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私は早足でレストランに向かった。
乱暴にドアを開けた私に驚いた店員さんに軽く頭を下げて、窓際の席を目指す。

「ちっさー!」
誰もいない席にぼんやりと視線を向けていたちっさーは、私の大声に肩を揺らして顔を上げた。
「かん・・・な」

ちっさーの目に、私が映る。
もう二度と2人では会えないと思っていた。
いっぱい伝えたい言葉があったのに、全部頭からすっぽ抜けてしまって、私は座ったままのちっさーを思いっきり抱きしめた。

「もうダメかと思った・・・。」
「栞菜ったら、そんなに強く抱きしめないで。苦しいわ。」
ちっさーの声の振動がおなかに伝わる。
そっと手を緩めて見つめ合うと、どちらともなく「ふふっ」と笑いが漏れた。

私はこんな単純で優しい関係を、自分の身勝手な思いで壊しかけていたんだ。
「ちっさー、ごめんね。本当にごめんね。」
気を取り直してちっさーの向かいの席に座って、私はすぐ頭を下げた。
「いっぱい嫌な気持ちにさせちゃったよね。私、自分のことばっかり考えて」
「栞菜、頭を上げて。私こそごめんなさい。」

ちっさーはテーブルの上でハンカチを握りながら、ポツポツと話を始めた。

「私は、栞菜がエッグだったからといって、区別していたつもりはなかったの。もちろん今でもそうよ。
でも栞菜がそういう風に感じていたのなら、自覚がないだけで、本当はどこかそういう意識があったのかもしれないって、自分の気持ちがわからなくなって。
それとね・・・・・あの栞菜の言葉で、今もずっとエッグで頑張っている明日菜やみんなの努力まで否定されてしまったように思ってしまったの。
冷静に考えたら、栞菜はそんな人じゃないってちゃんとわかったはずなのに。
それに、そう感じたのならもっと早くそういうことは言って欲しくないってはっきり伝えればよかった。
私の気持ちの弱さが、栞菜を傷つけてしまったのね。」

「ちっさー・・・ありがとう、ちっさーの気持ちを聞かせてくれて。
もう私、二度とあんな言葉は言わない。
本当はちっさーが私をエッグだからって差別してるなんて、思ったことはないの。
ただ、私はちっさーの気持ちを強引にでも私に向けたかったんだ。
私を大切に思ってくれてるって言う、確証が欲しかった。」

乾いた喉を水で湿らせながら、私たちは夢中で話し合った。
私はちっさーが大好きで。
ちっさーも同じように思ってくれていると、今なら信じられる気がした。

「私は栞菜のこと、大好きよ。これからもいっぱい色んな話をしたいわ。」
「うん・・・うん。ありがとう。私多分、ただ一言そう言って欲しかっただけなんだ。」
「遠回りしちゃったわね。」

本当だ。こんなシンプルなことを共有するために、バカみたいに時間をかけてしまった。

「ところで、えりかさんは?私、えりかさんに呼ばれて・・・・もしかして」
「うん、そういうこと。・・・・何かえりかちゃんて、すごいよね。」
「そうね、いろいろと。」

それから私たちはいつもどおりの私たちに戻って、ランチセットを食べながらいろんなことを話しこんだ。

「そろそろ移動する?って言っても、あんまり遊ぶとこないんだけど。」
私が提案すると、なぜかちっさーがモジモジしながら
「あ・・・それなら、私カラオケに行きたいわ。栞菜と練習したい曲があるの。」
と小さな声で言った。

練習といったら、あの曲だねお嬢様。
コンサートでお披露目することも決まっているし、私もその案に大賛成だった。
「うん、行こう行こう!あ、えりかちゃんもう帰っちゃったけど誘う?愛理とか、なっきぃとか」
「・・・今日は、栞菜と2人きりがいいわ。」

なぜそこで赤くなる。


お会計を済ませた私たちは、さっそく駅前のビルのカラオケへ行くことにした。

店を出る直前、何気なくケータイを開くと、愛理から“やったね!×4人より”とメールが入っていた。
「んん?」
ふと私は店内を振り返った。

「あっ」
「え?何?」
「んー・・・・なんでもないっ!本当、私たちは恵まれているね!えりかちゃん最高!キュート最高!」

私は強引にちっさーの腰を抱いて、若干急いでファミレスから遠ざかった。
ちっさーには、私たちのいたところから死角になっていた席に、サラサラの黒髪美少女を筆頭にした4名様がいたことは内緒にしておこう。
今日だけは、ちっさーを独占したい。
私は手早く「ありがとう!×100000000」と打って、4人・・・とえりかちゃんに一斉送信した。
ごめんね、丁寧なお礼はまた明日。

「行こう、ちっさー!」



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