R・トンプソン
#region
1912年7月3日:タイ・ブラッドリー
場所:モニュメント・アイランド
ミスター・トンプソン…言われた通り、ヒューズバンクを丸ごと交換しました。
ゆうべはすべての明かりがきちんと…灯って…
また消えちまった。
サイフォンの分だけで一日何箱もヒューズを使ってます。
いったい何が…な、なんだ、何が起こっ…
#endregion
*延期された報酬
#region
1912年7月5日:カムストック
場所:モニュメント・アイランド
未来を見ることができるからといって、それを自分自身の目で確かめられるとは限らない。
主の降臨に備えて下界を焼き払う炎の種子が生まれるのを、私は見てきた。
だが、そうした種をまくのはエリザベスの仕事だ。
私は道半ばにしてこの世を去るだろうが、エリザベスが衣鉢を継いでくれる。
私は間もなく主に召される。
この体をむしばむ腫瘍のひとつひとつに主の慈愛を感じる。
なぜなら、それらは主が待つ場所まで私を運んでくれる列車だからだ。
私はエリザベスに後事を託し、喜んで逝くつもりでいる。
だが、偽りの羊飼いが我が子羊を惑わしにやってくるとなれば話は別だ。
その男の魔の手が彼女に及ばないようになるまで、私は列車に乗れないだろう。
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*彼女の力の源
#region
1909年9月5日:ロザリンド・ルーテス
場所:実験体観察室
この少女を特別な存在にしているものは何なのだろう?
思うに、彼女が「どんな存在であるか」という事実より
「どんな存在ではないか」ということが関係しているようだ。
少女の一部は、彼女が元々存在していた場所に留まっている。
まるで、宇宙という粥の中に豆が溶け込むのを、宇宙それ自体が拒否しているかのように。
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*川で生まれた
#region
1912年3月6日:エド・ゲインズ
場所:バトルシップ・ベイ
預言者は自分の伝記の結末を知っていると言ったが、僕は書き出しすら思い浮かばない。
彼に関する資料は、英雄ホールに置いてある子供向けのものしかない。
しかもそこには、えーと、
「洗礼前のことはすべて川の岬に置いてきた」なんて書いてある始末。
盗作と言われようがかまうもんか。
巻頭の30ページは教典の丸写しで埋めてしまおう。
#endregion
*天国
#region
1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:アーケード
初めてコロンビアに来たとき、見たこともないような空の明るさと青さに驚いたものだ。
まるで…天国のように思えた。
けれども目がまぶしさに慣れるにつれ、私は気づいた。
おびただしい数の白い顔が、自分に険しい視線を注いでいることに…
#endregion
*犬の忠誠
#region
1899年12月18日:カムストック
場所:アーケード
子供のころ、私はビルという名前の犬を飼っていた。
そして犬というものがなべてそうであるように、ビルは私の忠実な友だった。
たとえ餌をやらなくても、ビルの忠誠心は変わらなかっただろう。
たとえ鞭で打たれたとしても、やはりビルの忠誠心は変わらなかっただろう。
ビルと同じことができるようになってはじめて、有色人種は社会に居場所を得るのである。
#endregion
*生け捕り
#region
1912年7月6日:エステル・メイラー
場所:チケット売り場
いよいよだわ。偽りの羊飼いがやってきた。
日付は正確じゃなかったけど、預言者の予知がまたしても的中したのよ。
ターゲットは生け捕りにしなきゃならない。
万一彼女を死なせでもしたら、あの鳥は私たちを襲ってくるだろう。
そうなれば、誰だか見分けがつかないほどズタズタに引き裂かれることになる…
煙草も今ので6本目だわ。こんなふうに待つのは耐えられない。
#endregion
*天国への輝く道
#region
1893年9月9日:カムストック
場所:チケット売り場
月日がたつにつれ、議会の面々も徐々に悔い改めていった。
やがて人類の技術とワシントンの富を使って
主はコロンビアをおつくりになり、空高く舞いあがらせた。
下界ソドムのはるかな高みに!
