※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「私、めぐと同じ高校に行きたいな。」
「ええ?」

中2の終業式の帰り道、めぐと2人でファーストフードのお店でだらだらと喋っている時、ちょっと勇気を出してそんなことを言ってみた。
中1、中2と同じクラスだった私たちは相変わらずべったりで、私はこの関係がいつまでも続いたらいいなと思っていた。

「もう、志望校は決まってるの?」
成績がそうとうヤバイ私と、常に学年トップ10に入るめぐが同じ学校に行くのはかなり難しいのはわかっていた。でも、めぐのためになら、大嫌いな勉強も頑張れる気がした。

「んー・・・一応。」
「どこどこ?」
「みんなには絶対内緒ね。みやびにだけ教えるんだから。」

そう言って口にしたのは、都心から少し離れたところにある、わりと有名な女子校だった。
やっぱりめぐが目指すだけあって、結構レベルが高い。しかも中高一貫の学校への外部受験だから、かなりの難関であることは間違いない。

「どうしてそこがいいの?」
「そうだなあ。・・・制服がカワイイから、かな?」
「何その理由!」

私の高速つっこみにあはは、と笑った後、めぐは少し真面目な顔になった。

「私ね、ぶっちゃけ高校にはそんなにこだわってないんだ。大学はもう行きたいとこ決まってるんだけどね。だから、行く高校なんて直感でいいなと思ったところでいいんじゃないかと。そんなもんじゃない?」


じゃない?と言われても、「行きたい高校」じゃなくて「行ける高校」を探すレベルの私には、雲を掴むような話だった。

「私と同じがいいって言うけど、みやびもあの高校受けるの?それならマジで勉強頑張なきゃ!」
「受験勉強、今からでもどうにかなるかな・・・」
「だーいじょうぶだよ!今日から一緒に勉強しよ?私もみやびが一緒だとすごい嬉しい!」


そんなめぐの言葉に後押しされて、私たちは春休みの間、毎日図書館に通って勉強した。

めぐは決して甘い先生じゃなかったけれど、うまく私の気分を盛り上げて、集中させてくれるのが上手だった。まだまだめぐのレベルには到達できていないけれど、この春休みの集中特訓で、私は自分の学力がレベルアップしてきているのを確かに感じていた。




「私さ、めぐに会えてよかったと思うんだ。」
「はあ?何いきなり。」


春休み最後の日、図書館の帰りに立ち寄った公園で、ふとそんなことを言ってみた。

「ほんとそう思うよ。めぐがいてくれたから、こうやって勉強も頑張れるし、友達もいっぱいできたんだと思う。めぐって本当すごいね。何でもできちゃうし、先輩たちにもすっごい可愛がられてて。」
「・・そんなさ、私がみやびに付き合ってあげてるみたいな言い方やめてよね。私だって、みやびとこうやって友達になれて、嬉しいんだよ。」

そう言って勢いよくブランコを漕ぐめぐの横顔が赤くなっていたのは、夕日のせいだけじゃなかったと思う。

「それにね、みやびと仲良くなりたいって子、結構いっぱいいるんだよ。みやびが気付いてないだけで。もっとさ、自分に自信持ってもいいんじゃない?」
「だめだよ、私なんか。ていうか、正直めぐがいてくれたら、それだけでいい。他の友達はいらない。」
「みやび・・・もう、そんなこと言って。」


私がこの時、一瞬めぐの笑顔が消えたことに気付いていたなら、私たちは今でも一緒にいられたのかもしれない。


「同じ高校、入れたらいいね。」
「・・・うん。」


その後2人して歌を歌いながら、元気よく立ち漕ぎをした。それが、めぐと心から笑い合った最後の瞬間だった。


翌日。
私はいつもより早起きして、学校に向かった。まだ人もまばらな校門を早足で通り抜けて、昇降口に張ってある掲示物の前に立った。

今日から3年生。ドキドキしながら、新クラスの名簿の中に自分の名前を探す。


「な・・・中島、中田・・・・あった!」

祈るような気持ちでその下まで目を通すと、そこに“村上愛”の文字。

また一緒のクラスになれた。3年間同じクラスだなんて、もう運命的な友情としか思えない。
嬉しさで緩む顔もそのままに、私はめぐにメールを打った。
始業式までに返事がくればいいな、と思っていたけれど、結局私のケータイがメールの新着を告げることはなかった。




「あ・・・おはよ、みやび。」
「めぐ、おはよ!メールしたんだけど、見なかった?また一緒のクラスだよ!すごくない?」


予鈴のチャイムが鳴ったところであきらめて体育館に行くと、めぐがテニス部の子たちとおしゃべりをしていた。

「あー、ごめんね。朝練あったから、バタバタしててケータイ見れなかった。そか、また同じクラスなんだ。よろしくね。」

そう言って笑うめぐに、私はどことなく違和感を覚えた。それは仲がいいからこそわかる、ほんのささいな変化だったのかもしれない。

「めぐ、なんか元気ない?」
「え?そう?そんなことないよ。・・・あっ!おはよー!」

めぐは後ろの扉から入ってきた、元クラスメートに大きく手を振って笑いかけた。その顔はいつもどおりのめぐだったから、私はさっきのことはとりあえず忘れることにして、めぐと一緒にみんなに挨拶をした。



「めーぐ、帰ろっ」

今日は初日だから、授業がない。始業式と新クラスでのホームルームが終わって、私はカバンを持ってめぐの席まで歩いて行った。

「あ・・、うん。あのさ、みやび。今日時間ある?話したいことがあるんだけど」
「うん、いいよ。そしたら、どっかでご飯食べながらでも」
「いや、今すぐ話したいから。来てくれる?」

めぐは荷物も持たずに、私に背中を向けて教室を出た。やっぱり、様子がおかしい。何か悩みがあるなら、私が力になってあげたい。


今思えばまったく見当違いなことを考えながら、私は少し早足のめぐを追いかけた。



TOP