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「生徒会長さんは、学校新聞は読んでるの?」
「え・・・と、はい、読んでます。」
「隅から隅まで?」
「いや・・・それは・・・ごめんなさい。興味のあるところだけ」

私が正直にそう答えると、ハッと自嘲気味に鼻で笑われてしまった。

「まあ、そんなもんだよね。学校新聞なんて。一生懸命ネタ考えて、みんなで作り上げたって、結局何らかの形で目を引かなければそれっきり興味を持ってもらえないし。」

部長は壁際のマガジンラックから新聞1部を取り出して、私たちのテーブルに放り投げた。これは、先月号か。
“衝撃スクープ!あの○○さんがイケメン彼氏と休日ラブラブデート!”なんてタイトルの大きな記事が目を引く。・・・あ、何かやだなこういうの。
もしお嬢様の記事が形になってしまっていたら、こうやって真っ赤な文字で“最悪な性格の千聖お嬢様の本性を暴く!”とか書かれてたのかもしれない。想像するだけで悲しい気持ちになる。


「1ヶ月かけて記事作っても感想なんてほとんど来ないし、たまにあってもつまらなかった時や揚げ足取りばっかり。正直、行き詰ってた。
今みたいな記事が主になったのは・・・・有名な生徒の噂話をイニシャルで書いたのが最初だったかな。すごい反響があって、ああ、こういうのが求められてるんだって思ったら」
「どんどんエスカレートしていったんですね。」

愛理に言葉を被せられて少々険のある表情になりながらも、部長は黙ってうなずいた。

「新聞の内容が過激になって、部をやめた人も結構いた。夏焼さんや千奈美は残ってくれたけどね。批判はあっても確実に読んでくれる人は増えたし、これでいいんだって思ってた。・・・・・萩原さんに乗り込まれるまではね。」

そういうと、部長は私たちに背を向けた。しばらくの間沈黙が訪れる。




「・・・・・悪かったと思ってるよ。」
「えぇっ!」


意外すぎるその言葉に驚いて声をあげたら、舌打ちされてしまった。・・・スミマセン


「千聖お嬢様はお取り巻きもいて、のほほんとした顔で何不自由ない学園生活を送ってるから、少しいじめてやってもいいんじゃないかって思ったんだ。どうせこうやって寮生がフォローに回るんだから、たった1回ネタにすることぐらい、大目にみてくれるだろうってね。
・・わかってたよ。どこかでこんなバカな記事書くのはやめにしないと、いつか取り返しのつかないことになるかもって。さっき過去の記事とか読んでて、さすがにこれはマズイって思った。気付かないうちに、内容がどんどんエスカレートしてた。」

「じゃあ・・・」

「少し、新聞のあり方を見直してみる。前みたいな記事を書くように、少しずつ軌道修正していくように努力する。それで、いいでしょ?何か他に問題は?」
「あ、え、いや、大丈夫です。前みたいにしてくれるなら。・・・・・あの、それで提案なんですけど。
学校新聞って、多分存在を知らない人も結構いると思うんです。読みたい人がそれぞれラックから取ってくスタイルだから。
学校新聞刊行のお知らせを告知したり、新聞設置の場所を増やしたら、読者を増やせるんじゃないかと。せっかくだから、生徒会もお手伝いしますよ!」

私の提案に、部長は目を丸くした。“みや”さんも口をぽかんと開けて、私を凝視している。

「え、あれ・・な、何か変なこと言いました?」

「・・・ペナルティとか、いいの?」
「どうして?だってこれからは、過激な記事は書かないでもらえるんですよね?だったら」



「よくないことをしたとわかっているなら、ご自分から罰を受けたらいかがですか」

その時、愛理が私を遮るように口を挟んだ。


「あ、あなたは・・・あなたたち新聞部は、お嬢様と舞ちゃんの穏やかな関係を壊したんですよ。
舞ちゃんはまたあんな記事書かれたらお嬢様が可哀想だからって、わざと自分がお嬢様に嫌われるようしむけて、一方的に絶交しようとしてるんです。」
「ちょっと何それ・・私そんなつもりじゃ」
「知らなかったでしょう?でも、あなたたちが書こうとした記事は、こうやって2人を傷つけたんです。
それに、千聖お嬢様が何不自由ない人だなんて、何で勝手に決め付けるんですか。お嬢様だっていっぱい悩んだり苦しい思いをしてるんです。他の生徒と一緒です。」

両手を胸の前で握り締めて、愛理は声を荒らげることもなく淡々と喋り続ける。その表情は怒りでも憎しみでもなく、ただ悲しそうだった。



「・・・・謝ってください。せめて、舞ちゃんにだけは。舞美ちゃ・・・生徒会長が許しても、私は舞ちゃんとお嬢様の友人として、新聞部を許せません。」
「愛理・・・・・・」



「・・・ごめんね、舞美ちゃん。」
「ん?」

新聞部の部室を出て生徒会室に戻る途中、渡り廊下で愛理はふと足を止めた。

「せっかく新聞部が非を認めてくれて、舞美ちゃんがいい案でまとめてたのに、私が横から口出ししちゃって。」
「いいんだよそんなの、別に気にしないで。私単純すぎて気が回らなかったけど、愛理の言うとおりだったと思うよ。何も悪いことしてないんだから、そんなに落ち込まないで。」

私は愛理の肩を抱いた。ただでさえ細くて華奢なのに、しょんぼりしているその姿は痛々しくて、何だか切なくなってしまった。

「・・・舞ちゃんに謝ってくれるかな。」
「大丈夫。十分愛理の気持ちは伝わったはず。あとは部長さんの裁量にまかせるしかないけど・・・・ていうかさ、愛理、」


「「怖かったねー・・・」」


2人同時に、腰を抜かしたようにへなへなと座り込んだ。

「悪い人じゃないんだろうけど、やっぱりあの眼光は恐ろしいよね」
「あれはヒットマンの眼だね、とかいってw」

大きな一仕事を乗り越えて、緊張の糸が切れた私たちは、マヌケな顔で笑い合う。これでようやく、舞を縛る枷はなくなった。
あとは素直じゃないあの子を、どう説得するか。絶交宣言のときはどうなるかと思ったけれど、どうにか仲直りのための基盤は固めることができそうだ。

「みんなのとこ、戻ろうか。」

愛理の手を取って、再び立ち上がる。
いいお知らせを持って帰ることができてよかった。


「ただいまー!」

出るときよりもずっと明るい声で、私は生徒会室の扉を開けた。



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