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「ねー、みや。ケータイ、新しくしないの?」

お昼休み、クラスのみんなでおしゃべりしているとき、ふとケータイを開いた私を見て、千奈美が発した一言。

「それよく見たらさ、結構ボロボロじゃない?」
「それ、超古い機種じゃん。みや結構新しもの好きなのに、ケータイだけは変えないよね。ストラップも」
「あー・・・うん・・・」


私は改めて、自分のケータイに目をやった。
4年前に買った、シルバーのスライド式。ストラップはご当地キティちゃん。
もう電池パックも何度も交換していて、その度に店員さんに機種変をすすめられるけれど、いまだに私はこのケータイに固執しているのだった。

「・・・これが一番使いやすいから。それよりさ、昨日のお笑いのアレ見たー?」
「見た見た!やっぱりあの芸人最高!」
「今超はやってるよね!うちの弟も真似してさぁ」

千奈美の好きそうな話に無理矢理方向転換を図ると、みんなもそっちに乗ってくれた。
合わせて一緒に騒ぎつつも、私の頭には“彼女”のことがよぎっていた。

おそろいのケータイ。
おそろいのストラップ。
本当ならおそろいの制服を着ていたはずの・・・・


私には、どうしても忘れられない友達がいる。


私は中学までは、公立の学校に通っていた。
いじめに学級崩壊、喫煙に盗難。
いつになく荒れていた時期に入学した私は、不運なことに、怖い先輩達のグループに目をつけられてしまった。


「1年が化粧とかしてんじゃねぇよ」
「明日までに黒染めしてこいよ」

しょっちゅう呼び出されてはそんな脅しをかけられていたけれど、世間しらずで怖いものなしだった私は、適当に返事をしてその場を凌いでいた。・・・まさか、実力行使に出るなんて思わなかったから。


その日もごちゃごちゃ言いがかりをつけられ、いつもどおり生返事を返していたら、いきなり髪を引っ張られた。

「痛っ!」
「これだけ言ってもわからないなら、優しい先輩が指導してあげるしかないね。」

そう言って、そのうちの1人がスカートのポケットからカッターを取り出した。

「うそ、マジで・・・!」
「まあ、反省するんだね」

私の髪に刃が当てられかけたその時だった。



「あっいたいたー先輩たち!何か○○先生が呼んでましたけどー?」

背後からのんきな声がして、先輩達の動きが止まった。

「・・・何だ、めぐか」
「急ぎの用みたいですよ。テニス部集合ですって」

「んだよ、仕方ないな。ちょっとあんた、今度こそ頭直してきなよ。行こう」

何となく空気が緩んで、先輩達は私を軽く小突いて去っていった。


「・・・大丈夫?」

思わず座り込んだ私に手を差し伸べてくれたのが、同じクラスのめぐだった。
吸い込まれそうなぐらい大きな目に、真っ白な肌。美人な上に活発で明るいめぐは、入学して間もないクラスでもう中心人物だった。

「あ・・ありがとう。でも、いいの?部活、集合なんでしょ?」
「ああ、あれは嘘。やっばーいね!後でしめられたりして、とかいってw」

めぐはペロッと舌を出して笑った。

「別にさ、髪の色とかメイクなんてどうだっていいじゃんね。スカートが短いと、先輩になんか迷惑かかるんですか?みたいなね」

そんなことを言うめぐも、私に負けず劣らず結構派手目な外見だった。それでも私みたいに目をつけられたりしないのはちょっとうらやましかった。

「教室戻ろうよ。次移動だから、遅れちゃう」


極度の人見知りで、まだ友達ができていなかった私は、それをきっかけにめぐのグループに入れてもらうことになった。

仲良くなってみると、めぐは何でもはっきり言うわりにどこか抜けていて、何か憎めない面白い子だとわかった。
1年生なのにテニス部のレギュラーで、クラスではまとめ役。勉強も結構できるしおしゃれで可愛いめぐは、当時の私の憧れだった。
毎日グラウンドの隅でテニス部が終わるのを待って、一緒に帰る。めぐが部活のない休日は、ショッピングやカラオケに行く。
私の世界は、完全にめぐに染まっていた。

めぐの仲介で、他にも仲のいい友達はできたけれど、やっぱり私の一番はめぐだった。めぐも何かと私を優先してくれて、私たちは本当にいつも一緒だった。・・・中3に上がるまでは。



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