※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「スカート丈、OK。えりこちゃん以外。
リボン、ネクタイOK。えりこちゃん以外。
さー行きますか!えりこちゃんは大至急スカート直す!パンツ見えちゃうよ!」

「ちぇー。」

登校前恒例、私の風紀チェックが終わった。
昨日ここへ越して来た栞菜ちゃんは、本日が学園デビュー。人見知りするタイプらしく、若干顔が強張っている。

「大丈夫だよ栞ちゃん。うちの学校面白い子いっぱいいるし、あんまり学年関係ないから。」
「そうなの?」
うん、とうなずいて、みぃたんが私に目線を送ってきた。説明しろってことか。まったく、私に面倒を押しつけるのがうまいんだから!

「うちは先輩後輩の交流を大事にするから、部活とか委員会、あとイベントごとは基本中高ごちゃまぜでやるのね。ホームルームもクラスごとじゃなくて、縦割りでやるんだよ。たまに授業でもからむし。音楽とか体育とか」

「へー…私立ってすごい…」

栞菜ちゃんは、私が数年前持った感想と同じ言葉を漏らした。何だか懐かしくて、ニヤッと笑ってしまった。

「そういえば、栞ちゃんは昨日お嬢様に会ってきたの?機嫌どうだった?なっきぃかなりしかっちゃったから、ムスッとしてたんじゃない?」
お世話係として、私たちはよくお嬢様の情報交換をする。こうして登校がてら、話し合いをするのは日課のようなものだった。

「いや…それは別に気にしてなかったみたいだけど。」
えりこちゃんが口ごもる。
「けど?」
「舞ちゃんのこと聞かれたんだよね。」

あー…それはまた、返答に困ることを。

「舞ちゃんに会わせてって半泣きになっちゃったから、とりあえず愛理と栞菜は寮に戻った。その後ウチがごはん作って、それ食べたら落ち着いたみたい。」


舞ちゃん。


彼女が休学して、二週間になる。何かあったのかな。定期的に“心配かけてごめんなさい”メールは来るのだけど、状況がよくわからない。
まあ、勉強の方は別に大丈夫だろう。なんてったって舞ちゃんは

「舞ちゃんはね、天才なんだよ。」
「ええっ!」

みぃたんが栞菜に説明し始めた。

「栞菜や愛理と同じで、すごく優秀な子なの。それも、普通の中学生のレベルじゃないらしくて。ただ、周りに合わせるのが難しいみたいで、クラスの子とうまくやれないことも多いのね…。
千聖お嬢様とは不思議と気が合うらしくて、休学する前は二人でよく遊んでたんだけどね。」

私は心の中でため息をついた。
千聖お嬢様が不安定なのは、ご両親が戻ってこないからだけじゃない。舞ちゃんまで自分から離れていってしまう気がして、不安なんだと思う。
だからせめて、ちゃんとお嬢様を見ている人間がここにいるってわかってほしくて、私は何かとお嬢様の生活態度を注意してしまう。
こんな風にガミガミ叱ってばかりの私を、きっと快くは思ってくれてないだろう。
それも仕方ない、私は不器用だから。えりこちゃんがお料理を作ってあげるように、愛理がお喋り相手になってあげるように、私は私の得意分野でお嬢様を助けたいだけなんだけれど。

「そういえば、お嬢様は?一緒に登校はしないの?」
栞ちゃんが首を傾げたと同時ぐらいに、軽快なクラクションと共に、黒塗りのおベンツが私達の横を通り過ぎていった。
「うん、栞菜。」
「まさか・・・」
栞ちゃんはかなり察しのいいタイプみたいだ。

「ありえない。この距離を、車で?」
「本当は、お嬢様は私達みたいに歩いて通いたいんだって。でも前に、変な人に誘拐されかかったとかで、もうそれも叶わなくなっちゃって。」

「何か、お嬢様可哀想。」
急に栞ちゃんは立ち止まって、下を向いて鼻をすすりだした。
「私昨日、こんなすごいお屋敷で育ってうらやましいなあなんて勝手に思ってたけど、やりたいことも全然させてもらえないなんて」
あ、やばいやめて栞ちゃん。私も結構涙もろいんだって。そんな顔したら涙が伝染る・・・・!

「まあまあ、でもその代わりに、私達がいるんじゃないか。できることは何でもしてあげようよ。前はさ、寮に来るのだって禁止されてけど、みんなで直訴して許可もらったじゃない?
またお願いしてみようよ。毎日は無理でも、大人数で帰れる時とか、さ。」
「そうだね、舞美の言うとおりだ。よっ生徒会長!」
「もっと褒めて!」

みぃたんはすごい。
普段はぽけーっとして何考えるかわからないことも多いのに、こうして重い空気を一気に吹き飛ばしてしまう強さを持っている。そんなみぃたんだからこそ、私はサポート役に立候補したのかもしれない。

「大丈夫だよ、お嬢様はそのうち落ち着くって。学校に行けば桃もいるし、・・・まあ、梨沙子さんも、ね」

そう言いながら、えりかちゃんはさりげなく私の手に何かの用紙を握らせてきた。
クシャクシャの紙をこっそり開くと、雑な字で「反省文」と書かれていた。

「ちょっとは、優しくしてあげなよ?風紀委員長さん。」
思わず顔がにやけてしまったことをえりかちゃんにからかわれて、私は慌ててほっぺたを引き締めなおした。

「さあ、急ごう!今日は栞ちゃんに学校を案内するんだから!」



TOP