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*世界の中の居場所
#region
1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:グリーティング・パビリオン
カムストックハウスでの毎日は単調だった。
掃除に洗濯…重労働だが、難しいことは何もない。
カムストック夫人はたまにねぎらいの言葉をかけてくれる。
彼らの世界での居場所を見つけたと思ってしまいそうだった。
だが、神はそんな浅はかな女たちを、ただ戯れにつくっただけなのだ。
#endregion
*神の鏡
#region
1893年9月9日:カムストック
場所:ソルジャーズ・フィールド
私はワシントンに赴いたが、
議会には私が見たコロンビアのイメージを理解する者はほとんどいなかった。
しかし、悪を正すのが預言者の務め。
預言者とは、神の顔を映し出す鏡にほかならないのだから。
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*無限のビジョン
#region
1890年8月10日:ロザリンド・ルーテス
場所:ソルジャーズ・フィールド
子供の頃、夢を見た。
夢の中で私は少女を見ていた。
自分であり、自分でない少女を。
その少女はまた別の少女を見ていた。
やはり私であり、私でない少女を。
母は悪い夢だと言ったけど、その夢が物理学を志す原点になった。
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*見たことのない顔
#region
1912年5月30日:スレート隊長
場所:ソルジャーズ・フィールド
俺は40年間兵役を務め、ほうぼうで異教徒を討ち果たしてきた。
そんな俺でも、特定の敵に憎しみを抱いたことはない。
だが、カムストックだけは別だ。
奴は俺が戦った数々の戦争を陳腐な茶番劇に仕立て上げ、
そのなかで白馬の騎士を気取っている。
しかも、そのことで抗議すると、奴は俺の階級を剥奪した。
戦争のむごたらしさなど露ほども知らない軟弱な男だが、
これからそれをたっぷりと味わわせてやる。
#endregion
*ヴォックスの密輸品
#region
1912年7月6日:マンリー軍曹
場所:ソルジャーズ・フィールド
フェロー・トラベラーに密輸銃が隠されてるというタレ込みがありました。
結局ガセでしたが、妙なことに、床下から古い軍服が何着か出てきたんです。
なぜそんなものがあったのか、憶測が飛び交っていますが…誰だ!
貴様、スレートだな?銃をおろせ!
…聞こえたか、カムストック!兵士の断末魔の悲鳴なんて聞いたことないだろう。
貴様は戦場に出たことがないんだから。
違うというなら英雄ホールに来い。
#endregion
*真の兵士
#region
1911年4月10日:モンロー上等兵
場所:パトリオットのパビリオン
兵士には色々な人がいるけれど、コーネリアス・スレートのような兵士はふたりといない。
父さんはサンフアン・ヒルから北京まで彼と行動を共にした。
父さん自身の言葉を借りれば「命令とあらば地獄にでも行く覚悟だった」という。
今日、点呼のとき、スレートに声をかけられた。
モンロー軍曹の娘かと聞かれたので、「はい、そうです」と答えると、彼は言った。
「君の父親は常々息子が欲しいと言っていたが、
君のような娘を持てた幸運を、あの愚か者は噛みしめるべきだな」と。
#endregion
*落日のとき
#region
1912年5月1日:デイジー・フィッツロイ
場所:ソルジャーズ・フィールド
恐怖には恐怖で対抗するしかないということを、人々は学ぶ必要がある。
私は彼らに与するつもりなどない。
彼らの文化や政治や世間の一部になるなど、御免こうむる!
彼らの世界はすでに落日のときを迎えている。
遠からず闇に包まれる運命なのだ。
#endregion
*最後の抵抗
#region
1912年7月6日:スレート隊長
場所:英雄ホールの広場
古参兵諸君!諸君はコロンビアのために血を流し、
神なき東洋の異郷で手足やはらわたを失った。
だが、カムストックはどうだ!奴は何もしていない!
それなのに、今だに高みから諸君を見おろしているではないか。
侮辱としか言いようがない!
預言者が我々の過去を不当に貶めるのであれば、
この先またどのような屈辱を味わわされるか知れたものではない。
今こそ立ちあがるときだ。そしてあのホールを真の英雄の殿堂に変えようではないか!
