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大丈夫、私は一人じゃないし、いざとなったら店員さんだって動いてくれるはず。

愛理の手を引っ張って、ぐんぐん奥へ進んでいく。

「このっ・・・・・」

変態め!2人を解放しなさい!!

ウサギ人間をにらみつけてそう叫ぼうとしたのだけれど、どうも様子がおかしい。
みぃたんとえりかちゃんのまん前に陣取るその人は、腕組み足組みふんぞりかえって、威圧感と貫禄はかなりのものだった。

でも、超華奢。

どう考えても大人の体つきじゃない。っていうか、

「舞ちゃんじゃん!」
「ぶははははははははは」」

もう耐え切れんとばかりに、みぃたんとえりかちゃんがテーブルを叩いて笑い出した。

「なっきぃ反応よすぎ!ねえねえ何で“このっ”って言ったの?何で何で?」
「“このウサギ野郎!”って言おうとしたの?あっはっはっは!」

くっ・・・!
年長者2人がかりの言葉責めに、顔が真っ赤になる。
いったん顔を上げた二人は、私のみかん星人Tシャツを見てさらに吹き出した。

「みかんー!」

背後で愛理が耐え切れずに「ケッケッケ」と笑い出す声が聞こえた。
うさぎ舞ちゃんの細い肩もカタカタ震えている。

ヒドいケロ!とんだドSグループだ!

「もーなっきぃはやっぱり最高だね。おいで。」

涙を流しながら、みぃたんは私の腰を抱いて横に座らせてくれた。

「本当なっきぃはかわいいなあ。」
「ちょ、ちょっとそんなことより、何でうさぎ?」

私の質問に答えるように、舞ちゃんがおもむろにうさぎの首を取った。
たっぷり笑ったから、機嫌はかなりいいみたいだ。はにかんだ顔が可愛い。
「・・・なんか、目立つかなと思って。」
「いや、目立つけど誰だかわかんないよ。」

好きな歴史上の人物は徳川家康。モノマネもできます。
好きな言葉は一石二鳥。でも使い方はちょっと変。


舞ちゃんはしっかりものだけど、やっぱりどこか天然で変わった子だった。

「・・・じゃあ、全員揃ったところで。」

えりかちゃんはお誕生日席に移動して、私のみかん星人と目が合わないように若干上を見ながら、話を始めた。

「多分みんな気づいてると思うけど、今日は栞菜と千聖の件で集まってもらいました。」
わかっていたこととはいえ、みんな昨日のあの光景を思い出したのか、一気に緊張が走った。

「ウチはあの後栞菜を送っていったんだけど、かなり落ち込んでたのね。本当にひどい状態だった。だから、すぐ助けてあげなきゃって思って。」
「、ちっさーも同じ。泣けなくなっちゃうぐらいすごいショック受けてた。それで、えりと相談して、今日この場を設けたの。」

「・・・・なんで、2人はあんな風になったの?」

えりかちゃんたちの報告を聞いて、舞ちゃんが静かに問いかけた。

「それは・・・ごめん、私が勝手に言っていいことじゃないから。ちゃんと仲直りできたら、舞にも直接話がいくと思う。もうちょっと待ってて。
でも、これだけは言っておくけど、どっちか一人が悪くてああなったんじゃないの。
多分気持ちのすれ違いと誤解がたくさん積もっちゃっただけなんだ。
・・・あとね、できるだけ舞と愛理となっきぃには中立でいてほしい。
正直、私はちっさーからいっぱい話を聞いたから、きっとこの件に関してはちっさー寄りの考えになっちゃうと思うのね。」
「そうそう。ウチは逆に栞菜とずっといたから、今は特に栞菜の気持ちが心配でたまらない。」

「・・・・要は、ニュートラルでいてってことだね。」
愛理がつぶやくと、2人は5秒遅れて「ニュー・・そ、そ、そうそう。・・・多分。」と言った。

舞ちゃんもしばらく考え込んでから、小さなうなずきとともに「わかった。」と短く返事をした。

「なっきぃも了解。」

本当は詳しい話が聞きたくてたまらなかった。
あんなにも当事者2人が傷つき果てた事件を、このままうわべだけ知って素通りなんてできるはずがない。
でも、みぃたんたちがそう言うなら待ってみようと思った。
今は先入観なしで、2人の手助けをしてあげるべきなんだ。

「で、具体的に何を?」
「うーん、まあ何をするってわけでもないんだけどさ、ここで2人を見守ってあげて。」

見守る?

「今からウチは栞菜の家に行って、栞菜をつれてここに戻ってくるから。千聖にはもう連絡してあって、もう一時間もしないでここに来ると思う。
ウチらが変に口出しするんじゃなくて、2人でとことん話し合ってほしいから、みんなは本当に緊急の時だけ手を差し伸べて。」
「わかった。」
「お店の人には、サプライズを仕掛けたい子がいるから、私たちの姿が見えづらい席に案内してって頼んであるから。」

さすがお姉さんコンビ。ぬかりないな。

「じゃあ千聖が来るまで、何か適当にオーダー・・・・・おっと」

テーブルの上に出しっぱなしになっていた、えりかちゃんのケータイが光った。

「やっばい、千聖だ。・・・もしもし?」

えりかちゃんは声をひそめて電話に出た。
いつもならマナー違反!とたしなめるところだけれど、正直、会話の内容が気になる。

「えっあと1駅?ウチまだなんだよ。・・・・うん、ごめん。待ってて。」
どうやらもうすぐ着いてしまうらしい。
ちょっとあわてているえりかちゃんを観察しながら、お冷に入っていた氷をごりごりとかじった。
二言三言交わした後、えりかちゃんはおもむろに口元を手で覆って、ニヤニヤしながら電話を切った。


ぶはっ


私の口から飛び出た氷が、愛理のおでこにゴチンとぶつかった。

「なっきぃ何やってんの!?」

「え、え、え、えりかちゃん・・・・・!」

幸か不幸か、私はかなり耳が良い。口を隠したって、斜め横の人の声ぐらいなら拾えてしまう。
えりかちゃんはエロカの顔になりながら、こんなことを言っていた。

「待たせちゃうけどごめんね、お詫びに今度すごいのしてあげるからね、千聖。トロントロンにしてあげる。」



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