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「おねえちゃんさ、誕生日何が欲しい?」
「えぇ?」

オフの日曜日、私は舞とお買い物デートを楽しんでいた。舞のお気に入りの安くて可愛いアクセサリーショップで、おそろいのネックレスを買おうかなんて話しているときに、唐突にそう切り出された。

「事前に聞いちゃうの?それ。」
「だってぇ。」

舞は目の前でプラプラ揺れてる、ものすごい色使いのドレスを着たどでかいクマちゃんのストラップを指差した。

「例えばさ、舞が誕生日にこれあげたらどう思う?」

うーん。

ケータイのストラップとしてはかなり大きすぎる気もするけれど、もしかしたら私のキラキラデコ電にはしっくりくるかもしれない。
せっかくもらうんだったら、そのストラップに合わせてケータイをカスタムしなおしてもいい。

「嬉しいよ。」

少し考えて私が答えると、なぜか舞は難しい顔になってしまった。

「じゃあ、これだったら?」

次に舞が手に取ったのは、き●んしゃトーマスのトートバッグ。全面プリントされたトーマスが、笑ってない目で微笑しながら私を見つめる。

「えー!びっくりするけど、やっぱり嬉しいと思うよ。エコバッグに使わせてもらうかも。」
「うんこ型ボールペン。」
「もらったら使うよ。友達にウケそうだし!」
「赤ちゃん向けのおもちゃ。ガラガラとか」
「部屋で1人で遊ぶかも。」

「・・・そう、そうなんだよねお姉ちゃんは。」
「な、何?」

舞は大きな目をくるっと私のほうへ向けた。多分これは、ちょっと真面目な話をしたいってサイン。

「お姉ちゃんて、何あげても喜んでくれるでしょ。気を使ってとかじゃなくて、本当に嬉しく思ってくれる。」
「そうかな?うーん・・・そうかも。確かに、プレゼントをもらうってこと自体がもう嬉しいって思うかな。」
「それってさ、逆に選びづらいんだよね。だって、舞はお姉ちゃんのものすっっっごく喜んだ顔が見たいのに、せっかくの誕生日もリアクションが一緒じゃ味気ないよ。」

うっ。

そういえば、何日か前にも同じようなことを千奈美に言われた気がする。「舞美はさ、喜びの沸点低すぎだよ!」って。

私はあんまり物事に対して不満を持ったり激怒したり、逆にテンション上がりすぎておかしくなっちゃうみたいなことがない。
ちっさー・なっきぃとメイドさんで遊んだときはかなり盛り上がったけれど、そういう時だって、例えば前のちっさーみたく「うひゃひゃひゃひゃひゃ!」ってMAX状態にはならない。

「私が欲しいものかぁ・・・何だろうな・・・」
「あ、待って。やっぱりいいや。」

真剣に考え出したところで、舞がストップ!のジェスチャーで私を止めた。

「そうだよね、考えてみたらこういうの本人に聞いたって仕方ないよね。ごめん。舞、お姉ちゃんにめっちゃ喜んでもらえるように頑張るから!」
「そ、そう?私も舞へのプレゼント考えておくね」

そんな感じで一旦会話は終わったのだけれど、私は舞からの指摘に、内心動揺していた。

私って、何が嬉しいんだろう・・・?こんなにいろんなことを簡単に嬉しがるのは、変なのかな?心から喜んでないってことになるのかな?


普段あんまり物事を深く考えない分、一度気になるとそのことばっかり考えてしまう。
そんなわけで、私は少々自分の喜怒哀楽の“喜”と“楽”が、よくわからなくなってしまったのだった。


次の日、雑誌の取材の休憩中に楽屋でくつろいでいると、なっきぃとちっさーがニコニコしながらやってきた。

「はい、みぃたん!このお菓子ね、今コンビニで売ってたんだ!みぃたん好きそうだったから、2人で買ってきたケロ♪」
「あんまり甘くないみたいなので、舞美さんのお口にも合うと思うわ。よかったら、召し上がってください」
「わ・・・わぁ~!!!おいしそー!!ありがとうー!!!」

うわうわ、何このリアクション!自分でもどうかと思うぐらい、私はわざとらしい大声で、2人にお礼を行っていた。

「あ・・・嬉しくない?ごめん、無理させちゃった?」
みるみるうちに、なっきぃの顔がしょんぼりしてしまった。

「舞美さん?」
「あっ違う違うの!ごめんねなっきぃ!本当に、これおいしそう。ありがとう!」

慌ててフォローしようとしたけれど、うまい言葉が見つからない上に余計わざとらしい感じになってしまった。肩を落としたなっきぃは、そのままちっさーと歩いていってしまった。

「はぁ~・・・」

浮かない気持ちのまま、私は仕事を終えて電車に乗り込んだ。
いつも一緒に帰る舞は、今日は家族で出かけるらしい。ちょっと寂しい気持ちのまま、ドア付近の手すりにもたれて景色を眺める。


「舞美さん。」
「うわっ!」

しばらくボーッとしていると、突然背後から名前を呼ばれた。

「びっくりしたあ、ちっさーかぁ!一緒の電車乗ってたんだ。最初から一緒に帰ればよかったね。」
「あ・・・えと、お元気がないようだったので、千聖が話しかけてもいいものかわからなくて。あの、でも、もし私でお力になれれば、何でもお手伝いします。」
「ちっさー・・・」

