「川 ゚ -゚)殻の境界のようです~the Garden of Boonnoveler 第一話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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雨が、降っている。
雨粒が部屋の窓に当たると、すぐさま流れ落ちた。音を立ててそれは連続的に繰り返される。
川 ゚ -゚)「モグラの土を掘る速度は、カタツムリ這う速度の三分の一なんだ」
( ^ω^)「ばかな。彼らはあれを得意とするんだぜ。そんなはずはない」
川 ゚ -゚)「残念だけど、事実だよ。カタツムリはすごい生物なんだ」
( ^ω^)「きみのいうカタツムリは時速八十キロメートルで進むカタツムリなのかい?」
川 ゚ -゚)「いや違うよ。世間一般の人が想像する、マイマイというやつだ。エスカルゴだな。先生だ」
( ^ω^)「へえ。で、そのカタツムリのどこがすごいって?」
川 ゚ -゚)「彼ら――というのはおかしいかもしれないが、便宜上そう呼ぶぞ。構わないか?」
( ^ω^)「構わないよ。ぼくはカタツムリの支配者でもないから、好きにすればいい」
雨の音が、小さくなる。
永遠に降り続くかと思わせるほど勢いで地面を叩いていた雨は、穏やかな川の流れにも似た音に変化した。
川 ゚ -゚)「彼らは、絶対零度でも死にはしないんだ」
( ^ω^)「ぼくの知っているカタツムリかい? それは」
川 ゚ -゚)「間違いなくそうだよ」
( ^ω^)「信じられない」
川 ゚ -゚)「冷気では死なないが、カタツムリの餌は全て死んでしまうんだ」
( ^ω^)「……あぁ! なるほど!」
川 ゚ -゚)「その通り。彼らは冷気では死なないが空腹でやがて死ぬ。餓死してしまうんだ」
( ^ω^)「なるほど、ねえ。環境には強いけど、食べ物が環境で死んでしまうのか」
川 ゚ ー゚)「まるで、私たちだろう?」
( ^ω^)「確かに。ぼくたちと一緒だ」
川 ゚ -゚)「さあ、行こうか。餌がなくなってしまう前に」
( ^ω^)「そうだね。行こうか。カタツムリのようにゆっくりと、しかし確実に進んで行こうじゃないか」
川 ゚ -゚)「這いずった後には、ぬめりを残していこう。真紅の液体を、私たちの存在の軌跡として残していこう」
雨がやみ、灰色の雲が隆起していた空が次第に色彩を覚え始めた。
灰色、紫色、青色、水色……。朝の空の色が段々と朝が近づいてくる。上り始めた陽が、カーテンを透過して部屋内を照らした。
部屋中に充満した鉄錆のにおいと部屋中に飛び散った臓物や肉片には目もくれず、二人は悠然とそこから立ち去った。
川 ゚ -゚)殻の境界のようです~the Garden of Boonnoveler
第一話『Escargot』
@ノ”
風が吹くと、土埃が舞う。それがこの街の代名詞なのだが、昨夜の大雨によりいつもの景色は見る影も無い。
乾き、踏み固められていた大地は泥沼のようになっていて、その上をいつもと同じ数の人間が行き来していた。
誰も彼もが乱暴な歩き方をするため泥が跳ね飛び、衣服を汚すのは当たり前で、道端の商店にまで四散していた。
強烈な陽射しが街行く人々のやる気を奪い、苛々を募らせていく。
密集地帯から素早く抜け出そうと、早足になるものや強引に人波を押しのけるものが、さらに周囲を苛立たせた。
気の短いものが自らの邪魔をするものを殴りつけると、暴力は対象だけに向かわずに周りを巻き込んだ。
しかし、そのまま暴力が波紋を起こすことはなく、最初に手を上げたものは四方の人から殴られて人波に飲み込まれた。
怒気を孕ませたぼやきとため息ばかりが聞こえる目抜き通りから、少し離れた商店の店頭に色取り取りの果実が並んでいる。
長く伸びた三角形の吊り屋根の下で果実を手に取り品定めする女性を、店主が木箱に肘をついて眺めていた。
朝に弱い彼は眠そうにうつらうつらとしていたのだが、容姿端麗な彼女の来店と同時に眠気が吹き飛んだ。
顔立ちと口調にまだ幼さの残る店主が経営する、青果商店には彼女と店主以外に誰もいない。
『ダンボールボックス』と質素な文体で描かれた看板が掲げられていて、日光を照り返している。
