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食事の後は、デザートのフルーツゼリーの種類をかけて千聖の家族みんなでゲームをやった。あっすーと千聖は姉妹でイタズラ顔になって私に攻撃をしかけてきたけれど、弟くんの巧みな防衛で最下位は免れた。

「あー、もう!ビリになっちゃったー」

ぶーたれるあっすーの顔をチラッと見て、1位の千聖は
「あら、明日菜のもおいしそう。半分こしましょう。これ、好きでしょう?」
とスプーンで半分にしたゼリーを取り分けた。
「いいの?ありがとう。」
2色になったゼリーを見て、あっすーも嬉しそうな顔をしている。

「愛理ちゃん、おいしい?」
「はい、とってもおいしいです。あの、良かったら、後で作り方を教えてもらえますか?本当、すごくおいしい。」


千聖の家族はとても温かい。いつもお互いがお互いを見ていて、ごく自然に手を差し伸べあっている。
赤ちゃんがムズがれば誰かがサッと席を立ってあやしに行く。夕飯の後片付けも当たり前のように各々やっている。
千聖だけじゃなく、家族みんなが、私が退屈しないように自然に会話の中に入れてくれる。
千聖が日頃みせるさりげない気づかいは、こんな優しい空間の中で自然に生み出されているんだろうな、と思った。

何だか無性に自分の家族が恋しくなってしまった。



「それじゃあ、私たちは部屋に戻ります。」
「ご馳走様でした。」
私は強引に後片付けを手伝わせてもらってから、千聖と一緒にリビングを出た。

「うるさかったでしょう。もう、みんな愛理が来るって言ったらはしゃいでしまって。」
そんな風に言いながらも、千聖の顔は優しくほころんでいた。

しばらく千聖のお部屋でまったりくつろいでいたら、千聖ママがお風呂ができたと知らせに来てくれた。

「愛理、お風呂先にどうぞ。」
「んー・・ねえねえ千聖、良かったら一緒に入らない。」


「・・・・ええ???」
千聖はポカーンとした顔で私をまじまじ見つめた。
「いや、そんなに驚かなくても」
「だって、愛理はあんまり好きじゃないのかと思っていたから。誰かとお風呂に入るの」

どうやら州;´・ v ・)<ホントやめて欲しい のイメージがかなり根強いらしい。
「まぁまぁ、人は日々変わるんだよ。ねぇー、一緒に入ろうよぅ」
普段は千聖を可愛らしく思うことの方が多いけれど、お姉ちゃんモードで悠然としてる姿を見ていたら、私の甘えん坊スイッチが入ってしまった。

「ふふ、・・・それじゃあ一緒に入りましょうか。パジャマを出すから待っててね。」
千聖は引っ付き虫の私を軽くいなして、タンスをごそごそ漁りはじめた。
私はドアの前で、千聖のおうちのワンちゃんみたいに、今か今かと準備が終わるのを待つ。

「お待たせ、行きましょう。あんまり広いお風呂じゃないから、愛理は先に体を洗って。洗面所で待ってるわ。」
「はーい」

自分の家とは違うシャンプーの匂い。使ったことがない洗顔料。何かテンションが上がる。
「しぶーやをーあるくぅ」
「ひとーりであるく」
ご機嫌な鼻歌に、また千聖がタイミングを合わせて歌ってくれた。

「無ー邪気のままでいてー・・・・お待たせ、千聖!」
3曲ぐらい調子よく歌ったあたりで、やっと私は頭と体を洗い終えた。
「はーい。それじゃ入るわね」
湯船に移動して、千聖のスペースを確保する。

千聖が体を洗ってる間、することがなかったから、何となく体をじろじろ見てしまった。

「なぁに?」
「んーん。」

千聖は背はちっちゃいけれど、私と比べてすごく女性っぽい体つきだと思う。女の子、じゃなくて女性。梨沙子もかなり大人っぽい外見だけれど、それとはまた違うみたいな。
こういうのってどう言えばいいのかよくわからないから、直接千聖には伝えてないけれど。

「そんなにじっと見ないで。・・・私、あんまり自分の容姿が好きじゃないの」
「えっどうして?私はうらやましいけどな。千聖胸おっきいし、顔だって可愛いよ」

千聖は黙って首を振ると、ボディソープを落として湯船に入ってきた。
少し沈んだ表情のまま、私の顔を指でなぞる。

「私、愛理みたいになりたかった。色白で、可愛くて、スラッとしてて、優しくて・・・」
「千聖、」
「ごめんね愛理。何か最近、情緒不安定みたい。嫌だわ」

きっと苦しいだろうに、千聖はこんな時でも笑いかけてくれる。
「そんな、いいよ。私もたまに感情のコントロールができなくなったりするもん。気にしないで。」

私は栞菜やなっきぃみたいに、元気に人を励ましてあげたりするのがあんまり得意じゃない。こんな風に無理して笑わないでほしいのに、上手く伝えられない。

「私、本当に千聖のことすごいって思ってるんだよ。前にもラジオで言ったことあるけど、千聖は私にないものいっぱい持ってるし、尊敬してるよ。
千聖が、私をライバルって言ってくれるの嬉しい。千聖のこと好きだから。
ライバルって、敵じゃないでしょ?だからそんな風に言ってもらえて・・・・・ごめん、何か上手く伝えられないけど。」
「いいえ、ありがとう愛理。嬉しいわ。私、愛理とお話してると元気になれる。」
まだ少しぎこちないけれど、千聖の笑顔はさっきより自然にみえた。

「そろそろ上がりましょうか、のぼせてしまいそう。」
「あっ!じゃあちょっと待ってて。私が先に着替えてもいいかな?」
「ええ、もちろん」

私は千聖を湯船に残して、“アレ”を手早く身に着けた。千聖、どんな反応するかな?
お風呂のドアをそっと開けると、変な裏声で千聖に話しかける。

「キューリ、チョウタ゛イ。」
「きゃっ!・・・まあ、愛理ったら!今日はカッパ愛理なのね」

黄緑色の、カッパの着ぐるみ。
お泊りが決まったときから、今日のパジャマはコレと決めていた。

「うふふ、よかった。」
「え?なになに?」
「愛理、ここにいてね。」

千聖は少し慌てて脱衣所へ走っていった。5分もしないうちに、「どうぞ」と洗面所に呼び戻される。

「わんっ!」
「・・・・・・ええ~!すごくない、私たち!」

なんとなんと、千聖の用意していたパジャマはあのチッサー犬だった。
「嬉しいわ。こんな格好してると明日菜と弟が飛びついてきて大変だから、あんまり着る機会がなくて。愛理が来てくれる時ならいいかなって思ってたのよ。」
「私もだよ~ケッケッケ。これで家の中うろうろしてたら、家族にマジメに心配されちゃったもん。いいじゃんね、着ぐるみ。」
「そうね、可愛くて暖かいのに。」

思わぬところでシンクロして、千聖の顔にもいつもの弾けるような笑顔が戻った。



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