一人では危険だ、と身悶えながらも身を案じるクーを童貞達が制する。
('A`)「三十男が自分でやるっつってんだ、任せろよ」
_
(;゚∀゚)「そうだ……、こんな所で無駄足食ってる場合じゃない!おっぱいが……、おっぱいが!おっぱいがあああああ!!」
一刻を争う緊急事態。それに最も過敏な長岡とその下半身の勢いに従う一同。
貞子の闇とツンの金色の闇が互いに牽制し合う間に、非常口から内部へと入る。
その際、貞子は攻撃してこなかった。
多対一よりも一対一。彼らにとっても望むべき状況なのかもしれない。
ドクオの『死ぬなよ』と言う言葉を最期に、全員が内部に入ったかと思った内藤。
だが、その傍らにはきりたんぽを指にはめたシューがいた。
┃
lw´‐ _‐ノvb 『内藤、わかったよ。キミの能力』
┃
lw´‐ _‐ノvb 『おそらくは学習の様なもの……。条件はわからないけど、たぶん見るか喰らった能力を使役できるものだ』
┃
lw´‐ _‐ノvb 『使い方には、気をつけて……』
それだけ告げると、彼女の姿は瞬きの間に消失した。
一同は、内藤の意を無駄にしないため全力で廊下を走る。
( ФωФ)「意外だな」
('A`)「何がです?」
( ФωФ)「内藤、彼はもっと穏やかな男だと思っていたのである」
遠心力に逆らい、体を傾けながら角を曲がる。
_
( ゚∀゚)「あいつは親のこととなると昔から直ぐカッとなるんですよ」
('A`)「お前もだろマザコン」
_
(;゚∀゚)「う、うるさいな!俺は違うよ、だいたいマザコンじゃないし!!」
( ФωФ)「その歳にしては珍しい、本当に親しい友人同士なのだな……」
('A`)「アイツはホントの意味でボッチだから……、せめて俺達だけは信頼し合いたいんだ」
_
(*゚∀゚)「ブーンからのオナネタ提供率ハンパねえしwいなくなったら困るしwwww」
長岡の狂声に、クーは眉間に皺を寄せる。
それに合わせて杉浦は目を伏せ、これからも仲良くな、と頼れる後輩達に声をかけた。
川 ゚ -゚)「ここの階段を上れば第4スタジオだ。スタジオ裏に出るから見つかりにくい。
そして、マスター室へはそこの角部屋に隠された専用階段を使う」
クーが指差した先には、何の変哲も無い喫煙所のような部屋がある。
まさかここから中枢へ繋がるとは、誰も思わないだろう。
クーはその扉に手をかけ、ゆっくりと口を開いた。
川 ゚ -゚)「ここでお別れだな、ドクオ」
('A`)「しばらくの間だけ、な」
川 ゚ー゚)「ああ」
_
(#゚∀゚)「ドクオ行くぞ!おっぱいは待ってはくれない垂れたらどう済んだコノヤロオオオ!!!」
(-A-)"「ロマさん、クーのこと、頼んます」
( ФωФ)「うむ、心得た」
人は出会い、それぞれの進むべき道へと別れる。
(:::∀::)「ほう、舐められたものだな……」
その姿を、ディスプレイ越しに見る影がほくそ笑んでいた。
――――――――
――――
ヒッキーは元来臆病だった。
幼い頃より人見知りで人前に出ることを躊躇い、母の影に隠れていた。
そんな彼が、頼るべき母がいない場ではどのように振舞えばいいのだろうか。
ある者は、躊躇いながらも、徐々に周囲に打ち解けナワバリを広げていく。
またある者は、泣きながらも自信の足で立ち、自らの欲求を主張する。
だが、ヒッキーはそのどちらでもない。
彼は母を、絶対の保護者を求め、ただひたすらに自らの意志を保留し続けた。泣き続け、流され続けたのだ。
幼子が最初にぶつかる壁、”自立”を未だに超えることのできない三十路――――それ故の童貞。
拗らせ過ぎて生物的に終わっている彼だが、今回ばかりはその臆病さがプラスとなる。