( ><)「お姉さん、見ない顔ですね」
彼女と何か切欠を作ろうと思い、半分笑った表情で投げかけた言葉だった。
しかし、女性は店主へと睨むような視線を飛ばすと、すぐさま両手の果実を交互に眺めだした。
黒の長髪が、艶やかに揺れている。
女性は白色のパーカーを着ていて、デニムのショートスカートを穿いていた。
小奇麗な上半身から伸びた陶器のような脚の先は、泥の跳ねたミリタリーブーツで覆われている。
若干汗ばんでいるうなじに張り付いた髪を見て、店主はやや興奮する。
果物に向けられていた視線が不意に自分のほうへと向けられて、店主は思わず目を逸らした。
川 ゚ -゚)「これとこれを貰おうか」
( ><)「三十レスになるんです」
リンゴとレモンを握っている彼女に言うと、硬貨三枚をズボンのポケットから取り出し店主に渡した。
( ><)「どうもありがとうなんです」
買い物を済ませた彼女はレモンをポケットに突っ込むと、すぐに身を翻し日影から出て行った。
手をサンバイザー代わりにして歩き始めた彼女の背中を、店主が目で追う。やがて、視線を外した。
彼女は背を向けてすぐさま購入したリンゴに齧りついた。
しゃくり、と軽い音がした。渇いていた喉が潤っていく。
川 ゚ -゚)「やはり、場末のほうが品質のいい商品が揃っている」
彼女、クールは呟いて「これからも寄らせてもらおう」もう一口齧る。
瑞々しいリンゴは、真っ赤な体に太陽を反射させていた。
@ノ"
目の前の木製の扉を押して入店すると、強烈な酒気がクールの鼻を突いた。
慣れていない者や下戸ならばこの臭いだけで、嘔吐してしまいそうな店内だった。
長時間すると、アルコールを摂取していないにも係わらず酩酊してしまうであろう。
店内を一瞥すれば、大声で会話する者、一人で静かに飲んでいる者、
意識が飛び泥酔状態にある者、他数名の客が酒瓶片手に地面へと寝転んでいた。
カウンター席の端で、異様な服装をしている男が一人いて、クールは彼の隣へと腰を下ろした。
川 ゚ -゚)「待たせた?」
( ^ω^)「いんや。大丈夫。今来たところさ」
川 ゚ -゚)「それはよかった」
( ^ω^)「それよりも、丸腰かい?」
川 ゚ -゚)「背中に一丁持ってるよ。パーカーの下で取り出し辛いから、そういうことになったら、困る」
( ^ω^)「生憎、今日はこれから会合でね」
川 ゚ -゚)「……どうして君はいつも、勝手にそうやって決めるんだ」
( ^ω^)「ぼくが雇用者なんだよね。と、いうか、言ったはずなんだけどなあ」
川 ゚ -゚)「ホライゾンさんのことだから、言い忘れてたんじゃないのか?」
( ^ω^)「まさか」
川 ゚ -゚)「それより……いつも思うんだけどさ、服装はどうにかならないのか?」
( ^ω^)「え? 何が? 普通じゃないか」
ライトブラウンのスェード風ベストの内にポロシャツ。フリンジがついたパンツ。
しかし、特筆すべき格好は首に何重にもして巻かれたマフラーであった。自分の身長の倍近くはありそうなマフラーを平然と巻きつけている。
( ^ω^)「まあ、いいけどね」
そう言ってホライゾンは手元にあったグラスを呷った。クールは中身が水だと知っている。
これから仕事だというのにアルコールを含む人間なんかいない、と続けて思うが、視線を前に向けると仕事中にも関わらずアルコールを飲んでいる人間がいた。
/ ゚、。*/「なにぃ?」
整った、理知的な表情から、幼子のような声が聞こえた。
川 ゚ -゚)「いや、何も」
( ^ω^)「ダイオード、飲みすぎだよ」
/ ゚、。*/「だいじょうぶ、だよぉーっと。ん? だいおぉーっと? けっこうひびきが似てるね」
成人男性のホライゾンと同じくらいの背丈を持つ、ダイオードと言う女性はバーテンダーであった。
木製のカウンターの向こう側に立っていて、現在シェイカーを振っていることからそれは間違いない。
にも拘らず、彼女の服装はバーテンダーのそれとは言えなかった。
灰色のスポーツブラジャーと恥骨が見えそうなまでに丈が短いジーンズ。
申し訳程度な平坦な胸と、肉感的なふとももをしている彼女は十分に魅力的であり、彼女に性的衝動を覚えるものは無数にいた。
