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……うちは、メンバーのことを分かっているようで
全然分かっていなかった。

お姉さん、失格だね。自業自得だ。
あっ、この場合は悪因悪果の方がいいかな?
あの後も控え室で見てたから。

……ごめん、ごめんね。ごめんなさい。本当に悪いと思ってる。
だから、だから……。


只今、ツアーの真っ最中。
今日のライブが終了し、みんな揃ってホテルのエレベーターに乗り込む。
部屋割りは[舞美・舞ちゃん、愛理・栞菜、なっきぃ・千聖、うち]の
いつものパターンだ。

と言っても、千聖がお嬢様になってからというもの
みんなが千聖と同じ部屋になりたがる。もちろん、うちだって例外じゃない。
その状況に困ったマネージャーさんが千聖専属に指名したのがなっきぃだ。

確かに、なっきぃは真面目だし℃-ute愛も強いから
千聖に悪影響を与えることはないだろう。千聖も安心した顔をしているし。
その分、なっきぃはメンバーからの弄られ度が増したんだけどね。

「じゃあ、おやすみ!」
「うん。明日も頑張ろう!」

それぞれのペアごとに部屋の中へと消えていく。今日もあたしは千聖と一緒だ。
恒例化し始めた[千聖独占! ホテルの部屋割り決め!]は
マネージャーさんの一声で呆気なく終了した。
その結果、みんなからの弄られ度が増したのは気のせいではないだろう。

「千聖。お風呂、あたしが先でいい?」
「ええ。構いませんよ」

部屋に入って荷物を置くと、あたしは浴室へと向かった。
あたしも千聖も先にお湯に浸かる派だ。みぃたんはガーッと派らしいけど……。
浴室から戻ると、千聖は窓際に立って外を眺めていた。
その姿に違和感を覚える。千聖じゃ……ない?

「千聖? 千聖……だよね?」
「……早貴………さん」

千聖がゆっくりと振り返る。虚ろな瞳に合っていない焦点。
お嬢様になっても保たれていた千聖の芯は消え、
儚く消えていきそうな危うさを感じた。

「千聖、どうしたの!? 何か……きゃっ!?」

千聖の肩に触れた瞬間、体がベッドに沈んだ。
さっきと変わらない表情で、あたしを見下ろしている千聖。

あまりに突然な出来事で頭が追いついていない。
あたしは機転が利かない方だ。とっさの判断が遅い場合が多い。
今すべきことは何?! ……千聖を正気に戻すこと。

「千聖! 千聖、離してっ!!」
「……早貴………」

徐々に迫ってくる千聖の顔。逃げられないと悟ったあたしはある行動に出た。
そして鳴り響いた………『ゴツッ』という鈍い音。

千聖が痛みでとっさにおでこを抑える。
あたしもおでこを抑えたかったけど、この体勢から逃れる方が先だ。
体を反転させて起き上がると、千聖の正面に立った。

「千聖」
「………何で? 何で逃げるんですか?」

涙目の千聖があたしを見つめる。
正気には戻ったみたいだけど、状況はあまり変わってないようだ。

「早貴さんは……私のことお嫌いですか?」
「そんなこと、あるわけないでしょっ!」
「じゃあ、何でですか? えりかさんは受け入れてくれるのに」

!? ……今、とんでもない発言を聞いたような気がするんだけど。
えりかちゃんは、この状態の千聖を知ってるってことだよね。
そして、受け入れてるってことは……………あのイラン人っ!!



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