('A`)はそこにいるようです その2


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('A`) おはよう

( ^ω^) おはようお

('A`) 今日は晴れだ

('A`) でも、午後から曇る

( ^ω^) お、お

('A`) ……

( ^ω^)たとえば

('A`) ?

( ^ω^) アフリカとかの、難民の子供たちと、ぼく

( ^ω^) 僕の方がずーっと幸せだお

('A`) 幸せは

('A`) 比べて計れるものじゃないよ

( ^ω^) ……

( ^ω^) 絶対評価?

('A`) ああ

( ^ω^) なら、

( ^ω^) きっと「しーまいなす」

( ^ω^) なんちゃってお

('A`) ……

('A`) バス、きたぞ

( ^ω^) お、お

( ^ω^) また明日

('A`) また明日

幸せは比べては計れない
偉そうなことを言ってしまったものだ
そう言った自分が、彼を他の子供と比べてしまっている
山を登って行ったバスは、朝靄の中に消えた
幻想的?
いや不吉でしかない

この町は、不吉な予感で満ちている

彼が来ない一日は、暇だ
ぶらぶらと町と呼ぶには大袈裟な、集落を散歩する
個人商店はすっかり寂れていたが、細々と営業していた
店員がいない
奥からテレビの音が聞こえる
ああ、買い物する時は呼ぶんだな
田舎だからこそ出来る、商売方法だ

気づかれないのを良いことに、しげしげと店内を眺めた
日用品と、雑貨
それと少しのお菓子
チョコレートを買おう
明日、必要になるだろう

お金をそっと置いて、俺は店を出た

そもそもどうしてここに来ようと思ったんだっけ
彼を観察し始めた日々が、ずいぶんと遠くに感じる

知りたかったのかもしれないな
一服しつつ、考える
ただ、触れてみたかったのかもしれない

よれよれの服を着て、いつもどこかに新しいあざがあって、満足に風呂も入れてもらってないのだろう、薄汚れている彼
なのに、彼は生きている
光があるのだ、そう、光が
陳腐な表現だ
けれど、そうとしか言いようがない
彼には光がある
俺はそれを、尊重する必要がある

バスが七往復して、すっかり太陽が登った頃、彼が現れた

('A`) よう

( ^ω^)死んだお

( ^ω^)母ちゃんが、死んだお

('A`) ……

('A`) そうか

( ^ω^) 騙されたお

( ^ω^) 母ちゃんは、騙されていたんだお!!!!

('A`) ……

( ^ω^) 母ちゃんが、いっぱい管を付けなくてよくなったのは、

( ^ω^)良くなったからじゃなくて……

( ;ω;)……

( ;ω;)もう、駄目だったからだお……

( ;ω;)母ちゃんは、それも知らずに……

( ;ω;)ブーンに、ブーンに、

( ;ω;)お弁当作ってくれるって

( ;ω;)……

( ;ω;)……

( ;ω;)母ちゃん……

( ;ω;)どうして、ブーンを置いていったんだお?

( ;ω;)僕も、一緒に連れていってお……

( ;ω;)うわあああああん

( ;ω;)僕が……僕がっ

( ;ω;)とーちゃんに、殴られてもっ

( ;ω;)ご飯なくても、

( ;ω;)お風呂はいれなくても

( ;ω;)庭で寝てても

( ;ω;)くさいって、いじめられても、

( ;ω;)みんなにっ、悪口言われても

( ;ω;)母ちゃんが、母ちゃんがいるからっ

( ;ω;)僕は……っ

( ;ω;)なのに、なのに

( ;ω;)母ちゃんはブーンを置いてった!

( ;ω;)ブーンは一人ぼっちになったお

( ;ω;)一人ぼっちに……なっちゃったお

( ;ω;)母ちゃんが、母ちゃんが……

( ;ω;)死んじゃったお……

( ;ω;)僕は……

( ;ω;)どうすればいいんだお?