#endregion
*必要な同志
#region
1912年7月6日:スレート隊長
場所:英雄ホール
事が成就した暁には、我々はテロ集団と呼ばれるだろう。
さしずめ俺は「ヴォックス・ポピュライ随一の凶手こと、
コーネリアス・スレート」といったところか。
カムストックの嘘が新しい嘘に取って代わられるわけだが、それならそれで仕方がない。
フィッツロイは同志だが…それは必要に迫られてのことにすぎない。
一致協力してカエサルを暗殺した男たちが、
普段仲良く食卓を囲んでいたわけではないのと同じことだ。
カムストックが死ねば、部下たちの過去の手柄は称賛されるだろう。
そうなれば、彼らが功名争いを始めることは目に見えている。
そんなものを見る必要はない。
#endregion
*無条件の赦し
#region
1893年4月1日:カムストック夫人
場所:我らが夫人の殺害
私を愛してくれる人々にとって、私ほど物惜しみしない人間はいなかった。
惜しみなく苦しみを与えたし、どんな裏切りも喜んで実行した。
そして私を愛する者たちすべての心を焼いたとき、預言者はこう言った。
「お前が何をしようと私は赦そう。神は私に予知の力を授けられた。
神の目で見れば、お前でさえ愛されるべき存在だから。」
#endregion
*ある兵士の死
#region
1912年7月6日:スレート隊長
場所:中庭
わが部隊は進退窮まった。
そう、まるでリトルビッグホーンの戦いで進退窮まったカスター将軍のように。
だが、我々はカムストックと奴の操るブリキの兵士どもに降伏するつもりはない。
斥候によると、ブッカー・デュイットがこのホールに向かっているという。
ブッカー・デュイット!倒した敵の頭皮を剥いでは集め、
「ウンデッド・ニーの白い先住民」と呼ばれた男だ。
あれほどの男なら、我らに安息をもたらしてくれるかもしれない。
#endregion
*死の呼び声
#region
1912年7月5日:ダウンズ
場所:ソルジャーズ・フィールド
このプレストンは卑怯な手は使わないぜ、ミス・フィッツロイ。
ナイフを構えて寝床に忍び寄ったりはしない。
ここにいるヴォックスの奴らとは違うんだ。
…皮が1枚。…それで今日2枚目だ。
さてと、こいつを聞いたら、これまでの罪滅ぼしをして、吟遊詩人の前で潔く死んでほしい。
そのときは白人の武器が必要になるだろう。
こいつを試してみるんだな。
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*神の計画
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1908年4月19日:ハッティ・ゲルスト
場所:ベガー波止場
サミュエルはいつも、日曜礼拝と日々の仕事の関係を考えていました。
「科学というのは、神の描いた青写真がゆっくりとその全容を明かすようなもの」だと言って。
モニュメント・アイランドの子羊の塔で2年を過ごしたあと、夫は胃ガンを患いました。
私は預言者に祈り、預言者はその従僕フィンクを使い、奇跡をもたらしてくださいました。
金属の体をした夫というものに慣れることができるかどうかはわかりませんが、
たとえハンディマンになっても、私にとっては生きていてくれるだけで充分なのです。
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*発火
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1912年7月13日:デイジー・フィッツロイ
場所:押収品倉庫
山火事が燃え広がろうとしている森を思い浮かべてほしい。
フクロネズミやリスは、まだ何も燃えないうちからあわただしく逃げ出すだろう。
いちはやく危険を察知しての行動だ。
でも、蜂蜜で腹を膨らませ、すやすや冬眠している太った熊は、
ちょっとやそっとじゃ目を覚まさない。
彼らを叩き起こすにはどうすればいいか…エンポリアに足を運べばわかるだろう。
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*恥ずべき行動
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1912年7月7日:モンロー上等兵
場所:フォート・フランクリン
スレートは怪物だ。反逆者だと罵られた。
彼と共に英雄ホールで玉砕した者たちはみな顔見知りだ。
彼らはなんら恥じる必要はない。
恥じ入るべきはむしろホールを取り囲んだ私たちのほうだ。
我々は勝った。それなのに私は、
スレートと枕を並べて討ち死にした者たちが羨ましくてならない。
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*ありふれた商品
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1893年3月27日:ジェレミア・フィンク
場所:労働者歓迎センター
正直、私には例の馬鹿げた預言などにつき合う暇はないんだ。
信仰なんてものは、しょせんは商品にすぎない。
カムストックはさしずめその製造元というところだ!
