('A`)ドクオは狐と暮らすようです 第一話

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第一話「狐の子」  その日は、いやに空が赤かった。 川 ゚ -゚) 「和尚様」 ('A`)「ん? どうした」 川 ゚ -゚) 「いえ、和尚様が帰って来ないものですから」 ('A`)「ああ、そろそろ時間だな。すまない」 川 ゚ -゚) 「夕焼け、ですか?」 ('A`)「あ、ああ。つい、見ちゃって」  クーは何も言わず、俺の隣に座る。  さらさらの黒い髪が秋の風に揺れる。弾む胸に気付かないふりをして、俺は言った。 ('A`)「時間は、いいのか?」 川 ゚ -゚) 「はい。もう少しなら」 ('A`)「そうか」  クーは、この寂れた山奥の寺を手伝ってくれている女子大生だ。  近所の大学に通っていて、一人で暮らしている。  遠縁の関係らしく、彼女がここで働いているのも親戚の勧めがあったからだ。最近のーーと言っては語弊があるかもしれないが、大学生には珍しく、勤勉であって、さらに素直な性格だった。  夕陽を見つめる彼女の横顔は赤く染まっていた。  それが、あまりにも綺麗で、俺は目を逸らす。  今まで女性と接する機会がなかったとはいえ、もうすぐ三十路の男としては情けない。俺は、気付かれないよう溜息を吐いた。  日が暮れる前に彼女を家へと送り届ける。ほとんど日課のようなものだ。  おんぼろの軽自動車にエンジンを入れて、山道を下る。 川 ゚ -゚) 「和尚様」 ('A`)「なに? あ、あと和尚様なんて大仰な呼び方しないでいいよ」  助手席に座る彼女は、少し考える素振りをして、 川 ゚ -゚) 「じゃあ、ドクオ」  俺は思わずブレーキを思いっ切り踏みそうになった。 ('A`)「急にフレンドリー過ぎるよ」 川 ゚ -゚) 「冗談です」  クーがくすくす笑う。  本当にーーこの程度のことで、いちいち動揺していては切りがないのに。  運転に集中しよう。そう考えた時、何かが目の前を横切るーー ('A`)「う、わあ」  慌ててブレーキを踏む。 川 ゚ -゚) 「ど、どうしたんですか?」 ('A`)「今、何かが通ってーー」 川 ゚ -゚) 「ええ?」  車を降りて確認してみるが、どうしたことか、俺たち以外に誰の姿もない。 川 ゚ -゚) 「本当に、見えたんですか?」 ('A`)「ああ、確かに何かがいたんだ」  注意深く周りを見渡すが、やはり何もない。 川 ゚ -゚) 「見間違いなんじゃ」 ('A`)「……」  確かに何かが通って行った。それは間違いない。しかし、痕跡も何もないのだから、これ以上ここに留まってはいられない。  結局見間違いということにして、俺は再度車を走らせた。車内で確認したが、クーは何も見ていないという。 川 ゚ -゚) 「和尚様、疲れてるんじゃないんですか?」 ('A`)「ううーん」  もしそうだとしたら、結構やばい所まで来てるんじゃないか。クーが理系の学生らしく、ブルーベリーが目に良いと熱弁するのを聞きながら、山を下って行った。 ('A`)「疲れた」  クーを無事に家まで送った後、俺は再三車を調べ、そして最大限の注意を払って寺まで帰宅した。そのせいか、全身が気だるい。今日はアルコールだな、とシャワーを浴びて、冷蔵庫からビールを取り出す。 ('A`)「はーー」  一口飲んで、俺はまぶたをぎゅっと閉じた。  クーがこの寺に来てくれるようになってから、嬉しい反面、彼女の行動一つ一つに戸惑ってしまう自分がいる。  本当、もてない男故の悩みなのだろう。もし俺がもっと女性の扱いに長けていたらーー車内で気のきいたことを言って、喜ばせることも出来ただろうに。  あわよくばーーいやいや、年の差を考えろ。 ('A`)「……」  なんだか考えるのも馬鹿らしくなって、残りのビールを一気に飲み干した。 ('A`)「聖職者たるもの、女にうつつ抜かす訳には行かねーよ」  我ながら、負け犬丸出しだ。自嘲しながら寝室に向かう。今日はもう寝よう。洗い物とか、いろいろ、明日やればいいや。 ('A`)「お休みなさい」  今日干したばかりのふかふかの布団に入って、俺は横になった。 ('A`)「……」  何かがおかしい。いや、『何か』なんてもんじゃない。足に触れているこの柔らかい物体は、布団なんかじゃない。 ('A`)「……」  泥棒か? いやいや、ならばどうして俺の布団に入っているんだ。  野良猫? 猫がこんなに大きいか? 馬鹿か、おれは。  思考停止。百聞は一見に如かず。  俺は立ち上がり、布団を勢い良く剥ぎ取った。  そこに、いたのはーー ξ゚⊿゚)ξ 「すぅ」 ('A`)「な、……、お、女?」  女が、小さく丸まって寝ていた。まるで、動物のように。 ('A`)「おいおいおいおい」  一体どういうことだ。なぜここに寝ている。いや、そんなことじゃなく、この女は誰だ。迷子、迷子なのか。こんな大きな迷子があってたまるか。 ('A`)「まじかよ、なあ、おい」  少し躊躇ったが、こんな状況にも関わらず呑気に寝息を立てている女を揺さぶる。しかし、まったく起きる気配がない。 ('A`)「おい、起きろよ。なあ、おーい」  むにゃむにゃと女は寝返りを打った。少しウェーブのかかった栗毛色の髪が布団に広がる。 ξ゚⊿゚)ξ 「すぅ、すぅ」 ('A`)「あんた誰なんだ? なあ、おい、起きろ」 ξ゚⊿゚)ξ 「すぅ、すぅ」 ('A`)「……!」  なんて、たくましいんだ。 ('A`)「……どうしたらいいんだ」  多少乱暴に起こしても構わないだろうか。しかし、相手は女だ。けれど、不法住居侵入の現行犯でもある。 ('A`)「なあ、おいっ」  布団から引きずり出そうと手を伸ばした時、女のまぶたが開いた。 ξ゚⊿゚)ξ 「……」 ('A`)「! なあ、君、一体ーー」 ξ゚⊿゚)ξ 「うるさい」  彼女がそう言った瞬間、俺のすべての体の動きは止まり、代わりにとてつもない眠気が襲って来た。  ……。  眠い。  とてつもなく眠い。しかし、光が注がれているのが分かる。もう朝なのだ。起きなくてはーー ('A`)「……」  まぶたを開けて、ぼやける視界の中、ようやく自分の置かれている状況が分かる。廊下で寝ていたのだ。 ('A`)「何やってんだ」  よく途中で目が覚めなかったな。自分の体の図太さに感心する。もう一度、気を取り直して寝ようか。  寝室の襖を開けると、女が正座して俺を見ていた。 ξ゚⊿゚)ξ 「お早うございます」  女が深々と頭を下げる。 ('A`)「お早う」  思わずつられて頭を下げたが、思い出した。こいつ、昨日の不法住居侵入女じゃないか。 ('A`)「おおおお、お前っ、お前は誰なんだ」 ξ゚⊿゚)ξ 「その質問は至極真っ当だと思います」 ξ゚⊿゚)ξ 「しかし、答えることはできません」 ('A`)「な、なんだよ、それは!」 ξ゚⊿゚)ξ 「なぜなら、」 ξ゚⊿゚)ξ 「私自身も、」 ξ゚⊿゚)ξ 「私が誰なのか」 ξ゚⊿゚)ξ 「わからないのです」 ('A`)「……」 ('A`)「警察、警察っと」 ξ゚⊿゚)ξ 「!」 ξ゚⊿゚)ξ 「ちょっと待ってえ! そのケイサツってのが何なのかわからないけど、嫌な予感がする!」 ξ゚⊿゚)ξ 「お願い、あたしの話を聞いて!」 ('A`)「……」 [[戻る>http://www43.atwiki.jp/boonshousetsu/pages/226.html]] #comment(nsize=40,vsize=10,size=40)

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