しかし、無法地帯とも呼ばれるこの町で強姦されないことは、そのままダイオード自身の強大さを表していた。
/ ゚、。*/「はい、どうぞ」
グラスがクールの目の前へと置かれる。もう一度ダイオードがどうぞと言った。
川 ゚ -゚)「これは?」
/ ゚、。*/「ジン&ビターズ」
川 ゚ -゚)「ダイオード。私はいまから仕事なんだよ」
/ ゚、。*/「しってるよ。だって、ホライゾンにしょうかいしたの、わたしだし」
( ^ω^)「ダイオードの知り合いらしいから、信用なくさないようにしないとね」
川 ゚ -゚)「時間は?」
( ^ω^)「そうだねえ。店の時計を見る限り、あと十五分」
川 ゚ -゚)「場所は?」
( ^ω^)「南区の、ガイキチ街」
川 ゚ -゚)「間に合う?」
( ^ω^)「今すぐ出て、走れば。多分、きっと、間に合う?」
/ ゚、。*/「間に合うよ、ねー?」
( ^ω^)「ねー」
見つめあい、小首を傾げる二人を見てクールは溜め息をつき、立ち上がった。
ダイオードから差し出されたグラスを掴み、思い切り床へと叩きつけた。甲高い音。
川 ゚ -゚)「ほら、いくぞ。ホライゾンさん」
( ^ω^)「あーららぁ」
ダイオードの再来を願う挨拶を背中で受けて、クールとホライゾンは店を飛び出した。
破片の掃除をしようとカウンターを出る。その際に、誰にも聞こえないよう呟いた。上気していた様子はもはや、微塵もない。
/ ゚、。 /「さて、どうなるかな。殺されなきゃいいけどね。本当に、キチガイしかいないんだよな、あそこは」
彼女の足元では、飛び散ったジン&ビターズのカクテルが床に水溜りを成していた。
酩酊したものたちがその水溜りへと這いより、舌で酒をすくい始めた。うめえ、と声を上げながら床に転がる。
ダイオードは短く息を吐いて、まあ、ここでもあっちでも一緒か、と楽しそうに笑った。
川 ゚ -゚)殻の境界のようです~the Garden of Boonnoveler
第一話『Escargot』 終わり
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雨が、降っている。
雨粒が部屋の窓に当たると、すぐさま流れ落ちた。音を立ててそれは連続的に繰り返される。
川 ゚ -゚)「モグラの土を掘る速度は、カタツムリ這う速度の三分の一なんだ」
( ^ω^)「ばかな。彼らはあれを得意とするんだぜ。そんなはずはない」
川 ゚ -゚)「残念だけど、事実だよ。カタツムリはすごい生物なんだ」
( ^ω^)「きみのいうカタツムリは時速八十キロメートルで進むカタツムリなのかい?」
川 ゚ -゚)「いや違うよ。世間一般の人が想像する、マイマイというやつだ。エスカルゴだな。先生だ」
( ^ω^)「へえ。で、そのカタツムリのどこがすごいって?」
川 ゚ -゚)「彼ら――というのはおかしいかもしれないが、便宜上そう呼ぶぞ。構わないか?」
( ^ω^)「構わないよ。ぼくはカタツムリの支配者でもないから、好きにすればいい」
雨の音が、小さくなる。
永遠に降り続くかと思わせるほど勢いで地面を叩いていた雨は、穏やかな川の流れにも似た音に変化した。
川 ゚ -゚)「彼らは、絶対零度でも死にはしないんだ」
( ^ω^)「ぼくの知っているカタツムリかい? それは」
川 ゚ -゚)「間違いなくそうだよ」
( ^ω^)「信じられない」
川 ゚ -゚)「冷気では死なないが、カタツムリの餌は全て死んでしまうんだ」
( ^ω^)「……あぁ! なるほど!」
川 ゚ -゚)「その通り。彼らは冷気では死なないが空腹でやがて死ぬ。餓死してしまうんだ」
( ^ω^)「なるほど、ねえ。環境には強いけど、食べ物が環境で死んでしまうのか」
川 ゚ ー゚)「まるで、私たちだろう?」
( ^ω^)「確かに。ぼくたちと一緒だ」
川 ゚ -゚)「さあ、行こうか。餌がなくなってしまう前に」
( ^ω^)「そうだね。行こうか。カタツムリのようにゆっくりと、しかし確実に進んで行こうじゃないか」
川 ゚ -゚)「這いずった後には、ぬめりを残していこう。真紅の液体を、私たちの存在の軌跡として残していこう」
