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ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

栞菜を千聖の待つファミレスに送り届けた後、私は帰りの電車の中で頭を抱え込んでいた。

“今度トロントロンにしてあげる”

千聖があんまり沈んだ声だったから、ちょっとふざけて和ませようとして囁いた言葉を、なっきぃに聞かれてしまっていた。・・・いや、嘘です。ふざけてない。ちょっと本気だった。
おまけにどういうわけか、栞菜までが私と千聖のナイショの関係に勘づいてしまっていた。
まあこちらは大丈夫だろう。「なっきぃには秘密ね。」とこれ以上余計な情報が入らないように釘をさしておいたし、私のやっていることを責める風でもなかった。

しかし、これはマズイことになったのだ。

今私たちのしていることを知っているのは、愛理、栞菜、なっきぃの3人か。
舞ちゃんは・・・わかんない。少なくとも私には何にも言ってこない。
舞美には前に少しぶっちゃけたんだけど、ペットマッサージみたいなもんだよね!と澄んだ瞳で言われてもう何もいえなかった。


なっきぃ。

彼女にだけは知られるべきじゃなかった。
素直で、いつも物事に真剣に取り組んでいて、自分の意見と違ったら、たとえ年上相手でもしっかり気持ちを伝えるような実直で真面目な子だ。

とりわけ性関係の話題にはかなり固い倫理観を持っていて、

ニュースで痴漢事件を見たときは「こんな人・・・ちょんぎられちゃえばいいのに」と鬼の形相で吐き捨て、
エンコーやってる女子高生のヘラヘラしたインタビューを見たときは激怒して20分間怒りの演説を行って、
舞美のおうちでスカートのまま犬の真似をした千聖を正座させて叱りつけたという逸話もあったらしい。

そんななっきぃの眼に、私が今千聖にしていることがどんな風に映るのかなんて、わざわざ考えるまでもない。
良くて淫行。悪くて性的虐待。どちらにしても、私も「こんな人・・・ちょんぎ(ry」の対象になってしまうことは間違いないだろう。

きっと今日、栞菜と千聖の揉め事はすっきり解決すると思う。
でも私の地獄はこれからだ。こんなこと、誰にも相談できない。
なによりも厄介なのは、私自身が、この期に及んで千聖とのそういう関係をやめようという気が全くないことなのだった。
千聖の体は気持ちいい。
触れてるだけで心が和んで、舞美じゃないけれどまるでペットセラピーみたいな効果があるような気がする。
千聖も気持ちよくて私も気持ちいいならそんなに悪いことじゃないんじゃないか。なんていいたいところだけど、それこそなっきぃには通じない理屈だろう。

「困った。」

あんまりそのことばっかり考えすぎていたせいで、降りる駅を通過して、引き返したのにまた降り忘れ・・・と無駄に3往復ぐらいしてやっと地元に戻ることができた。
「はぁ・・・」

そのまま家に帰る気になれなくて、駅のカフェでお茶を飲みながら時間を潰す。
しばらく一人でいると、だんだん心も落ち着いてきた。

もう話合いは終わった頃かな。どうなったのか、誰かに確認入れてみよう。
カップに残っていたキャラメルマキアートを飲み干すと、私は店を出た。
家まで帰る途中にある公園に寄って、ブランコをキコキコしながらアドレス帳をいじくる。
舞美は電話に出てくれないから、こういう時は大抵説明上手ななっきぃに電話をするんだけど、さすがに今日はそんなわけにいかない。
舞美が出ないなら舞ちゃんか愛理に電話するか・・・
そう決めて舞美の電話番号を呼び出そうとした瞬間、

「うわっ」

ディスコ、ディスコ、ディディディ、ディスコー

静かな公園に、大音量の着メロが流れた。
とっさに通話ボタンを押してから、それがなっきぃからだということに気づいた。

しまった。
何も心の準備が出来てない今じゃなくて、後で家から掛け直すんでもよかったのに。
でも今更切るわけにもいかない。私は覚悟を決めた。

「あ・・・えりかちゃん?なっきぃだよー。今大丈夫?」
「・・・うん、話合い終わった?どうだった?」

なっきぃの声のトーンは普段どおりで、特別怒ってる様子は感じられなかった。

「えりかちゃんのおかげで、上手くいったよ!キュフフ。2人ファミレス出てからどっか遊びに行ったみたい。なっきぃたちも、ご飯食べて帰ったんだ。」
よかった、仲直りできたんだ。
栞菜の泣き顔と千聖の絶望した表情を思い出すと、今でも胸が痛む。
「そっか、じゃあキュートの問題は解決したんだね。」

ちょっと調子に乗ってそんなことを言ってみると、

「いや、してないよね。」

さっきまでのご機嫌なキュフフボイスはなりを潜めて、あの「ちょん(ry」の時のなっきぃのトーンに早変わりした。
背中を冷や汗が伝う。

「・・・ねえ、えりかちゃん。」
「・・・・・・はい。」

打たれ弱い私はもう半泣きだった。

「たしか今週末、DVDマガジンの撮影で泊まりのお仕事があったよね?」
「え?う、うん。あったね。」
「今じゃなくていいの。その時に、えりかちゃんと話がしたいな。」

「・・・ハイヨロコンデ」
「いつでも都合のいい時でいいから。私待ってるからね。永遠に。」


電話を切った私の頭の中では、裁ちばさみを持ったなっきぃがキュフキュフ笑いながら追いかけてきていた。



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