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「・・・ところでなっきぃ、さっき千聖お嬢様と何の話を?」
「ああ、ほら昨日、お嬢様ったら運転手さんを巻き込んで、勝手に街まで出かけてしまったでしょ?理由を聞いても言ってくれないし、仕方ないから反省文を書いてくださいって叱ったら怒っちゃって。」
なっきぃは軽くため息をついた。
「最近ご両親がこちらに戻られないから、不安定なのかもしれないけど・・・。私としては、やっぱりちゃんとルールを守れるお嬢様になってほしいの。」

よく見ると、なっきぃの右腕には“風紀委員”の腕章。ぴったりだ。

「なっきぃは、模範生なの?」
何となくそう聞いてみると、なっきぃの色白の肌が真っ赤になった。
「えっ!そんな、いきなり何を」
「いやー、何か見るからにそんな感じが」

ここの学校は、制服がとても可愛い。薄いグレーのブレザーに、赤を基調にしたタータンチェックのスカート。ネクタイか大きなリボンを気分で選べて、これもまたスカートと同じ赤いチェック。
寮はこんなでも、学校自体はお嬢様学校というわけではないから、制服の着くずしはまあまあ許容されるらしい。
なっきぃはこの制服を、まるでお手本のようにきっちり着こなしている。皺一つないブレザーに細身のネクタイはカッチリと、スカートは膝上3センチ。
愛理もわりと標準的な着こなし方をしているけれど、ブレザーは着ていない。大き目の紺のセーターで、なっきぃより若干スカートは短め。
馴れたら前の学校みたいにミニ丈でネクタイもゆる結びにしようと思っていたけれど、この風紀委員長の前じゃちょっと厳しいかもしれないな。

「ねえ、どうなのなっきぃ。」
「・・・まあ、一応、模範生・・・って自分で言うの恥ずかしい!有・・・栞菜ちゃんはどうなの?この時期で寮に入ってこれるってことは、成績優秀?」
「えーっ、と。そう、なのかな?うわっ自分で言ってるキモイし!」
「すごーいキュフフフ、愛理も学業優秀なんだよね」
「やぁだケッケッケ」

何、このぬるま湯につかっているかのような褒めあい。心地よすぎる!こんなの、公立の学校では考えられなかったな。もっとガンガンダメ出ししあってたし。

「じゃあ、なっきぃ生徒会の会議あるから行くね。また後で、栞菜ちゃん。」

なっきぃを見送った後、「さて」と気合を入れて愛理が私の方を見た。
「な、なに?」
「行きますか、お嬢様のところへ。」

「ええっ無理無理無理!あんなすごいお屋敷入れないから!」
「大丈夫大丈夫。私もさっきお部屋にお呼ばれしたから、今一緒にご挨拶に行きましょう?」

そんなわけで、私は愛理に引きずられるようにして、お屋敷への近道の中庭へ連れていかれた。

「うわっ!!」

その時、ちょうどドアの影から人が飛び出してきた。危うくぶつかりそうになったけれど、間一髪、お互いにのけぞったからセーフ。

「ご、ご、ごめん!ちょっといそっいそがぐっ」

目の前には超美人な目力美女・・・だけど、ジャージにモサモサフリフリラメラメなピンクのタンクトップという理解しがたいファッション。どこで売ってるんだろう、その服。
「舞美ちゃん、部活?お疲れ様。」
「いやー、でも今から生徒会なのに着替えてないし、髪ぐちゃぐちゃだし、また怒られちゃう!あーやばいやばい」

その美人さんはテンパリながらも、私の存在に気付いたみたいで
「あっ!新しく入った子!よろしく!私せいt^@をっる$のまいむぃ!よろしくね」
と思いっきり肩を2回叩いてきた。・・・痛い。そして何を言っているのかよくわからない。
「じゃあ、私たちお嬢様のところに行ってくるから。」
「そっか、それはご愁傷様!じゃあね!」

美人さんはまたヤバイヤバイといいながら階段を駆け上がっていった。

「・・・今、ご愁傷様って。や、やっぱりお嬢様のお世話ってそんな」
「あはっ違うよ。ご苦労様といい間違えただけ。舞美ちゃん天然だから。・・・あ、さっき聞き取れなかったでしょう?あの人は、高等部の2年生。スポーツ特待生で、生徒会長の舞美さん。
ちなみにさっきのなっきぃは、風紀委員と生徒会副会長を兼任してるんだよ。」
「えっ、中等部なのに副会長?」
「詳しいことはまた後で話すけど、うちの学校は学年関係なく何でもやりたい人が責任もってやるっていうのがモットーだから。まあ、とりあえず今お嬢様のところへ行こう。」

私たちは今度こそ連れ立って、お屋敷の方に歩いていった。

「あら、鈴木さん、ご苦労様です。」
「こんにちは。千聖お嬢様、今いらっしゃいますか?」
「お待ちくださいね。」
玄関で対応してくれたメイドさんが、いそいそと廊下の向こうへ消えていった。

・・・なんだこの家は。ベルサイユ宮殿か。バッキンガム宮殿か。とにかく広い。ムダに広い。実家の私の部屋なんか、この玄関より狭いかもしれない。こんな家で、いったい何を手伝えと・・・?

「愛理、もう来てくれたの?」
その時、後ろから舌ったらずな声がした。振り向くと、お嬢様がニッコリ笑って立っていた。ミニチュアダックスを2匹だっこしていて、どうやらご機嫌は直っているみたいだ。

「ええ。千聖お嬢様、こちら、新しく寮に入った有原栞菜さんです。」
「あ、有原です。あのー・・」

私を不思議そうな顔でしばらく見つめた後、チサトお嬢様の目が真ん丸くなった。

「あなた・・・昨日の栞菜さん?そうでしょう?」
「そうっ!です。覚えていてくれた・・じゃなくて、くださったんですね。」
目を輝かせて見つめられて、私は何だか嬉しくなった。

「嬉しいわ、本当にまた会えるなんて。2人とも、私のお部屋で遊びましょう。今日はえりかさんが、お料理部で焼いたクッキーを持ってきてくれるのよ。」

泣いたり怒ったりはしゃいだり、お嬢様はくるくる表情が変わってとても愛らしい。プンプン怒っていたなっきぃが、結局許してしまった気持ちがわかる気がした。



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