雨がやみ、灰色の雲が隆起していた空が次第に色彩を覚え始めた。
灰色、紫色、青色、水色……。朝の空の色が段々と朝が近づいてくる。上り始めた陽が、カーテンを透過して部屋内を照らした。
部屋中に充満した鉄錆のにおいと部屋中に飛び散った臓物や肉片には目もくれず、二人は悠然とそこから立ち去った。
川 ゚ -゚)殻の境界のようです~the Garden of Boonnoveler
第一話『Escargot』
@ノ”
風が吹くと、土埃が舞う。それがこの街の代名詞なのだが、昨夜の大雨によりいつもの景色は見る影も無い。
乾き、踏み固められていた大地は泥沼のようになっていて、その上をいつもと同じ数の人間が行き来していた。
誰も彼もが乱暴な歩き方をするため泥が跳ね飛び、衣服を汚すのは当たり前で、道端の商店にまで四散していた。
強烈な陽射しが街行く人々のやる気を奪い、苛々を募らせていく。
密集地帯から素早く抜け出そうと、早足になるものや強引に人波を押しのけるものが、さらに周囲を苛立たせた。
気の短いものが自らの邪魔をするものを殴りつけると、暴力は対象だけに向かわずに周りを巻き込んだ。
しかし、そのまま暴力が波紋を起こすことはなく、最初に手を上げたものは四方の人から殴られて人波に飲み込まれた。
怒気を孕ませたぼやきとため息ばかりが聞こえる目抜き通りから、少し離れた商店の店頭に色取り取りの果実が並んでいる。
長く伸びた三角形の吊り屋根の下で果実を手に取り品定めする女性を、店主が木箱に肘をついて眺めていた。
朝に弱い彼は眠そうにうつらうつらとしていたのだが、容姿端麗な彼女の来店と同時に眠気が吹き飛んだ。
顔立ちと口調にまだ幼さの残る店主が経営する、青果商店には彼女と店主以外に誰もいない。
『ダンボールボックス』と質素な文体で描かれた看板が掲げられていて、日光を照り返している。
( ><)「お姉さん、見ない顔ですね」
彼女と何か切欠を作ろうと思い、半分笑った表情で投げかけた言葉だった。
しかし、女性は店主へと睨むような視線を飛ばすと、すぐさま両手の果実を交互に眺めだした。
黒の長髪が、艶やかに揺れている。
女性は白色のパーカーを着ていて、デニムのショートスカートを穿いていた。
小奇麗な上半身から伸びた陶器のような脚の先は、泥の跳ねたミリタリーブーツで覆われている。
若干汗ばんでいるうなじに張り付いた髪を見て、店主はやや興奮する。
果物に向けられていた視線が不意に自分のほうへと向けられて、店主は思わず目を逸らした。
川 ゚ -゚)「これとこれを貰おうか」
( ><)「三十レスになるんです」
リンゴとレモンを握っている彼女に言うと、硬貨三枚をズボンのポケットから取り出し店主に渡した。
( ><)「どうもありがとうなんです」
買い物を済ませた彼女はレモンをポケットに突っ込むと、すぐに身を翻し日影から出て行った。
手をサンバイザー代わりにして歩き始めた彼女の背中を、店主が目で追う。やがて、視線を外した。
彼女は背を向けてすぐさま購入したリンゴに齧りついた。
しゃくり、と軽い音がした。渇いていた喉が潤っていく。
川 ゚ -゚)「やはり、場末のほうが品質のいい商品が揃っている」
彼女、クールは呟いて「これからも寄らせてもらおう」もう一口齧る。
瑞々しいリンゴは、真っ赤な体に太陽を反射させていた。
@ノ"
目の前の木製の扉を押して入店すると、強烈な酒気がクールの鼻を突いた。
慣れていない者や下戸ならばこの臭いだけで、嘔吐してしまいそうな店内だった。
長時間すると、アルコールを摂取していないにも係わらず酩酊してしまうであろう。
店内を一瞥すれば、大声で会話する者、一人で静かに飲んでいる者、
意識が飛び泥酔状態にある者、他数名の客が酒瓶片手に地面へと寝転んでいた。
カウンター席の端で、異様な服装をしている男が一人いて、クールは彼の隣へと腰を下ろした。
川 ゚ -゚)「待たせた?」
( ^ω^)「いんや。大丈夫。今来たところさ」
川 ゚ -゚)「それはよかった」
( ^ω^)「それよりも、丸腰かい?」
川 ゚ -゚)「背中に一丁持ってるよ。パーカーの下で取り出し辛いから、そういうことになったら、困る」
( ^ω^)「生憎、今日はこれから会合でね」
