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「まず、舞ちゃんは今お嬢様のお手伝いの仕事をサボッていますね。これでは寮生としての義務を放棄していることになりますので、早急に復帰していただきます。」
おおっ!と嬉しそうに拍手する舞美を制するかのように、サキさんがまっすぐに挙手をする。

「はい、えりこちゃん。でも今の状態の舞ちゃんをお嬢様に近づけるのはあんまり・・・どうなのかと思うんですが。お嬢様も気の弱い方ではないから、取っ組み合いにでもなったら大変じゃない?」
「ああ、それは大丈夫。舞ちゃんには、お嬢様専属のお仕事は振らないから。」
「どういうこと?」

エリカさんの手招きで、みんながいっせいにテーブルの真ん中に顔を近づける。声をひそめて内緒話が始まった。


「・・・・・というわけで、ここはめぐぅちゃんに頑張ってもr」
「それは厳しい。」

だがしかし。せっかくだけれど、その作戦の詳細を聞いて、私は即座に手で×を作った。

「ええ?どうして?」
「・・・理由その1。私はキレやすい。そういうことになると、マイさんに穏やかな対応ができるか保証できないです。こんなことしちゃったりして、とかいってw」
私の空中張り手に、サキさんがひぇっと声を上げた。


「理由その2。正直、他のメイドに説明するのが面倒です。それに、私としてはお嬢様のプライベートな問題をあまりおおっぴらにしたくないんです。まあ、なんていうか噂話の好きな人もいるんで。」
「うーん。」

同い年ぐらいの子たちとこうして大勢で話し合ったりするのは久しぶりだから、さじ加減がわからなくてキツイ言い方してしまったかもしれない。でも寮のみんなはふむふむとうなずきながら、みんな熱心に私の意見を聴いてくれた。

「なるほどね。めぐの言うこともわかる。ちょっと強引だったかも。」
「あ、で、でも、別に全部に反対ってわけじゃないの。もちろん私もマイさんとお嬢様がもとどおり仲良くなったらいいなって思うし。」
「・・・じゃあ、もう少し練り直してみようか。これじゃあ肝心の舞ちゃんからも反発きそうだしね。ありがとう、めぐぅさん。」

カンナさんもそう呼んでたけど・・・めぐぅさんて。

「めぐでいいですよ。年、近いんで。」
「あ、本当に?じゃあ私もえりかとかえりでいいよ!もちろん敬語なしで!」

エリカさん、もといえりからの申し出に、皆が私も私もと続く。フレンドリーな寮生たちは、自然に私を輪の中に加えてくれた。

「私、めぐといっぱいおしゃべりしてみたかったんだー。これからもよろしく!キュフフ♪」
「あ、うん。こちらこそ!」


その後も、私たちは前からずっと親しかったかのように話し合いを続けた。ごく簡単な自己紹介からメイド業務の話、お嬢様の裏話。
昔の出来事が起因になって、誰かと深く付き合うことに少しばかり臆病になっていたけれど、この人たちとなら、ゆっくりリハビリをするように人間関係を構築できそうだと思った。



「結構長くなっちゃったねー!」
「だねー」

寮からお屋敷に帰る道すがら、栞菜とたわいもないおしゃべりに花を咲かせた。

「何にも聞かないんだね。」
「んぅ?」
「私が全日制の高校行かないで、この年でメイドしながら通信の高校選択してる理由とか」

この手の話題を自ら人に振ったことはなかったけれど、今日はとてもいい夜だったから、何となく勢いでそんなことを言ってみた。


「うーん・・・だって、もし話したくなったら、そんな前置きなしに自分から話してくれるでしょ?めぐぅはそういう人だと思うもん。今じゃなくたっていいし、話したいって思ってくれたならそのタイミングで。」

そんな風に言って、栞菜は私に笑いかけてきた。

やっぱり頭のいい子みたいだ。言葉を一つ発したら、そこからこっちの気持ちをできるかぎり汲み取ろうとしてくれる。

「栞菜は優しいね。変態だけど。」
「ちょぉ、それ一言余計だから!変態じゃないし!ていうかね、ぶっちゃけ私めぐぅが1個上って聞いてびっくりしてるんだからね!てっきり25歳ぐらいかと思ってた。あはははー」
「何だとー!ちょっと待て、このレズっこが!」

肩パンを喰らわせ合いながらはしゃいでお屋敷に戻ると、玄関でネグリジェ姿のお嬢様が仁王立ちしていた。

「・・・・どこへ行ってたの。どうして千聖が目を覚ました時に居ないの。め・・・村上さんまで。2人で私に隠れて出かけるなんて!」
「それは内緒です、ねっ栞菜?」
「ふっふっふ、まあそゆことです。」
「ずるいわ。そうやって私を仲間はずれにするのね。意地悪!」

お嬢様はすっかりいじけてしまったみたいで、地団駄を踏んでからクルッと後ろを向いて去っていこうとした。

「お嬢様。」

絶妙のタイミングで、栞菜さんはお嬢様の手首を掴んで後ろから引っ付いた。

「きゃっ!もう、どうして栞菜はそうやって抱きつくの!離してったら!」

お嬢様はじたばた暴れるけれど、栞菜はすっぽんみたいに食いついて離れようとしない。そういえば、プロレスごっこだってかなり体が触れ合うはず。栞菜のショック療法(?)は、お嬢様には有効みたいだ。

「ねえお嬢様、もうすぐお嬢様の今一番の願いが叶いますよ。めぐぅと栞菜たちに任せてください♪」
「一番・・・・・・本当に?私の一番の望みがわかるの?」

やっと解放されたお嬢様は、きらきらした黒目がちの瞳で私たちを交互に見つめた。


「そりゃあお嬢様のことならなんでも。ちなみに今お嬢様が栞菜にしてほしいことはぁ・・・・・トイレ付き合って欲しいんでしょ!それで待ってたんでしょう!」
「!・・・ちっ違うわ!・・でも栞菜が行きたいっていうなら付き合って差し上げてもいいのよ。だって今日のドラマは怖かったから、一人でお手洗いに行くのは嫌でしょう?」
「栞菜そのドラマ観てないからわかんな~い」
「うぅ~・・・」

お嬢様をからかいながらも、栞菜はちゃんとおトイレの方へ足を運んでくれた。


さあ、明日は早番だしさっさと寝よう。にぎやかな声を前方に聞きながら、私はさっきの会議の内容を心の中で反芻した。
これから寮生と協力して、がっつり頑張らないと。大好きな千聖お嬢様の一番の笑顔を取り戻すために。



―それにしても25歳て。私、そんなに所帯じみてるのか。やっぱり同い年ぐらいの子たちとの交流って大事なのかもしれない・・・・・



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