臆病とは、言い換えれば慎重、狡猾といった”思慮深さ”を意味する。
それらは元来決してイコールではないのだが、相手に本心や手の内を見せないという負のイメージにおいては共通点が見出されるのだ。
そして――――
(;^ω^)「くそ……、ツンッ!!」
(-_-)「何度やっても無駄だよ……暗闇ではボクのことは見つけられない……。それに……」
内藤の声を合図にしてツンの指先に青炎が燈ったが、一瞬の影を残して漆黒の闇に吸い込まれる。
ワンテンポ遅れて、風切音と共にツンの肌が熱を帯びた。頬には赤線が滲む。
突如死角から暗闇が伸びていた。
川д川 『フフ……。どう?痛い?それとも、熱い……?』
ξ;メ゚⊿゚)ξ『どうして……?同じ能力を身に着けたはずなのに……!』
(-_-)「だから無駄だって……。この暗闇は、ボクの心の闇は、そんな簡単なものじゃあないんだ……」
闇。言い換えれば、無を意味する。
そこには、温度や物質といった単純な物理的操作対象があるわけではない。その上これは、ヒッキーの言うとおりただの闇ではないのだ。
真価を知らずしては決して使いこなせない能力。
(;:^ω^)「まずいお、相性が最悪だお……」
――――内藤達は、もはや完全にヒッキーの本質を見失い翻弄されていた。
当初、ツンと貞子の戦いは単純な力比べの様相を呈していた。
しかし、異常性欲を誇る内藤のリビドーによりツンが押し始めた瞬間――――
(;-_-) 「貞子、負けちゃうよ……。キミは傍にいてボクを守ってくれてなきゃダメだ……!」
――――この一言で戦況は一変する。
ヒッキーは狡猾なまでの臆病さで距離をとり、貞子は暗闇に姿を消して武器攻撃にシフトした。
経験上、ツンは内藤自信が受けた攻撃でなければ能力をコピーできない。
その仕組みを理解できないからだ。
故に、能力を防御に用いる術を知らず、学ぶ時間も無い。
(-_-)「貞子……。ボク達の痛み、教えてあげるよう……」
川д川 『ええ……』
川゚д川『生きることの恐怖をたっぷりとね……』
そして現在、非常階段で繰り広げられているのは目隠し状態での私刑だった。
(-_-)「まずは角材」
大道具で用いるスタジオセットの角材。
貞子は加減なしに、しなる程の勢いで振るった。
ξ; ⊿ )ξ『キャウン!』
剛性の鞭かと思わせるような衝撃がツンの左手に直撃。
仕組みはわからないが、敵からこちらの姿が確認できるのだろう。
内藤は痺れる左腕を抱えながら考える。
川д川 『次は鉄パイプ』
足場用の鉄パイプ。安全性から強度重視に作られているものだ。
貞子はこれを、内藤めがけて横一閃になぎ払う。
驚異的な俊敏さで襲い来る線の暴力。
とっさのバックステップでは避けきれぬ。そう察知した内藤は、わざと体を”く”の字に歪ませ、間一髪の間でヒット地点に贅肉を集中させた。
(;||i ω )「ぐ…ハ……」
それでも肋骨に鈍痛が響く。が、折れてはいないようだ。
己の死亡を阻止した脂肪に生まれて初めて感謝する。ご褒美に今夜はぺヤング大盛りを食べよう。
(-_-) 「ふふ……。いつ来るか解らないのがいいでしょ……」
川д川 『もっと……、もっと楽しませてアゲル……』
更に濃厚な闇が内藤達を襲うべく広がる――――!
彡⌒ミ
【(´・ω・`)y‐「もっしー。うん俺ー今会談で吹かしてんのー。いいんだってー。Pなんだからー。
俺Pだからー、ジーマーでドラマ主演っちゃえるよー?だからチョメチョメしようよー」
■■⌒■■
■■ω゚`)■ ブワッ
■■■■■
■■⌒■■
■■ω;`)■「これなにっ!?暗くて怖いよ……。でも怖いの気持ちクなってきた!不思議!!