しかし、商売である以上、カムストックも自分の商品をカネに変えなきゃならん。
歌だけじゃ蔵は建たないからな!絶対に!
だからこそこのフィンクが手となり足とならなければならん。
彼には私が必要なのさ。自分の手を汚さないためにな!
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*嘘の種
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1912年6月17日:スレート隊長
場所:労働者歓迎センター
カムストックの細君の日記を手に入れた。
これを読めば、奇跡の子云々がいかにデタラメかわかる。
奇跡どころか、母親にすら愛されなかった子供ではないか。
亡くなったカムストック夫人は、どうやら預言者の種を孕みたくはなかったようだ。
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*目立たない色
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:ジール・プラザ
名もない娘にすぎなかった私は、カムストック夫人殺しの
下手人に仕立てられたことで、誰もが知る存在となった。
私はフィンクトンに向かい、そこで身を隠した。
捜査の手が及ぶのであれば、より深く潜伏するまでだ。
黒人の子供の顔だ。
大勢の中に紛れれば、彼らに見分けなどつかない。
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*我々は羊飼いが必要
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1912年7月6日:デイジー・フィッツロイ
場所:ガンスミス/機械工、チェン・リン
偽りの羊飼いとやらと話をしなければならない。
あの男は厄介事の種だ。
あんな馬鹿に方々で暴れ回られなくても、
我々はすでに多くの問題を抱えているというのに。
おまけに、すべてヴォックスのせいにされてしまっている。
しかし…もし彼が友好的な態度を見せるようであれば…
そのときは即戦力として使えるかもしれない。
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*人生を変える音
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1894年8月12日:ジェレミア・フィンク
場所:グッドタイム・クラブ
弟よ、空中にあいた穴から不思議な音楽が聞こえてくるなどと
お前が言い出したときには、てっきりイカれてしまったのかと思ったぞ。
しかし、お前はその音楽でみごと一財産を築いてみせた。
それだけではない。
お前は私の行く道をも照らしてくれたのだ。
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*残酷の定義
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1899年12月18日:カムストック
場所:グッドタイム・クラブ
黒人に白人より重い税を課すのが残酷だと?
人種間の婚姻を禁じるのが残酷だと?
白人に選挙権を与え、有色人種に与えないのが残酷だと?
それなら、理想の楽園から諸君の子供たちを締め出すのもまた残酷では?
同胞を大海の底に沈めるのもまた残酷では?
残酷さはときに教訓になりうる。
そしてコロンビアこそはまさに主による学び舎にほかならないのだ。
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*真の服従
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1912年7月7日:モンロー上等兵
場所:ジール・プラザ
私は神と名誉を信じればこそコロンビアにやってきた。
でもスレートのおかげでわかった。
人類という家族から同胞を締め出すのは神の御業ではないし、
名誉の意味さえ知らない者たちを守るのも名誉とは言えない。
たぶんフィンクトンになら、私が仕えるのにもっとふさわしい人物がいるはずだ…
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*燃え盛る炎
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:グレイブヤード・シフト
地下深くまで潜ると、おのずと物事を下から見上げるようになる。
そして、都市の底まで潜った私は、燃えさかる炎を見た。
高熱を発してはいても、口を持たない炎だ。
デイジー…今のお前には、コロンビアのすべての炎を合わせたほどの大きな口がある…
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*罠
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1912年7月5日:ダウンズ
場所:ブルヤード
フィッツロイ。お前さん、悪知恵だけは働くみたいだな。
この辺りにヒグマ用の罠をいくつか仕掛けといた。
お前さんの放ったスパイを捕まえて居どころを吐かせようと思ったんだ。
まさか…子供を使うとは思わなかったぜ。
…おかげで先住民のチビ助の片脚を切り落とす羽目になった。
今…切った脚をはさんでチビ助とにらみ合ってる。
いっそ、泣きわめくか何かしてくれたほうがましだ…
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*ロッカーの鍵
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1912年7月5日:サイクス上等兵
場所:ブルハウス
仕事と人生は別ものだ。
たしかに俺はヴォックスを目の敵にすることで金をもらってる。
だからって、オフのときにフィッツロイの部下と一緒に飲んで何が悪い?