ちっさーは、お姉さんモードで笑いかけてくれた。無性に甘えたくなった私は、ぎゅっとちっさーを抱きしめてみた。

「グチってもいい?」
「ええ。もちろん」

ちっさーのちっちゃい体は、あったかくて柔らかくて、ふわふわいい匂いがした。優しい声のトーンに促されるように、私は今の自分の気持ちをちっさーに打ち明けた。



「・・・そうだったんですか。それで、本当にご自分が喜んでいるのかわからなくなってしまったのですね」
「さっきはごめんね、私本当に、なっきぃとちっさーがお菓子くれて嬉しかったの。でも、変な感じになっちゃった。」
「あぁ、それはもうお気になさらないで。早貴さんも、落ち込んでいるというより、舞美さんが元気ないことを心配していらっしゃったわ。」

背の低いちっさーの声は、抱きしめているとちょうど私の胸の辺りにダイレクトに響いてくる。
声と一緒に、ちっさーの優しさもしみこんでくるようで、ちょっとだけウルッときた。

「舞美さん。私、舞美さんには今までどおり、嬉しいと思った時には思いっきり喜んでいただきたいです。
舞美さんの笑顔を見ていると、とても元気になるわ。舞さんは、きっとそんな舞美さんのもっともっと素敵な笑顔を引き出したいって思ったのではないかしら。」
「いいのかな・・・これからも単純で何でも喜ぶ私のままで」
「私は、これからも舞美さんがたくさん笑顔でいてくださったら嬉しいわ。」

ちっさーは目を三日月にして、私の顔を見上げて笑ってくれた。

「よーし、ちっさー!励ましてくれたお礼に、今からご飯行こう!」
「えっ・・・あら?でも、私、家族と・・・」
「ラーメン、おごってあげる。」

耳元で囁くと、ちっさーはお嬢様らしからぬニヤリ笑いで「・・ご馳走になります。」と返してきた。

「さ、ちっさーの最寄り駅で降りよう!前においしいって言ってたところ、連れてって!」
「ええ。ギョーザもおいしいんですよ。」
「ほんとー!?私今ギョーザ気分なの!嬉しいっ!」

ギョーザ一つで元気になれちゃう私は、悩んだところで、結局嬉しがりな性格は変えられないみたいだ。

「お誕生日、楽しみにしてくださいね。千聖も舞美さんにうーんと喜んでいただきたいわ。」

クフフと笑いながらホームへ降り立つちっさーの背中を、私は晴れやかな気持ちで追いかけた。




―後日談―

「なっきぃ!あれ見て!山!おっきくない?」
「みぃたんはしゃぎすぎ~キュフフ」

今日は私の17回目の誕生日。
予定入れないで、絶対に開けておいて!とみんなに言われて、朝早くに呼び出された私はそのままわけもわからず電車に乗せられた。


「お誕生日、おめでとーう!」

オフの日だというのに、メンバー全員がそろっている。私の誕生日を祝うために、みんなで集まってくれたんだ。
電車の中だから声は小さめだけれど、ハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。

「舞美には、キュート全員からこちらを差し上げます。」


かしこまったえりから、封筒が手渡される。

「・・・旅行券?」


「みんなでお金出し合って買ったんだよ。舞美、ずっとメンバーで旅行したいって言ってたでしょ?まぁ、一泊だけなんだけど、今から温泉に行くんだよ。」
「覚えててくれたんだ・・・・!」
「舞美さんのお荷物は、こちらで用意してますから。おくつろぎくださいね。」


胸の奥から熱い感情がじわじわとこみあげてくる。私は顔中くしゃくしゃにしながら笑って、「ありがとう!」と一人一人にハグしながお礼を言った。

「ねえ、舞。」
「なぁに?」

私の隣で、ちっさーのかばんから取ったお菓子をポリポリ食べてる舞に話しかける。

「舞さ、私が本当に喜ぶポイントがわからないって言ってたでしょ」
「あぁ、あれは・・ごめん、なかったことにして。そんな風に言ったらだめだって、千聖に怒られちゃった。」
チロッと舌を出して、舞は肩をすくめた。

「そうなんだ・・・。でもね、私思ったんだけど、私が一番嬉しいことって、私だけじゃなくみんなも一緒に嬉しく思ってくれることなんだと思う。家族や友達にも誕生日プレゼントもらったけど、正直、このプレゼントが一番嬉しいもん。」

舞は目をパチクリさせて「・・何かおねえちゃんらしいね。」と笑った。

「もうすぐ着くよー!準備できてる?ほらほら、みぃたんと舞ちゃんお菓子しまって!」

なっきぃの呼びかけで、私たちはいっせいに立ち上がった。

「あらあら、舞美お嬢様。お荷物をお持ちしますわよ。とかいってw」
「お足元にお気をつけて。とかいってw」
「ちょっとー、私の口癖まねすんなよー!とかいってw」



こんな素敵なメンバーに囲まれているんだから、私がいつでも嬉しそうな顔になってるのは、当たり前のことなんだよね。



「舞美ちゃん?早くおいでよー」
「はーい」

楽しい旅行になるといいな。そう思いながら、私はみんなの元へ走っていった。




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