■■■■■ いいよお!つ、次はナニ!?ナニでボキのお尻をホジホジしてくれるの!?早くぅぅぅウウ!!!」
偶然後ろを通りがかったPが妄想の闇に囚われ、悶え果て涙と精液と淡い期待を噴射した。
ξ;|i ⊿゚)ξ『も、もう私達だけじゃ無理だよ……、逃げよ?』
ツンは縋る様な、懇願するような声を内藤に向ける。
無理も無い。文字通り右も左も解らない状況の中、固い棒でぶん殴られているのだ。
固い棒……、折角エロスな響きなのにちっとも楽しくない。これで挫けないほうがどうかしている。
だが、自我を、童貞のくせに貫き通す男。内藤の考えは違った。
:(; ω ):「……ダメだお」
ξ||i ⊿゚)ξ『え?』
(; ω )「ブーンはさっきみんなに言ったお、コイツはブーンが倒すって!」
(; ω )「ここでブーンたちが逃げれば、コイツは先に行った皆を狙う……。ブーンを信頼して先に言った皆を……!!」
ξ;゚⊿゚)ξ『!』
(; ω )「背後から襲われれば戦いなれてないドクオ達が危ないお!!」
聞き流していた、だが片隅には残ったチームプレーの鉄則――
――”シンガリは何があっても仲間を無事に先に行かさなくてはならない”。
それに、と内藤は顔を上げ、己を鼓舞し奮い立たせるための言葉を繋ぐ。
(;^ω )「仲間の信頼を守れない奴は……、仲間の後ろを守れないような奴は!」
(;^ω )「ニートでも引きこもりでも……、ましてや童貞にすら値しない!」
(;^ω )「それ以前、それ以下の存在!!」
(#^ω^)「そんな奴は……、ただの糞以下のゲロ野郎なんだお!!」
仲間のケツを守れなければ、糞まみれの糞野郎になるだけ。
内藤はそう言い放った。
無論、内藤に全く勝算が無いわけではない。
先ほど一瞬だが炎が輝き、そして消えた。
( ^ω^)「なら、この闇の仕組みは……、能力で光を吸い込んで作り出しているんだお!」
糸を引くような笑い声が『30点』、と告げる。
(-_-)「だいたい、それが解ったところでキミ達にいったい……」
川д川『何ができるの……?』
ゴロン。カランカラン。
角材と鉄パイプを投げる音。
(-_-)「じゃあ貞子、次はそれかな……」
ガラン、重量と破壊力を秘めた低い金属音。
(;^ω^)「そ、その音はまさか……!?」
(-_-)「そう……」
――――バールのようなものさ。
暗闇の中、人類最凶武器を手にした男が微笑む音が再度鳴った。
それは、封印されし扉をもこじ開ける最後の鍵。
それは、機械に守られし秘宝を入手するための知恵の結晶。
そして、近年の殺人事件において他の追随を許さない使用頻度を誇る、幻の人類最凶武器。
ξ;゚⊿゚)ξ;メ゜ω゜)「あれだけはヤバイおおおおおおおおおおお!!!!!」
襲い掛かるバールのようなもの。
咄嗟に地に伏せるも、頭を掠めて空を切り、その度に何かにぶつかりひしゃげる暴音が耳を襲う。
破壊力は推して知るべし、恐怖心を引き立てる。
不幸中の幸いは、大きな重量だ。そのためモーションが大きく、スウィングスピードが鈍く、風切音が大きい。
余程の不意をつかれなければ、これほど避けるのに適した武器もあるまい。
最大級の破壊力を、最大級の愚鈍さが相殺する、幻の最凶兵器。
それがバールのようなものの特製。
しかし、ヒッキーの能力、『暗闇』は不意をつくことに関しては最高の効果を発揮する。
この武器の欠点を十二分に補うものだ。
川д川『醜く潰れなさい……!』
最凶をその手に、貞子は闇に溶け込む。
足音が着実に近づく……!
ξ;゚⊿゚)ξ『ど、どどっ、どどどうすれば――――』
ξ;゚⊿⊂( -ω-)⊃「静かにっ!」
言葉を遮り内藤はツンの前に出た。
我が身を守るはずのツン、彼女を身を呈して守る内藤。
童貞の生き様は常に騎士道と隣り合わせ。それを地で行くのが内藤ホライゾンという男――――!
彼は両手を広げ腰を落とし、目を瞑り、聴覚を研ぎ澄ます……。
カツ…
⊂( -ω-)⊃
内藤が集中したとき、彼の耳には奇跡が宿る。
チュパ音を聞けば口内で舌が何往復したかを瞬時に聞き取る程度のヒアリング能力。
カツン
⊂(;-ω-)⊃
もちろん、それを亀頭への刺激のリズムにコンバートし、更なる集中を喚起することを忘れない……!
ブォ――――
彡;゜ω゜) サッ
――――ォォォオン!!!
一二三三⊂ニニ(;^ω^)⊃ダット!
