「( ^ω^)が相性の悪い人と手を組むようです 第一話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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なんで、こんな事に。
訳もわからずに人気のない道を駆け抜ける。
急がなきゃ、急がなきゃ、追い付かれ――
( ;^ω^)「あうっ!」
焦ってしまい足がもつれ、転がる。
立ち上がった時には、もう遅い。
追跡者が――目前に迫っていた。
逃げられるような距離はない。完全に背中を向けた瞬間、やられる――
僕は覚悟を決めて、向き直った。
対峙する男は、醜悪な笑みを浮かべている。
彼が一歩、一歩と歩み寄ってくる度に僕の心音が高鳴っていく。
あいていた距離はなくなり、その男が――
目の前に立ちふさがった。
('A`)「さぁて、覚悟はいいな?」
彼は、僕が返事を言わない前に手を空に向かってゆっくりと差し出し。
――勢いをつけて、振り下ろした。
( ;^ω^)「……っ!!」
これはヤバい、と脳が理解しない内に、体は動いていた。
僕は空を、飛んで。しばらくの跳躍が終わり、地面へと落ちる。
無惨にも顔面からの着地となってしまった。顔が痛い、ヒリヒリするとかそんな可愛い痛みじゃない。
手でさすると赤い液体がつき、僕の気分を滅入らせた。
そこで、ハッとこんな事をしている場合じゃなかったと気付き慌てて振り返る、と。
( ;^ω^)「……マジかお……」
コンクリートの床、が、だ。
硬いハズの床が、ひび割れて砕け散っていた。
さっきまで、僕の、いた所が。
( ; ω )「……っ……!!」
体全身に震えが走った。
ガチガチと歯が鳴り、無様な格好で、尻餅をついたまま彼を見上げた。
('A`)「意外に素早いのな。でも流石にその体制からは逃げられないだろ」
彼は調子を確かめるように右腕をブラブラと振り、手を握っては開く。
どう見ても普通の手だ。
タネも仕掛けもありません、ありがとうございました。
('A`)「よし。次で終わりだな」
恐ろしいセリフを淡々とした口調で語り、僕を見た。
足に力が入らない……
必死で手を使い、後ろへと下がる。まるで這う芋虫のようだと自分で自分の状態に笑えてきてしまった。
そんなしょうもない笑いも、また彼が目の前に立った事で綺麗サッパリと止まってしまったが。
('A`)「……そらよ!」
彼の手が。僕に迫り。
あぁ、どうしてこんな細い腕からあんな力が出るんだろうかとボンヤリと考えていた。
( ^ω^)「へぶっ」
頬に衝撃が走った。
……あれ?衝撃……?
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
見つめ合う男と男。
彼はもう一度手を振り上げた。
――バチーン。
( ^ω^)「へぶらいっ」
変な声が出てしまった。
痛い事は痛い。
……だが、それだけだった。
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`;)「え? あ、あれ?」
( #^ω^)「……」
困惑しうろたえていた男は、僕の怒りの表情に気付くと、極上の笑みを見せつけた。
('∀`*)「えへっ☆」
( #^ω^)「何が『えへっ☆』じゃ貴様! 人を散々ビビらせておいてどういうつもりだお!」
('∀`;)「や、俺にも何がなんだか……」
( #^ω^)「うるせーお!! よく見たら不細工な顔しやがって!!」
('A`#)「なんだよその怒り所は!」
はぁはぁと肩で息をした。
生きてる。でもこのやるせなさは一体なんでだろう。
('A`)「参ったな……」
悄然と呟くその男に僕は言い返した。
( ^ω^)「参ったのはこっちだお。急に追いかけ回されて、殺されかけて……意味がわからないお」
('A`)「えっ?」
( ^ω^)「えっ?」
また僕らは見つめ合った。
どうせ見つめ合うなら可愛い女の子がいいのに。
('A`)「お前……何も知らないの? このゲームの事も?」
( ^ω^)「何言ってるのかサッパリだお」
('A`)「……はぁ……」
男は溜め息混じりに言い、僕をマジマジと見つめて。
('A`)「仕方ないな。一時……休戦だ」
そう、言った。
これが彼――ドクオとの、初めての出逢いだった。
( ^ω^)が相性の悪い人と手を組むようです
('A`)「本当に何も知らないの?」
( ^ω^)「マジですお」
彼はドクオというらしい。
あの後、とりあえず話をしようという流れで近くの喫茶店に入った。
