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私は昨日までの出来事を包み隠さず話すことにした。
特に、あの言葉・・・

「私がキッズじゃなくて、エッグだから?」

こんなひどい言葉でちっさーを戸惑わせて縛り付けていたと告白するのは、とても勇気のいる行為だった。
それでも、私のために家にまで来てくれたえりかちゃんには、どうしても打ち明けなければいけないことだと思った。
怒られても、嫌われてしまっても仕方ない。
私なりの誠意をえりかちゃんに示したかった。

「そっか、2人はそのことで昨日ぶつかっちゃったんだ。」
「心配かけてごめんなさい。」

えりかちゃんは私を罵るわけでもなく、ただ優しく髪を撫でながら話を聞いてくれた。

「栞菜・・・ウチの方こそごめんね。」
「えっ・・・どうして?」
「最初に2人が変な空気になったのは、舞美が写真を持ってきたあの日だよね?
ウチはとっさに千聖だけかばって連れて行っちゃったけど、もうちょっと突っ込んで2人の話を聞いてあげるべきだった。
いつもそうなんだよね。ウチはお尻をあげるのが遅いから、こうやって誰かが傷ついてからじゃないと何にもできない。一人で悩んで、本当に辛かったでしょ。」


・・・・ああ、どうして。
どうして私の周りの人たちは、こうも優しすぎるんだろう。
どうして私じゃなくて自分を責めるんだろう。

また泣いてしまいそうになる。

でも今はまだ冷静に話さなくちゃいけない時だから、私は両手でほっぺたをバチンと叩いて気合を入れなおした。

「もう私、ちっさーに嫌われちゃったよね。あんなに怒った顔、見たことなかった。」
「ううん。それはない。」

それでも謝りたい・・・と続けようとした私を、えりかちゃんが遮った。
「あの日ね・・・栞菜を送った後、舞美から電話があったんだけど。
ちっさーがすごく落ち込んでるけどどうしようって言ってた。
栞菜を傷つけてしまったって、どうしてあんなことを言っちゃったのかって、自分を責めてたみたい。」
「そんな、でも悪いのは私だよ。」
「たしかに、栞菜の言ったことはルール違反だね。
でも、千聖は栞菜のこと嫌いになんてなってない。またいつでも元の関係に戻れるよ。
きっと色々なタイミングが合わなくて、歯車がかみ合わなくなっちゃったんじゃないかな。
いつも穏やかに見えたって、千聖も人間だからね。どうしても虫の居所が悪い事だってあるよ。」

そこまで言った後、いきなりえりかちゃんのおなかが“グーッ”と鳴った。

「・・・もうっ!えりかちゃん!すごいいいこと言ってたのに!」
「あははっごめん!ウチ朝ごはんもまだなんだよー。タピオカじゃ物足りなかった。」

そういうわけで、私たちはお昼を食べるために場所を変えることになった。
商店街のアーケードで日差しを避けながら、肩を並べて歩く。
「私きっと、えりかちゃんみたいになりたかったんだ。えりかちゃんが栞菜にしてくれるように、ちっさーのお姉ちゃんになって、いっぱい可愛がりたかった。
ちっさーは自由な子だから、いつでも一緒にいられないのはわかってた。
だから、いつでも心が通じているっていう証拠が欲しかったのかもしれない。」

「あせっちゃったんだね。」

えりかちゃんは、いつも私の気持ちをわかってくれる。だからこうして、安心して何でも話せるんだ。
私もちっさーにとって、そういう存在になりたかった。

「千聖は、いつも不安でたまらないんだよ。」
「えっ?う、うん。」
何だろう・・・急に話が飛んだ。

「時々ね、すごく遠い目をして、心が全然違うところに行っちゃってるの。
かと思うと、何かに怯えたみたいに必死で甘えてきたり。・・・怖いんだろうね、お嬢様じゃなかった自分のことを自分で認識できてないから、混乱しちゃうことも多いだろうし。」
ちょっと独り言っぽくなってたけれど、えりかちゃんはいきなり私の方を向いて「だからね」と続けた。

「栞菜は栞菜にしかできないことっていうのがきっとあるから、そういうので千聖を助けてあげたらいいんじゃないかな。今はわからなくても、そのうち見つかるよ。」

「・・・・・・じゃあえりかちゃんにしかできないことっていうのは、ちっさーとエッチすることなの?」


バターン!


すごい。コテコテのリアクションだ。
えりかちゃんは昔の漫画みたいに、腰を抜かしてしりもちをついた。


「な、な、な、な、なんでそれを、じゃなくて、何言ってんの栞菜!」
「・・・嘘、本当にそうなの!?」

私ももう15歳だし、レズキャラにされちゃうほど、ぶっちゃけそういう知識には長けている。
撮影旅行の温泉以来、えりかちゃんとちっさーが時々妙な視線を絡ませていることには薄々気がついていたけれど、現実だとわかると結構ショックだった。

「も、もしかして付き合ってるの?」
「いや、そういうわけじゃないけど。ていうか、最後まで何かしたわけじゃないし。」

最後って、最後って何!えりかちゃん!

「・・・ウチは、千聖のシェルターになってあげたかったの。
ウチのところにくれば、ほんの少しの時間でも寂しさや不安を忘れて、気持ちよく過ごせるみたいな。
本当はこういうの良くないんだろうけどね。だからウチも栞菜に偉そうなことはいえないよ。」
「いや、そんな。・・・・変なこと言ってごめん。」

何がいいとか悪いとかまだ私には難しすぎてわからないけれど、えりかちゃんがちっさーを思いやる気持ちだけは理解できた気がする。

「みんなには内緒だからね。特に、なっきぃに知られたら八つ裂きにされちゃう。」
「わ、わかってるよ。お姉ちゃんが困ることはしない。」
「よし、安心した。じゃあ、行っておいで、栞菜。」

えりかちゃんはいきなり立ち止まって、私の背中をポンと押した。
「え?だってお昼・・・」

私はえりかちゃんの指差す店をじっと見て、硬直した。
何の変哲もない、よく見かけるファミレス。
でもその窓際の席には、

「ちっさー?」

頬づえをついて、ボーッとしているちっさーの姿があった。


「ウチは行かないね。2人で気が済むまで話して。頑張れ、私の妹!」
「・・・・・ありがとう、お姉ちゃん大好き!



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