チッ!
内藤は風切音に耳を澄ませ、身を屈め、フォロースウィングの間に離脱した。
(;-_-)「なんで……?なんで人間の反射神経で避けられるの……?」
(;^ω^)「なめんなお!ブーンは中学時代、目隠し尻バットゲームから生還した男だお!」
内藤はあのリア充いじめっ子の陰湿さに感謝した。
頭を命がけで2度、3度とバールのようなものを避わすうちに、徐々にコツを掴む。
来るべき時に備えて、内藤はツンに耳打ちをした。
カツン
(;-ω-)(次来るお!ツンも拍子を合わせるお……。お・ちん・ちん……)
ξ;-⊿-)ξ『(び、びろーん!!)』
だが、コツを掴むのは相手も同じこと。
川д川 『そんな避け方……、そう何度もうまくいくものかしらね……?』
相手が自分に合わせるならば、それに合わせ自分も攻撃を変えればいいだけのこと。
貞子はほくそ笑み、一拍子遅らせバールの握りを横から縦へと変えた。
――――冷や汗と交換に手に入れた程度の回避スキルでは、相手が拍子を変えた際には決して対応できない――――。
内藤は知っていた。
慣れは油断と怠惰と絶望を産み出す罪である。
繰り返す怠惰な日々の中で、陰湿な目隠し尻バット
内藤はそのことを経験的に知っていた。
故に、彼は最も効果的なタイミングで手の内を明かす。
( ゜ω )「ツン!今だおっ!!」
ξ゚⊿ )ξ『応ッ!』
声に主の強い意志が滾る。
ツンはそれに応え、右手を背後に向ける。そして指先に5連の橙火を生み出した。
先に耳打ちした手はず通り、順不同に灯る5連の橙火は生み出されては闇に吸い込まれ、点灯を繰り返す。
(;^ω^)「フィンガー・フレア・ボムズ……、成功だお!」
溜めの少ない弱炎を連続的に生み出すことで、コマ送りのように流れる影。
これにより、内藤の前バールのようなものを振り下ろそうとしていた貞子、
そしてツンの背後で振りかぶるヒッキーの影が明らかになった。
д川『あ……』
(;-_-)「あれ……?」
( ^ω^)「陰湿なお前らのことだお……。最期はきっと両方から来ると思ってたお!」
ξ゚⊿-)ξ『久々に顔を会わせれたわね』
( ^ω^)「破壊力の大小なんかじゃ勝負は決まらないお」
ξ゚⊿゚)ξ『能力は使い方次第ってワケよ』
(;-_-)「逃げてっ、貞子……!」
( ^ω^)「反撃だお!ツン!」
ツンは細切れのファイア・ボールを拳に纏う。
大きな一撃は必要ない。ヒッキーを追い詰め、炎の連撃を繰り出す。
ヒットの瞬間に点火、吸収されるが敵位置を把握。更に炎の拳を振りかぶる。
目視できないため急所への確実な直撃は無いが、ベガ様並みに確実に削っている。
このまま削りKOも狙えるだろう。
(;メ-_-)「いいたっ、あつっ!あつつつつ……!さ、貞子……っ!!」
川д川
川д川『あ、はい……』
いまだブーンを追い、バールのようなものを振り回す貞子。
獲物の大きさ故にテレフォン・パンチのようなものになり、白日の下に晒されたような状態では、
そのようなものは内藤のようなものには当たりようも無かった。
内藤は肌で感じる――――反応のテンポが遅い。この二人……――――。
( ^ω^)「リビドーの共鳴が弱いお!いけるお!」
ξ゚⊿゚)ξ『うん!』
ツンがヒッキーを追い詰めるのを横目に、音に合わせて攻撃を避ける内藤。
( ^ω^)「そんなもん余裕だおん!」
だが、今回は、音すらもが闇の中に消えていた。
(;i||ナω゜)「グ、ハ……」
川д川 『フフフ、いい色に染まったじゃない……』
突如闇が晴れ、中から内藤と貞子が現れる。
彼は膝を着き、コメカミからは紅の筋が走っていた。
掠った腑だけでこの威力、流石はバールのようなものだ。人類最強武器の名は伊達じゃない。
ξ;゚⊿゚)ξ『ブーン!?』
ツンは眼前の敵から目を逸らし、身を翻して内藤の元へ駆け寄った。
その背後から、フフゥ、と糸を引くような嘲笑が漏れる。
