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改札をくぐると、運よく急行電車が入ってきたところだった。
ギリギリ乗り込むことができたから、どうやらそれほど遅刻しないで済みそうだった。
一応皆にお詫びのメールを打っておこう。
定型文を少しいじって送信したら、すぐに返事が来た。


“わかりました
気にしないで
私はもうつきました
まだ誰も来てない
待ってます
目立つ格好してます

舞”



・・・・・・句読点がない。敬語。改行改行改行。怖すぎる。


舞ちゃんは基本大人びた子だけれど、どうも千聖が絡むと見境がなくなってしまう。
栞菜と千聖の事件を引きずりまくっているのはこの機嫌の悪い文章からも明らかだ。


思えば昨日の帰りも相当ひどかった。
みぃたんに先に帰るよう指示されたときは仁王像のような顔になり、私と愛理の不自然に明るいおしゃべりを聞いてる時の瞳の凍った笑顔は、一部のファンの人に殺戮ピエロと称されるあの表情そのものだった。

今日の話し合いの流れ次第では、舞ちゃんの感情が爆発してしまう可能性もある。
栞菜と舞ちゃんも仲のいい2人ではあるけれど、お嬢様の千聖をあんな状態に追いやってしまった相手のことを、冷静な目で見られるかはちょっと微妙なところだ。

舞ちゃんは決して冷めている子じゃない。
むしろマグマのように煮えたぎる思いをたくさん胸に秘めていて、いきなりそれをドカンと噴火させてしまうような恐ろしさがあった。

今日の私の役割は、お姉さんたちからの話(作戦?)をしっかり聞いて、舞ちゃんを宥めながら場の空気を良くしていくことなんだろうな。
私は私のできること・やるべきことで、グループの問題根絶を目指していこう。

「よしっ」

電車が目的の駅に着いた。気合を入れなおして、私は電車を降りた。
改札を目指して歩いていると、いきなり後ろから肩を叩かれた。

「なっきぃ、おはよ。」
「あれっ愛理も遅刻なの?珍しい~」
「何か眠れなくって、ぐずぐずしてた。」

深めにかぶった帽子をちょこっと上げて、愛理は困ったような顔で少し笑った。

「みんなもう着いてるかな?急ごっか。・・・なっきぃ、今日服の感じ違うね。」
「そ、そう?まあまあ気にしないで!」

本当に大慌てで家を飛び出してきたから、私は今日自分がどんな格好なのかよく確認していなかったんだけれど。

変な色落ちのジーパン(姉私物)に変な緑色のしましまTシャツ。しかもキモイみかんのキャラつき(妹私物)。変な色のクロックス。すっぴん。ダサダサ!

きちんとコーディネートしてる愛理と比べて、なんていうか、私アイドルとしてどうなんだろう・・・
みぃたんが見たら、きっと自分のモサ服を棚に上げて大笑いするだろうな。
若干胃が痛くなってきたけれど、いつまでもボサッとしていられない。

愛理と2人、駅のまん前にあるファミレスに連れ立って入っていった。

「どこだろう・・・」

時間が時間だけにお客さんはあんまりいないけれど、入り組んだ造りになっているから座席の様子が見えづらい。

「なっきぃ、なっきぃ。ちょっとあそこ。」
きょろきょろしていたら、愛理が急に声をひそめてそでを引っ張ってきた。
視線を辿ると、奥の方にえりかちゃんとみぃたんの姿が見えた。なぜか深くうつむいている。
そしてその向かいには

「・・・何、あれ?」

遊園地とかによくいるような、でっかいうさぎの後頭部がのぞいていた。

店員さんも、うさぎの方をちらちら見ながら困惑した顔をしている。

「行っていいんだよ、ね?」
「ちょっと待って、愛理。」

私の頭には、小さい頃にデパートかなんかであのうさぎに追いかけられた恐ろしい記憶がよみがえっていた。
何年か前に読んだ本で、あの着ぐるみを着た変質者が女子高生をターゲットに連続猟奇的殺人を起こすというのもあった。

うつむいて動かない、みぃたんとえりかちゃん。心なしか震えているようにも見える。


・・・・もしや何かの犯罪に巻き込まれてる?
テーブルの下で、ナイフか何かで脅かされてるのかもしれない。

「愛理、静かにね。」

何で舞ちゃんがいないの、とか
何で店員さんは通報しないの、とか

そんな疑問をすっ飛ばして、私は思い込みの迷路の中に迷い込んでしまった。

「みぃたんたちを助けよう。」
「ええっ?なっきぃ?」



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