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「でさぁ、その時彼氏がー」
「マジで?ウケるんだけど!」

「夏物のワンピが・・・・」
「あのファンデ、全然使えねー」



ファッション、メイク、おいしいスイーツ、彼氏。


新しいグループの子たちの話題は、いつもこんな感じだった。
まあ、楽しいは楽しいんだけど、どうしてこうも毎日同じ話題で何時間も盛り上がれるんだろう。正直、ついていけないこともあった。

めぐも含めて、今まで一緒にいた友達とは、真面目な話もすればバカ話もした。今までとはまったく違う価値観や空気に、私はまだ戸惑っていた。

何より、私が馴染めなかったのは・・・


「ちょっとトイレいってくるー」

「いってらっしゃーい。・・・・・ねえ、あの子の今日の服ヤバくない?どこで買ったんだよ(笑)」
「思ったーマジウケるんだけど!」


誰かがその場からいなくなると、すぐその子の悪口大会が始まる。・・・きっと私も、いない時には何か言われてるんだろうな。
もちろん嫌々一緒にいるわけじゃないし、私と好みが近いギャル系(めぐも派手な方だけどちょっとベクトルが違う)の子たちと接していると、センスが磨かれていくような気がした。
でも、やっぱり決定的に“何か”が足りない。今まではカッチリはまっていたパズルのピースが、少しいびつな形で無理矢理組み込まれているような感じ。


「雅?聞いてる?」
「えっ!あ、ごめん。ボーッとしてた。」
「もー、しょうがないな。・・・あのさ、雅って彼氏いないの?」
「えー?いないけど?」

私が答えると、みんなは嘘ー!?とかいって騒ぎ出した。

「何でー?モテそうなのに。」
「もったいなくない?」

そんなことを言われても、去年まではめぐがいたから、別に彼氏なんて欲しいとも思わなかった。正直何度か告白されたこともあったけれど、全く気が乗らなくて全部お断りしていた。

「じゃあさ、何か雅紹介してほしいって言ってる男子いるから、今度みんなで遊ぼうよ!」
「えっ・・・別にいいよそんな」
「だって、うちらの中で彼氏いないの雅だけだよ?」

何だそれ。彼氏って、そんな動機で作るものなの?

そう思っていても、何となく切り出せなくて、私は次の休日に、遊園地に連れて行かれた。5対5のデート・・・なのかな。


彼女達が紹介してくれたのは、隣のクラスのバスケ部の男子だった。まあまあ顔も良くて、明るくて面白い人だなとは思ったけれど、別に好きだとか付き合いたいとか、この1回で決められるような感じじゃない。
そう思っていたのに、帰り際にみんなの前で、その人に告白された。


「よかったねー雅!これで全員彼氏持ちじゃん。」
「ウチら何でも相談乗るから!」

私が何か答える前に、みんなが畳み掛けるように祝福(?)し始めた。今更断りづらい雰囲気になって、とりあえず私はその人と付き合うことになってしまった。

何やってるんだろう、私。こんなんじゃダメだって明らかにわかりきっているのに、どんどん流されて、自分の意思なんて全然なくなってしまっている。


こんな時、めぐがいてくれたら「みやびの意見ちゃんと聞きなよ」なんてかばってくれたんだろうな。
そんなことを思ったところで、今私の横に、めぐはいないんだけど。



そうして結局めぐとろくに話もしないまま、気がつけばもう1学期も終わりに近づいていた。



夏休み。

散々悩んだけれど、私は第一志望校をめぐと同じ女子校にした。
相変わらず連絡も取ってないような状況だけど、今現在唯一のめぐとの接点を切りたくなかったから。
めぐと2人で勉強しなくなった分は、予備校に通って頑張ることにした。
バスケ部の男子とは、たまに会ってご飯食べたり映画観たり、そんな程度の付き合いを続けていた。・・・まだ彼氏って言っていいのか正直微妙だったけれど、少しずつちゃんと好きになっていってるような気がしていた。


新学期直前のある日、私はふと、昔よくめぐと寄り道していた公園に立ち寄った。“いつものブランコ”に近づいていくと、そこには先客がいた。


「あ、みやび」
「久しぶり・・・めぐ」
「暑いねー。塾帰り?頑張ってるじゃん」

めぐの態度は、2人仲良くしていた頃と全く変わらなくて・・・・嬉しいような苦しいような、不思議な感覚を覚えた。

話したいことはたくさんあった。志望校をめぐと一緒のまま変えなかったこと。模試の結果がかなりよくなってきてること。・・・また、前みたいな友達に戻りたいこと。


「・・・あのさ、みやび。」

何から切り出そうか、私が考え込んでいると、先にめぐが口を開いた。


「みやび、今バスケ部の男子と付き合ってるでしょ。」
「うん、まあね。」


「あいつは、やめたほうがいいよ。」

めぐの大きな目が、私をまっすぐに見つめた。


「・・・なんで」
「みやびには、ああいうタイプは合わないと思う。」

いつになく強い口調で、めぐは吐き捨てるようにそう言った。

「何でそんなこというの?だって私、めぐがもっと世界を広げるべきだって言うからいろいろ頑張ってるのに。友達だって増やしたし、めぐと離れても我慢してるじゃん。」
「私に言われたからなの?友達や彼氏ってそういう風に作るものなの?みやびの人生はみやびのものなんだよ。私がいてもいなくても、ちゃんと流されずに自分で決められるようになんなきゃだめじゃん。」

「・・・わかんない。私の意志でいいって言うなら、私はずっとあの頃のままめぐと一緒にいたかったよ。でもめぐが距離を置こうって言ったんじゃん。
めぐは私の気持ちなんて全然考えてない。勝手に全部決めて、今度は勝手に違うこと言い出して」
「みやび、」

「だってそうじゃん。私のこと捨てたくせに。・・・もう、私の決めたことに口出さないで。めぐの言うように、私は自分で何でも決めるから。」


私はブランコを飛び降りて、逃げるように公園を後にした。
きっとめぐの言ってることは正しい。でも、私だって、やっと自分の足で歩き出そうとしていたところだったのに。・・・自分の意思で、めぐと同じ高校を選んだのに。

家まで帰る途中に、どんどん目元が熱くなってきた。うつむいて地面をにらみながら歩き続ける。

どうしてこうなっちゃうんだろう。私はもう、何をどうしたらいいのかわからなくなってしまった。



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