(゜_ )「油断したね……、物語にはミスリードを張っておくものさ……。
ボクの力が吸い込むのは光だけじゃあない……。その気に音だって吸い込める……!」
饒舌にしゃべるヒッキー。いつに無く機嫌が良さそうだ。
他人の裏をかき陥れるという行為は、それほどに心地よく、
身悶えるほどの至上の悦楽を与える媚薬のそれに近いものだ。
(-_-) 「僕の真の能力……、それは……」
――――波動干渉――――
ξ;゚⊿゚)ξ『波動、干渉……?』
ξ(゚Δ゚;ξミ 『ブーン何それ!?』
(i||ナω )「ナニソレムツカシイコトワカンナイ……」
どうする?どすれば……。
内藤は考える。自分の経験、知識、妄想に夢枕。己に眠る全ての叡智を掘り起こし、可能な対策を夢想する。
しかし、怪我を負い混乱した状態では直近の記憶しか引き出せない。
(;i||ナω-)「くそ、普段ならもっと深く想像できるのに……!」
その言葉通り、内藤は常日頃所構わず想像一つで直立不動。
エルフェンリートみてちんちんおっきできるほどの剛の者だ。
川д川『理解したなら悔いは無いでしょう……?』
だが、現実は無情である。
時はけして止まらず、待ってはくれない。
川゚д川『永劫の……、呪怨の闇に囚われろ……!』
仄暗い瞳が内藤等を射抜き、
光も、音も無い、凍りついた世界の殻が再び二人を包み込む。
(;i|ナω^)「また、闇が……」
うっすらと流れる血が、内藤に冷たくも熱い感覚をもたらした。
ドクン……。
ドクン、ドクン……。
心音だけが煩く響く。
また、まただ……。また、……が……!
( ω )
内藤はそのまま地に伏した。
ξ;゚⊿゚)ξ『ブーン!どうしたのブーン!?』
ツンの必死な呼びかけは空虚な闇に吸い込まれる。
姿の見えぬ主からの応答も無い。同調した内藤の気配を確かに背後から感じているのに……!
川д川『フフ、無駄よ。あなた達は今、殻の中で完全なる闇に囚われている……。
彼にはあなたの声も届かないわ……。、あなたにも彼の声はね……。だからもう……』
――――みんな死んじゃいましょうよ。
顔には闇を讃えた笑みを、手には最凶を持ち、貞子が迫る。
それは言い換えれば、絶望。
希望の光を、神の福音を、全てを無に帰す絶望。
黒衣の塊がツンに絶望を与えに迫る。
だが――――。
それでも――――。
ツンは諦めない――――、諦められない――――!
内藤の言葉――――仲間の信頼を守れない奴は童貞にすら値しない――――が彼女を奮い立たせた。
先に内藤が為したよう、両手を広げ、その身を盾に。
背後にいるだろう主を守るため、ツンは覚悟を決める。
『庇うの?じゃあまずは貴女から……』
闇の殻より貞子の声が響く。
ツンが肘から先を時計回りに払い除けるも、沈黙。何事も起りはしない。
ξ;⊿;)ξ『どうして?さっきはできたのに!?』
(-_-)「キミのそれはただ光を吸い込んでいるだけ……
この能力はそんな簡単に使いこなせるほど単純じゃないよ……。」
ヒッキーが言い終わるよりも前に、バールのようなものがツンの鎖骨を捉えた。
ξ; ⊿ )ξ『か、はっ……!』
肩を砕かれたと気付いたときには、ツンは重力のまま後ろに倒れていた。
灼熱が肩を襲う。うなされ転げ回る最中、微かに何かに触れた。
果たして、そこにいたのは――――守るべき者。
ξ; ⊿゚)ξ『ブーン……!?』
( ω )「……」
だが、更なる重力加速度が彼女を捕らえる。
ここは階段である。闇の中動き回ること――――、それは転落を意味した。
ツンは派手な音を立て、階下の踊り場に崩れ落ちた。
『フフ……、そこでしばらくお休みなさいな……。血みどろの主を傍に添えてあげるわ……』
踏み、躙る。
蠱惑的な誘いに身を委ねた闇が、超鈍器を振りかぶった。
――――――――――――
全てがフェイク。
全ての真実が、嘘という闇の中に隠されていた。
ブォン!