しかしどうやら飲みすぎたようだ。
証拠を入れるロッカーの鍵をなくしちまった。
上にバレたらどんなことになるか…
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*抹殺
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1912年2月12日:デイジー・フィッツロイ
場所:ブルハウス
カムストック夫人と預言者は、夜な夜な何かを言い争っていた。
私の寝ている場所から話の内容までは聞き取れなかったが…。
あるとき、いつにも増してひどい口論があった翌朝、
夫人がいつまでたっても朝の礼拝に出かけないので、私は様子を見に上に行った。
そこで私はしばらくのあいだ、茫然としてしまった。
それがいけなかったのだ。
「皿洗いの召使い」としてカムストック・ハウスに迎えられた私は、
「人殺し」と罵られながら、そこを逃げ出す羽目になったのだった。
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*永遠の岸辺
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1908年7月25日:ハッティ・ゲルスト
場所:シャンティタウン
サミュエル、怒りに我を忘れそうになったら、どうかこの録音を聴いてちょうだい。
そして、思い出してほしいの。
私はあなたの妻になれたことをとても誇りに思っているということを。
みんな、あなたの魂はあの金属の箱のなかで消えてしまったと言うけれど、私はそんなこと信じません。
…いつか、話に聞く永遠の岸辺で会いましょう。
そして、出会った日のように、屈託なく笑いあいましょうね。
心からあなたを愛しています。
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*近づく死
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1912年7月6日:ブッカー・デュイット
場所:グレイブヤード・シフト
娘を連れてくれば借金は帳消しだ、か。
滑り出しはさほど悪くない。
問題の女の子がすでにいないことを除けばな。
モニュメント・アイランドはもぬけの殻だ。
どうやら俺がやってくると聞いて彼女を移動させたようだ。
古い顔なじみから聞いたところでは、カムストックは彼女を例の要塞に連れ去ったらしい。
1人でやる仕事としては、いささか厄介なものになりつつある。
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*借金はすべて返済した
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1912年7月7日:ブッカー・デュイット
場所:ガンスミス/機械工、チェン・リン
ようやく味方ができた…スレートだ。
奴はヴォックス・ポピュライの活動に同調している。
連中は寄せ集めの軍隊にしてはやけに装備が充実している。
問題は、まず奴らの革命ごっこを手伝わなければならないってことだ。
それが済んだらカムストックハウスを急襲する。
これで例の女の子を奪還できる。
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*子供の監視役
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1895年10月4日:ジェレミア・フィンク
場所:ジェレミア・フィンクのオフィス
穴がまた別の奇跡を見せてくれた。
これをどう応用したものか、考えあぐねているところではあるが…。
その奇跡とは人間と機械との融合だ。
できあがったものはそれぞれのよい面と悪い面を兼ね備えている。
そして一度融合したものは分離できない。
カムストックなら、建設中の塔の監視役としてこの種のものを必要とするかもしれないな。
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*謝罪
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1912年7月14日:ブッカー・デュイット
場所:ジェレミア・フィンクのオフィス
フィッツロイ…あんたはこのバカげた戦争の勝者だ。
これをニューヨークに送ってくれ。
奴らはあの子を奪えない。奴らが誰だろうと…。
俺はあんたらヴォックスとともに正義を為したかもしれないが、
それで何かがチャラになるわけじゃない。
アンナ…すまない…赦してくれ…
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*カムストックのもとへ
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1912年7月7日:ダウンズ
場所:ポート・プロスペリティ
カムストックの旦那、次に会うときは商談はなしだ。
偽りの羊飼いとやらの頭皮を剥ぐ約束で英雄ホールに乗り込んだものの、
少しばかり風向きが変わってね。
デュイットはスー族の言葉が話せるんだ。
俺は片脚をなくした子供の…その…面倒を見てるんだが、
デュイットのおかげでその子と話ができたのさ。
その子があんたの街でどんな暮らしを強いられてたかを聞いた今、
もうあんたの味方はできない。
その子にナイフを渡して、一緒にあんたの生皮を剥がしに行くぜ。
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*壁越しのささやき
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1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:グランドセントラル駅
ルーテス・フィールドでは量子原子を光の波動に捕らえる。
これにより、安全な測定が可能になる。
説明するまでもないわよね、兄さん?
