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“舞ちゃん、もうちょっと千聖のこと優しく扱ってあげたら。”


前にそう言っていたのはなっきぃだったっけ。それともえりかちゃんかな。

私は昔から、千聖をどこかに連れて行くとき、手首や肩を掴んで引っ張る癖があった。
千聖も特に何も言わなかったから、指摘されるまで気づかなかった。
あんまりお行儀のいい行動じゃないから控えるようにはしていたけれど、気をつけていないとついやってしまうみたいだ。
そう、今みたいに。

「舞・・・・さん」


千聖の苦しそうな声で、はっと我に返った。
顔をあげると、痛みに耐えるような表情の千聖と目が合う。

私は力いっぱい千聖の両腕を握り締めていたみたいだ。

「ごめん・・・」

謝って力は緩めるけれど、千聖の体から手を離すのは嫌だった。
触れたままの千聖の二の腕が、熱を持っているのが伝わる。
私の手もズキズキ痛んでいるぐらいだから、千聖はもっと痛かっただろう。

「舞ちゃん・・・ちっさー痛そうだよ。放してあげて。」

栞菜がそっと私の手に手を重ねる。

「もう、今のちっさーを受け入れようよ、舞ちゃん。
ちっさーはね、大好きな舞ちゃんが自分のせいで傷つくからって、キュートをやめようかって私に相談してきたんだよ。」

「栞菜、その話は」

「ううん、言わせて。・・・・・舞ちゃんは、そんなこと望んでないよね?でも、今のままじゃちっさーは舞ちゃんのためにいなくなっちゃうかもしれない。
私は嫌だよ。めぐがやめちゃって、ずっと7人で頑張ってきたのに。もう大好きな人がいなくなるのはやなの。舞ちゃんも、ちっさーも、みんなでずっと一緒にこれからも頑張っていきたいのに。」

最後の方はもう悲鳴のような声になっていたけど、栞菜は私から目を逸らさずに思いをぶつけてきた。
でも、私の耳にはその言葉が半分も入っては来なかった。もっと大きすぎる衝撃で、頭が真っ白になってしまっていたから。



・・・千聖が、キュートを?

辞める?

私が責めたから?


「わ・・・・私は・・・・」


違う。

私はそんなことを望んでいたんじゃない。

でも、私のせいで、千聖は


「舞美、・・・・何がどうなってるの?千聖が辞めるって、どうして?お願い、ちゃんと説明して。」

背後でキャプテンの声が聞こえた瞬間、私の心は現実に戻った。

「千聖がやめることなんてない。」
自分のものとは思えない、低い声が口を飛び出した。
栞菜の手も千聖も振り解いて、ドアの方に向かって歩く。

「舞ちゃん!」
「・・・・しばらく一人にして。その間に、みんなに千聖のこと話して。」
不思議な感覚だった。体全部が心臓になったみたいにドクドクしているのに、頭は冷え切っている。


「・・・・・千聖がやめるぐらいなら、私がいなくなるから。」
吐き捨てるような口調でそう言い残して、早足で去っていく。
誰も追いかけてこない。たまたま目にした衣裳部屋に入って、隅っこで膝を抱えてうつむいた。
私は、何をやっていたんだろう。

まったく自覚のない涙が、ポツリと一滴膝に落ちた。



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