臆病なヒッキーは自分を隠し、本音を隠し、真実を隠した。
元来の、童貞ならではの挙動不審さに内藤等はまんまと騙されたのだ。
ガコン!
内藤は闇の中で怒りに打ち震えていた。
己の愚かさに、己の浅はかさに。
(: ω )「ハァ……、ハァ……」
内藤は逃げる。
音の無い闇の中、正面きって攻撃を避けることはできない。
生き延びるためには、背を向け、走り、相手が追いつかない速度で、全力で階段を下るしかない。
ブォッ ガァン!
耳のすぐ後ろで背後で音が鳴る。
しかし、その凶風は鼓膜を揺らさない。内藤には届かない。
完全なる闇――――だが内藤はそれに怯まずに1階、2階と階を下る。命を、守るために。
(-_-)「光も音も無い世界……。どうだい、これが本当の闇だよ……?」
希望も、未来も、何も見えない。
将来の自分が存在しない、薄いカーテンに閉ざされた、永遠に闇の中の部屋。
あのときのボクの心の中さ。
(-_-)「とは言っても、キミには聞こえてないんだろうけどね……」
己は決して動かぬ怠惰な男がひとりごちた。
じゃあ、貞子――――。
『滑稽なラストダンスは、もう終いね……』
闇の殻が語りかける。
と、同時に内藤の足が何かに払われ、手を突き階段の中腹に崩れ落ちた。
やはり遊ばれていたか……。
内藤は舌打ちした。
『フフ、油断した……?お前なんていつでも殺せるのよ……』
内藤を死という闇に閉じ込めて希望の光をもぎ取る、死神の鎌。
バールのようなものが、迫り来る――――!
( ω )「油断したのは、そっちの方だお……!」
――――暗闇の中を金色の影が駆ける――――
( ω )「心音が……聞こえたんだお……」
聞こえないはずの音が、聞こえた。
自分の体から、地に伏した床から、繋いだ手から……!
これが意味するもの。それは――――
( ゜ω )「吸い込まれているのは、ブーンの周囲の大気波動だけだお!」
(;-_-) 「……!」
ヒッキーの能力。それは、対象周囲の波動への干渉。
そして怠惰ゆえ研鑽せず、大気のみに限定されていた。
それすらも隠していたヒッキー。だが、内藤の視姦力、空想力はそれを凌駕した。
( ゜ω )「そして、お前は自分からは決して動かない……。ならば索敵の目は一つだけ……!」
――――近づく足音と暴虐の熱波――――
( ゜ω )「床に耳をつければ足音は聞こえるお!それが下り階段ならば隠しようも無く……!」
距離、前方60cm。把握。
( ゜ω )「そして、ブーンは階段に倒れている……。この状況なら!」
方角、斜め上前方。把握。
ダッ!
ξ#゚⊿ )ξ『ぶっ飛ばすなら真上付近にいるってワケよ!!』
突然の怒声に思わず頭上を見やる貞子。
しかしその行為が命取りとなる。
既に、階段から飛び降りたツンは頭上に迫り、掲げた特大の青炎を振り下ろす最中だった。
敵を認識する時間。
一瞬では吸い込みきれない、と判断する時間。
次の行動に移る時間。
その全てが足りず貞子は浄炎に包まれる。
彼女は眼前の光景――――服を焼かれ全裸で『ねぇねぇ今どんな気持ち?』とトントン煽る焼き豚を目に、断末魔を上げた。
炎#;;メд;;炎 『チックショォォオオォォォォォオォォォ……ッ!!!!』
ツンは内藤ごと貞子を煉獄に叩き込んだ。
(;:#;;_;)「そ…、んな……。ま、さか……幻我が、自分から…主を……?」
,,;,';,';',',,';#;;д゚;;,';,'; 『シが……、コワ…くないのカ……?』
「こういう信頼もあるんだお」
思い出されるは直近の記憶――――――――。
(#^ω^)「これじゃ命がいくつあっても足りないお!」
( ФωФ)「安心しろ内藤。己の幻我の攻撃では死なん」
――――――――師である杉浦の言葉。
( ω )「自分の幻我では死なない、か……。ありがとだお、ロマさん」
でも……
炎
炎炎;;;;;ω;;;)「トンでもなくイッテェおおおおおおッ!!」
=========================
第3話「逢魔がトワイライト」
終
=========================
最終更新:2011年03月23日 17:15