※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「え・・・」
「お嬢様を、お手伝いに?」

室内のざわめきを両手で制して、私は言葉を続けた。

「えと、まず有原さん。彼女は学業面だけでなく、人格的にも大変優れていると思われます。
私はまだ2日しか一緒にすごしていませんが、そんな短い時間の中にも、有原さんの素晴らしさをひしひしと感じる出来事がいくつもありました。
その優秀な能力を、生徒会で発揮して欲しいと思い、推薦した次第であります。」

うん、なかなか綺麗にまとまった。みぃたんなんて、口半開きでもうすでに笑顔になっている。これは、OKだろうな。ってまだ肝心の栞ちゃんの答えを聞いていないんだけど。

「ごめんね、許可ももらってないのに。どうかな?生徒会の役員、やってくれない?」
「うーん・・わかった!お役に立てるかわからないけど。生徒会で仕事をしてたら、自然に学校のことも覚えられそうだし。」
生徒会室に連れてこられた時点で、こうなることをある程度予想していたんだろう、栞ちゃんは意外にあっさりと私の申し出を受け入れてくれた。

「うん、私も賛成。栞菜がいてくれたら嬉しいな。」
満面の笑顔の愛理。
「私も賛成します。まだ栞菜ちゃんのことはよく知らないけど、なっきぃが推薦する人だもん。これからよろしくね。」
清水先輩はニコッと笑って栞ちゃんに手を振った。
「ウチも賛成だよー。もうね、書記がいなくて大変だったんだから。うしし、これで生徒会のお手伝いの回数も減らせるわ」
「何言ってんの!えりこちゃんにはまだまだまだまだまだ仕事してもらうんですからね!風紀委員のほうもね!」

「あ・・・あの・・・・・」

ふいに、ずっと黙っていた千聖お嬢様がおずおずと口を開いた。
「私、あの・・・どうして・・・」

お嬢様は喜怒哀楽が表情に出やすい。今私を見つめる顔は、可哀想なぐらいに不安ととまどいで曇り切っていた。

「はい、理由は、お嬢様がお暇だからです。」
「ひ、暇ですって?」

お、少し目に力が戻った。

「いいですか、お嬢様。お嬢様は、放送委員でしたね?でもお嬢様に割り当てられた仕事といったら?はい、放送委員えりこちゃん!」
「月に一回、放送室のマイクのスイッチを入れるだけでーす。」
「それは、だって・・・皆さんが・・・千聖には何もしないでほしいって・・・・・座っててくれればいいって・・・」
「あーら、それじゃあお嬢様は、そんな簡単な仕事しかできないのかしら?まあ残念、なっきぃは、お嬢様はもっと優秀な方だと思っていたのに。キュフフ」

挑発する私を、お嬢様は口をへの字にして睨みつけてきた。
「っなっきぃのいじわる!私だって、本当は色々できるわ!」
「でしたら、生徒会のお手伝いをしていただけますか?毎日じゃなくていいんです、お昼休みと放課後、お暇な日があったら寄ってくだされば、誰かしらいると思うので。」
「・・・わかったわ。皆さん、どうぞよろしく。見てらっしゃい、なっきぃのことびっくりさせてさしあげますから。」

お嬢様は一礼して、くるりと背中を向けた。
「あれ?お弁当一緒に食べましょうよー。舞美、パン買いすぎちゃったからお嬢様にあげますよ。」
「いいえ、今日は桃子さんと屋上でお弁当を食べるお約束があったので。また放課後に来ますわ。ごきげんよう」
「逃げちゃだめですよ、お嬢様」
「・・・いじわる!」

お嬢様は思いっきり顔をしかめて、今度こそ生徒会室から出て行った。

「いやー・・・なっきぃ、うまいねぇ~。ウチ見惚れちゃったよ。」
えりかちゃんがなぜか握手を求めてきた。

「本当、私もあんな風にお嬢様を乗せることできないよ。」
愛理も立ち上がって、私の肩をポンと叩いた。

「本当、なっきぃは頼りになるね!」
背後から栞ちゃんのハグ。

「私、千聖お嬢様とは全く関わりなかったから知らなかったけど、ああいう感じなんだねー。なっきぃの接し方を参考にするね。」
清水先輩も満面の笑みで近づいてくる。

「ちょ、ちょっと、みんな・・・?何何?」

「なっきぃは最高だね!」
「なっきぃ!なっきぃ!」
「なっきぃ!なっきぃ!」
「なーっき、ヲイ!なーっき、ヲイ!」
ひええ!何だこれ!
ホ、ホストクラブ?

「よし、お嬢様をギャフンと言わせたなっきぃを祝福しよう!とか言ってw」
ギャフン?みぃたんまた日本語違う・・・と突っ込もうとしたら、いきなり体が宙に浮いた。

「ええええ!?ちょっと、やめて!怖い!」

何がどうなったらこのタイミングで胴上げなんだ。みんなの腕力(8割みぃたん)で、私はなすすべもなく空を舞い続ける。
「なっきぃが優秀な副会長で、私は幸せだよ!」
「うん、舞美の言う通り!」

そう、生徒会のメンバーはあまりにもノリが良すぎる。特に、みぃたんの変なテンションには全員で引きずられてしまう傾向があった。
こういう時はストッパーになってくれるはずの清水先輩まで、今日は多幸感溢れる表情で私を見守っている。

「も、もういいですありがとう!パンツ!パンツ見えちゃうから!勘弁して!」

息も絶え絶えに懇願して、やっと解放してもらった私は、涙目で顔を上げた。

「うわっ!」

いつからいたんだろう、ドアの隙間から、ドン引き顔の千聖お嬢様が怯えたように私を見ていた。
「ち・・・千聖様・・・これは・・・」

ゆっくりとドアが閉まって、廊下をパタパタと駆けていく音が響いた。

放課後、来なかったりして・・・

いまだにテンション高くハイタッチを繰り出しているみんなの輪の中で、私はこっそりため息をついた。



TOP