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新聞部との一悶着をどうにか終結させて、今度はお嬢様と舞の関係修復について話し合うことになった。

「じゃあ、明日の夜10時に食堂集合ということで。」
「はーい。」

寮に戻った私たちは、それぞれの部屋に戻っていった。

「あれ?おかしいなぁ」

鍵を挿してノブをひねったのに、なぜか私の部屋のドアは開かなかった。

もう一度鍵を回すと、今度はカチャッと開錠された音がした。

ということは・・・開い、てた?まさか、泥棒・・・?変質者・・?


この寮は門扉がオートロックになっているから、寮生とお嬢様とお嬢様のご両親以外は自由に出入りはできないはず。でも最近の空き巣(?)は手が込んでるってテレビでもやってたし、ましてここは女子寮。何があるかわからない。

私は愛用の陸上用スパイクを右手に構えて、勢いよく扉を開けた。

「ぬおー!」
「ひゃああ!?」

目の前の人影めがけてシューズを振り下ろ・・さなくてよかった。
そこにいたのは、舞だった。頭をかばいながら、上目で私の様子を伺っている。

「な、何だー舞か!びっくりしたぁ」
「それはこっちのセリフだよ!殺されるかと思った。ていうか、お姉ちゃん無用心すぎ。鍵開いてたよ?」

・・どうやら泥棒さんは濡れ衣だったようだ。

「どうしたの、舞が私の部屋来るの久しぶりじゃない?」

中に招き入れると、私の学習机には舞の勉強道具が広げられていた。相変わらず、ものすごい難しそうな本を読んでる。トクシュソウタイセイリロン???なんだそれは。

「ごめん、勝手に部屋入っちゃって。部活あるだろうし、いないのわかってたんだけど。お姉ちゃんの匂いのするとこにいたかったの。」
に、匂い?栞菜もクンカクンカとかしてくるけど、私くさくないよね?大丈夫だよね?

「お姉ちゃん・・」
舞は背後からそっと抱きついてきた。お嬢様と同じく、舞もあんまり人に触られたり子供っぽく扱われるのが嫌いで、普段はなかなか抱っことかさせてくれないのに。
よっぽど心が痛んでるんだろう。いくら大人っぽくて頭が良くても、舞だってフツウの中学1年生。悩みを打ち明けるパパもママも本当のお姉ちゃんもいないこの寮で、1人で痛みを抱えて過ごすのはやっぱり辛いんだろうな。

「舞、お茶入れるね。ちょっと待ってて。」
私は舞をベッドに座らせると、キッチンで2人分の紅茶を入れた。
どうしようかな。舞はまだ、私が新聞部と舞のことをえりから聞いたのを知らない。舞から直接聞いたわけじゃないし、私からこの話題を振っていいものなのか。
舞はプライドの高い子だ。一応新聞部から謝罪の言葉をもらったとはいえ、勝手に他人が事を進めたと知ったら、面白くはないと思う。ここは、えりから説明してもらうことにしようかな。今は、雑談だけにして。

「お待たせー・・・あれ?」


カップを持って戻ると、舞はベッドで丸くなって眠り込んでいた。そんなに長い時間キッチンにいたわけじゃないのに、よっぽど疲れていたんだろうな。起こさないようにそっとお盆をテーブルに置くと、私は床に座って舞の寝顔を眺めた。

起きてる時の舞は結構眼に力があって、いかにも賢そうなオーラが漂っているけど、こうして寝ている顔はまだまだ子供で可愛い。ぷくぷくしたほっぺたが赤ちゃんみたいだ。

「写真、撮っちゃおうかなー・・・」

抜き足差し足でデジカメを取りに行く。実はすでに舞の寝顔やお風呂盗撮(!)データがたんまり残っているのは内緒。


無防備な寝姿を心ゆくまで撮影すると、私はご満悦で過去のデータの整理を始めた。


「あー・・・」
遡っていくうちに、数ヶ月前の夏、寮に遊びに来たお嬢様が舞の部屋で眠り込んでる写真が出てきた。
色違いのワンピースを着て、一つのタオルケットに2人でくるまっている。手なんか握り合っちゃって、ラブラブだ。



「ちさと・・・・」



「えっ」

「ちさ・・と」


いきなり、眠っている舞の口がむにゅむにゅと動いた。そこから溢れたのは、お嬢様の名前。

「舞・・・そうだよね、やっぱり仲直りしたいんだよね。」

ちょっと切なくなって、私はお嬢様がよく舞にしているみたいに、舞のおでこに自分のおでこを軽くぶつけた。・・・つもりだったけれど


「いったーい!!何するのお姉ちゃん!」

舞はおでこを抑えて、ベッドから転がり落ちた。

「ご、ごめん!決して攻撃したつもりじゃないの!」

どうやら、私の “軽く” は普通の人の“思いっきり” に当たるらしい。・・・いや、それはわかってたんだけど。
つい先日もハイテンションでなっきぃに体当たりして、2mぐらい吹っ飛ばしてしまって怒られたばかりだった。

「もー、せっかく今いい夢みてたのに。」
おでこをさすりながら体を起こす舞。


「いい夢って、お嬢様が出てくる夢?」

そう聞くと、舞はカァッと顔を真っ赤にした。


「そ、そんなわけないじゃん!言ったでしょ、私はもう千聖には愛想をつかしゅて;30#2@!!」

私も顔負けのカミカミっぷりをしながら、「もう自分の部屋戻る。」と言って、舞は慌てて部屋を出て行った。

「またね~」

たまにこうやって、年相応の可愛らしさを見せてくれるからたまらない。大切な妹とお嬢様の小犬みたいなじゃれ合いをまた見れるように、ここは舞に力を貸してあげましょう。

「めぐにも手伝ってもらおうかな。」

舞のために入れたお茶をすすりながら、私はメールを打ち始めた。



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