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「あはっ冗談だよ。噛まない噛まない。それより、・・・えりかちゃん、舞知ってるんだ。」
舞ちゃんは耳元でゴショゴショと内緒話を始めた。

「えっ?いだだだ・・・な、なにを知ってるって?ちょ、ちょっと舞美痛い!」
「だから、えりかちゃんは千聖にもっといろいろしてたの知ってるよ。なっきぃは千聖たちのベッドの真下だったけど、舞は隣だったからね。見ちゃった。」
げっ!

「そんな顔しないでよ。なっきぃには言ってないから。・・・でもびっくしりた。あんなとこ、触るんだ。千聖エッチな声出してたね。」
「ま、舞ちゃん!」
「ああいうのを、イクっていうの?お姉ちゃんの買ってる雑誌に書いてあったけど」

舞ちゃんは淡々と喋りながらも、表情に怒りがにじみ出てきている。私の耳を掴む手も万力みたいに力がこもり始めた。
「・・・・舞が、千聖より年上だったらえりかちゃんより先にイクをやってあげたのに。えりかちゃんなんて、別に千聖のこと好きなわけじゃないのに。」

「そう!それだよえりかちゃん!」

突然、なっきぃが口を挟んできた。

「えりかちゃんは、千聖のこと好きでもないのにあんなことして。そんなの、不真面目でチャラチャラした男とかと一緒じゃん!」
「え?えりはちっさーのこと嫌いなの?嘘だー」
「みぃたんはお口ミッフィー!・・・あんなの、普通じゃないよえりかちゃん。今はえりかちゃんだけだからいいけど、もし千聖が誰とでもああいうことするようになったらどうするの?えりかちゃん、責任取れるの?」

いたたたた!なっきぃの細くて白い指が胸に食い込む。


「じゃ、じゃあもし、ウチが千聖を好きだったら?それなら問題ないの?」


私が放った言葉に、なっきぃは目を見開いて硬直した。

「えりこちゃん・・・何言ってるの」
「遊びじゃなかったら、ウチが本気なら認めてくれる?」


・・・・私、何言ってるんだ。
無意識に口から出た言葉は、なっきぃだけじゃなく私自身も狼狽させるものだった。

千聖とこういうことするようになった一番最初の動機は、完全に悪ふざけと好奇心だった。
一緒に温泉に入って、照れて震えるお嬢様にエッチな刺激を与えた。それが始まり。
私たちの行為はどんどんエスカレートしていった。

事務所の空き部屋。
ツアーで泊まるホテル。
テレビ局のトイレ。

いろんなところで、誰にもみつからないように声を殺して千聖に触れた。

私から誘ったことは、最初の1度しかない。でも、無言で寄り添ってくる千聖を拒んだことは1度もない。そんなことは考えたこともなかった。

「えりかちゃん・・・本気で言ってるの?答えて。」

動揺して黙り込んだなっきぃに変わって、今度は舞ちゃんの真剣なまなざしと視線がぶつかった。

「ごめん、まだわかんない。例えば、って言ったでしょ。」
「えりかちゃん、わからないならそんなこと簡単に言わないで。・・・・舞は、本気なんだよ。」
「ごめん・・・」

私の心は、依然千聖への「好き」の意味を測りかねて揺れていた。


“えりかちゃんは、ちっさーが相手じゃなきゃエッチはしないと思うの。”


カレー作りの時の栞菜の言葉を思い出す。
確かに、それはそうだ。
私はスキンシップが好きだから、しょっちゅうふざけてメンバーの体に触る。でも、それはその場かぎりのおふざけ。
千聖にするように、裸を抱いたりはできない。ありえない、そんなの。


「まあまあ、今日はこの辺で勘弁してあげようよ、なっきぃ。さ、部屋戻ってシャワー浴びよう!」
何が何だかわからない風だけど、この重たい雰囲気は変えたいと思ったのだろう、舞美が妙に明るい声を出した。
「・・うん」

最初の元気はどこへやら、なっきぃはうなだれてしまっていた。

「・・・えりこちゃん。」

それでも言うべきことははっきりさせたいとばかりに、もう一度私の目を見つめる。
「さっきの質問だけど・・・私はまだあんまり恋愛とかちゃんとわかってないから、えりこちゃんが千聖を好きならいいのか・・・っていうの、今は答えられない。
でもね、私は千聖のこともえりこちゃんのことも本当に大好きなの。だから、2人が変な方向に行ってほしくないの。それはわかって。」
「うん、わかった。ありがとう」

なっきぃは私の答えを聞くと、一度だけ目元をぐいっとぬぐってにっこり笑った。

「私もえりが好きだよ!えりは私と違ってしっかりしてるから、大丈夫だよ。私信じてるよ、えりのこと。何だかよくわかんないけど。じゃあね!」
最後まで意味もわからず参加していた舞美は、なっきぃの肩を抱いて出て行った。

「私も戻るね。・・・さっきは言いすぎてごめんなさい。
えりかちゃんの千聖への気持ちがはっきりしたら、私には言ってね。好きなら、ライバルになるから。敵じゃないよ、ライバル。」
それだけ言うとすぐに、舞ちゃんもコテージを出ていった。
一人取り残された私は、ヒリヒリ痛む腰をさすりながら、荒れ果てたベッドや濡れたままの床の掃除を始めた。

――コン、コン
「えりかさん、いらっしゃいますか?あの、千聖です。入ってもいいですか。」

その時、控えめなノックとともに、鈴のような可憐な声が聞こえた。
私は返事をする前に、鍵を開けてドアを全開にした。薄い水色のナイトドレスを着た、儚い姿の美少女が立っている。
千聖が何か言い出す前に、私はその小さくて柔らかい体を抱きしめた。

「えりかさん、私言わなければいけないことがあって。」
「うん。」
背中に回された手が心なしか震えている。私は玄関を閉めて、2人きりの空間を作った。

「わ・・・私、あの、私・・・」
千聖はうつむいたまま、長いまつげの下の瞳をひどく揺らしていた。
「大丈夫、何でも言って?」
「ありがとうございます。私、」
ためらいがちに開かれた一度唇をキュッと噛み締めると、千聖は顔を上げてまっすぐに私を見た。


「私は、えりかさんのことが好きです」


・・・ああ

私は目を閉じた。大きなため息が、口からこぼれ落ちた。
驚きはなかった。どこかで千聖の気持ちを感じ取っていたのかもしれない。そして、自分が答えるべき言葉も・・・

「ありがとう、千聖。ウチも、千聖のこと大好き。だから」
千聖の顔に、明るい色が灯る。胸が痛い。私は言葉をつないだ。



「だから、もう終わりにしよう、千聖。」




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