あなたも隣の世界から、まさに同じこの原子を測定していたんだから。
宇宙を通信手段に使って。
フィールドをオンにしたり、オフにしたりすることで、モールス信号のように交信できる。
やり取りには気の遠くなるほどの時間がかかったけど、
ようやく壁越しにささやきあうことができるようになった。
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*窓
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1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:ファウンダーズの書
兄さん、カムストックは理解していないわ。
この装置が予知を得るためのものではなく、
別の可能性を知るためのものであるということを。
でも彼の資金があれば、ルーテス・フィールドをルーテス・ティアにできるかもしれない。
異なる世界をつなぐ窓よ。
もしそうなれば…とうとう兄さんと一緒になれるときが来るのよ。
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*サリー
#region
1912年7月16日:ロナルド・フランク
場所:ファウンダーズの書
サリー!畜生、ヴォックスが銃撃騒ぎを起こしてる隙に、恋人をさらわれた!
あの娘はソルティー・オイスターに監禁されてる。
きっとクローゼットの中だ。
奴はお宝をあそこにしまっとくからな。
レジの下のボタンを押せばひらくんだが、いかんせん…
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*一心同体
#region
1893年10月15日:ロザリンド・ルーテス
場所:バー「ソルティー・オイスター」
兄さん、あなたは新しい現実世界に命を吹き込まれたのよ。
でも兄さんの肉体は、混乱と大量の失血で認知の不協和を拒否している。
それでも、兄妹一緒にいられるんだから、私が治してあげる。
だって、私たちを区別するものは1本の染色体にすぎないんだから。
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*浮かぶ都市
#region
1890年8月10日:ロザリンド・ルーテス
場所:金融地区
原子を中空に固定した。
同僚たちはこのルーテス・フィールドを原子浮揚だと思っているが、実際はそうではない。
魔術師の浮揚とでも言おうか…この原子は、単に落下ができないだけなのだ。
原子を永久に浮かしておくことができるのなら、それがリンゴだってかまわないはずだ。
そしてリンゴを永久に浮かしておくことができるのなら、
それが都市だってかまわないはずでは?
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*贖罪の先に
#region
1894年12月28日:カムストック夫人
場所:ハーモニー・レーン
今宵、預言者は政敵たちに攻撃を仕掛けた。
日ごろ慈悲を説いておきながら、40人の人間を殺したのだ。
そして彼らの亡骸は無名墓地に葬られることになった。
神の恩寵に値しない人間がいるとしたら、それは私の夫だろう。
でも、私が救いようのない罪を犯したとき、手を差し伸べてくれたのは彼だった。
そんな恩人を、この私がどうして断罪できるだろう?
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*私の肌の色
#region
1908年12月29日:カムストック
場所:ダウンタウン・エンポリア
みんなの見ている前で、その軍曹は私を見つめて言った。
「お前の血筋には先住民の血が混じっているな?」
根も葉もないデタラメだが、この中傷はその後私にずっとついてまわった。
それからというもの、本心から私を仲間と呼ぶ者はいなくなった。
ようやく私が仲間と認められたのは、先住民の住むテントを、
中にいる女たちもろとも焼き払ってしまってからだ。
血は血によってしかあがなえないのだ。
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*ペンフレンド
#region
1902年7月20日:コンスタンス
場所:Z.H.カムストック・ビクトリースクエア
奇跡の子へ。こんにちは!