川 ゚ -゚)「……どうして君はいつも、勝手にそうやって決めるんだ」
( ^ω^)「ぼくが雇用者なんだよね。と、いうか、言ったはずなんだけどなあ」
川 ゚ -゚)「ホライゾンさんのことだから、言い忘れてたんじゃないのか?」
( ^ω^)「まさか」
川 ゚ -゚)「それより……いつも思うんだけどさ、服装はどうにかならないのか?」
( ^ω^)「え? 何が? 普通じゃないか」
ライトブラウンのスェード風ベストの内にポロシャツ。フリンジがついたパンツ。
しかし、特筆すべき格好は首に何重にもして巻かれたマフラーであった。自分の身長の倍近くはありそうなマフラーを平然と巻きつけている。
( ^ω^)「まあ、いいけどね」
そう言ってホライゾンは手元にあったグラスを呷った。クールは中身が水だと知っている。
これから仕事だというのにアルコールを含む人間なんかいない、と続けて思うが、視線を前に向けると仕事中にも関わらずアルコールを飲んでいる人間がいた。
/ ゚、。*/「なにぃ?」
整った、理知的な表情から、幼子のような声が聞こえた。
川 ゚ -゚)「いや、何も」
( ^ω^)「ダイオード、飲みすぎだよ」
/ ゚、。*/「だいじょうぶ、だよぉーっと。ん? だいおぉーっと? けっこうひびきが似てるね」
成人男性のホライゾンと同じくらいの背丈を持つ、ダイオードと言う女性はバーテンダーであった。
木製のカウンターの向こう側に立っていて、現在シェイカーを振っていることからそれは間違いない。
にも拘らず、彼女の服装はバーテンダーのそれとは言えなかった。
灰色のスポーツブラジャーと恥骨が見えそうなまでに丈が短いジーンズ。
申し訳程度な平坦な胸と、肉感的なふとももをしている彼女は十分に魅力的であり、彼女に性的衝動を覚えるものは無数にいた。
しかし、無法地帯とも呼ばれるこの町で強姦されないことは、そのままダイオード自身の強大さを表していた。
/ ゚、。*/「はい、どうぞ」
グラスがクールの目の前へと置かれる。もう一度ダイオードがどうぞと言った。
川 ゚ -゚)「これは?」
/ ゚、。*/「ジン&ビターズ」
川 ゚ -゚)「ダイオード。私はいまから仕事なんだよ」
/ ゚、。*/「しってるよ。だって、ホライゾンにしょうかいしたの、わたしだし」
( ^ω^)「ダイオードの知り合いらしいから、信用なくさないようにしないとね」
川 ゚ -゚)「時間は?」
( ^ω^)「そうだねえ。店の時計を見る限り、あと十五分」
川 ゚ -゚)「場所は?」
( ^ω^)「南区の、ガイキチ街」
川 ゚ -゚)「間に合う?」
( ^ω^)「今すぐ出て、走れば。多分、きっと、間に合う?」
/ ゚、。*/「間に合うよ、ねー?」
( ^ω^)「ねー」
見つめあい、小首を傾げる二人を見てクールは溜め息をつき、立ち上がった。
ダイオードから差し出されたグラスを掴み、思い切り床へと叩きつけた。甲高い音。
川 ゚ -゚)「ほら、いくぞ。ホライゾンさん」
( ^ω^)「あーららぁ」
ダイオードの再来を願う挨拶を背中で受けて、クールとホライゾンは店を飛び出した。
破片の掃除をしようとカウンターを出る。その際に、誰にも聞こえないよう呟いた。上気していた様子はもはや、微塵もない。
/ ゚、。 /「さて、どうなるかな。殺されなきゃいいけどね。本当に、キチガイしかいないんだよな、あそこは」
彼女の足元では、飛び散ったジン&ビターズのカクテルが床に水溜りを成していた。
酩酊したものたちがその水溜りへと這いより、舌で酒をすくい始めた。うめえ、と声を上げながら床に転がる。
ダイオードは短く息を吐いて、まあ、ここでもあっちでも一緒か、と楽しそうに笑った。
川 ゚ -゚)殻の境界のようです~the Garden of Boonnoveler
第一話『Escargot』 終わり
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- 流石のかたつむりさんも絶対零度では死ぬ -- 名無しさん (2011-03-13 03:19:33)
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