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「さ、こちらにいらして。」

クローゼット内のお風呂のドアを開けると、まず目に入ったのは大きなテレビだった。

「体を拭いてる時、退屈でしょう?少し前に取り付けてもらったの。村上さんや栞菜が私を待っている間も、使っているみたい。テレビは浴室にもあるのよ。今度はお手洗いにも付けてもらおうかしら」
「はぁ・・」

お嬢様がテレビっ子なのは知っていたけれど、何て無駄な設備!お部屋に立派なのが1台あるでしょうが!もし会計担当の茉麻ちゃんや経費削減の鬼の佐紀先輩がいたら、あまりのことにぶっ倒れていたかもしれない。

「あの、お1人用のお風呂なんですよね?」
「ええ、そうよ。どうして?」
「いや・・・なんかすごいなあって」

テレビだけじゃない。洗面所はいわゆる“ダブルボウル”で、お姫様みたいな鏡が2つ並んでいる。
奥のパウダールームみたいなスペースにはデパートでしか見れないような高級基礎化粧品が陳列されていて、コットンケースはガラスに色石が散りばめられた宝石箱みたいなものだった。

「千聖はもっとピンクやベージュの可愛らしい内装にして欲しかったの。これでは、少し大人っぽすぎるわ。」
「そうですか?素敵だと思いますよ」
落ち着いたアッシュブラウンとモスグリーンを基調にした内装は、どこかの高級ホテルのように、落ち着いた癒しの空間を作り上げている。こんな素敵な空間で体を清められるなんて、とても贅沢なことだと思うんだけどな。

「やっぱり、洗面所とお風呂のデザインを変えたいわ。さっそく執事に・・・」
「いけません、お嬢様!」
「きゃっ!」

私は反射的に千聖様の両肩を掴んで、強引にイスに座らせた。

「なっきぃ?」
「お嬢様。この大人っぽい内装は、お嬢様が大人の女性になられてからも心地よくお使いになれるよう、お父様とお母様が考えてくさったのだと思いますよ。
ピンクも可愛らしいですけれど、なっきぃはこのお風呂場のデザイン、大好きです。」
「・・・本当?なっきぃがそういうなら、このままでいいわ。何でも思い通りにしようとするのは、いいことではないわね。」


ああ、お嬢様が成長なさっている・・・なっきぃは感無量ですっ・・!


「さあ、お風呂に入りましょう。」
「はぁい。失礼しまーす」

部屋着を脱いだお嬢様と一緒に、すりガラスを開けて、浴室へ足を運ぶ。

「うわあ・・・これはまた、ものすごい。」

“お嬢様ー、失礼します。村上ですけど”

バスルームのこれまた豪華な内装に見とれていると、洗面所の方からお嬢様を呼ぶ声がした。

「あ・・・なっきぃ、先にシャワーを浴びていてちょうだい。私、ちょっと」

お嬢様が浴室を出てしまって、私は1人になった。

うぅ、緊張してきた。何か粗相をして、弁償でもすることになったら、我が家は破産してしまうかも。私は最新の注意を払って、おそるおそる金色のシャワーハンドルをまわした。


「なっきぃ?」
「うひゃあ!あ・・・ひえええええ!!」


突然後ろから声をかけられて、私は勢い余って取っ手を思いっきり回転させてしまった。ホースから強い水しぶき。そして、私の手には・・・

「ももも、申し訳ありませんお嬢様!」

すっぽぬけた大きな蛇口を握り締めたまま、私は必死でお嬢様に頭を下げた。どうしよう、やばい!高額借金、学園退学、一家離散・・・不吉な言葉が次々頭をかすめていく。

「あら、取れてしまったの?うふふ、そのシャワーね、古いから、千聖もよくやってしまうの。」
「え・・・?」

お嬢様は私の手からハンドルを取ると、慣れた手つきで元の位置に戻した。

「ゆっくり回せば、取れないわ。」
「よ、よかったぁ・・・!」
「いやだわ、なっきぃったら。そんなに驚いて、どうしたの?」

おもわず大理石の床にへたり込んだ私を、お嬢様が笑いながら引き上げてくれた。

「はい、これ。今ね、メイドがなっきぃのお風呂のセットを持ってきてくれたの。使い切れなかった分は、もし嫌でなければ、お持ち帰りになって。肌に合うといいのだけれど。千聖と同じシャンプーなのよ。」
「えっ!そんな・・・でも・・あ、ありがとうございます。」

小さな小花模様が散りばめられた防水ポーチに、ボトルがいくつか詰まっていた。

「嬉しいな。私、お嬢様のシャンプー気になっていたから。とてもいい香りでしょう?」
「あら、そうなの?これはね、お父様の会社の商品なの。言っていただければ、なっきぃになら差し上げたのに。」
「いえいえ、滅相もないです。」
お嬢様は普段バニラの香りのコロンを使っているけれど、実は私はこのシャンプーの匂いの方が好きだったりする。
明日、匂いフェチのかんちゃんの前で髪をなびかせまくってうらやましがらせてやろうっと。キュフフ♪



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