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みんなに後押しされて廊下に出ては来たものの、私は内心半泣きだった。

正直、新聞部の部長は・・・怖い。顔が。ていうかオーラが。
明るくて要領のいい千奈美は部長に可愛がられてるみたいで、千奈美と一緒にいる時に挨拶したことぐらいはあるけれど、どうもあちらは私のことはあんまり好きじゃないっぽい。

そもそも今、会って何をどう話したらいいんだろう。最近の記事はちょっとやりすぎだってこと?それとも、お嬢様のことを中傷する記事を書いたことについて?でもそれは結局記事にはならないわけだし・・・・


「やー何かドキドキするねー、愛理。・・・愛理?」
「・・・」
緊張をほぐそうと思って愛理に話しかけるけれど、返事がない。

「おーい、愛理・・・」
「え?あぁ・・・・そう?そうかな。」

顔の前でぶんぶん手を振ったらやっと反応が返ってきた。でもやっぱりどこか普段の愛理とは違う。普段より眉が下がって困り顔になっているのに、目だけは爛々と光っている。

「何かよくわ・・・わかんないけど、すごい頭がカッカしてる。変かも。緊張してるっていうか、あんまり頭が働いてないみたい。」

ハァとため息をつく愛理。手を繋ごうとしたけれど、その右手はグッと握り締められていて・・・

「ごめんね、舞美ちゃん」
「え?」
「私、怒ったことってあんまりなくて。ていうよりも、今が初めて。本当に怒るっていうのは、こういうことなんだと思う。自分でもどうしていいのかよくわからない。
勢いで付いてきちゃったけど、舞美ちゃんの足を引っ張ってしまうかも。だから、あんまり余計なことは言わないようにする。あくまで舞美ちゃんのサポートということで」
「愛理・・・」

不謹慎だけど、爆発しそうな気持ちを必死で押さえ込む愛理は何だかかっこよかった。

「わ、わかった!私頑張るよ!このままじゃだめだもんね、生徒会長としてとてとて!」

・・・決まらなかった。



「失礼しまーす・・」

二回ノックして、新聞部の部室のドアをそっと開ける。うぅ、心臓がバクバクいってる・・・・

「あ・・・お疲れ様です。え、愛理?」

手前の席でノートパソコンをいじっていたギャルっぽい子が、私と愛理を交互に見比べて首をかしげた。

「みや、新聞部だったの?」
「うん・・・・」

なんとなく用件はわかったらしく、“みや”さんは困った顔で奥の席に視線を飛ばした。


「・・・・・・生徒会が、何か御用?それとも寮生として来たのかな?」

うぅっ!やっぱり怖い!

部長はお誕生日席で腕組みをして、こちらを睨んでいた。

「あ、あの、ちょっと、その、おはなっ、ししたいことが」
「こちらの立場は生徒会でもあり、寮生でもあります。幸い、夏焼さんと部長さんしかいらっしゃらないみたいなので、今お時間よろしいでしょうか。」

カミカミの私の横で愛理が静かに喋りだす。すごく穏やかな口調だけれど、NOを言わせない重さを含んだ声だった。

「部長・・」
「どうぞ。座って。・・・忙しいから手短にお願い。」

顎で指し示された席に座る。相変わらず威圧感のすごい人だ。でも、今は圧倒されるわけにはいかない。

「えーと・・・まず、じゃなくてあの、いくつか聞きたいことが・・・えーとでも、どれからにしよう」
「早くしてくれるかな。」
「あっ!は、はい」
机をトントン叩く指と、苛立った声。テンパッた私はもう順序立てまでは考える余裕がなくなってしまった。

「あの、何で、千聖お嬢様を悪く言う記事を作ろうとしたんですか?」
「・・・・あぁ?」

眇められていた部長の目が軽く見開かれた。・・・ちょっと直球過ぎたかも。ヤバイ。

「何で知ってるの。そのこと。あの萩原ってガ・・・子に聞いたの?」
「質問に質問で返さないでください。まずはこちらが伺ったことにお答えいただけますか。」

一人で慌てる私とは対照的に、愛理はまっすぐ部長を見返して淡々と喋る。この人は舞や愛理みたいに、年に似合わず落ち着いて話を進めるタイプが嫌なんだろう。あからさまに顔に苛立ちが走った。

「本当、今年の中等部は最悪だね。生意気なのばっかり」
「部長・・・!」

勢いよく椅子から立ち上がった部長の手を、慌てて“みや”さんが掴む。

「バカ、別に逃げたりしないよ。」

超怖い人だけど、さすがに部員に対しての顔は多少緩いみたいだ。苦笑しながら“みや”さんの頭を軽くポンポン叩いて、部長は校庭に面した窓を開けた。

「空気悪いから、風通し。」

そのまま窓の縁に腰掛けて、また不機嫌な顔でこちらを見返してきた。



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