お母さんが亡くなられたことは残念だったわね。
…でも、亡くなった今でも、私の母よりずっといいお母さんだと思うわ。
ところで、塔はなぜ閉鎖されたのかしら?
住んでいるあなたなら分かると思って…。
悪天候に伝染病の流行が重なり、
そこへ幽霊の噂が追い討ちをかけたからだと聞くけど、本当のところはどうなのかしら。
内緒の話なら、誰にも言わないって約束するわ。
ペンフレンドのコンスタンスより。
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*無からの誕生
#region
1894年11月14日:ジェレミア・フィンク
場所:商業地区
弟よ、穴から聞こえてくる音楽は利益を生みつづけているようだな。
お前がどこの馬の骨の音楽を借用しているのかは知らん。
しかし、その作曲家に、私が今観察している科学者の半分でも才能があれば、
お前も今ごろコロンビアのモーツァルトと呼ばれているはずだ。
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*「死」に関する理論
#region
1909年11月1日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストックが装置を破壊した。
でも私たちは死んではいない。
理論的には、私たちは可能性宇宙で散り散りになっているはずだけど、
兄と私は今も一緒にいる。
私としてはそれで満足だけれど、兄は違う。
少女の問題がまだ片付いていないからだ。
でも、私たちの変わりに終わらせてくれる人がどこかにいるはず。
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*遺伝子の力学
#region
1893年7月3日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストックが種なしになったのは、私たちの装置のせい。
その可能性が濃厚よ。
理論的に言えば、有性生殖において両親の特質が薄まることと同じく、
私たちの生み出す多重現実においても、個々の特質は希薄になり、最終的には消え去る。
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*科学の子
#region
1895年1月4日:ロザリンド・ルーテス
場所:商業地区
カムストック夫人は、あの子が私と預言者の不義密通によって
生まれた子供だと思い込んでいるようよ。
だから真実を教えてやったわ。
あの子は私たちのつくり出した装置による産物だと。
でも彼女は自分の妄想のほうを信じたでしょうね。
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*神の心の中
#region
1895年1月4日:カムストック夫人
場所:金融地区
預言者は嘘つき。
でも、それはあってはならないこと。
預言者は人殺し。
それもあってはならないこと。
未来が神の心の中にしか存在しないのなら、
なぜ神は…あの怪物のような男に未来を教えるのか?
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*もうたくさん
#region
1895年1月5日:カムストック夫人
場所:金庫
ルーテスは、あの子は彼女の子ではなく、穢れた科学の産物だと言っていた。
でも、それが本当かどうかは分からない。
あの子は私と同じ、罪深い人間。
もしそうなら、夫の預言はどうなるの?
彼は私に黙っていろと言う。
私ができるのは、彼を赦すことだけ。
でも、欠乏は後悔とともにやってくる。
あの人の嘘はもうたくさん。
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*途絶えた血
#region
1893年9月10日:カムストック
場所:金融地区
大天使によれば、私の血筋を引く者が玉座を継承するかぎり、コロンビアは安泰だという。
それなのに、カムストック夫人は1人の子もなしていない。
私は夫としての務めを果たしているが、いまだ子宝に恵まれずにいる。
ルーテスに相談してみたが、彼女でさえ協力を拒んだ。
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*遅れた顧客
#region
1909年11月6日:ルパート・カニングハム
場所:ダウンタウン・エンポリア
エステル
「まさか。フィンクさんがルーテスさんたちに危害を加えるだなんて、証拠でもあるの?」
ルパート
「本人たちが教えてくれたんだ。」
エステル
「本人たちが…いつ?」
ルパート
「昨日だよ。昨日の朝。」
エステル
「ルパート…あのふたりは1週間前に死んだのよ。」
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*鎖
#region
エリザベス
場所:ハー・ラビング・エンブレイス
サイフォンは犬につける綱のようなもの。
つけたのは私の父だけど、時が来ても私は自分で外そうとはしなかった。
外していたらどうなっていたかしら?
