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その日の夜。
勉強を教えて欲しいの、と言われてお屋敷を訪れた私は、さっそく復活したお嬢様のワガママに手を焼いていた。

「いいですかお嬢様、過去形と過去分詞形の違いですが・・・」
「・・・なっきぃ、英語は難しいから嫌。もっと楽しい教科はないのかしら。千聖はずっと日本で暮らすから、英語なんて必要ないわ。」
「またそんなこと言って!英語はほとんどの国で使える便利な言葉なんですよ?日本から出ないと言っても、もし街中で外国の方に道を聞かれたらどうするんですか?」
「あら、日本に来たら日本語を話すべきだと思うわ。それに、じぇすちゃーで教えて差し上げればいいじゃない。」

キー!!!この屁理屈お嬢様が!これは確実に、嗣永さんの影響だ。

まったく、学校新聞の件でお嬢様を助けてくれたことは感謝してるけれど、嗣永さんはお調子に乗りやすいお嬢様を上手に煽って変なことを教えてしまう。
大体、何なのあの人の制服の着こなしは!アホか!きちんと様式どおりに着こなしてこそ、清楚で慎ましい楚々とした魅力が内面からにじみ出てどうたらこうたら

「ねえ、なっきぃ。もう21時よ。私今日は時代劇を・・」
「ダメです!このテキストが終わるまではお風呂も就寝もありませんよ!」
「もう、なっきぃのケチ!どうせやったってできないのよ、私なんて」

お嬢様はすっかりいじけてしまって、口を尖らせてそっぽを向いてしまった。・・しょうがないなあ。

「あのね、千聖お嬢様。お勉強だって、日々の積み重ねなんですよ。」
「だって、舞は勉強しなくてもできるじゃない。ももちゃんも特にしてないって言ってたわ」
「・・・・いや、あの人たちは特別です。かんちゃんも愛理も、毎日コツコツ予習と復習をしてるから、成績がいいんですよ。」
「そうなの・・?でも、千聖は頭が悪いから・・・・なっきぃだって、とても優秀なんでしょう?先生方がいつも褒めていらっしゃるわ」

ふてくされながらも話を聞いてくれるのがかわいい。上目遣いの表情はお嬢様のペットのわんちゃんを彷彿とさせて、お説教の最中だというのに少々和んでしまった。

「実はね、私も理数系はすっごく苦手なんです。でも、頑張って勉強すればその分成績は良くなるものなんですよ。努力したことがきちんと反映されるのは、結構気持ちいいんですから。」
「本当に・・?なっきぃがそう言うなら、頑張ってみようかしら。」
「そうですよ、いつでもお教えしますから!お嬢様は、やればできるのにやらないだけなんです。頭が悪いんじゃなくて、集中力が足りていないんです。」

どうだ嗣永さんめ!こんな風にお嬢様を説得できるのは私だけなんだからねっ!キュフフ

「わかったわ。時代劇は録画して後で見る。でもなっきぃ、その代わり」
「はい」
「お勉強頑張ったら、お風呂に一緒に入ってくれる?」

ちょっと恥ずかしそうにうつむいて、お嬢様は私のスカートの裾を弄びながら早口で言った。

「・・・嫌?」
「えっ!いいえ、そんなことないです。初めてだったので、びっくりしてしまって。」
「えぇ、・・・あの、なっきぃ、笑わない?」

そう前置きして、お嬢さまが語りだした。

「私ね、お風呂に1人で入るのが怖くて。いつもめぐ・・・村上さんや、来てれば栞菜に洗面所にいてもらっているのね。でも栞菜ったら覗こうとするのよ。ひどいわ。」
「あ、それなら、私も洗面所で待ってますよ」
「あ、で、でも、何か今日は、一緒に入りたいの。だめかしら・・・私、お勉強しっかりやるから。ご褒美に・・」

――あーん、もう可愛いこというなあ!これだからお世話係はやめられない。
私はニヤけてしまうのを抑えることもできずに、緩んだ顔で「・・入浴剤は、みかんがいいですケロ♪」と返した。


「・・・・失礼します」

その時、小さなノックとともに、メイド服の舞ちゃんが顔を覗かせた。

「ゴミを回収しにきました。」

舞ちゃんは不機嫌そうな顔で、ベッドサイドのダストボックスを持って部屋を出ようとした。

「頑張ってるね。そうだ、今日ね、私お嬢様と一緒にお風呂はいるんだー。キュフフ」
「はぁ!?・・・いえ、それはよかったでしゅね。ですが私には関係ないことでしゅから。すゅつれいしゅましゅ」


舞ちゃんは動揺すると噛む。
続行中の“舞ちゃんの嫉妬煽り大作戦”は、相変わらず有効みたいだった。



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