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「な、なっきぃ!」
「……キュフフ?」
「なっきぃはあの状態の千聖を放っておける? あれは千聖の不安の表れなんだよ。受け入れてあげないと…」
「……じゃあ、何で話してくれなかったの? 一度や二度じゃないんでしょ?」
「そ、それは……」
「……あたし、そんなに頼りないかなぁ」

最後の一言は、うちにではなくなっきぃ自身に向けられていた。
俯いて発せられたその声は、さっきまでとは違い弱々しく泣きそうな声。
……だから、だから言わなかったのに。

「なっきぃ」
「……何?」
「千聖との関係を楽しんでた自分も確かにいたよ。でもね……」
「……でも?」
「なっきぃが今みたいに自分を責めちゃうのが分かってたから。
だから、言えなかった」
「……………」

なっきぃは人一倍責任感が強いから。その強さで自分を追い込んでしまうから。
うちだってちゃんと見てるんだよ。お姉さんなんだから。

「……えりかちゃん」
「ん?」
「……ありがとう」

顔を上げたなっきぃは笑っていた。いつもの笑顔。
良かった。これで解放してもらえる。そう思ったのに……。

「……でも、楽しんでたのも事実なんだよね」
「あっ、いや、それは……」
「……キュフフフフ」

キュフフ笑いへと変わるなっきぃ。そして封が開けられていく麦チョコの袋。
だ、大丈夫。大丈夫なはず。なっきぃは℃-ute愛が強いから。

「……えりかちゃん」
「?」
「……過剰な期待は禁物です」

一際大きい身震いがした。これも聞いたことあるような台詞なんだけど。
なっきぃの後ろに彼女が見えるのは気のせい?!

「……キュフフ。苦痛の後には幸せな痛みが待ってるから」
「し、幸せな痛み?」
「……そう。お花畑で楽しく踊れるから」

な、中島さん?! それって近くに川が流れていたりしませんか?

「あ、あ、アウーズ・ビッラー!!(アラビア語 訳:神よ、助けて下さい)」
「……キュフフ。ビッサラーマ(アラビア語 訳:さようなら)」

頂点へと達した恐怖にうちが思わず神に赦しを乞うたのに対し、
なっきぃは最高級の悪魔の笑みを浮かべて別れを告げてくれた。



「…………ん」

ふと目が覚めた。どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。
なんか幸せな夢だったなぁ、お花畑にいたし。あっ、川もあったかも。
っていうか昨日の夜、何してたんだっけ?
う~ん、なっきぃが部屋に来たような気がするんだけど……。

それ以外の事がさっぱり思い出せない。きっと、話しながら寝ちゃったんだろうな。
栞菜と電話してる時にそういう事が起きるみたいだから。

とりあえず、昨日入れなかったお風呂に入ろうと用意をしていた時
『コンコン』という音が聞こえて、うちは部屋のドアを開けた。
そこにいたのは千聖だった。

「どうしたの? こんなに朝早く」
「……あの、その」
「とにかく入って。うち、お風呂入っちゃうけどいい?」
「あっ、その前にこれを」

千聖が後ろ手に持っていた物をうちに差し出した。
あれ? 今、身震いしませんでした?

「ん? 麦チョコ?」
「さ、早貴さんから伺ったのですが」
「うん」
「えりかさんは、麦チョコを流し込んで食べるのがお好きだと」
「は、はいっ?!」

甦る昨日の夜の記憶。あ、あの夢ってまさか……。

「えりかさん? 顔色が悪くなられたような」
「だ、大丈夫だよ」
「そ、それで、日頃の感謝も込めて、是非私に流し込ませて頂けたらと思いまして」
「は、はは……」

昨日の最高級の悪魔の笑みに対して、今朝は最高級の天使の笑み。
断れないですよね……これ。

「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」
「はいっ! では……」

ウフフッ笑いへと変わる千聖。そして封が開けられていく麦チョコの袋。
だ、大丈夫。大丈夫なはず。一度乗り切ってるんだから。

「あ、えりかさん」
「?」
「これも早貴さんから伺ったのですが」
「な、何?」
「過剰な期待は禁物です。……だそうです」
「……………」




アウーズ・ビッラーッ!!



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