彼は、彼自身を裂いてしまうほどの慟哭を、これまでずっと抑えてきたのだ
いや、今でさえも彼は抑えている
周りに虐げられ、心に蓋をすることで毎日学校に向かうバスに乗れていた彼には無理もないことだった

父親からの虐待
学校での苛め
そして、これらを見て見ぬふりをする大人達
彼は、不幸だった

俺は、ただ立っていた
少年の瞳から涙がぼろぼろ零れているのを見守った
抱きしめてやりたかった
けれど、それは出来ない
だからこそ、これは義務なのだ
この目を背けたくなるような深く苦しい悲哀の光景を、しっかりと目に焼き付けなくてはならない
俺がそれをしなければ、この町の人間は誰も少年を見ようとはしない

( ;ω;)母ちゃん

( ;ω;)僕を連れていってお

( ;ω;)置いてかないでお

( ;ω;)一人にしないでお

( ;ω;)お願いだから

( ;ω;)頭、撫でてお……

( ;ω;)うわあああああん

( ;ω;)母ちゃん、母ちゃん

( ;ω;)うわあああああん

('A`) なあ

('A`) どうしてお前だけ

( ;ω;)うわあああああん

('A`) こんな辛いんだろうな

( ;ω;)うわあああああん

('A`) どうして誰も

('A`) お前に手を差し伸べてくれなかったんだろうな

( ;ω;)うわあああああん

('A`) お前は必死に伸ばしているのにな

( ;ω;)うわあああああん

('A`)悔しいよな

('A`)辛いよな

('A`)……憎いよな

( ;ω;)うわあああああん

('A`) でもな

( ;ω;)うわあああああん

('A`)もう、終わるよ

( ;ω;)うわあああああん

('A`) 終わるから

('A`) 投げ出すのとは違う

('A`) 楽に、なれるよ

( ;ω;)うわあああああん

('A`) ……

('A`) 明日には

手帳のページは、あと一枚
もう開く必要すらない
終わるのだ
本当に、疲れたよな
でも、もう大丈夫だから
もう




「ねえ、おかーさん」
「なに?」

「どうしてあの子、一人ぼっちで泣いてるの?」

('A`) おはよう

( ^ω^) おはようお

('A`) 今日はいい天気だ

( ^ω^) お、お

('A`) ……

( ^ω^) 昨日……

('A`) ……

( ^ω^) チョコレート、ありがとう

('A`) ああ


ブロロロ…


(;A;) ああ……


彼を乗せたバスは、カーブを曲がり切れずに、そのまま転落した。

('A`) ……

俺は力なく、その場に座り込んでいた
運転手、乗客三十一名、全員死亡。
ニュースを聞かなくてもわかる。
俺は、この時のためにここにいたからだ。


川 ゚ -゚) 第四○七八五○三六二、以下略、の案件

川 ゚ -゚) 無事終了

川 ゚ -゚) お疲れさま、ドクオ

('A`) ……

川 ゚ -゚) 無事規定名簿通りだぞ、おめでとう

('A`)……

川 ゚ -゚) だから、言ったじゃないか

川 ゚ -゚) 抱え込むから、そうなる

川 ゚ -゚) あまりにも情を移しすぎたんだ

川 ゚ -゚) 私はお前があの少年を逃がすんじゃないかと思って、ひやひやしたぞ

('A`) ……

('A`) そうしようと、思った

川 ゚ -゚) !

