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怒涛のごとく朝のホームルームは終わって、私は中等部の校舎に戻る途中、千聖お嬢様と合流した。

「お嬢様、ちゃんと嫌なことは嫌って言わないとだめです。寮生にはあんなにワガママ言うのに。なっきぃは、いつものおてんばなお嬢様の方が好きですよ。」
「まあ、見ていらしたの・・・いじわる。」

口を尖らせつつも、私を軽くにらむ目つきはどこか優しかった。

「私、あんなにいろいろしていただかなくたって、1人で何でもできるのに。親切で千聖を構ってくださっているのはわかるけれど」

・・・ああ、口出ししたい。手出ししたい。仕切りたい!でもあかん、なっきぃ。我慢やで!


「お嬢様は、ご自身が仲良くしたい人と思った人と一緒にいればいいんですよ。それが彼女たちじゃないなら、ちゃんと伝えなくてはね。」
「・・どうやって?なっきぃ、どういう風に言えばいいのか教えてちょうだい。」
「ダメです。それは、千聖様の言葉でお伝えしないと。」
私はお嬢様の制服のリボンを少し直してから、「これ、あとで読んで下さい。」と薄いブルーの封筒を渡した。

「もう・・・なっきぃのいじわる。」

お嬢様が教室に入るのを見届けて、私と栞ちゃんは3年生の教室へ向かった。
「なっきぃ、さすがだねー」
「え?」
「私だったら、お嬢様がうまく取り巻きさんたちから離れられるように、分厚い台本書いちゃうところだったよ。
でもそれじゃあお嬢様のためにならないんだよね。なっきぃは強いよ、いつでも心地よくしてあげることだけが、愛情じゃないもんね。」

「ちょ、ちょっといきなり何?そんな、私なんてガミガミ言ってるばっかで」
あ、ヤバイ。そんな暖かく褒められたら

「お嬢様にだって、多分きらわっ・・れてる」
どうしよう、涙腺が

「どうして?絶対そんなことないよ!あのねなっきぃ、本当に優しい人っていうのは、大好きな人に厳しくできる人のことをいうんだよ!お嬢様はちゃんとわかってるって、なっきぃの思いやり。」
「栞ちゃぁん・・・」

もう、頭のいい子はこれだから。心のデリケートな部分をいたわるように撫でられて、私は泣き虫なっきぃに早変わりしてしまった。

「うわっなっきぃ泣かないで?私が泣かせたみたいじゃんかぁ」
結構大きな声で喋っていたから、いつのまにか私たちの周りに人だかりができていた。

“転校生が、あの風紀委員長を?”
“すごい・・・有原さんって何者?”

「ちっ違うよ!違いますって!もぉ~なっきぃもなんか言ってよぅ」
ごめん栞ちゃん。私のせいで、転校初日からスケ番だね。キュフフフ・・・



午前の授業が全て終わってから、私は栞ちゃんを連れて生徒会室に向かった。
「おーなっきぃ、お疲れ様。」
「お疲れ様でっす。」


長テーブルがいくつか連なった席の一番奥で、ショートカットの小柄な上級生と、えりかちゃんがお弁当を広げていた。
「栞ちゃん、紹介するね。高等部副会長の清水佐紀先輩。えりかちゃんと同じクラスです。」
「どうもー。噂は聞いてるよん。すっごく優秀な生徒が入ったって先生たちが言ってた。」

清水先輩は、私の知ってる高等部の生徒の中では、一番真面目で話が通じるお姉さんという印象がある。会議の時は私と清水先輩で軌道修正を試みることが結構多い。

「Wサキはね、2人して副会長で模範生なんだよ。そんで、ダンス同好会のホープ。」
「いやいやいや」
「ちょっと、やめてよえりこちゃんてば!栞ちゃん、こっち座ろう。」

私は照れてる顔を見られるのが恥ずかしくて、少し2人から遠ざかった席についた。

「お疲れお疲れ!学食混んでてさー、遅くなっちゃった!」
しばらくすると、今度は全力生徒会長。惣菜パンとから揚げ弁当を抱えて、どっかりとお誕生日席に陣取った。

「今日は、これで全員?」
「まだいまーす。栞菜、久しぶり!」
ちょっと小走りで、愛理も部屋に入ってきた。

「あれ?愛理も生徒会?」
「うん、あれ、言ってなかったっけ?私、環境委員の他に生徒会の会計をやってるの。」
「へー、みんな精力的なんだねー。・・・いいの?なっきぃ。部外者の私がここにいて」
「うん、ちょっと待って」

今日は茉麻ちゃんは会議来れないって言ってたから・・・全員揃ったのか。
でも、私にとって肝心なもう1人が来ていない。

手紙、読んでないのかな、お嬢様。

「なっきぃ?そろそろ号令おねがーい。」
みぃたんがコロッケパンほおばりながら促してくる。
タイムリミット。とりあえず、会議を始めよう。



「はい、それでは定例会議を―」


コン、コン


皆が立ち上がりかけた時、木製のドアが小さく二回音を立てた。来た!

「どうぞ、お嬢様。」
ノックの音だけで、それが千聖お嬢様だとすぐにわかった。ドアを開けると、怯えたような顔でお嬢様が私を見た。

「あの・・・こ、こんにちは」

こんなしおらしい態度を私に見せるとは、珍しい。生徒会室って、やっぱり来にくいものなのかな?

「あっ千聖お嬢様。どうも、ごきげんよう」
あんまり面識がないのか、清水先輩が少し慌ててぺこりと頭を下げた。

「どうかなさったんですか、お嬢様。生徒会室にいらっしゃるなんて」
「えと、あの、私、なっき・・・中島さんに呼ばれて」
首を傾げるみんなを尻目に、私は右手に栞ちゃん、左手に千聖お嬢様の手を取って、ひとつ咳払いをした。



「ではまず、私から本日の議題を。

現在人手不足の生徒会役員に有原栞菜さんを、並びに、岡井千聖さんを生徒会のヘルプに推薦いたします!」




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