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「いくら熊井ちゃんと茉麻ちゃんでも、千聖をいじめたら絶対許さないから!」

鼻息荒く、なっきぃが私たちのところまで歩いてきた。

「ちょっと待ってよ。イジメなんてしてない。」
カチンときて、思わず千聖のいる個室の前に熊井ちゃんと一緒に立ちはだかってしまった。

「なっ・・・!それなら千聖に会わせてよ!そ、そんな大きい二人で立ちはだからないでよぅ。」
少ししり込みしながらも、なっきぃは怯まずに私たちを上目で睨んできた。

「聞いて、なっきぃ。千聖さっきまで私たちと普通に話してたのに、急に言葉遣いが変わって、ここに逃げちゃったの。
だから私たち追いかけてきたんだよ。何か誤解させちゃったみたいだけど、いじめてないよ。」
とにかく、落ち着いて説得しないと。
なっきぃは完全に頭に血が上ってしまっているから、ちゃんと目を見て、ゆっくりと喋りかけた。

「・・・・そうだったの。ごめん、なっきぃの勘違いだね。そっか、千聖変な言葉づかいしてたんだ。3分ルールだもんね。」

3分?何のことだろう。
なっきぃはとりあえず納得してくれたみたいだけれど、今度はなぜかしょんぼりした顔になってしまった。

「あの、なっきぃ。そんな顔しないで?それより、千聖はなんであんな」
「ちょっとなかさきちゃん!私は千聖のこといじめてないよ!イジメとか大ッ嫌いだもん!あと大きい2人って言わないでよ!」
「もうっそれはわかったってば!でも、大きいのは現実でしょ!」

・・・熊井ちゃん、もうその話は終わったよ。

何とか励まそうとしていたら、ひどいタイミングで熊井ちゃんがなっきぃに反論し出した。
そのおかげでなっきぃはまた元気を取り戻して、熊井ちゃんとおかしな言い争いを始めた。

どうしたもんかと視線をトイレの個室に戻すと、ほんの少しだけドアが開いて、千聖がこっちを伺っていた。

「千聖!!」

私の声に驚いて、千聖がドアを閉じようとする。
駄目!
私は悪徳セールスマンのように、足をねじ入れて無理矢理中に押し入った。
千聖はポカンと口を開けて、私の顔を凝視している。
「あ・・・」
「ごめんね、ちゃんと顔見たかったの。」

こんな狭くて暗い場所で、ずっと泣いていたのかもしれない。
目じりが赤く腫れて、下まつげが心なしか湿っているような気がした。

「ちょっと!茉麻ちゃん何やってんの!開けてよ!」
「何で茉麻も入るの?外で話せばいいじゃんー」

外の2人はいきなり徒党を組んで、思いっきりドアを叩いてきた。
狭い個室だから、予想以上にグワングワンと音が反響する。
・・・・こんなことやられて、怖かったよね。ごめん、千聖。


「茉麻さん・・・」
喉から搾り出すような声で、千聖が私を呼んだ。

その表情があまりにもいじらしくて、私は思わず千聖を抱き寄せた。

「千聖、まぁはいつも千聖の味方だから。もう何にも言わなくていいから、それだけは覚えておいて。」

「っ・・・・」

わずかに首を縦に振ったあと、千聖の体が小刻みに震えた。
「ごめんなさい・・・」

今は、腕の中で泣きじゃくる千聖を抱きとめてあげることしかできない。
それでもいい。
どんな千聖でも、私がいつでも両腕で受け止めてあげたい。
その気持ちが千聖に少しでも伝わるように、抱きしめる腕に力を入れた。

「・・・・茉麻さん、ありがとうございます。もう大丈夫です。」

しばらくすると、千聖が顔を上げて笑いかけてきた。

「うん、よかった。・・・あ、千聖。今更なんだけど、もものことどうする?ちょっと時間経っちゃったね。」
「あの、できたら、私一人で桃子さんのところに行きたいんです。・・・本当は、茉麻さんにお話しなければいけないことがたくさんあるのですが、今は先に桃子さんのところに行かないと」
「わかった。」

もう外の2人はドアを叩くのをやめて、またなにやら2人で論争を繰り広げている。
千聖の肩を抱いて外に出ると、一斉に私たちに視線が向けられた。

「千聖!大丈夫?さ、早く戻ろう?」
「早貴さん・・・来てくださってありがとう。でも私、ちょっと行かなければならないところがあるんです。」

千聖はやんわりと拒否するけれど、心配性ななっきぃはなかなか引き下がらない。
「じゃあ、なっきぃも一緒に行く。」
「待って、千聖は一人で行きたいんだってさ。」

私がなっきぃを引き止めている間に、千聖は一礼して廊下を駆けていった。
「千聖ぉ・・・」


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