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「もう着くから、みんな降りる準備してー!」

舞美のはずんだ声に顔を上げる。
下ネタしりとりを愛理に封じられてから1時間ぐらいだろうか、いつの間にか自然公園みたいなところに来ていた。

「へー、空気よさそうだね。」
「あっち、牧場もあるよ。」
いつぞやの雪遊びの時みたいに、私たちが自由に遊びまわるのを撮影するという趣向らしい。

「千聖、起きて!着いたよ。」
バスで遊びつかれて眠っていた千聖を、なっきぃが優しく起こしてあげている。
「んー・・・」
千聖はちょっと寝ぼけた顔のまま、手を引かれてバスを降りた。私は2人の後ろをのんびりついていく。
旅行かばんがずっしり重いのは、私が千聖にちょっかい出すたびになっきぃが警告の証――青いミカンを詰め込んできたからだ(総数16個)
ああー・・・セシ●マク●ーのカバンがミカンくさい・・・高かったのにぃ!


「じゃあ部屋割り決めて、ちょっと休憩して30分後にこの広場に集合!」
マネージャーの指示を聞いた後、メンバー全員連れ立って、コテージの前に集合する。
いつもどおりの部屋割りなら私は一人になるところだけれど、どうやらきょうは2-2-3に別れるみたいだった。

「えり、どうする?」

うーん。

愛理と栞菜のラブラブルームに押し入るのは気が引けるし、なっきぃ千聖の部屋なんて論外だ。なっきぃに叩きつぶされる。徹底的に。泣くまで正座して罵倒されるかもしれない。ミカンを使った鬼畜行為に及ぶかもしれない。
そしてオロオロした表情で私を見る千聖。
今日はえりかスペシャルだって言ったのにね、千聖。約束、守れなかったよ・・・


「えり、何で涙ぐんでるの?」
「・・・大丈夫。じゃあ、舞舞美の部屋に・・・」


「あの!」

珍しく、千聖が挙手した。

「ちっさー、どうしたの?」
「あの、良かったら、たまには違うお部屋割りにしてみませんか?くじびきとか、グーチョキパーなんかで。」
「んーいいんじゃない?みんなはどう?」

舞美の問いかけに、みんなもうなずく。
キュートの強みはこういう時、誰と誰が一緒になっても楽しくすごせること・・・ってそんなことはどうでもいいわけで。

もしかして、千聖と2人部屋になれるかも!?
・・・いやいや、でも待って。確率に考えてもそれは望みが浅い。私と千聖と誰か、ということも考えられる。ていうか、そもそも一緒にならない可能性の方が高い。

「じゃあ、グーチョキパーで決めよう。」

神様!私は最近わりといい子にしてました。どうかどうか、千聖と同じ部屋に!アブラカダブラロッタラロッタラ

「キュフフ、えりかちゃん。私たち、一緒になれるといいね。」

ひぎぃ!

なっきぃに耳元で囁かれて、魔法の呪文はくじかれてしまった。
ううう・・・私なんかより、なっきぃの方がよっぽど魔力がありそうだ。でも、えりか今日は負けない!


「いい?行くよー。グー・チョキ・パーで別れま」
「っちさとー!!」

心の中で叫んだつもりが、私はついうっかり千聖の名前を絶叫していた。

タイミングよく、みんなの手が出揃う。

「えりウケるーとかいっ・・・あっ!」
「くっ・・・キ゛ュフゥ・・・」





「いやー、神様っているんだね。」
「え?」
「なんでもない。」


そんなわけで、私は見事千聖とツインのお部屋をゲットした。
千聖は荷物を置いて、窓際のロッキングチェアーに腰掛けて外を眺めている。

大きな窓。簡易テーブル。ふかふかの大きいベッドが2つ。
古いコテージみたいだけれど、掃除が行き届いているのか、清潔感があっていい部屋だった。

「千聖?外に何かあるの?」
「・・・え?あ、えと、なんでもないです。ボーッとしちゃって。」
「ちょっと、話さない?」
「あ・・・あの、私、荷物を片付けないと。」
千聖はあんまり私の目をみないように、そわそわした感じでバッグの整理を始めた。

「千聖、ウチと一緒の部屋になれたのがそんなに嬉しい?」
私の声で、千聖の腕がピクッと動いたっきり固まった。

千聖はお嬢様になる前からこういうところがあった。
一番望んでいることが叶うと、どうしていいかわからなくなって、全然嬉しくなさそうなそっけない態度を取ったりする。
どうして?と聞いたら
「だって、もし何かの間違いだったら、浮かれて喜んだ分、悲しくなっちゃうでしょ?それに、楽しいことっていつか終わっちゃうし。」
と寂しそうに笑っていた。
無邪気で考えなしのように振舞っていても、千聖は本当はすごく臆病で脆い子だった。傷つかないように、予防線を張っていたのだろう。その癖は、今でも変わってないみたいだ。

「おいで、千聖。」
もう一度名前を呼ぶと、観念したように千聖は立った。
そのまま、私が寝っ転がっているベッドに近づいてくる。



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