これまで通り、おとなしく服従していたかしら?
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*選択の価値
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エリザベス
場所:我らが泣く場所
私たちの心は罪にまみれている。
中には腐敗のあまり、償いの道を見つけられない人もいる。
そうした心は根っこから摘み取らなければならない。
私の子供たちには何の責任もなく、落ち度もなく、そして選択も与えられなかった。
魂がないのなら、意志にいったい何の価値がある?
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*負債
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エリザベス
場所:我らが働く場所
「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」…。
でも結局のところ、あの人は私たちみんなの「借金」を肩代わりすることになった。
彼の罪はどこから始まったの?
私の罪はどこで終わるの?
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*最後のチャンス
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エリザベス
場所:警備員の部屋
日が経つにつれ…私は神よりもルーテスを信じるようになっていった。
後悔にさいなまれると、私の力は弱くなる…。
それもこれも、父が私を捨てたことが原因。
自分の力がどれほど強くなっているかを理解したときには、すでに手遅れになっていた。
でも償いのチャンスはまだ残されている。
私たちふたりにとっての償いのチャンスが。
あと1度だけ。
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*窒息
#region
エリザベス
場所:警備員の部屋
やってしまったことを、なかったことにはできない。
やりはじめたことを途中でやめることもできない。
でも、そもそもやらない、という道ならあるかもしれない…
彼は最初の希望だった…
そして、今は最後の希望…
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*終止符
#region
エリザベス
場所:アトリウム
明日、この綱から解放される。
すべて終わりにしなければいけない。
でもサイフォンを壊したところで、
無数の扉の中からひとつを選んで開ける勇気が私にあるかしら?
それに、もし私があの人をここに呼び出したとして、
あの人は私がつくった怪物を退治できるだろうか?
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*パブロフのベル
#region
1912年12月23日:ハリソン・パウエル医師
場所:手術室
この手術をおこなえば、彼女の問題は大いに改善されるはずだ。
いったん装置を移植すれば彼女が周囲を変化させようとするたびに、
痛みを伴う電気ショックが与えられることになる。
パブロフの犬と同じことさ。
彼女は唾液を流すのではなく、泣きわめくことになるがね。
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*最後通牒
#region
1909年10月16日:ロザリンド・ルーテス
場所:カムストック・ハウス屋上
兄さんが最後通牒を突きつけてきた。
連れてきた少女を元の場所に戻さなければ、
私たち兄妹はもう一緒にはいられない、と。
兄はそれですべてを白紙に戻せると考えているようだ。
しかし私には、そのページにリア王の物語が書かれているのが見える。
とはいえ、あの人は私の兄さんなのよ。
だから私は自分の役目を果たす。
たとえそれが涙のうちに終わろうとも。
#endregion
*終わってしまったこと
#region
1909年9月3日:ロザリンド・ルーテス
場所:預言者の手
私たちの装置により、分かったことがある。
あの少女は世界を業火に包む種火ということだ。
兄さんは、私たちがやったことをなかったことにしなければならないと主張している。
でも時間というものは、例えるなら川ではなく海なのだ。
ならば、新しい潮を呼び寄せたところで何になる?
またすぐに引いてしまうだけなのに。
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*罪の鏡
#region
1893年6月21日:カムストック
場所:預言者の手
人間が生まれ変わったとき、洗礼の水の中に残された古い体はどうなるのか?
消え去るのだろうか?
それとも、どこか別の世界で、罪人のまま生きつづけるのだろうか?
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*死に行く預言者
#region
1907年12月4日:ロザリンド・ルーテス
場所:預言者の手
預言者の死期が近づいている。
病の転移により、老化が進んでいる。
そして、こちらの世界のカムストックが死に直面しているというのに、
別世界のカムストックはピンピンしている。
遺伝子的物質がすなわち運命であるなら、この違いはいったいどこから生じているのか?
装置を長く使ったことが原因だろうか?
調べてみる価値はあるだろう。
#endregion
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