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朝練中の運動部を尻目に、いつものように教員用自転車置き場の隅に自転車を止めると、私はのんびり校舎に向かった。
昨日の夜は弟とハイテンションでゲームをやって、疲れ果てて20:00には眠ってしまった。おかげで今日はもう日が昇る前にばっちり目が覚めてしまったのだった。おじいちゃんか私は。
いつも遅刻ギリギリで出かけているから、たまには超早く学校に来てみるのもいいかなと思って、朝早くに登校してみたのだけれど、やっぱり運動部は早いな。
あんまり朝強くないという舞美も、元気に「あははははは!ウケる!」とか笑いながらストップウオッチを見ている。・・・何がおかしいんだろう。

「桃も何かはじめようかな~・・・」

これは最近の口癖。
私は昔から何かを無心に頑張ったり、夢中で物事に取り組むことがない。というか、そういうのができない。
目標を持って真剣に頑張ってる人は、素直にカッコいいと思う。努力というのは、努力する才能がなければできないものだ。多分、私にはそれが欠けている。
舞ちゃんほどではないけれど、私も大抵のことは特に頑張らなくても標準以上の結果を出すことができる(運動はダメだけど)。
うらやましいといわれることも多いけど、無難にしかこなせないというのはそれはそれでつまらないものだ。とか言ったって、嫌味にしか聞こえないんだろうけど。


私がブリブリブリッコキャラになっているのは、こういう退屈な現状を体を張ってぶち壊してみたかったからだった。

中学の時は地味目だった私が、いきなり「えぇ~でもぉ、ももはぁ~」とかやりだしたもんだから、最初は反発されたこともあった。でも、雨だれ石を穿つというか、だんだんみんな(あきらめて?)私のキャラを受け入れてくれるようにはなってきた。
思えばこれが、私の一世一代の“努力”というやつだったのかも。


そしてこのブリッ子桃子は特に下級生にはなぜか好評で、私は未だに、年上や同学年より年下の子たちの方が仲がいい。千聖に梨沙子、あぁそういえばくまいちょーも年下だったな。


「変なの。」
昔のことなんてめったに振り返らないのに、今日は妙な日だな。私はちょっと半笑いになりながら、下駄箱をパカッと開けた。


「・・・ない。」

つま先をピンクにカスタムした私の上履きが、あるはずのその場所から消えていた。
前だったらイジメや嫌がらせを疑ったところだけど、今の私にそういうことを仕掛けてくる人はまずいないと思う。確実にやり返すから。

「うーん。」

しばらく空っぽの下駄箱とにらめっこしてから、私はふと思い立って、玄関口と廊下の境まで足を運んだ。


――あった。

☆momoko☆ と丸文字で書かれた私の上履きは、きっちりそろえられてそこに鎮座していた。
またこんな、懐かしいイタズラを・・・


「・・・ちーさーとぉー。いるんでしょ?出ておいで!」

静かな廊下に向かって、ちょっと大き目の声で呼びかける。程なくして、奥の柱の影からおずおずと小さめな顔が現れて、バッチリ目が合った。

「なぁにやってんのよー?こんな朝早く学校来て。ってもぉも十分早いか。ウフフ」

よかった。千聖が来てるなら、HRまでの時間遊んで過ごせる。
そう思ってちょっと明るく話しかけたのだけれど、千聖は何も言わずに私を見ているだけだった。

静かな廊下に向かって、ちょっと大き目の声で呼びかける。程なくして、奥の柱の影からおずおずと小さめな顔が現れて、バッチリ目が合った。

「なぁにやってんのよー?こんな朝早く学校来て。ってもぉも十分早いか。ウフフ」

よかった。千聖が来てるなら、HRまでの時間遊んで過ごせる。
そう思ってちょっと明るく話しかけたのだけれど、千聖は何も言わずに私を見ているだけだった。

「千聖?ちょっとさぁ、上履き!このイタズラ、1年生の時もやったでしょ。もぉ覚えてるんだから。何こんな懐かしいことやってんのよ。」

そんなことを言いながら千聖の方へ歩いていったのだけれど、奇妙なことに間隔が縮まらない。・・千聖は私が近づくたびに、少しずつ後ずさっていた。

「ねえ、どうしたの?」
少し早足になりかけたところで、千聖はバッと後ろを向いて、走り出した。

「ちょっと!待ってよ!」

構ってほしくてこんなことをしているのかよくわからないけれど、生憎私の運動能力では全力疾走の千聖を追いかけることはできない。
まあ、千聖の行きそうなところは大体わかってるし、時間はまだまだたっぷりある。私は焦らず、ぷらぷら歩きながら追いかけることにした。


それにしても、何だって今更、昔のうわばきのイタズラなんか。

“私、桃子さんのことが・・・”


今よりさらにちっこくて、あどけない顔をした千聖が、ほっぺたを真っ赤にしながらそんなことを言っていた光景を思い出す。
ちょうど私がぶりっこ桃子を始めた頃、1年前の7月の出来事だった。



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