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千聖と離れた私は、しばらく舞美ちゃんやちぃたちとバカ話で盛りあがった。
時々聞こえる千聖の楽しそうな声が、私を安心させてくれる。

「何か舞ちゃん、大人になったよね。」
「そう?まあ、いろいろあったから。」
「うん、舞は本当によくできた妹だよ。心も外見も急成長した!舞は最高にいい妹だね!」
「・・・・恥ずかしいから2回も言わないでいいよ。」

考えてみれば、千聖が頭打ったあの事件から、まだ1ヶ月もたっていない。
喜怒哀楽の全てをフル活用した、あまりにも中身の濃すぎる数週間だった。



「ねー、もうそろそろお開きにしませんか!あんまり遅くなると中学生組はお父さんお母さんも心配しちゃうだろうし。」

30分ぐらいして、キャプテンが大きな声でみんなに呼びかけた。

「えー」
「えー、じゃないの。またすぐ会えるんだから。早くお菓子片付けよう。」

チョコやクッキーはみんなで山分けして(ポテチの残りは舞美ちゃんがなっきぃにカ゛ーッした)、ゴミをまとめると、急ぎ足で部屋を出た。
ベリキューそれぞれのロッカーで荷物を持って、大階段のあたりで再び合流する。

「いい?行くよー」

まるで集団下校みたいだ。舞美ちゃんとえりかちゃんが先頭で、一番後ろはキャプともも。
私と千聖は前から2番目。後ろには茉麻となっきぃがいた。
年長組に挟まれて、みんなでキャーキャー言いながら階段を降り始めた。

「あ・・・嫌だわ、私ったら。いただいたお菓子、ロッカーに置いてきちゃった。」
私が手に提げていたお菓子の袋を見て、千聖が声をあげた。
「また今度でいいんじゃない?レッスンすぐあるし。」
「でも・・・明日菜たちにおみやげで持って帰りたいの。すぐに追いかけるから、私ちょっと戻ります。」

千聖はそういうと、くるっと後ろを振り返った。

「茉麻さん、ちょっとごめんなさい。私・・・」
「えっ!?」

茉麻は私たちに完全にお尻を向けて、後ろ歩きしながら熊井ちゃんとおしゃべりしていた。
急に話しかけられてびっくりしたんだろう、若干オーバーリアクション気味に、体全体で思いっきり振り返った。


茉麻のほうへ駆け寄っていった千聖の胸のあたりに、いきおいよく茉麻のひじがぶつかった。



「あ」

「あ」

「あ」


何人かの唖然とした声が重なる。



デジャヴ。
こんな光景を、私は知っていた。

もっとずーっとずーっと昔、茉麻に飛びつこうとした千聖が、振り返った勢いで吹っ飛ばされてしまった事件があった。
私は直接見たわけじゃないけれど、あとでビデオかなんかで見て、おなかが痛くなるほど大笑いしたからよく覚えている。

もうあんなに子供じゃないけれど、千聖はやっぱり体が小さいし、茉麻は大きい。
驚いた顔のままの千聖が、階段から押し出されて宙に浮いた。スローモーションのように、体が倒れていく。


「危ない!」


舞美ちゃんの大声で、私の時間感覚は元に戻った。
階段から落ちかけた千聖を、舞美ちゃんが両腕で抱きとめた。
千聖をかばったまま、2人は階段の一番下に落ちてしまった。

「千聖!!!!」

私は自分の口から、こんな金切り声が出たのを初めて聞いた。
もう大事な人を失いたくない。恐怖で足がガクガク震えて、座り込んでしまった。

「舞美!千聖!」

茉麻が真っ青になって、2人のところへ走っていく。

「ごめん、私・・・!」
「えっ何?どうしたの?」
「落ちたの?大丈夫?」
後ろの方のみんなも、人が落ちる鈍い音に驚いて集まってきた。

「舞ちゃん、立てる?」
肩を貸してくれたなっきぃの体も震えている。

「舞美・・・・」

「・・・・イタタタ・・・背中打ったー・・・。一瞬息止まったんだけど」

しばらくして、舞美ちゃんが照れ笑いしながら、体を起こした。


「平気なの?舞美。」
「うん、もうあと5段ぐらいだったから。なんてことないよ。それより・・・よかった。今度は守れた。」

舞美ちゃんは優しい顔で、千聖の体を抱きしめなおした。
でも

「・・・・ちっさー?ちっさー?・・・・・どうしよう、ちっさー、どこか打ったのかもしれない。起きないよ。」

舞美ちゃんの腕の中の千聖は、目を閉じたまま全く動かなかった。


「舞ちゃん?」

大切な人を失う恐怖で、体から力が抜けていく。


「・・・私、マネージャー呼んでくる。」
「私も。」

愛理と栞菜の声が遠ざかっていくとともに、私の意識もゆっくり遠のいていった。



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