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「・・・・ごめん。」

私よりも先に冷静になった愛理が、難しい顔のまま謝ってきた。
息が荒くなって、手が震えている。愛理らしくもない。こんな風に他人と思いっきりぶつかることなんてほとんどないんだろう。私を見つめる丸い目に、まだ興奮の色が残っている。

「あ・・・ほ、ほら、舞ちゃんも謝ったほうがいいんじゃないの?何かよくわかんないけど。ね、だよね、舞美?もーやだなあ、怒ってたのは私なのにさ。アハハ・・・」
「は、はは。そうだね。舞、愛理と仲直りしよう。」

すっかり私たちに圧倒されて落ち着きを取り戻したちぃが、慌てて私を宥めにかかった。
聞き分けのいい愛理は、すなおに仲直りの握手をしようと手を差し伸べてくる。
でも私は、その手を握ることができなかった。
ここで愛理に謝るのは、千聖のことをみんなに話していいと了承することと同じだ。それだけはできない。

「舞ちゃん、私も言いすぎた。仲直りしようよ。」
「舞ちゃん。」
「ほら、舞ちゃん意地はってないで。」


・・・・・ああ、まただ。
また私が悪者になっちゃうのか。
そんなに、前の千聖に会いたいと望むことはいけないことなの?

「舞。」

私は無言で、舞美ちゃんの手を払いのける。
自分が正しいという自信があるのなら、たとえ味方がいなくても戦える。
でも今は、足元が揺らいで心もとない。
みんなも私と同じように、千聖のことを思っているというのがわかっているからだ。

前にもこんなことがあったな。
千聖があの千聖になっちゃうずっと前、多分まだ2人とも小学生のときだった。
私はちょっとした誤解でマネージャーからこっぴどく叱られたことがあった。
でも私は、自分は間違っていないと頑として謝らなかった。
みんなは私に謝れと言う。
私は自分の潔白を証明する言葉がわからなかったから、拳を握り締めて大人を睨み付けることしかできなかった。

その時、千聖だけは私をかばってくれた。
事情なんて知らないくせに、私を守るように前に立って、鼻水たらして大泣きしながら反論してくれたのだった。

舞ちゃんはそんなことする子じゃない、舞ちゃんは悪くない。


そんな風に泣きわめいて、全面的に私を信じてくれた。
結局それがきっかけになって私の無実は認められ、千聖は泣いてぶっさいくになった顔で照れくさそうに笑っていた。


そう、いつも千聖は私のことを一番に信じて、わかってくれるんだ。
きっと今、ここに前の千聖がいたら、あの時と同じように私を守ってくれるだろう。
私にとって、千聖は大きな支えであり、理解者でもある。その支柱がなくなったら、私はただの自分勝手なワガママ人間になってしまう。

私にはやっぱり、どうしても千聖が必要なんだ。元気で、明るくて、私を勇気付けてくれる、前の千聖が。どうしてもこれだけは譲れない。

「・・・・えっ、何これ。どうしたの?」

突然私の耳に、久しく聞いていない独特の甘い声が届いた。
「えっ、な、なんかあったの?梨沙子大丈夫?」

「もも~・・・どうしよう、みんなに千聖のことが」
梨沙子が泣きながら駆け寄っていく先には、ももちゃんと

・・・・・千聖。

軽く目を見開いた千聖が、戸惑った表情で部屋を見回していた。

「ちっさー、お帰り。」
「ええ・・・あの」


「待って!」
舞美ちゃんと千聖が話を始める前に、私はみんなを押しのけて、両手で千聖の腕をきつく掴んだ。

「きゃっ」

「舞!?」



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