川 ゚ -゚) お前……

('A`) でも、知っているだろ、お前も

('A`) あの少年にとっては、生きていることこそが……

('A`) だから、俺は見送るしか……
川 ゚ -゚) それは違う

川 ゚ -゚) 生きていれば、どうにでもなれる

川 ゚ -゚) あの少年にも、それは言える

('A`) ……

('A`) は、は

('A`)お前が言うのか、そんなことを……

川 ゚ -゚) これは私の私的観点だ

('A`)……

川 ゚ -゚) 公的立場から言わせてもらえば

川 ゚ -゚) 動機はなんであれ、彼を乗せることは正解だった

川 ゚ -゚) そしてお前は、私と同じ立場だ

川 ゚ -゚) だから、正しいんだよ

クーの手のひらが、頭にそっと触れた
じんわりと、温かい
俺は、少年が彼の母親に会うように言ったのを思い出す
彼も母親に撫でてもらった時、同じような温かみを感じたのだろうか
いや、比べものにならないような母の愛を
彼にとって、最後の幸せを

クーの手から逃れるように、俺は立ち上がる
そして、煙りなのか靄なのか、ぼんやりと霞む山に目を向ける

('A`) この案件の担当になった時、俺はいつもの癖で名簿を見たんだ

死亡名簿。
よっぽどのことがない限り、それに記載された人間は死ぬ。
だから、同業者にはいちいちチェックしないものも多い

('A`)そこに、彼の名前があった

('A`)何故だか、彼が気になった

('A`)同じ年代の奴もリストに載っていたのにな

('A`)きっと、感じたんだとおもう

('A`) 彼が苦しんでいたのを


下へ降りてから、俺は真っ先に彼の元へ向かった
彼は父親からまさに殴られているところだった
理由は分からない
けれど父親はひどく酩酊していたから、些細なことが原因だったのだろう
彼の父親は母親が病気になってから、酒に溺れるようになった
きっと父親自身辛かったのだろう
しかし、鬱憤の矛先はまだ幼い少年に向けられた

父親の暴力から逃れるためなのか、それとも言いつけられたのか、少年は軒先に犬のように丸まって寝ていた
寒くて仕方ないのだろう
ボロボロの毛布やブルーシートを身体に巻きつけて、震えながら寝ていた

次に、学校に向かった
彼は給食を貪るように食べていた
仕方ない、彼は生きている
クラスメイトはそれを嘲った
嘲るだけならいい
彼を蹴りつけた
しかし彼はシチューをすするスプーンを離さず、蹴られながら口に運んでいた
教師は窓の外を見ている
最後の一口が終わった時、彼は抵抗をやめてされるがままになっていた

町の中でも彼に気に留める人はいなかった
気に留めたものは、彼の悪口を囁いた
彼は聞こえないふりをして、うつむいて歩いた

彼が唯一、顔を緩ませる時
それは母親の見舞いだった
母親は末期のガンだった
彼だけがそれを知らない
母親はすべてを知っていた、けれど、彼には言えなかった
だから、嘘を吐いた
お弁当を作る
彼にとって、あまりにも残酷な嘘を

死亡予定者との接触は、一日五分までと決まっていた
俺は考えた
少しだけでも、彼の苦しみを紛らわす方法はないだろうか
幸福を与えられる存在ではない
けれど、何か少しだけでも


('A`) おはよう

気がついたら、俺はそう言っていた
彼は一瞬不安そうな瞳を向けたが、

( ^ω^) おはようお

そう、彼は底抜けに、誰よりも生きていたのだ

この日々で、俺は彼になにか出来ただろうか
少しでも緊張を弛ませる、そんな時間を与えられただろうか
俺の選択は、間違っていたのだろうかーー




('A`) 帰ろう

川 ゚ -゚) ……ああ

('A`) 驕り高ぶりだな

川 ゚ -゚) ……

('A`)俺のような存在が、人の幸不幸を計ろうなんて

('A`)ましてや、それを与えた気になっているなんて

川 ゚ -゚) きっと、

川 ゚ -゚) 彼は

('A`) ……

もう一度、バスが登って行った道を見る
何時の間にか朝靄はきえて、深い緑色がそこにあった
太陽の光が、濡れた木々を輝かせていた
それはまるで、俺が彼に見た命の光のようだった



川 ゚ -゚) 帰ろう

('A`) ああ

どうか、どうか。
親子が再会出来るよう。


少しずつ遠くなる町に、俺は祈る。




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