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「ありがとう、舞さん。私も、舞さんの中に存在していいのね。」

反対側の千聖の手と私の手が、今度は私の胸の上で重なった。
右手に千聖の鼓動。
左手に自分の鼓動を感じながら、私はとても静かで穏やかな気持ちになった。

「皆さんのところに戻る?」
「・・・・もうちょっとだけ、ここにいたい。2人でいたい。」
「ええ。」

私たちは手をつないで、自然に寄り添った。
何も喋らないで、ただゆっくりと時間がすぎていく。

千聖の頭が、私の肩に乗っかる。
私の頭が、千聖の頭に乗っかる。
千聖のシャンプーの香りが鼻をくすぐる。


「・・・・・雨が、降ってきたみたいね。」
ふいに千聖が呟いた。
「そうだね。」
よっぽど強い雨なのか、静かなこの部屋にいると、バラバラと水が建物を打ち付ける音が聞こえてくる。

「じゃあさ、この雨が止んだら戻ろう。みんなのところへ。」
「まあ。ずっと朝まで止まなかったら?」
「・・・朝まで戻らない。」
「もう、そんなこと言って。」

それきりまた会話もなく、私の耳はただ降りしきる雨の音だけを拾っていた。

「・・・千聖?」

千聖はゆっくり頭を起こすと、目の前にあった衣装から、細い黄色のリボンを抜いた。
「どうするの、それ。」
「ふふ」

器用な手つきで千聖は2人の小指を結んだ。

「前に、梨沙子さんに教えてもらったの。赤い糸は永遠に恋人たちを結ぶ糸で、青は恒久の友情。黄色はゆるぎない信頼の糸なんですって。・・・私たちは、黄色い糸じゃないかしら。」
「千聖・・・・うん、そうだね。黄色だ。」


私が勝手に断ち切った2人の絆の糸を、千聖はずっと握り締めたままでいてくれたんだ。
そして、それを結びなおしてくれた。しかも、千聖の方から。

「・・・・ごめんね。」
「え?」
「なんでもない。」

素直になれない私は、千聖に何も反してあげられない。

どうか、雨が止みませんように。
まだ、2人きりでいられますように。

ただそう強く願うだけだった。

「・・・・通り雨だったみたい。もう止んでしまったわ。」

私の願いもむなしく、雨はあっというまに上がってしまった。
まだここを離れたくなかったけれど、ワガママで千聖を縛り付けるのはもう嫌だった。

「帰ろう、みんなのところへ。」
「ええ。」

私たちは小指を繋いだまま、暗い部屋をあとにした。

歩みを進めるたびに、みんなの声が大きくなる。
啖呵を切って出て行ったから、顔を見せるのがちょっとだけ恥ずかしい。
でも、今の私はもう一人じゃない。この手のぬくもりがあれば、頑張れる。

「入ろう、千聖。」
「ええ。」



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