しかし……彼は話す気があるのかないのか、はたまた面倒だとでも思っているのか、今もパスタを突っつくだけだ。
口は開くが話すためではなく食べるため。
次第にイラついてきた僕は、先程のお返しとばかりに、彼に平手を繰り出した。
('A`#)「ぶっふぅ!」
そんなに強く叩いた訳でもないのに、ドクオは大袈裟に咳き込んでパスタを吐き出した。
店内から視線が集中する。
しまった、辞めとけば良かった。
('A`#)「ごほっ、ごほ……!」
( ;^ω^)「ごめんお、ほら水」
こうして見ると細身だし不細工だし、全く強そうには見えない。どちらかと言えば弱そうなタイプだ。
段々とさっきまでの緊張がなくなっていき、現実味も霞んで消え去ってしまいそうな……
早く話をしてもらわないと。
( ^ω^)「早く話を進めて欲しいお」
('A`)「ごほっ……あー……うん」
水を口に含み、静かに飲み込む。
その動作を数度繰り返して多少落ち着いたのか、ドクオはやっと話し出した。
('A`)「まぁ簡単に言うとだな。ゲーム。ペアバトル、勝つと賞金。終わり」
( ;^ω^)「簡単過ぎるお。kwsk」
僕がそう言うと、ドクオはふむ、と考え込んだ。
なんだかんだで律儀な人なのかもしれない。
('A`)「俺の能力は見ただろ? 力が強くなったんだ。そういう、能力を持った者同士が戦うんだよ。
一番の特徴は、ペアで組むって事かな」
( ^ω^)「そうなのかお?」
('A`)「あぁ。俺は一人だけどな」
( ^ω^)「なんでだお。一人より二人の方がいいんじゃ?」
('A`)「人と一緒に何かするのがやなんだよ。べっ……別に組む人がいなかった訳じゃないんだからね!?」
( ;^ω^)「……なるほどお」
どうやら彼は、組む人を見つけきれなかったらしい。
僕の考えに気付いたのか、蔑んだ目で見られたからか。『違う、違うんだ……そんな目で見ないでぇ!』とか言っちゃってるけども。
( ^ω^)「でもゲームの話、初めて聞いたお?」
('A`)「まぁ俺もよくわかんないんだけどさ。お金に困ってる奴とかがランダムに選ばれるらしいぜ?
賞金が出るからな」
なんだそのシステムは。余計なお世話だ。
――と言いたい所だったが、確かに僕はお金に困っている。
だから、このゲームにも興味を持ち始めていた。
ドクオは飲み物にストローを差し、ずごごごっと大量に吸う。
ゴクリと喉が動き、液体は胃に流れていった。
('A`)「思うんだけどさ」
( ^ω^)「うん?」
('A`)「お前、もしかしたら能力を打ち消す能力なんじゃね?」
( ^ω^)「……おぉ! なんか強そうだお!」
よくわからないけど喜んでみた。
まぁ、自分の能力とやらがわかるのはいい事だろう。
喜ぶ僕を後目に、彼はストローを離して両手を組んだ。
急に真剣な眼差しになり、真っ直ぐに見据えてくる。
('A`)「……あのさ、俺と組む? 俺、基本的に人と話すの苦手なんだけどお前は平気だし……
お前も俺の能力見た後だから損だと思わないだろ?」
ふと、さっきの砕けたコンクリートの残骸が思い浮かんだ。
ドクオは強いんだろう。
ただ――他の能力を、僕は、知らない。
( ^ω^)「……」
答えない僕を見て、ドクオはストローで水面を掻き回した。
視線を落としたまま、呟く。
('A`)「妹がさ……いるんだ。色々大変で……お金が要るんだよ……」
( ^ω^)「……!」
そんな風には見えなかったのに。
彼も彼なりに、必死なんだ。
どうしてだろう、初対面で。その上殺されかけたっていうのに。
僕は――ドクオに、協力したいと、思った。
( ^ω^)「わかった。組むお」
('∀`*)「本当か……!? 良かった!」
やっぱり笑い顔、キメェ。口には出さないだけ大人だ。
連絡先を交換しながらも笑顔は崩れない。恐ろしい。
('∀`*)「これで……! 助かる、俺の未来空留海たん……!」
続けて吐き出された一言に、僕は静止する。
( ^ω^)「未来空留海たん……?
それって、あの、『未来戦士☆クルクル!』の?」
('∀`*)「お前も知ってんの? いいよなぁ! 来月出るエロゲ絶対、買いだよな!
それでお金なくて大変だったんだよぉ……!!」
( ^ω^)「なんて言うか、死ね。僕の純情を返せ」
('∀`;)「えっ……、あ、俺用事あるんだった。帰るわ!」
雰囲気が悪くなったのを悟ったらしく、ドクオはそそくさと喫茶店から飛び出して行った。
――あんな奴と組んで、良かったのだろうか。
その後僕はテーブルに残っていた明細用紙を見て、唇を嫌という程噛み締めたのだった。
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