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「………千聖」
「さ、早貴さん? 声のトーンが低くなられ…」
「お風呂のお湯が溜まった頃だと思うから、先に入ってくれる?」
「で、でも、先程は私に入っていいか尋ねられ…」
「あたし外に出てくるね。鍵は持っていくから寝てていいよ」
「は、はい。で、では、先にお風呂頂きますね」

有無を言わさない態度とさっきの出来事で千聖はあまり強く出てこなかった。
ごめんね、千聖。明日にはいつもの[なっきぃ]に戻ってるから。

あたしは素早くパーカーと財布を手に取ると、鍵を持って廊下に出た。
英語はあまり得意じゃないけど……“It's show time♪”


身震いがして思わず後ろを振り返った。……すごく嫌な予感がする。
うちは運動神経はさっぱりだけど、危機察知能力はある方だと思う。
舞美の傍で幾度となく被害者(99%なっきぃ)を見てるから。

不意に『コンコン』という音が聞こえて、うちは部屋のドアを開けた。
そこにいたのは千聖と同部屋のなっきぃだった。

「どうしたの? 千聖は?」
「……その千聖のことで、えりかちゃんに相談しに来たの」
「とにかく入って。うち、先に荷物片すから」
「……急にごめんね。ありがとう」

俯いたなっきぃの姿を見て、うちは他のことに頭が回らなかった。
なっきぃが後ろ手にコンビニの袋を下げてることも
なっきぃが入った後に鳴った『カチャッ』という鍵のロック音も……。

ベッドの上に並んで腰掛ける。
相変わらずなっきぃは俯いたままだ。見ると微かに手も震えている。
うちはなっきぃの左手を取ってそっと握ってあげた。

「……えりかちゃん」
「ん?」
「……千聖のことなんだけどね」
「うん」

……あれ? 何かやばい?
なっきぃが[千聖]と言った瞬間に悪寒がした。
気付けばなっきぃの左手はうちの手首をしっかりと掴んでいる。

「……正気じゃない千聖を受け入れてるって、どういうこと?」
「えっ?! 何でなっきぃがそのことを知って…あっ!!」
「……認めちゃったね、えりかちゃん。キュフフ」

前言撤回っ! うち、危機察知能力ないです。
普段は高いなっきぃの声の低さに身震いが止まらない。

「……コンビニって便利だね」
「な、なっきぃ? な、何するつもり?」
「……キュフフフフ」

なっきぃはコンビニの袋からビニール紐を取り出すと、
あっという間にうちを後ろ手に縛り上げて馬乗りになった。

「……えりかちゃん。八つ裂きって知ってる?」
「し、知らない」
「……フランスで使われてた最も重い死刑方法なんだって。
過去5件しか行われてないんだよ」

何でそんなこと、なっきぃが知ってんの?!
そして何でそれをうちに話すの?!

「……日本にもあったんだよ。牛裂きって言うんだけどね。
両手足を2頭の牛の角に縄で縛り付けた後、違う方向に走らせて体を引き裂くの」
「そ、そうなんだ」
「……広海役のためにいろいろ調べたんだ。キュフフ」

キュフフ笑いをしながら、なっきぃは更に袋から何か取り出した。
一瞬、(柿の種っ!?)と思ったけどそれは柿の種ではなく、

「む、麦チョコ!?」
「……えりかちゃん好きでしょ。チョコレート」
「す、好きだけど何で麦チョコなの?」
「……流し込んで食べた方が美味しいと思って」
「は、はいっ?!」

聞いたことあるような台詞なんだけど。って、うちで実行するつもりっ!?
待って待って待ってっ!!



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