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「ほら、あの時言ってたでしょ?えりかちゃんはちっさーのシェルターになってあげるために、エッチな関係になってるって。」

もう撮影は始まっているのに、栞菜はサラダ用の野菜を切りながら興奮した様子で喋っている。
うまくカメラマンさんが近くにいないときを見計らっているみたいだ。
愛理は栞菜の脳内妄想を知ってか知らずか、目を丸くしながら黙って話を聞いている。

「お姉ちゃん、ちっさーと付き合ってるわけじゃないって言ってたけど、やっぱりちっさーのことが好きだから、体を使ってまでちっさーを慰めてあげてたんだよね。本当の愛は献身だもん。」
「容疑者梅田えりかの献身だね。ケッケッケ」

栞菜の話は続く。私は牛肉を炒めながら、とりあえずこのすっとんきょうな話のオチを待っていた。

「でね、もう言っちゃうけど、ちっさーも一回私とそういうことになりかけたのね。」
「ええっ!嘘!いつ!何で!」
「あの、みんなのおかげでちっさーと仲直りできた日だよ。何でかはわからないけど、前にえりかちゃんが言ってた、遠くへ行っちゃってる顔になってた。急に不安で寂しくなっちゃったみたい。」

フライパンの中で肉が焦げ付いてるのも厭わず、私は栞菜の話に聞き入っていた。
まさか、千聖が私以外の人にそういうお誘いをかけるとは。何だかもやもやした気持ちになる。

「それで、私もえりかちゃんの代わりになれないかなって思って、ちょっとだけ触ったのね。ちっさーの体に。」
「ちょ、え!」
「えー栞菜すごいことするねー」
「あ、大丈夫。服の上から手でペタペタしただけだから。・・・その時、ちっさー途中で“帰りたい”って言ったの。それでもう、お開き。後は私の部屋で普通に遊んで、家に帰った。」

栞菜はそこまで一気に喋ると、一回軽くため息をついた。
「カメラさん、こっち来てる。」
その呟きをスイッチに、3人して仕事用の顔とテンションに戻った。

「はい、私たちのカレー作りも順調に・・・あーっもうえりかちゃん!お肉焦げてる!」
「わーごめんボーッとしてた!」
「珍しいね、えりかちゃんが料理でドジしちゃうなんて。」
・・・ここは完全に素だったけれど。

ちょっと危なっかしい手つきながら、順調に野菜を切る栞菜。それを手伝いつつ鍋の様子を見たり、いらない器具をしまったり、こまごました作業をこなす愛理。隠し味がうんたらかんたら言いながら下ごしらえをする私。
一通りカレー作りの様子を撮影すると、またカメラマンさんは他のグループの方へ行った。


「・・・じゃあ、続きね。それで、その時私わかったの。ちっさーは、誰にでも触られたいんじゃなくて、えりかちゃんがいいんだよ。
それがわからなかったから私のことを誘ってみたんだけど、やっぱりえりかちゃんじゃなきゃだめだって途中で気付いたんだ。
きっと、帰りたいっていうのは、家にじゃなくてえりかちゃんのところにってことだよね。
えりかちゃんも、さっきも言ったけど、ちっさーが相手じゃなきゃきっとエッチはしないと思うの。
愛するちっさーだからこそ、えりかちゃんは触りたくなっちゃうんだよ。それって、完全に恋だと思う。」
「待ってよ。それ、何か根拠があって言ってるの?」
「根拠?」

栞菜は鍋の灰汁抜きをしながら、ちょっと目を細めた。

「まあ、女の勘だよね。」

勘かよ!危なかった。
栞菜は本をたくさん読んでるだけあって、感性が鋭い。しかも話に妙な説得力があるから、今もうっかり引き込まれるところだった。自分の感情なのに。

「あのねぇ栞菜、」
「もう何も言わなくていいよお姉ちゃん!私は味方だから。・・・どうやらなっきぃもちっさーを狙ってるみたいだけど。」
「はっ!?熱っ!」


栞菜の爆弾発言で手元が狂う。肉汁がほっぺたに弾け飛んだ。


「だって行きのバスで、何かセクハラしりとりみたいなのやってちっさーの取り合いしてたじゃん。それに、今日のなっきぃはすごいちっさーのこと気にしてるし。
でも、今のところえりかちゃんの方が有利だよ多分。なっきぃ真面目だからね。エッチな関係なんてありえないケロ!って思ってそう。」

・・・あああ、そのせっかくの感受性を、意味のわからない妄想に使わないで妹よ!
愛理はもう傍観者に徹することを決めたのか、なかなか見せない悪大名スマイルで私を眺めている。

「いい、栞菜?まず、私が千聖を好きって話だけど、」
「あれっ舞美ちゃん、舞ちゃん。どうしたの?」

やっと私が説得を始めようとした矢先、手をつないだ舞舞美が仲良くこちらへやってきた。

「はろー。お米炊くの終わっちゃったから、手伝いに来たよ。」
「本当?じゃあテーブルセッティングと、サラダ作り手伝ってほしいな。」

ああもう!舞美たちがいるんじゃ、とても話は続けられない。あれで案外純情乙女な舞美には、まだ私と千聖のことは誤解したままでいてほしかった。事実を知ったらぶっ倒れちゃうかもしれない。

「えりかちゃん、舞なんかやることある?」
「あ、ウチは大丈夫だよ。もうあと煮込むだけだから。ありがとうね。・・・舞ちゃん?」

舞ちゃんは黙って私の手元をまじまじと見つめている。


「この手で、千聖をね・・・」



ひぎぃ!


「えりかちゃん、千聖は、舞のものなんだからね。」

「ち、ち、ち、ちさ、ちさとは、も、ももものじゃないからそそっそういう言い方は」

私のヘタレ反論を鼻で笑うと、舞ちゃんは

「でも、現実的に舞のものだから。ライバルだね、私たち。」
と不敵に笑った。

栞菜はアホな恋愛妄想に心を持ってかれてるし、今日の愛理は精神的ドS。舞ちゃんにライバル認定された上に、全力リーダーにはちょっと話せない。


「ひーん・・・ちさとぉ・・・」



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