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「舞さん。」

いきなり名前を呼ばれて振り返ると、数メートル先に大人びた表情で微笑むお嬢様の千聖がいた。

「なあに?」
近づいてしばらく無言で見つめ合う。すると、千聖はいきなりなっきぃにもらったワンピース(通称ちょうちょのワンピ)をガバッと脱いだ。

「はぁ!?」
続いて、薄いピンクの下着にも手をかけて、一糸纏わぬ姿になってしまった。

「な、何やってんの・・・」
目の前には見事なたゆんたゆん・・じゃなくて。そんなことはどうでもよくて。


「舞さん、お誕生日おめでとう」
「えっ。うん・・いや、今それ言うタイミング?」
「うふふ。私、舞さんの一番欲しいものをあげるわ」

千聖はとろんとした目つきになって、裸のまま私に抱きついてきた。

「欲しいんでしょう?」
胸にぷにゅっと柔らかい感触が押し当てられた。
囁く甘い声と、妙に生暖かい息が耳をくすぐる。頭がカァッと熱くなった。


「ちっ・・・ちしゃとおおおおおおおおおおおおおおお


 おおおおおおおおっイデッ!」


後頭部に衝撃を感じて、目が覚めた。
身体を反転させると、頭上に栞菜の足が投げ出されている。


「夢・・・」
「んが」

ええい、邪魔だ!まとわりついてくる足をどかしながら、徐々に意識が戻ってきた私は毛布にくるまって悶絶した。


ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。何てバカな夢を見てしまったんだろう。思春期の男子か私は。まだちょっと身体が火照っている。


今私は、舞美ちゃんのお誕生日のお祝いに、キュートのみんなと一泊旅行へ来ている。私のバースデーパーティーも一緒でいいよと言ったのに、「それはまた別にやるから。」とみんなに押し切られてしまった。

今日は観光地を巡って、温泉に浸かって、ゲームして、すごく楽しい時間を過ごしたというのに。旅行の締めがこんな夢だなんて、どうかしている。

まだ日は昇っていない。私以外、みんなすやすや安らかな寝息を立てている。
いっぱいのプレゼントに囲まれて、夢の中でも幸せそうな舞美ちゃん。どういう寝相なのか、私を蹴りながらえりかちゃんにチョップをくらわせて寝ている栞菜。
ウーウーとうなされながらも深い眠りについているえりかちゃん。そのえりかちゃんに場所をとられて壁際に追い詰められ、半分顔を枕に埋めながら、スピースピー寝息を立てるなっきぃ。

「千聖・・?」

ふと姿の見えない中2コンビを探してみると、我関せずと言った感じで、ドア側の端っこで眠り込んでいた。布団はひとつ、枕はふたつ。喋ってるうちに眠ってしまったのか、向かい合った2人は顔がくっついちゃいそうだった。

何だよー、千聖はえりかちゃんLOVEじゃなかったの?いつぞや仕事で行ったコテージで、やらしーことしてたのに。・・・私があんな夢をみたのは、多分あれのせいなのに。
いやいや、よく考えたら千聖は愛理とも何かあったんだっけ(栞菜談)。ということは、愛理かえりかちゃんか決めかねてるってこと?


…何か面白くない。多分、千聖のこと一番好きって思ってるのは私なのに。
私だって、千聖と2人で逃避行したり、ちゅーまではしてるっていうのに、何だろうこの敗北感。


ランデブー+キス<<<<<超えられない壁<<<トイレで触りっこ<<<<<<コテージでセッk


「うおぁ!」

いけないいけない、何を考えかけた、私。奇声を上げて頭を振ると、えりかちゃんが寝言で「フヒヒwww」と笑った。
くそー、えりかちゃんめ。誰が元祖千聖の相方だと思ってるんだ!

「千聖、千聖。」
「んぅ・・・」

愛理を起こさないよう注意しながら、千聖の肩を掴んで強めに揺する。しばらくすると、長いまつげの下からきらきらの黒目が現われた。


「あ・・・舞さん?おはよごじゃましゅ」
千聖は寝起きが悪い。ろれつの回らない口で私に挨拶すると、もう一度布団に顔を埋めようとする。

「ちょっと!起きてよ。」
「んー・・・まだ皆さんも寝てらっしゃりゅわ・・・」
「いいから。一緒に来て。」

両脇を持って引っ張り上げると、観念した千聖はやっと起き上がってくれた。

「静かにね。」

廊下に出ると、千聖の手を引っ張って、エレベーターまで連れて行く。

「舞さん・・・?どちらへ行くんれすか」

相変わらず眠そうな千聖。仕方ないなあ。私は自販機でりんごジュースを一つ買うと、千聖の口に押し付けた。

「あら、舞さんがごちそうしてくださるの?珍しいのね。」
「うっさいな。舞も飲むんだから、早くして」
「ん・・」

千聖の顎を押さえて、赤ちゃんにあげるみたいにペットボトルを傾けていく。
ジュースを飲むたびに、皮膚の薄そうな喉がこくこく音を立てて動いた。
悩ましくひそめられた眉。飲みきれなくて口の端からこぼれる液体。


――あ、ヤバイ。さっきの夢でのことが頭をよぎる。

「はい!はい!もう終わり!後は舞の!」

私は何かをごまかすように、ペットボトルを思いっきり千聖の口から離した。


「もう・・・今日の舞さんは乱暴なのね。」
「ふんっ」


困った。千聖の顔をまともに見ることができない。今からあんなところに行くっていうのに、大丈夫か、私。



「・・・着いた。降りて。」
「あら、ここは?」

カードキーを差し込んで、千聖の背中を押して中に入ってもらう。

「お風呂・・・」

ホテルの最上階。ドアの向こうには、共同浴場とは違う、ちょっと高級感のある脱衣所が備わっていた。

「そ、温泉。夜さ、みんなで共同の入ったでしょ。本当は、この貸切のお風呂を使う予定だったんだけど、7人じゃ狭かったからね。でも使わないのもったいないし、ここで朝風呂しようよ」
「ふふ、いいわね・・・楽しそう。」

お嬢様になっても好奇心旺盛なところは変わらない。千聖はパジャマ変わりのジャージのまま、脱衣所を抜けてすりガラスの向こうへ行こうとした。

「千聖、着替えなきゃだめでしょ」
「きゃんっ」

首根っこを掴んで引き戻すと、千聖は照れくさそうに目を半月にして笑った。・・まったく、しっかりしてるんだか天然なんだかわからない。

千聖はよっぽどお風呂が気になるのか、テキパキと服を脱いでいく。へー、本日の下着は薄いピンクか。って

「うおおい!」
それ、夢と一緒じゃん!

「ひえっ!ま、舞さん?」
「・・ごめん、本当すいません。気にしないで。」

別に、千聖の下着姿なんて見慣れてる。コンサートでもレッスンでも、着替えなんて日常茶飯事だから。
お嬢様化した当初はコソコソ着替えていた千聖も、一度舞美ちゃんにガーッと剥かれてからはもうどうでもよくなったらしい。
そういうアバウトなところは前の千聖っぽいなぁ。

とはいえ、さすがに真っ裸には抵抗があるらしく、ブラを取ると同時にすばやくタオルを巻きつけてしまった。すごい、何も見えなかった。

「もう、そんなに見ないで。恥ずかしいわ。お先に行ってるわね。」

愛理みたいに身体をクネクネさせながら、千聖は私の視線を逃れるようにお風呂場へ入ってしまった。



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