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お嬢様の世話を焼くグループには、高等部の人達も混じっている。あまり波風を立てたくないと思ったらしく、千聖お嬢様はあきらめたように彼女達が用意した席に座った。

「千聖様、今日の制服はおリボンなんですね。よく似合っていらっしゃるわ!」
「あ・・ありがとうございます。」
何言ってんの。お嬢様はいつでもリボンだよ。ネクタイは1人じゃ綺麗にできないんだから。お取り巻きならそれぐらい覚えてなさいっての。

「今日の髪留め、とても可愛いです!可憐な千聖様にお似合いですわ!」

ああ~もう、聞いてられないったら!お嬢様は無理に言葉遣いを合わせられるのは嫌がるし、大体、髪の毛とかあんまりベタベタ触られるのも好きじゃないんだってば!もう!

「なっきぃ、目吊り上がってる。」
「うぅ~・・・」

見守ると決めたからには、手出しはしたくない。
だけどお屋敷にいる時とは別人みたいに萎縮している姿を見ていると、むくむくとおせっかいなっきぃが頭をもたげてくる。

「栞ちゃん、私の手握ってて。・・・飛び出さないように。」
私は自分の心と戦いながら、斜め前の席に座るお嬢様をしっかりと見据えた。


「うわーやっばい!アウト?セーフ?・・・セーフ!」
その時突然、教室の後ろ扉をガラッと開けて、食パンをくわえた生徒が走りこんできた。なんてベタな!


「ねえねえ、あの人は?」
栞ちゃんが小声で囁いてきた。うん、そりゃあ気になるよね。
「高等部2年の、桃子さん。みぃたんのクラスメート。私はあんまり関わったことないんだけど、かなり変わった人。でね、千聖お嬢」
「あーいたいた!千聖ぉ、何でそんな前座ってんの?今日は真面目キャラ?」

私が説明するまでもなかった。桃子さんはすぐに千聖お嬢様を見つけて、強引にお嬢様の隣へ割り込んだ。

「ちょっとぉ」
「おはようございます、桃ちゃん。」
文句を言おうとしたお取り巻きさんたちは、千聖お嬢様があんまり嬉しそうな顔をしているからか、明らかに面白くない顔をして黙りこんだ。

「ねえ千聖聞いてよ、今日は早く起きたから、学校行くまで余裕あると思ってたの。そんで朝風呂してたら、何かすごい時間経っててー」
「まあ、千聖も今朝お風呂に入ってきたのよ。」


「・・・すっごい仲いいんだね、お嬢さまと。」
「そうなの。親しくなった経緯とかは知らないんだけど、千聖お嬢様は桃子さんをすごく好きみたい。」
ちょっとヤキモチ焼いちゃうぐらいね。

「ああいう風に呼び捨てで普通に扱われることが、新鮮で嬉しいのかもね。他の生徒はほら、大体お嬢様って言うから。
前に私たち寮生も“千聖って呼んで”って言われたことがあったんだけど、寮でお世話になってる人間は、ちゃんと様づけしないとけじめがなくなっちゃうからね。
お嬢様もね、妙に上下関係を気にするところがあって、基本的に年上なら“さん”づけにしてるのに、桃子さんだけ桃ちゃんだからね。・・・あ、でも私たちも一応年上なのに呼び捨てだ。キュフフ」

「愛理、なっきぃ、栞菜、舞美さん、えりかさん・・・あ、本当だ。私たち、多分年上としてカウントされてないね。あはは」
「・・・親しく思ってくれてる、ってことにしておこう。」

そのまましばらく栞ちゃんとおしゃべりしているうちに、ホームルームの先生が入ってきた。

「はい、じゃあ中等部に転入生が来たので紹介します。有原さん、どうぞ」
「あ、は、はい有原です。どうぞよろしく」

照れやな栞ちゃんのそっけない自己紹介が終わると、今度は来月に行われる球技大会の話になった。

「今年も中高合同でやるから、放課後までに各自やりたいものを決めておくように」

「ねえねえ、なっきぃは何にするの?」
「んー・・・フットサルかなあ。」

私はチラッとお嬢様の方を盗み見た。
どうやら取り巻きさんたちに、一緒のにしましょうって誘われているみたいだ。

「えと、私は、フットサルを」
「ええっ!だ、だめですお嬢様!そんな危険な競技、怪我でもなさったら大変ですっ」
「でも・・・」
「お嬢様は、運動はあまりお得意ではないでしょう?そうだ、見学という手もありますわ。私たちお付き合いします。」
ちょっとそれ、自分達がさぼりたいだけじゃない!最悪!


「・・・え、もしかして、千聖がフットサル得意なの知らないの~?」

ついに私が口を挟もうとしたその時、桃子さんがのんびりした口調とともに取り巻きさんたちを一瞥した。

「ていうか、千聖の得意教科は体育なのに。そんなお世話係みたいなことしてるのに、知らないのぉ?ちなみに不得意教科は体育以外。これ豆知識ね。」

取り巻きさんたちは小さい声で何よ、とか言いながら、しぶしぶ引き下がった。ここからじゃ見えないけれど、もしかして桃子さんはちょっと怖い顔でもしてみせたのかもしれない。
ぶりぶりの可愛い系を装っているけれど、桃子さんはそれだけの人じゃないと私はにらんでいるんだ。

「それじゃ、千聖は桃と一緒にフットサルやろっか。桃下手だけど、いいよね?教えてくれるでしょ?」
「はい、もちろん。」
千聖お嬢様の顔がパアッと明るくなって、機嫌のいいときにだけ見せてくれる、目が三日月みたいにくしゃってなる可愛い笑顔に変わった。


「何か、すごいね。あの人。」
「うん、本当にね。」

なっきぃもあのぐらいお役に立てるように頑張りたいなあ。なんて、悔しいから絶対言わないけど。
まあ、お嬢様の極上スマイルを引き出してくれたお礼に、今日はその超ミニスカートとセクシーニーソは見なかったことにしておいてあげましょう。



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